【完結】愛しくない、あなた

野村にれ

文字の大きさ
50 / 344

【テイラー】自白剤2

しおりを挟む
 ディオエルは血だと言われても、何の意味があるのか分からなかった。

 だが、アイルーンの血を抜いていたと言うのか、だから貧血になったのか、妊娠のせいではなかったのか?という思いが渦巻いていた。

「アイルーン・デリアの血を抜いていたのか?」
「そ、です」
「何のために?」
「す、い、みんやくを、飲ま、せて、寝、ている、あい、だに、抜い、ていた」
「睡眠薬…」

 その言葉がようやくテイラーの言っていたことに繋がり、ディオエルもルーベンスも息をのんだ。

 ディオエルは思わず振り返って、テイラーを見つめてしまったが、テイラーはペジリーに嫌悪感を隠さず、忌々しい顔で睨み付けていた。

 ルーベンスも目を見開き、思わずテイラーを見つめたが、その表情だけで事実なのだろうと感じていた。

「どうして血を抜いたんだ?殺す気だったのか?」
「ち、がう。血を、ゆ、けつ、す、れば、ローズ、ミーの、こど、もが」
「は?子ども?どういう意味だ?」

 ディオエルはローズミーの子どものことは、アイルーンの死後であるのに、どうして関係してくるのか、分からなかった。

「子ど、も、欲し、くて」
「子どもが欲しい?」

 その言葉に、自白剤を打つために招かれていたカーズ医師は、ハッと思い出したことがあった。

「陛下、よろしいですか?」
「ああ、時間もないから、何かあるなら言ってくれ」
「もしかしたら…妊娠している番の血を輸血すれば、疑似番となって妊娠すると…昔、行われたことがあったと」
「そんなことが…あるのか?」

 ディオエルは、聞いたこともなかった。

「はい、私も歴史として読んだだけですが、大昔の話で、妊娠に至ることはあったが、無事に子どもが生まれた記録はありません」
「だからローズミーは妊娠したのか…」

 ディオエルはローズミーが奇跡的に妊娠したことの理由が、ようやく分かった。

 ローズミーはお構いなしに押し掛けてくることは多かったが、ディオエルの性行為は管理されており、言われた通りに妃のところへ通っており、ローズミーが特別に多かったわけではなかった。

「ペジリー!答えろ!」
「そ、です、でも駄目だっ、た、ローズ、ミーは、おかし、く、なって、もっと、血が、あれ、ば。だか、ら、ころ、し、て、いない」
「殺意はなかったと言いたいのか!」
「そ、です」
「そんなはずがないだろう!カーズ医師、妊婦を貧血にして、そんなことをしていら、死に至ることはあるよな?」
「当然です!輸血ということは、おそらく多くの血を抜き取っていたのでしょう。しかも、妊婦に!大変、危険な行為です。そして、当時、監禁や殺害ということもあったために、禁じられた行為でございます」

 殺すことが目的ではなくとも、そのような行為をしていなければ、死に至らしめることはなかっただろう。

「重罪だな、それで誰に手伝って貰っていた?」
「ラオイに、たの、んで、血を、ぬいて、いた」
「ラオイ・キリーだな?」
「は、い、そ、です」
「ラオイを呼んで、自白剤を打て!」
「は!」

 ライシードがラオイを連れてくるために、飛び出して行った。

「ラオイに口止めをしたんだな?」
「そ、です。血、のせい、だった、ら、困る、から」

 ペジリーはずっと血を抜いたせいで死んだのではないかと思いながらも、そうではないと思い込もうとしていた。

 ローズミーに口止めは難しいとは思いながらも会うことは出来ず、ラオイにあの時のことは、絶対に言わないように、何か聞かれたかと話に行っていた。

「ローズミーは知っていたのだな?」
「そ、です。でも、へいか、の、ために。あの、子は、子ども、が、欲し、くて、だか、ら」

 ペジリーは自白剤を打たれても、ローズミーのためがディオエルへ繋がると思っており、だがディオエルにとってはどうでもいいことであった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

白い結婚の末、離婚を選んだ公爵夫人は二度と戻らない』

鍛高譚
恋愛
白い結婚の末、「白い結婚」の末、私は冷遇され、夫は愛人を溺愛していた――ならば、もう要らないわ」 公爵令嬢 ジェニファー・ランカスター は、王弟 エドワード・クラレンス公爵 のもとへ政略結婚として嫁ぐ。 だが、その結婚生活は冷たく空虚なものだった。夫は愛人 ローザ・フィッツジェラルド に夢中になり、公爵夫人であるジェニファーは侮辱され、無視され続ける日々。 ――それでも、貴族の娘は耐えなければならないの? 何の愛もなく、ただ飾り物として扱われる結婚に見切りをつけたジェニファーは 「離婚」 を決意する。 しかし、王弟であるエドワードとの離婚は容易ではない。実家のランカスター家は猛反対し、王宮の重臣たちも彼女の決断を 「公爵家の恥」 と揶揄する。 それでも、ジェニファーは負けない。弁護士と協力し、着々と準備を進めていく。 そんな折、彼女は北方の大国 ヴォルフ公国の大公、アレクサンダー・ヴォルフ と出会う。 温かく誠実な彼との交流を通じて、ジェニファーは 「本当に大切にされること」 を知る。 そして、彼女の決断は、王都の社交界に大きな波紋を呼ぶこととなる――。 「公爵夫人を手放したことを、いつか後悔しても遅いわ」 「私はもう、あなたたちの飾り人形じゃない」 離婚を巡る策略、愛人の凋落、元夫の後悔――。 そして、新たな地で手にした 「愛される結婚」。

どうぞ、おかまいなく

こだま。
恋愛
婚約者が他の女性と付き合っていたのを目撃してしまった。 婚約者が好きだった主人公の話。

三年の想いは小瓶の中に

月山 歩
恋愛
結婚三周年の記念日だと、邸の者達がお膳立てしてくれた二人だけのお祝いなのに、その中心で一人夫が帰らない現実を受け入れる。もう彼を諦める潮時かもしれない。だったらこれからは自分の人生を大切にしよう。アレシアは離縁も覚悟し、邸を出る。 ※こちらの作品は契約上、内容の変更は不可であることを、ご理解ください。

侯爵家の婚約者

やまだごんた
恋愛
侯爵家の嫡男カインは、自分を見向きもしない母に、なんとか認められようと努力を続ける。 7歳の誕生日を王宮で祝ってもらっていたが、自分以外の子供を可愛がる母の姿をみて、魔力を暴走させる。 その場の全員が死を覚悟したその時、1人の少女ジルダがカインの魔力を吸収して救ってくれた。 カインが魔力を暴走させないよう、王はカインとジルダを婚約させ、定期的な魔力吸収を命じる。 家族から冷たくされていたジルダに、カインは母から愛されない自分の寂しさを重ね、よき婚約者になろうと努力する。 だが、母が死に際に枕元にジルダを呼んだのを知り、ジルダもまた自分を裏切ったのだと絶望する。 17歳になった2人は、翌年の結婚を控えていたが、関係は歪なままだった。 そんな中、カインは仕事中に魔獣に攻撃され、死にかけていたところを救ってくれたイレリアという美しい少女と出会い、心を通わせていく。 全86話+番外編の予定

初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結保証】

星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。 だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。 しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。 王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。 そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。 地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。 ⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。

婚約破棄の代償

nanahi
恋愛
「あの子を放って置けないんだ。ごめん。婚約はなかったことにしてほしい」 ある日突然、侯爵令嬢エバンジェリンは婚約者アダムスに一方的に婚約破棄される。破局に追い込んだのは婚約者の幼馴染メアリという平民の儚げな娘だった。 エバンジェリンを差し置いてアダムスとメアリはひと時の幸せに酔うが、婚約破棄の代償は想像以上に大きかった。

白い結婚で結構ですわ。愛人持ちの夫に興味はありません

鍛高譚
恋愛
公爵令嬢ルチアーナは、王太子アルベルトとの政略結婚を命じられた。だが彼にはすでに愛する女性がいた。そこでルチアーナは、夫婦の義務を果たさない“白い結婚”を提案し、お互いに干渉しない関係を築くことに成功する。 「夫婦としての役目を求めないでくださいませ。その代わり、わたくしも自由にさせていただきますわ」 そうして始まった王太子妃としての優雅な生活。社交界では完璧な妃を演じつつ、裏では趣味の読書やお茶会を存分に楽しみ、面倒ごととは距離を置くつもりだった。 ——だが、夫は次第にルチアーナを気にし始める。 「最近、おまえが気になるんだ」 「もっと夫婦としての時間を持たないか?」 今さらそんなことを言われても、もう遅いのですわ。 愛人を優先しておいて、後になって本妻に興味を持つなんて、そんな都合の良い話はお断り。 わたくしは、自由を守るために、今日も紅茶を嗜みながら優雅に過ごしますわ——。 政略結婚から始まる痛快ざまぁ! 夫の後悔なんて知りませんわ “白い結婚”を謳歌する令嬢の、自由気ままなラブ&ざまぁストーリー!

間違えられた番様は、消えました。

夕立悠理
恋愛
※小説家になろう様でも投稿を始めました!お好きなサイトでお読みください※ 竜王の治める国ソフームには、運命の番という存在がある。 運命の番――前世で深く愛しあい、来世も恋人になろうと誓い合った相手のことをさす。特に竜王にとっての「運命の番」は特別で、国に繁栄を与える存在でもある。 「ロイゼ、君は私の運命の番じゃない。だから、選べない」 ずっと慕っていた竜王にそう告げられた、ロイゼ・イーデン。しかし、ロイゼは、知っていた。 ロイゼこそが、竜王の『運命の番』だと。 「エルマ、私の愛しい番」 けれどそれを知らない竜王は、今日もロイゼの親友に愛を囁く。 いつの間にか、ロイゼの呼び名は、ロイゼから番の親友、そして最後は嘘つきに変わっていた。 名前を失くしたロイゼは、消えることにした。

処理中です...