【完結】愛しくない、あなた

野村にれ

文字の大きさ
62 / 344

【テイラー】イリッタオ侯爵夫妻2

しおりを挟む
「それで、どうやって証明する?実家にも勝手に伝えたのだから、証明してくれるのだろう?」
「ですから、動機がないと言って」

 マーゼットはずっと、メロディを睨み付けていた。いつも言葉使いに気を付けろと言われており、義両親にも呆れられている。

「動機がありません」

 ディオエルは黙ったまま、メロディを見据えた。

「どうして私が疑われるんですか、私が犯人だとでも言うのですか!いえ、言われるのですか…」

 マーゼットがまだ睨み付けており、どんどん鋭い目つきになっているために、言葉使いをメロディなりに直した。

「だから、違うということを証明して欲しいと言っているんだ」
「あの、番の方が亡くなった日は、私は部屋におりました。だから、知りません」

 妃全員がそう答えていたが、実際はローズミーとペジリーとラオイがアイルーンのところに行っていたことになり、そうなると皆の主張も信じられないものになる。

 そういえば、どうやって忍び込んだことを聞き忘れていたと、今更ながらディオエルは思い出した。だが、時間もかなかった。

 まあ、もう一度、自白剤を使って聞けばいいかと、思うことにした。

 メロディも自白剤を使えば、白か黒かはっきりするだろう。

「皆がそう言っているが、嘘だったことが分かっている」
「私は本当です!」
「ならば、自白剤を使って証明してくれ」
「え?自白剤…?」

 メロディはその言葉に、頭が真っ白になった。

「妃たち、元妃である者たちには全員、既に後見人に許可を取っている。そうだよな?侯爵?」

 メロディは勝手に実家に知らせたと思われるために、夫であるマーゼットに許可を取っていた。

「はい」
「あなたっ!」
「何もないことを証明するためじゃないか!関与していないのだろう?」
「当たり前じゃない」

 マーゼットは拒否してずっと疑われることの方が、避けたいことであった。口止めはされていたが、メロディに言っても面倒なことになるだろうと言わなかった。

「ならば、いいじゃないか」
「でも、自白剤なんて」
「一週間、寝込むだけで証明が出来るのだ」

 自白剤のことも後遺症もなく、一週間、発熱と頭痛で寝込むことにはなるが、薬も効くことを聞いていた。当たり前だが、ローズミーとペジリーとラオイには薬は与えられることはない。

「それとも何かあるのか?」
「ないわ!でも、自白剤なんて、怖いわ…だって、私は関わっていないのに、そんなこと…ねえ、そうでしょう?」
「では、一生疑われたいか?」
「一生だなんて…」

 メロディは大袈裟だと思っており、どうにか回避したいとしか考えられずにいた。だが、マーゼットは受けるべきだと思っていた。

「妃の方たちが受けられたのに、君だけ受けないとなれば疑われて当然だろう?」
「それは」
「君も妃だったのだから、番様が殺されたということは、どれだけ重大な事か分かっているだろう?」
「ええ、でも」
「事件に対することしか聞くことはないから、安心しなさい」

 何でも隠せず自白してしまうことから、不味いことを隠しているのは問題だが、関係していないことは自白からは外すことになっている。

「そうなのですか?」
「ああ、そうだ」
「でも」
「関与していないのなら、レティのために無実を証明して、安心させてくれ」
「っ、は…い…」

 メロディは娘の名前を出されて、渋々ながら、自白剤を打たれることになった。同じようにしばらく待ち、尋問が開始される。

 ローズミーとは違い、ペジリーやラオイと同じように、目を血走らせ、鼻息も荒くなっていった。

「私の番であるアイルーン・デリアを殺したのは、メロディか?」
「いっ、いえ、ちが、います」

 マーゼットは、その答えにホッとした。

「では、誰かに頼んで、殺させたのか?」
「たのん、で、はない」
「ん?頼んではないとは、どういう意味だ?」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。

沼野 花
恋愛
夫と子供たちに、選ばれなかったイネス。 すべてを愛人に奪われ、彼女は限界を迎え、屋敷を去る。 だが、その先に待っていたのは、救いではなかった。 イネスを襲った、取り返しのつかない出来事。 変わり果てた現実を前に、 夫はようやく、自分が何を失ったのかを思い知る。 深い後悔と悲しみに苛まれながら、 失ったイネスの心を取り戻そうとする夫。 しかし、彼女の心はすでに、外の世界へと向かっていた。 贖罪を背負いながらもイネスを求め続ける夫。 そして、母の心を知っていく子供たち。 イネスが求める愛とは、 そして、幸せとは――。

結婚十年目の夫から「結婚契約更新書」なるものが届いた。彼は「送り間違えた」というけれど、それはそれで問題なのでは?

ぽんた
恋愛
レミ・マカリスター侯爵夫人は、夫と政略結婚をして十年目。侯爵夫人として、義父母の介護や領地経営その他もろもろを完ぺきにこなしている。そんなある日、王都に住む夫から「結婚契約更新書」なるものが届いた。義弟を通じ、夫を追求するも夫は「送り間違えた。ほんとうは金を送れというメモを送りたかった」という。レミは、心から思った。「それはそれで問題なのでは?」、と。そして、彼女の夫にたいするざまぁがはじまる。 ※ハッピーエンド確約。ざまぁあり。ご都合主義のゆるゆる設定はご容赦願います。

【完結】婚約破棄されたので、引き継ぎをいたしましょうか?

碧井 汐桜香
恋愛
第一王子に婚約破棄された公爵令嬢は、事前に引き継ぎの準備を進めていた。 まっすぐ領地に帰るために、その場で引き継ぎを始めることに。 様々な調査結果を暴露され、婚約破棄に関わった人たちは阿鼻叫喚へ。 第二王子?いりませんわ。 第一王子?もっといりませんわ。 第一王子を慕っていたのに婚約破棄された少女を演じる、彼女の本音は? 彼女の存在意義とは? 別サイト様にも掲載しております

夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。 神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。 もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。 生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。 過去世と同じ轍を踏みたくない……

前世の旦那様、貴方とだけは結婚しません。

真咲
恋愛
全21話。他サイトでも掲載しています。 一度目の人生、愛した夫には他に想い人がいた。 侯爵令嬢リリア・エンダロインは幼い頃両親同士の取り決めで、幼馴染の公爵家の嫡男であるエスター・カンザスと婚約した。彼は学園時代のクラスメイトに恋をしていたけれど、リリアを優先し、リリアだけを大切にしてくれた。 二度目の人生。 リリアは、再びリリア・エンダロインとして生まれ変わっていた。 「次は、私がエスターを幸せにする」 自分が彼に幸せにしてもらったように。そのために、何がなんでも、エスターとだけは結婚しないと決めた。

愛を騙るな

篠月珪霞
恋愛
「王妃よ、そなた一体何が不満だというのだ」 「………」 「贅を尽くした食事、ドレス、宝石、アクセサリー、部屋の調度も最高品質のもの。王妃という地位も用意した。およそ世の女性が望むものすべてを手に入れているというのに、何が不満だというのだ!」 王妃は表情を変えない。何を言っても宥めてもすかしても脅しても変わらない王妃に、苛立った王は声を荒げる。 「何とか言わぬか! 不敬だぞ!」 「……でしたら、牢に入れるなり、処罰するなりお好きに」 「い、いや、それはできぬ」 「何故? 陛下の望むままなさればよろしい」 「余は、そなたを愛しているのだ。愛するものにそのような仕打ち、到底考えられぬ」 途端、王妃の嘲る笑い声が響く。 「畜生にも劣る陛下が、愛を騙るなどおこがましいですわね」

私は既にフラれましたので。

椎茸
恋愛
子爵令嬢ルフェルニア・シラーは、国一番の美貌を持つ幼馴染の公爵令息ユリウス・ミネルウァへの想いを断ち切るため、告白をする。ルフェルニアは、予想どおりフラれると、元来の深く悩まない性格ゆえか、気持ちを切り替えて、仕事と婚活に邁進しようとする。一方、仕事一筋で自身の感情にも恋愛事情にも疎かったユリウスは、ずっと一緒に居てくれたルフェルニアに距離を置かれたことで、感情の蓋が外れてルフェルニアの言動に一喜一憂するように…? ※小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。

アシュリーの願いごと

ましろ
恋愛
「まあ、本当に?」 もしかして。そう思うことはありました。 でも、まさか本当だっただなんて。 「…それならもう我慢する必要は無いわね?」 嫁いでから6年。まるで修道女が神に使えるが如くこの家に尽くしてきました。 すべては家の為であり、夫の為であり、義母の為でありました。 愛する息子すら後継者として育てるからと産まれてすぐにとりあげられてしまいました。 「でも、もう変わらなくてはね」 この事を知ったからにはもう何も我慢するつもりはありません。 だって。私には願いがあるのだから。 ✻基本ゆるふわ設定です。 気を付けていますが、誤字脱字などがある為、あとからこっそり修正することがあります。 ✻1/19、タグを2つ追加しました ✻1/27、短編から長編に変更しました ✻2/2、タグを変更しました

処理中です...