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【テイラー】一矢
「違います!ディオエル様、本当に事故なんです」
「一矢報いたのが、証拠だ」
「一矢?え?どういうことですか…」
イオリクにだけは、ディオエルの言葉の意味が分からなかった。
だが、テイラーは血を抵抗、もしくは対抗するために塗り付けたのだろう。もしかしたら、目は毒が効果的な部位なのかもしれないとすら考えた。
「お前が彼女を害したことがよく分かった」
「え…ですから、違うのです。他に人もいなかったので、証明は出来ませんが、本当なのです」
イオリクは誰も見ていないのだから、テイラーが別の発言をしても、どちらが正しいと証明は出来ないと考えていた。
「私がディオエル様の大切な番に、危害を加えるはずがないではありませんか。竜帝国にとっても大事な方なのですから」
それらしいことを言って、信じてもらおうとディオエルに訴え掛けた。
イオリク以外は何もしていない、不愉快な思いをしていないと言うのなら、テイラーが血を塗り付けるような真似をするはずがないことを見抜いていた。
だが、イオリクはレッドブラウンの瞳の血について、何も知らないことから、テイラーにとってどれだけの意味があったのか分かっていない。
イオリクは自分で何もしていないことが、嘘であることを証明したのである。
その瞬間、竜帝国に戻ったら、イオリクへ自白剤を使うことが決まった。
「お前は保身ばかりだな、私のためだと言いながら、結局は何がしたいのだ?皇帝にでもなりたいのか?」
「そんなはずないではありませんか、皇帝陛下はディオエル様以外おりません」
「大事な番だと言いながら、アイルーンにもテイラーにも、なぜ辛く当たる?」
「それはディオエル様に敬意を払うべきだと思ってのことで、言い方は良くなかったかもしれませんが、これからのことを思ってのことです」
その言葉に、ディオエルは鼻で笑った。
「お前の言っていることは滅茶苦茶だな、私には理解が出来ない」
テイラーと同じことを言われて、イオリクは何とも言えない気持ちになったが、ディオエルに否定されることは耐えられない。
「そのようなことはありません、ディオエル様が少しでも皇帝陛下でいらっしゃることが、竜帝国のためなのです」
「はあ…お前は嘘を言っていないのだな?」
「はい、嘘など申しておりません」
「ならば、竜帝国に戻り次第、自白剤を使う」
「…え」
「嘘は言っていないのだから、問題ないな?」
ライシードもそのつもりだろうと分かっており、テイラーの状況が分かってからにはなるが、戻り次第準備を行うつもりであった。
「私に自白剤など…」
「お前には何度使おうと思ったか分からない。本当にローズミーに関わっていなかったのか、疑っている部分もある」
「関わってなどおりません」
「何かのきっかけで、唆すようなことがあったのではないか。お前が辛く当たった影響があったのではないか」
ディオエルは、ずっと気になっていた。これで自白剤を使ってハッキリする。オイワード公爵家も、拒否することは出来ない。
「そのようなことはありません」
「だから、自白剤なんだ。戻り次第、受けて貰う。逃げることは許さない。これは皇帝としての決定だ」
「そんな…」
さすがにイオリクも焦った。自白剤を使えば、嘘であることは分かってしまう。今ここで話しておいた方がいいのか、それとも回避出来る方法はないか、頭をフル回転させていた。
「皇帝陛下、シュアリアでございます」
そこへシュアリアがやって来た。ディオエルはすぐさまに立ち上がり、招き入れるのではなく、自らが出て行った。
ライシードと護衛たちはテイラーについての話だと思い、心配そうに扉を見つめていたが、イオリクは右目をパチパチさせながら、状況が分かっておらず、腫れ上がった顔をキョロキョロさせていた。
「一矢報いたのが、証拠だ」
「一矢?え?どういうことですか…」
イオリクにだけは、ディオエルの言葉の意味が分からなかった。
だが、テイラーは血を抵抗、もしくは対抗するために塗り付けたのだろう。もしかしたら、目は毒が効果的な部位なのかもしれないとすら考えた。
「お前が彼女を害したことがよく分かった」
「え…ですから、違うのです。他に人もいなかったので、証明は出来ませんが、本当なのです」
イオリクは誰も見ていないのだから、テイラーが別の発言をしても、どちらが正しいと証明は出来ないと考えていた。
「私がディオエル様の大切な番に、危害を加えるはずがないではありませんか。竜帝国にとっても大事な方なのですから」
それらしいことを言って、信じてもらおうとディオエルに訴え掛けた。
イオリク以外は何もしていない、不愉快な思いをしていないと言うのなら、テイラーが血を塗り付けるような真似をするはずがないことを見抜いていた。
だが、イオリクはレッドブラウンの瞳の血について、何も知らないことから、テイラーにとってどれだけの意味があったのか分かっていない。
イオリクは自分で何もしていないことが、嘘であることを証明したのである。
その瞬間、竜帝国に戻ったら、イオリクへ自白剤を使うことが決まった。
「お前は保身ばかりだな、私のためだと言いながら、結局は何がしたいのだ?皇帝にでもなりたいのか?」
「そんなはずないではありませんか、皇帝陛下はディオエル様以外おりません」
「大事な番だと言いながら、アイルーンにもテイラーにも、なぜ辛く当たる?」
「それはディオエル様に敬意を払うべきだと思ってのことで、言い方は良くなかったかもしれませんが、これからのことを思ってのことです」
その言葉に、ディオエルは鼻で笑った。
「お前の言っていることは滅茶苦茶だな、私には理解が出来ない」
テイラーと同じことを言われて、イオリクは何とも言えない気持ちになったが、ディオエルに否定されることは耐えられない。
「そのようなことはありません、ディオエル様が少しでも皇帝陛下でいらっしゃることが、竜帝国のためなのです」
「はあ…お前は嘘を言っていないのだな?」
「はい、嘘など申しておりません」
「ならば、竜帝国に戻り次第、自白剤を使う」
「…え」
「嘘は言っていないのだから、問題ないな?」
ライシードもそのつもりだろうと分かっており、テイラーの状況が分かってからにはなるが、戻り次第準備を行うつもりであった。
「私に自白剤など…」
「お前には何度使おうと思ったか分からない。本当にローズミーに関わっていなかったのか、疑っている部分もある」
「関わってなどおりません」
「何かのきっかけで、唆すようなことがあったのではないか。お前が辛く当たった影響があったのではないか」
ディオエルは、ずっと気になっていた。これで自白剤を使ってハッキリする。オイワード公爵家も、拒否することは出来ない。
「そのようなことはありません」
「だから、自白剤なんだ。戻り次第、受けて貰う。逃げることは許さない。これは皇帝としての決定だ」
「そんな…」
さすがにイオリクも焦った。自白剤を使えば、嘘であることは分かってしまう。今ここで話しておいた方がいいのか、それとも回避出来る方法はないか、頭をフル回転させていた。
「皇帝陛下、シュアリアでございます」
そこへシュアリアがやって来た。ディオエルはすぐさまに立ち上がり、招き入れるのではなく、自らが出て行った。
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