【完結】愛しくない、あなた

野村にれ

文字の大きさ
162 / 344

【テイラー】発言

「どうやら、ナナリー夫人が申しておりましたが、後継者として妹の方に問題があるようで、これはデリア侯爵も関係がありますが、もし何かあるなら容赦なく貴族として、ご判断してくださいとのことです」
「分かったわ」

 自分のことで、エイク子爵家への温情は要らないということを伝えたいのだろうと、シュアリアは正しく理解した。

「そして、今回の件について、私にもしものことがあれば、ただの平民女性として裁いてくださいとのことです。竜帝国への要望でもありますが、我が国へも、同じように希望していると判断していいと思います」
「でも、そうなったら……」

 裁くにしても、テイラーには不本意だろうが、ディオエルの番であることは、批判を受ける可能性もあるために伏せるにしても、デリア侯爵令嬢とするか、平民としてとは思っていなかった。

「重い罪にはならないかもしれないことは、分かっていての希望です。ですが、テイラー嬢は今度は正しく裁いてください。それが私からの希望ですと、申しました」
「そういうことね……」

 アイルーンは、生きていた時は妃として扱われていないのに、亡くなってから妃として扱われたために、正確には正しく裁かれなかった。

 だから、イオリクが重い罪にならなくとも、ありのままの自分のまま裁かれたいのだろう。

 エイク子爵家のことを言い、彼女はありのままの正しさを求めている。

 だが、立場というのは罪の重さに間違いなく影響する。だが、テイラーの願いであり、ディオエルもデリア侯爵も叶えようとするだろう。

 シュアリアは重い罰を与えて欲しいと、複雑な気持ちを抱えた。

「どうなるかは分からないけど、意志は聞き届けました」
「はい、よろしくお願いいたします。私は騎士たちに指示を出していたホテルの方の聞き取りがどうなっているか、確認して参ります」
「ええ、そうね。お願い」

 そろそろ戻っているのではないかと、エレサーレは騎士たちに確認に向かった。

 そして、シュアリアはディオエルへ問い掛けた。

「いかがでしょうか?」
「これは自分のことではない。イオリクのことしか書かれていない」
「はい……」

 シュアリアも同じことを言ったが、ホテルを教えたのもあなたでしょう?と問い詰めたが、書く必要がないというために、ならば皇帝陛下に判断して貰いましょうと、書類を奪って来たのである。

 ―ギリシスの書いた文は、自分の発言は書かれていないものであった。

 ―必ず妃にさせます。ディオエル様の子ども、次代を産んで貰わなければなりませんから。

 ―竜帝国を敵に回すこと絶対に起こりません。

 ―エイク子爵に圧力を掛けましょう。

 ―国王陛下から、打診していただくことは出来ますか。

 ―上記のように言われ、私は指示に従っただけです。ディオエル皇帝陛下もご存知だと思っておりましたと書かれていた。

「反省することもできないのか」
「その通りにございます」

 叱られる、自分に不利になるという小心者は、正直に話すこともできない。

「今、王太子がホテル側に聞き取りをした騎士たちが、どういう状況か聞きに行っておりますので」
「そうか」
「先に、ギリシスに話をするために向かいましょうか」
「そうだな」

 エレサーレには話をまとめてから、何か証言が取れれば、照らし合わせればいい。

「まだ全てを信じたわけではありませんが、宰相は関わっておらず、考えを改めた様子です。この書類も宰相が見張り、書くように言ったようです。それで、これということにはなりますが……」

 マフスがきちんと書いてくださいといくら言っても、書いたのはイオリクが言ったであろうことだけであった。入れ知恵や嘘かもしれないが、マフスは嘘を付いているようには見えなかった。

「……そうか」
「申し訳ございません」

あなたにおすすめの小説

【今さら遅い】毒で声を失い公爵に捨てられた私。妹では精霊が応えず国は滅びへ。ですが隣国皇帝に溺愛される私に、今さら縋ってきても遅いです

唯崎りいち
恋愛
国一番の歌姫だった私は、妹に毒を盛られ声を失い、婚約者に捨てられた。 すべてを奪われた私を救ったのは、隣国の皇帝。 「お前の歌がなければ国は滅びる」と言われた私の歌は、精霊に届く“本物”の力を持っていて―― 一方、私を追放した国は偽物の歌では加護を失い衰退。 今さら元婚約者が縋ってきても、もう遅い。

世継ぎは他の妃が産めばいい——子を産めない私ですが、帝の寵愛を独占して皇后になりました

由香
恋愛
後宮に入る女の価値は、ただ一つ。 ——皇子を産めるかどうか。 けれど私は、産めない。 ならば—— 「世継ぎは他の妃に任せます。私は、陛下に愛される女になります」 そう言い放ったその日から、すべてが狂い始めた。 毒を盛られても、捨てられず。 皇子が生まれても、選ばれたのは私だった。 「お前は、ここにいろ」 これは、子を産めない女が ただ一つの武器“寵愛”だけで頂点に立つ物語。 そして—— その寵愛は、やがて狂気に変わる。

「離縁状の印が乾く前に、王太子殿下から花束が届きました」〜五年間「置物」と呼ばれた侯爵夫人、夫が青ざめるのは王家との縁が切れてからでした〜

まさき
恋愛
侯爵夫人として過ごした五年間、夫に名前を呼ばれたことが一度もなかった。 愛人を夜会に連れてきた翌朝、私は離縁状を置いて屋敷を出た。 夫は「すぐ戻る」と思っていたらしい。 でも届いたのは、王太子殿下からの白薔薇だった。 「五年、待ちすぎました。今度こそ私の隣に」 幼馴染の殿下は、いつも私を「アメリア」と呼んでくれた。 ただそれだけで、五年分の何かが、ほどけていった。 夫が全てを失うのはこれからの話。 私が本当の笑顔を取り戻すのも、これからの話。

逃した番は他国に嫁ぐ

基本二度寝
恋愛
「番が現れたら、婚約を解消してほしい」 婚約者との茶会。 和やかな会話が落ち着いた所で、改まって座を正した王太子ヴェロージオは婚約者の公爵令嬢グリシアにそう願った。 獣人の血が交じるこの国で、番というものの存在の大きさは誰しも理解している。 だから、グリシアも頷いた。 「はい。わかりました。お互いどちらかが番と出会えたら円満に婚約解消をしましょう!」 グリシアに答えに満足したはずなのだが、ヴェロージオの心に沸き上がる感情。 こちらの希望を受け入れられたはずのに…、何故か、もやっとした気持ちになった。

大人しい令嬢は怒りません。ただ二年間、準備していただけです。――婚約解消の申請が受理されましたので、失礼いたします

柴田はつみ
恋愛
婚約者に、誕生日を忘れられた。 正確には、忘れられたわけではない。 エドワード・ヴァルト公爵はちゃんと覚えていた。 記念のディナーも、予約していた。 薔薇だって、一輪、用意していた。 ただ――幼馴染のクロエ・アンセル伯爵令嬢から使いが来た瞬間、全部置いて行ってしまっただけだ。 「すぐ戻る」 彼が戻ったのは、三時間後だった。 蝋燭は溶け切り、料理は冷え、ワインは乾いていた。 それでもリーゼロッテ・フォン・アルテンベルクは、笑顔で座って待っていた。 「ええ、大丈夫でございます。お気遣いなく」 完璧な微笑みで、完璧にそう言った。

旦那様。私が悪女ならば、愛人の女は何になるのかしら?

白雲八鈴
恋愛
 我が公爵家主催の夜会の最中。夫が愛人を連れてやってきたのです。そして、私を悪女という理由で離縁を突きつけてきました。  離縁して欲しいというのであれば、今まで支援してきた金額を全額返済していただけません?  あら?愛人の貴女が支払ってくれると?お優しいわね。  私が悪女というのであれば、妻のいる夫の愛人に収まっている貴女は何なのかしら?

忌むべき番

藍田ひびき
恋愛
「メルヴィ・ハハリ。お前との婚姻は無効とし、国外追放に処す。その忌まわしい姿を、二度と俺に見せるな」 メルヴィはザブァヒワ皇国の皇太子ヴァルラムの番だと告げられ、強引に彼の後宮へ入れられた。しかしヴァルラムは他の妃のもとへ通うばかり。さらに、真の番が見つかったからとメルヴィへ追放を言い渡す。 彼は知らなかった。それこそがメルヴィの望みだということを――。 ※ 8/4 誤字修正しました。 ※ なろうにも投稿しています。

私の手からこぼれ落ちるもの

アズやっこ
恋愛
5歳の時、お父様が亡くなった。 優しくて私やお母様を愛してくれたお父様。私達は仲の良い家族だった。 でもそれは偽りだった。 お父様の書斎にあった手記を見た時、お父様の優しさも愛も、それはただの罪滅ぼしだった。 お父様が亡くなり侯爵家は叔父様に奪われた。侯爵家を追い出されたお母様は心を病んだ。 心を病んだお母様を助けたのは私ではなかった。 私の手からこぼれていくもの、そして最後は私もこぼれていく。 こぼれた私を救ってくれる人はいるのかしら… ❈ 作者独自の世界観です。 ❈ 作者独自の設定です。 ❈ ざまぁはありません。