【完結】愛しくない、あなた

野村にれ

文字の大きさ
175 / 344

【テイラー】責任

 マフスが開いた要望書にはイオリクに自白剤を使用し、全てを明らかにした後、協力をした責任を問わせてもらうとあった。

「私は間違えたのか……どうすれば良かったんだ?妃になってもらえば、喜ばれただろう?そうすれば、竜帝国とミリオン王国は再び、密な関係になれると思ってはいけなかったのか……」
「悪くなったわけではありませんでしたでしょう」

 アイルーンが生きていた頃も、亡くなってからも、竜帝国とミリオン王国の関係性が変わったわけではない。確かに子どもが生まれていたら、もっと密になっていたかもしれないが、悪くなったわけではない。

「だが」
「国のためと思われたのでしょうけど」
「そうだ!私欲のために行ったわけではない」

 ギリシスの時代にミリオン王国から竜帝国の正妃、次代の母を出すことは尊敬や羨望されることもあったが、竜帝国と密な関係になれば、ミリオン王国はますます安泰になると思ってのことであった。

 アイルーンの事件でも、追加で賠償金を求めることもしなかった。

「ですが、結果が全てなのです。陛下が止めていたら、せめて誰かに伝えていたら、こんなことにはならなかったかもしれない。それだけは変わらないのです……」
「それは……私はどうなるんだ」
「あちらがどう責任を問われるかです」
「拒否することなどできないではないか……」

 竜帝国がギリシスを形式上、裁くわけではない。だが、拒否できることではない。それこそ、関係性が悪くなってしまう。

「ですから、責任を持ってくださいと申したではありませんか。陛下は国王なのです、責任は重いのですから」
「……あ」

 そう言うと、糸が切れたように椅子に深く座り込んだ。

 ディオエルたちは隣の部屋で、早々にギリシスへの判断を下していた。

 いくらでもやりようがあったのに、こんなことになっても、まだ押し進めようとしたのだから当然だろう。

 ライシードはテイラーが大丈夫だと言われるまで、ディオエルはミリオン王国から帰ることはないと判断はしていたが、イオリクをこのままにしておいても、仕方がないと思っていた。

「イオリクを先に帰しますか?」
「そうだな」
「既に内々に連絡をしてありますので、騎士団に自白剤を使って、全てを話してもらうことも可能です」

 イオリクが起こした事件は、アイルーンの事件を担当した信頼のおける者たちに知らせて、すぐにでも対応できるように待ち構えてもらっている。

「だが、私がいなければ文句を言うのではないか?」
「言わせませんよ」
「そうか」
「迎えを来させて、引き取らせます」
「そうだな、そうしてくれ」

 ライシードは考えていたことであったために、既に近くまで来ている。

 そして、数時間後にはイオリクを迎えに来た。

 ライシードが牢に迎えに行くと、大人しくはしていたが、ライシードを見るなり、誤解なんだ、私は良いことをしたと掴み掛った。

「反省もしていないのですか?」
「だから事故だと言っているだろう!誰も見ていないのだから、証明しようもないだけだろう!」

 イオリクはテイラーが一度目覚めたことを知る由もないために、加害者がディオエルの前で証言しているとは思っていない。

「だったら、なぜ彼女の心配をしないのですか!」
「心配している!」
「それはディオエル様の番だからとでも思っているのでしょう?」
「当然ではないか」
「はあ……いい加減にしろ!」

 ある意味、イオリクにとっては彼女が目覚めない方が都合がいいとでも思っているのだろう。

 だが、イオリクもライシードの怒号に、さすがにビクリとして黙った。

「竜帝国に帰ることになりました。向こうで取り調べをしますから、覚悟しておいてください」
「……分かった」

 イオリクはホッとしたような顔をしていた。竜帝国に戻れば、どうにかなると思っているのだろうが、そうはさせない。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

本日もお読みいただきありがとうございます。

本日は1日2話、投稿させていただきます。
いつもの17時に、もう1話投稿します。

どうぞよろしくお願いいたします。

あなたにおすすめの小説

【今さら遅い】毒で声を失い公爵に捨てられた私。妹では精霊が応えず国は滅びへ。ですが隣国皇帝に溺愛される私に、今さら縋ってきても遅いです

唯崎りいち
恋愛
国一番の歌姫だった私は、妹に毒を盛られ声を失い、婚約者に捨てられた。 すべてを奪われた私を救ったのは、隣国の皇帝。 「お前の歌がなければ国は滅びる」と言われた私の歌は、精霊に届く“本物”の力を持っていて―― 一方、私を追放した国は偽物の歌では加護を失い衰退。 今さら元婚約者が縋ってきても、もう遅い。

世継ぎは他の妃が産めばいい——子を産めない私ですが、帝の寵愛を独占して皇后になりました

由香
恋愛
後宮に入る女の価値は、ただ一つ。 ——皇子を産めるかどうか。 けれど私は、産めない。 ならば—— 「世継ぎは他の妃に任せます。私は、陛下に愛される女になります」 そう言い放ったその日から、すべてが狂い始めた。 毒を盛られても、捨てられず。 皇子が生まれても、選ばれたのは私だった。 「お前は、ここにいろ」 これは、子を産めない女が ただ一つの武器“寵愛”だけで頂点に立つ物語。 そして—— その寵愛は、やがて狂気に変わる。

「離縁状の印が乾く前に、王太子殿下から花束が届きました」〜五年間「置物」と呼ばれた侯爵夫人、夫が青ざめるのは王家との縁が切れてからでした〜

まさき
恋愛
侯爵夫人として過ごした五年間、夫に名前を呼ばれたことが一度もなかった。 愛人を夜会に連れてきた翌朝、私は離縁状を置いて屋敷を出た。 夫は「すぐ戻る」と思っていたらしい。 でも届いたのは、王太子殿下からの白薔薇だった。 「五年、待ちすぎました。今度こそ私の隣に」 幼馴染の殿下は、いつも私を「アメリア」と呼んでくれた。 ただそれだけで、五年分の何かが、ほどけていった。 夫が全てを失うのはこれからの話。 私が本当の笑顔を取り戻すのも、これからの話。

逃した番は他国に嫁ぐ

基本二度寝
恋愛
「番が現れたら、婚約を解消してほしい」 婚約者との茶会。 和やかな会話が落ち着いた所で、改まって座を正した王太子ヴェロージオは婚約者の公爵令嬢グリシアにそう願った。 獣人の血が交じるこの国で、番というものの存在の大きさは誰しも理解している。 だから、グリシアも頷いた。 「はい。わかりました。お互いどちらかが番と出会えたら円満に婚約解消をしましょう!」 グリシアに答えに満足したはずなのだが、ヴェロージオの心に沸き上がる感情。 こちらの希望を受け入れられたはずのに…、何故か、もやっとした気持ちになった。

大人しい令嬢は怒りません。ただ二年間、準備していただけです。――婚約解消の申請が受理されましたので、失礼いたします

柴田はつみ
恋愛
婚約者に、誕生日を忘れられた。 正確には、忘れられたわけではない。 エドワード・ヴァルト公爵はちゃんと覚えていた。 記念のディナーも、予約していた。 薔薇だって、一輪、用意していた。 ただ――幼馴染のクロエ・アンセル伯爵令嬢から使いが来た瞬間、全部置いて行ってしまっただけだ。 「すぐ戻る」 彼が戻ったのは、三時間後だった。 蝋燭は溶け切り、料理は冷え、ワインは乾いていた。 それでもリーゼロッテ・フォン・アルテンベルクは、笑顔で座って待っていた。 「ええ、大丈夫でございます。お気遣いなく」 完璧な微笑みで、完璧にそう言った。

旦那様。私が悪女ならば、愛人の女は何になるのかしら?

白雲八鈴
恋愛
 我が公爵家主催の夜会の最中。夫が愛人を連れてやってきたのです。そして、私を悪女という理由で離縁を突きつけてきました。  離縁して欲しいというのであれば、今まで支援してきた金額を全額返済していただけません?  あら?愛人の貴女が支払ってくれると?お優しいわね。  私が悪女というのであれば、妻のいる夫の愛人に収まっている貴女は何なのかしら?

忌むべき番

藍田ひびき
恋愛
「メルヴィ・ハハリ。お前との婚姻は無効とし、国外追放に処す。その忌まわしい姿を、二度と俺に見せるな」 メルヴィはザブァヒワ皇国の皇太子ヴァルラムの番だと告げられ、強引に彼の後宮へ入れられた。しかしヴァルラムは他の妃のもとへ通うばかり。さらに、真の番が見つかったからとメルヴィへ追放を言い渡す。 彼は知らなかった。それこそがメルヴィの望みだということを――。 ※ 8/4 誤字修正しました。 ※ なろうにも投稿しています。

私の手からこぼれ落ちるもの

アズやっこ
恋愛
5歳の時、お父様が亡くなった。 優しくて私やお母様を愛してくれたお父様。私達は仲の良い家族だった。 でもそれは偽りだった。 お父様の書斎にあった手記を見た時、お父様の優しさも愛も、それはただの罪滅ぼしだった。 お父様が亡くなり侯爵家は叔父様に奪われた。侯爵家を追い出されたお母様は心を病んだ。 心を病んだお母様を助けたのは私ではなかった。 私の手からこぼれていくもの、そして最後は私もこぼれていく。 こぼれた私を救ってくれる人はいるのかしら… ❈ 作者独自の世界観です。 ❈ 作者独自の設定です。 ❈ ざまぁはありません。