【完結】愛しくない、あなた

野村にれ

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【テイラー】強制送還

 竜帝国の屈強な騎士たちにボコボコに殴られた跡のままのイオリクは、強制送還されることになった。

 イオリクは血は拭ったが、治療すらして貰っていない状態であったが、そのことを誰も指摘することもなく、心配することもなかった。

 とりあえずではあるが、ディオエル相手で、この程度で済まされて、良かったではないかくらいであった。

 そして、ライシードはイオリクを絶対に殺さないこと。必要があれば、ディオエルが手を下すということを、周知させていた。

 だが、馬車に乗せられたイオリクが周りをキョロキョロとさせた。

「えっ、ディオエル様は戻られないのですか」

 イオリクは皆で戻るのだと思っており、いつまで経ってもディオエルが現れることはなく、冷めた目で見送るライシードに焦り始めた。

「私たちはあなたのせいで、テイラー嬢が心配でこちらで待っているのです!」
「竜帝国で待てばいいではありませんか」

 自分が残れないことが不満のようで、訳の分からないことを言い出した。

 テイラーが危険な状態なのに、すぐに駆け付けられない竜帝国に戻るはずがないだろう。

 本当ならデリア侯爵邸に留まらせてもらいたい気持ちを、そんな資格はないと、王宮で心配で心配でたまらない気持ちを抑えているのに、何も分かっていないイオリクに苛立ししかなかった。

「あなたのせいだと言っているでしょう!本当に自覚がないのですね!もう連れ帰ってください!」

 騎士団員たちも口には出さないが、イオリクを睨み付けており、イオリクは竜帝国へ戻っても、公爵邸に戻ることはない。

「え」
「あと、こちらをお願いします」

 ライシードは騎士団員に、ディオエルからのイオリクへの自白剤の強制使用の命令する書類を渡し、騎士団員も強く頷いた。今回は許可など必要ない、ディオエルは強制使用とした。

 ギリシスが何を言ったかも、イオリクの口から分かることになる。

 シュアリアとエレサーレが竜帝国、いやテイラー側にいるために、ギリシスもイオリクに何かするとは思えないが、万が一のことも考えて、イオリクをミリオン王国へ留まらせて置きたくもなかった。

 当然だが、イオリクのオイワード公爵家にも、ディオエルから知らせてある。

 ライシードはイオリクを見送り、ディオエルの元へ戻った。結局、イオリクとギリシスは密談の後、何も話すこともなく、引き離すことに成功した。

「帰したか」
「はい、ディオエル様も帰ると思っていたようで、竜帝国に戻って、待てばいいなどと発言しておりました」

 その言葉に、ディオエルの纏う空気は再び冷たくなった。

「オイワード公爵にも忠告しておいたから、大丈夫だろう」
「そうですね、公爵はさすがに事態を重く受け止めているはずです」

 オイワード公爵は番に関して似たような考えを持っているが、テイラーを害したことには真っ当に責任を感じるだろう。

 ミリオン王国を去ったことで、ディオエルが逃がしてくれたように思うのではないかと考えてもいたが、そうとは捉えてはいないようであった。

 さすがにそこまで来るってはいなかったかと、そんなことを考えた自分の脳もおかしくなった気分であった。

 イオリクのことは竜帝国に任せたこと、ギリシスも責任を問われることが分かった今、テイラーのことを考えることに集中できるようになったが、同時に何もできないことに、憤りを感じるばかりだった。

 テイラーは目覚めることもなく、シュアリアが派遣した医師も交代で、騎士も定期的に連絡に戻っているが、焦って来るよりは良かったが、深刻なままであった。

 だが、交代の時間よりも早く戻って来た騎士は、扉を叩く音が慌てていた。急ぎの際は礼儀は気にしなくていいと言ってあった。

 シュアリアの頭には最悪の事態が想定され、身に力が入った。

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