【完結】愛しくない、あなた

野村にれ

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【テイラー】手紙(デリア侯爵)1

「当然でしょう!誠意を見せずにいつ見せるのですか?」
「だったら、私も」
「あなたは加害者なんですよ!デリア侯爵の前で、ご家族の前で、この度はご愁傷様でしたって言えるの?」
「それは……」
「あなたはどう責任を取るか、皇帝陛下に言われる前に考えておいてください」

 それだけ言うと、シュアリアとエレサーレは顔も見たくないと思い、部屋を出た。

 マフスは助かって欲しいと願っていたが、最悪の展開になった。

 シュアリアが言ったように、竜帝国から責任を問われる前に、ギリシスの進退を考えなくてはならない。それがギリシスの誠意である。

 デリア侯爵邸でも、ルーベンスが大切に何度も手紙の文字を撫でた後、ようやく開くことにした。


 ―デリア侯爵

 私に何かあった時にのために、気持ちを残させてください。

 私は今、どのような状況でしょうか。

 お言葉に甘えて、頼らせていただくことをお許しください。

 犯罪に巻き込まれた、犯罪を犯した、ミリオン王国からいなくなって行方不明など、私の身に何かあった場合は、如何なる場合でも、ありのままの平民のテイラーとして扱ってください。

 私は生まれてから、ずっと違和感がありました。そして、物心つく頃にはアイルーンの記憶を理解しました。

 ハッキリと気付いたのは、このレッドブラウンの瞳でした。

 それからは、殺されたアイルーンとお腹の子の使者のような気持ちでした。

 アイルーンの家族、デリア侯爵に話に行こうかと考えたこともありましたが、それは最後の手段にしようと思っていました。

 幸運と言っていいのかは分かりませんが、事件のことを暴くチャンスが巡って来ました。こんな日が来ることは決まっていたのかもしれません。

 事件のことが裁かれ、アイルーンの言えなかったことを伝えることができました。

 その後は、生まれてきた意味を成し遂げたような気分でした。

 だからと言って、テイラーの人生を歩むことが嫌だったわけではありません。家族とはうまくいきませんでしたが、ホテルの仕事も好きでした。

 ですが、アイルーンの皮を被ったテイラーのような気持ちはいつまで経っても抜けませんでした。

 どちらでもある、どちらでもないような、答えが出ないままです。

 お父様もお父様なのか、違うのか、曖昧な気持ちでした。

 だからこそ、アイルーンとテイラーの狭間で、距離感をきちんと考えなくてはならないと思っておりました。

 不愉快な気持ちにさせ、申し訳ございません。

 アイルーンの人生は理不尽で、恨みしか残らないものでした。ですが、テイラーとして生まれて、不幸だと感じていたわけではありません。

 あの子に恥じないように、生きていこうと思っています。

 私がどのような状況か分かりませんが、アイルーンの記憶のことも、ディオエル皇帝陛下の番であることも、必要があれば公にしてください。

 レッドブラウンの瞳のことは、デリア侯爵が判断されてください。

 エイク子爵家のことも、問題になるようなことがあれば、配慮などは希望しません。正しく判断してください。正直、ラオナには無理だと思います。

 こんなにも書き記しておいて、気持ちを書いただけで、全て叶えて欲しいということではありません。

 私は子爵家から籍を抜いた、ただの平民です。

 万が一にも再び理不尽な目に遭うことがあれば、アイルーンの時のように、何も言えないまま消えることだけはもうしたくなかったのです。

 恨みながら終えることは、二度としたくなかったのです。

 ですので、王妃陛下とデリア侯爵へ託させていただきます。

 出て行ったのであれば、探さないでください。必ず連絡します。

 ご迷惑をお掛けしますが、どうかよろしくお願いいたします

 デリア侯爵、デリア侯爵家の皆様のご健康とご多幸をお祈りいたします。

 ―テイラー


 読み終えると、懐かしい娘の字に、テイラーの思いに、涙が止まらなかった。


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本日もお読みいただきありがとうございます。

本日は1日2話、投稿させていただきます。
いつもの17時に、もう1話投稿します。

どうぞよろしくお願いいたします。

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