183 / 344
【テイラー】手紙(デリア侯爵)1
「当然でしょう!誠意を見せずにいつ見せるのですか?」
「だったら、私も」
「あなたは加害者なんですよ!デリア侯爵の前で、ご家族の前で、この度はご愁傷様でしたって言えるの?」
「それは……」
「あなたはどう責任を取るか、皇帝陛下に言われる前に考えておいてください」
それだけ言うと、シュアリアとエレサーレは顔も見たくないと思い、部屋を出た。
マフスは助かって欲しいと願っていたが、最悪の展開になった。
シュアリアが言ったように、竜帝国から責任を問われる前に、ギリシスの進退を考えなくてはならない。それがギリシスの誠意である。
デリア侯爵邸でも、ルーベンスが大切に何度も手紙の文字を撫でた後、ようやく開くことにした。
―デリア侯爵
私に何かあった時にのために、気持ちを残させてください。
私は今、どのような状況でしょうか。
お言葉に甘えて、頼らせていただくことをお許しください。
犯罪に巻き込まれた、犯罪を犯した、ミリオン王国からいなくなって行方不明など、私の身に何かあった場合は、如何なる場合でも、ありのままの平民のテイラーとして扱ってください。
私は生まれてから、ずっと違和感がありました。そして、物心つく頃にはアイルーンの記憶を理解しました。
ハッキリと気付いたのは、このレッドブラウンの瞳でした。
それからは、殺されたアイルーンとお腹の子の使者のような気持ちでした。
アイルーンの家族、デリア侯爵に話に行こうかと考えたこともありましたが、それは最後の手段にしようと思っていました。
幸運と言っていいのかは分かりませんが、事件のことを暴くチャンスが巡って来ました。こんな日が来ることは決まっていたのかもしれません。
事件のことが裁かれ、アイルーンの言えなかったことを伝えることができました。
その後は、生まれてきた意味を成し遂げたような気分でした。
だからと言って、テイラーの人生を歩むことが嫌だったわけではありません。家族とはうまくいきませんでしたが、ホテルの仕事も好きでした。
ですが、アイルーンの皮を被ったテイラーのような気持ちはいつまで経っても抜けませんでした。
どちらでもある、どちらでもないような、答えが出ないままです。
お父様もお父様なのか、違うのか、曖昧な気持ちでした。
だからこそ、アイルーンとテイラーの狭間で、距離感をきちんと考えなくてはならないと思っておりました。
不愉快な気持ちにさせ、申し訳ございません。
アイルーンの人生は理不尽で、恨みしか残らないものでした。ですが、テイラーとして生まれて、不幸だと感じていたわけではありません。
あの子に恥じないように、生きていこうと思っています。
私がどのような状況か分かりませんが、アイルーンの記憶のことも、ディオエル皇帝陛下の番であることも、必要があれば公にしてください。
レッドブラウンの瞳のことは、デリア侯爵が判断されてください。
エイク子爵家のことも、問題になるようなことがあれば、配慮などは希望しません。正しく判断してください。正直、ラオナには無理だと思います。
こんなにも書き記しておいて、気持ちを書いただけで、全て叶えて欲しいということではありません。
私は子爵家から籍を抜いた、ただの平民です。
万が一にも再び理不尽な目に遭うことがあれば、アイルーンの時のように、何も言えないまま消えることだけはもうしたくなかったのです。
恨みながら終えることは、二度としたくなかったのです。
ですので、王妃陛下とデリア侯爵へ託させていただきます。
出て行ったのであれば、探さないでください。必ず連絡します。
ご迷惑をお掛けしますが、どうかよろしくお願いいたします
デリア侯爵、デリア侯爵家の皆様のご健康とご多幸をお祈りいたします。
―テイラー
読み終えると、懐かしい娘の字に、テイラーの思いに、涙が止まらなかった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
本日もお読みいただきありがとうございます。
本日は1日2話、投稿させていただきます。
いつもの17時に、もう1話投稿します。
どうぞよろしくお願いいたします。
「だったら、私も」
「あなたは加害者なんですよ!デリア侯爵の前で、ご家族の前で、この度はご愁傷様でしたって言えるの?」
「それは……」
「あなたはどう責任を取るか、皇帝陛下に言われる前に考えておいてください」
それだけ言うと、シュアリアとエレサーレは顔も見たくないと思い、部屋を出た。
マフスは助かって欲しいと願っていたが、最悪の展開になった。
シュアリアが言ったように、竜帝国から責任を問われる前に、ギリシスの進退を考えなくてはならない。それがギリシスの誠意である。
デリア侯爵邸でも、ルーベンスが大切に何度も手紙の文字を撫でた後、ようやく開くことにした。
―デリア侯爵
私に何かあった時にのために、気持ちを残させてください。
私は今、どのような状況でしょうか。
お言葉に甘えて、頼らせていただくことをお許しください。
犯罪に巻き込まれた、犯罪を犯した、ミリオン王国からいなくなって行方不明など、私の身に何かあった場合は、如何なる場合でも、ありのままの平民のテイラーとして扱ってください。
私は生まれてから、ずっと違和感がありました。そして、物心つく頃にはアイルーンの記憶を理解しました。
ハッキリと気付いたのは、このレッドブラウンの瞳でした。
それからは、殺されたアイルーンとお腹の子の使者のような気持ちでした。
アイルーンの家族、デリア侯爵に話に行こうかと考えたこともありましたが、それは最後の手段にしようと思っていました。
幸運と言っていいのかは分かりませんが、事件のことを暴くチャンスが巡って来ました。こんな日が来ることは決まっていたのかもしれません。
事件のことが裁かれ、アイルーンの言えなかったことを伝えることができました。
その後は、生まれてきた意味を成し遂げたような気分でした。
だからと言って、テイラーの人生を歩むことが嫌だったわけではありません。家族とはうまくいきませんでしたが、ホテルの仕事も好きでした。
ですが、アイルーンの皮を被ったテイラーのような気持ちはいつまで経っても抜けませんでした。
どちらでもある、どちらでもないような、答えが出ないままです。
お父様もお父様なのか、違うのか、曖昧な気持ちでした。
だからこそ、アイルーンとテイラーの狭間で、距離感をきちんと考えなくてはならないと思っておりました。
不愉快な気持ちにさせ、申し訳ございません。
アイルーンの人生は理不尽で、恨みしか残らないものでした。ですが、テイラーとして生まれて、不幸だと感じていたわけではありません。
あの子に恥じないように、生きていこうと思っています。
私がどのような状況か分かりませんが、アイルーンの記憶のことも、ディオエル皇帝陛下の番であることも、必要があれば公にしてください。
レッドブラウンの瞳のことは、デリア侯爵が判断されてください。
エイク子爵家のことも、問題になるようなことがあれば、配慮などは希望しません。正しく判断してください。正直、ラオナには無理だと思います。
こんなにも書き記しておいて、気持ちを書いただけで、全て叶えて欲しいということではありません。
私は子爵家から籍を抜いた、ただの平民です。
万が一にも再び理不尽な目に遭うことがあれば、アイルーンの時のように、何も言えないまま消えることだけはもうしたくなかったのです。
恨みながら終えることは、二度としたくなかったのです。
ですので、王妃陛下とデリア侯爵へ託させていただきます。
出て行ったのであれば、探さないでください。必ず連絡します。
ご迷惑をお掛けしますが、どうかよろしくお願いいたします
デリア侯爵、デリア侯爵家の皆様のご健康とご多幸をお祈りいたします。
―テイラー
読み終えると、懐かしい娘の字に、テイラーの思いに、涙が止まらなかった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
本日もお読みいただきありがとうございます。
本日は1日2話、投稿させていただきます。
いつもの17時に、もう1話投稿します。
どうぞよろしくお願いいたします。
あなたにおすすめの小説
【今さら遅い】毒で声を失い公爵に捨てられた私。妹では精霊が応えず国は滅びへ。ですが隣国皇帝に溺愛される私に、今さら縋ってきても遅いです
唯崎りいち
恋愛
国一番の歌姫だった私は、妹に毒を盛られ声を失い、婚約者に捨てられた。
すべてを奪われた私を救ったのは、隣国の皇帝。
「お前の歌がなければ国は滅びる」と言われた私の歌は、精霊に届く“本物”の力を持っていて――
一方、私を追放した国は偽物の歌では加護を失い衰退。
今さら元婚約者が縋ってきても、もう遅い。
世継ぎは他の妃が産めばいい——子を産めない私ですが、帝の寵愛を独占して皇后になりました
由香
恋愛
後宮に入る女の価値は、ただ一つ。
——皇子を産めるかどうか。
けれど私は、産めない。
ならば——
「世継ぎは他の妃に任せます。私は、陛下に愛される女になります」
そう言い放ったその日から、すべてが狂い始めた。
毒を盛られても、捨てられず。
皇子が生まれても、選ばれたのは私だった。
「お前は、ここにいろ」
これは、子を産めない女が
ただ一つの武器“寵愛”だけで頂点に立つ物語。
そして——
その寵愛は、やがて狂気に変わる。
「離縁状の印が乾く前に、王太子殿下から花束が届きました」〜五年間「置物」と呼ばれた侯爵夫人、夫が青ざめるのは王家との縁が切れてからでした〜
まさき
恋愛
侯爵夫人として過ごした五年間、夫に名前を呼ばれたことが一度もなかった。
愛人を夜会に連れてきた翌朝、私は離縁状を置いて屋敷を出た。
夫は「すぐ戻る」と思っていたらしい。
でも届いたのは、王太子殿下からの白薔薇だった。
「五年、待ちすぎました。今度こそ私の隣に」
幼馴染の殿下は、いつも私を「アメリア」と呼んでくれた。
ただそれだけで、五年分の何かが、ほどけていった。
夫が全てを失うのはこれからの話。
私が本当の笑顔を取り戻すのも、これからの話。
逃した番は他国に嫁ぐ
基本二度寝
恋愛
「番が現れたら、婚約を解消してほしい」
婚約者との茶会。
和やかな会話が落ち着いた所で、改まって座を正した王太子ヴェロージオは婚約者の公爵令嬢グリシアにそう願った。
獣人の血が交じるこの国で、番というものの存在の大きさは誰しも理解している。
だから、グリシアも頷いた。
「はい。わかりました。お互いどちらかが番と出会えたら円満に婚約解消をしましょう!」
グリシアに答えに満足したはずなのだが、ヴェロージオの心に沸き上がる感情。
こちらの希望を受け入れられたはずのに…、何故か、もやっとした気持ちになった。
大人しい令嬢は怒りません。ただ二年間、準備していただけです。――婚約解消の申請が受理されましたので、失礼いたします
柴田はつみ
恋愛
婚約者に、誕生日を忘れられた。
正確には、忘れられたわけではない。
エドワード・ヴァルト公爵はちゃんと覚えていた。
記念のディナーも、予約していた。
薔薇だって、一輪、用意していた。
ただ――幼馴染のクロエ・アンセル伯爵令嬢から使いが来た瞬間、全部置いて行ってしまっただけだ。
「すぐ戻る」
彼が戻ったのは、三時間後だった。
蝋燭は溶け切り、料理は冷え、ワインは乾いていた。
それでもリーゼロッテ・フォン・アルテンベルクは、笑顔で座って待っていた。
「ええ、大丈夫でございます。お気遣いなく」
完璧な微笑みで、完璧にそう言った。
旦那様。私が悪女ならば、愛人の女は何になるのかしら?
白雲八鈴
恋愛
我が公爵家主催の夜会の最中。夫が愛人を連れてやってきたのです。そして、私を悪女という理由で離縁を突きつけてきました。
離縁して欲しいというのであれば、今まで支援してきた金額を全額返済していただけません?
あら?愛人の貴女が支払ってくれると?お優しいわね。
私が悪女というのであれば、妻のいる夫の愛人に収まっている貴女は何なのかしら?
忌むべき番
藍田ひびき
恋愛
「メルヴィ・ハハリ。お前との婚姻は無効とし、国外追放に処す。その忌まわしい姿を、二度と俺に見せるな」
メルヴィはザブァヒワ皇国の皇太子ヴァルラムの番だと告げられ、強引に彼の後宮へ入れられた。しかしヴァルラムは他の妃のもとへ通うばかり。さらに、真の番が見つかったからとメルヴィへ追放を言い渡す。
彼は知らなかった。それこそがメルヴィの望みだということを――。
※ 8/4 誤字修正しました。
※ なろうにも投稿しています。
私の手からこぼれ落ちるもの
アズやっこ
恋愛
5歳の時、お父様が亡くなった。
優しくて私やお母様を愛してくれたお父様。私達は仲の良い家族だった。
でもそれは偽りだった。
お父様の書斎にあった手記を見た時、お父様の優しさも愛も、それはただの罪滅ぼしだった。
お父様が亡くなり侯爵家は叔父様に奪われた。侯爵家を追い出されたお母様は心を病んだ。
心を病んだお母様を助けたのは私ではなかった。
私の手からこぼれていくもの、そして最後は私もこぼれていく。
こぼれた私を救ってくれる人はいるのかしら…
❈ 作者独自の世界観です。
❈ 作者独自の設定です。
❈ ざまぁはありません。