185 / 344
【テイラー】手紙(デリア侯爵)3
しおりを挟む
「はい、ですがテイラー嬢の要望もありますので、その点を踏まえて考えたいと思っております」
「そう、ですね」
当然、重罰に処して欲しいが、テイラーの意に反することはしたくない。もどかしい気持ちでいっぱいであった。
「テイラー嬢は番であることも、アイルーンの記憶のことも、必要なら明かしていいと書いている」
「本当、ですか」
ライシードはテイラーの素性を明かさずに、イオリクをどう追い込むか考えていた。だが、本人が明かしていいというのであれば、命は助かることになっても、終わりである。
「はい。彼女はこの手紙は自分が何らかの理由で、姿を消した場合と思って書いたのではないかと思います」
「そうでしたか……」
姿を消さなくてならない状況になり、何か問題になった際に、公にしたらいいと判断して、手紙を残していたのだと理解した。
番だと追い込まれる可能性、王命を出される可能性、テイラーが逃げるつもりだったことは容易に想像は付く。
そうはならなかったが、イオリクに害される予定でもなかった。
「竜帝国も、きちんと責任を取ります」
「テイラー嬢は、関係のない方に責任を取らせることは望まないでしょう」
「ですが」
「そう言っていたのを、ライシード様も聞いたでしょう」
テイラーはアイルーンに関しては絶対に許さないという気持ちと、関与していない者には上手く線引きするように話していた。
「それはそうですが」
「自分がされたように、理不尽に悲しみを生むことを望まない。そういうことではありませんか」
「はい、そうですね。申し訳ございません」
「いえ、私も自分の手で、最も惨い形で、殺してやりたいと思っている」
それはルーベンスが一番強い気持ちだったが、ベルサートもナナリーも同じ気持ちだった。
「ですが、被害者が望まないことを行うわけにはいきません。何のためにテイラー嬢が手紙を残したか分かりません」
「そうですね、こちらもそのように対応します」
危惧して手紙を残したのに、反故にしては意味がない。
もう二度と、テイラーの希望は聞けない。
そこへ使用人が慌てた様子で、やって来た。
「侯爵様!王妃陛下から、ご葬儀について知らせて欲しいという使者がいらしております」
「これから教会に行くから決まり次第、知らせると伝えてもらえるか」
「はい、あと……国王陛下は参列させないと伝えて欲しいとおっしゃられています」
「承知したと伝えてくれ」
「はい!」
ギリシスがやって来ても、追い返す気でいたために、さすがシュアリア王妃陛下だと思った。
ルーベンスは教会に行って来ると出掛けて行き、ライシードもいまだに手紙を開けないでいるディオエルを連れて、王宮に戻ることにした。
「失礼した」
ディオエルは力ない声で挨拶をし、名残惜しそうにテイラーの顔を見つめて、去って行った。
「本当に番なのですね」
ベルサートとナナリーの長男が、口にした。
「私も実感したわ」
「アイルーンの時は、あんな風ではなく、淡々とされているように見えたのだがな」
ベルサートもディオエルと会ったのはアイルーンの時に数回と、あのテイラーと出会った夜会の時が久し振りという形であった。
番なのに、どこか冷静な姿しか見ていなかった。
アイルーンの死にどんな態度を取ったのかは分からないが、お見舞いの時点で明らかに顔色も悪く、憔悴しているようであった。
「皇帝ですもの、見える部分なんて虚勢を張られているでしょう」
「それは、そうだな。アイルーンへのことは許せないが、父上によると、テイラー嬢への態度は極めて、丁寧で横柄な態度は一度もなかったそうだ」
「それは見れば分かるわ、きっと後悔されているのでしょう。こんなことになったのも、原因ではあるけど、あんな姿を見たら……辛いことは同じだものね」
「そう、ですね」
当然、重罰に処して欲しいが、テイラーの意に反することはしたくない。もどかしい気持ちでいっぱいであった。
「テイラー嬢は番であることも、アイルーンの記憶のことも、必要なら明かしていいと書いている」
「本当、ですか」
ライシードはテイラーの素性を明かさずに、イオリクをどう追い込むか考えていた。だが、本人が明かしていいというのであれば、命は助かることになっても、終わりである。
「はい。彼女はこの手紙は自分が何らかの理由で、姿を消した場合と思って書いたのではないかと思います」
「そうでしたか……」
姿を消さなくてならない状況になり、何か問題になった際に、公にしたらいいと判断して、手紙を残していたのだと理解した。
番だと追い込まれる可能性、王命を出される可能性、テイラーが逃げるつもりだったことは容易に想像は付く。
そうはならなかったが、イオリクに害される予定でもなかった。
「竜帝国も、きちんと責任を取ります」
「テイラー嬢は、関係のない方に責任を取らせることは望まないでしょう」
「ですが」
「そう言っていたのを、ライシード様も聞いたでしょう」
テイラーはアイルーンに関しては絶対に許さないという気持ちと、関与していない者には上手く線引きするように話していた。
「それはそうですが」
「自分がされたように、理不尽に悲しみを生むことを望まない。そういうことではありませんか」
「はい、そうですね。申し訳ございません」
「いえ、私も自分の手で、最も惨い形で、殺してやりたいと思っている」
それはルーベンスが一番強い気持ちだったが、ベルサートもナナリーも同じ気持ちだった。
「ですが、被害者が望まないことを行うわけにはいきません。何のためにテイラー嬢が手紙を残したか分かりません」
「そうですね、こちらもそのように対応します」
危惧して手紙を残したのに、反故にしては意味がない。
もう二度と、テイラーの希望は聞けない。
そこへ使用人が慌てた様子で、やって来た。
「侯爵様!王妃陛下から、ご葬儀について知らせて欲しいという使者がいらしております」
「これから教会に行くから決まり次第、知らせると伝えてもらえるか」
「はい、あと……国王陛下は参列させないと伝えて欲しいとおっしゃられています」
「承知したと伝えてくれ」
「はい!」
ギリシスがやって来ても、追い返す気でいたために、さすがシュアリア王妃陛下だと思った。
ルーベンスは教会に行って来ると出掛けて行き、ライシードもいまだに手紙を開けないでいるディオエルを連れて、王宮に戻ることにした。
「失礼した」
ディオエルは力ない声で挨拶をし、名残惜しそうにテイラーの顔を見つめて、去って行った。
「本当に番なのですね」
ベルサートとナナリーの長男が、口にした。
「私も実感したわ」
「アイルーンの時は、あんな風ではなく、淡々とされているように見えたのだがな」
ベルサートもディオエルと会ったのはアイルーンの時に数回と、あのテイラーと出会った夜会の時が久し振りという形であった。
番なのに、どこか冷静な姿しか見ていなかった。
アイルーンの死にどんな態度を取ったのかは分からないが、お見舞いの時点で明らかに顔色も悪く、憔悴しているようであった。
「皇帝ですもの、見える部分なんて虚勢を張られているでしょう」
「それは、そうだな。アイルーンへのことは許せないが、父上によると、テイラー嬢への態度は極めて、丁寧で横柄な態度は一度もなかったそうだ」
「それは見れば分かるわ、きっと後悔されているのでしょう。こんなことになったのも、原因ではあるけど、あんな姿を見たら……辛いことは同じだものね」
4,406
あなたにおすすめの小説
妹なんだから助けて? お断りします
たくわん
恋愛
美しく聡明な令嬢エリーゼ。だが、母の死後に迎えられた継母マルグリットによって、彼女の人生は一変する。実母が残した財産は継母に奪われ、華やかなドレスは義姉たちに着られ、エリーゼ自身は使用人同然の扱いを受ける。そんなある日――。
二年間の花嫁
柴田はつみ
恋愛
名門公爵家との政略結婚――それは、彼にとっても、私にとっても期間限定の約束だった。
公爵アランにはすでに将来を誓い合った女性がいる。私はただ、その日までの“仮の妻”でしかない。
二年後、契約が終われば彼の元を去らなければならないと分かっていた。
それでも構わなかった。
たとえ短い時間でも、ずっと想い続けてきた彼のそばにいられるなら――。
けれど、私の知らないところで、アランは密かに策略を巡らせていた。
この結婚は、ただの義務でも慈悲でもない。
彼にとっても、私を手放すつもりなど初めからなかったのだ。
やがて二人の距離は少しずつ近づき、契約という鎖が、甘く熱い絆へと変わっていく。
期限が迫る中、真実の愛がすべてを覆す。
――これは、嘘から始まった恋が、永遠へと変わる物語。
結婚十年目の夫から「結婚契約更新書」なるものが届いた。彼は「送り間違えた」というけれど、それはそれで問題なのでは?
ぽんた
恋愛
レミ・マカリスター侯爵夫人は、夫と政略結婚をして十年目。侯爵夫人として、義父母の介護や領地経営その他もろもろを完ぺきにこなしている。そんなある日、王都に住む夫から「結婚契約更新書」なるものが届いた。義弟を通じ、夫を追求するも夫は「送り間違えた。ほんとうは金を送れというメモを送りたかった」という。レミは、心から思った。「それはそれで問題なのでは?」、と。そして、彼女の夫にたいするざまぁがはじまる。
※ハッピーエンド確約。ざまぁあり。ご都合主義のゆるゆる設定はご容赦願います。
邪魔者はどちらでしょう?
風見ゆうみ
恋愛
レモンズ侯爵家の長女である私は、幼い頃に母が私を捨てて駆け落ちしたということで、父や継母、連れ子の弟と腹違いの妹に使用人扱いされていた。
私の境遇に同情してくれる使用人が多く、メゲずに私なりに楽しい日々を過ごしていた。
ある日、そんな私に婚約者ができる。
相手は遊び人で有名な侯爵家の次男だった。
初顔合わせの日、婚約者になったボルバー・ズラン侯爵令息は、彼の恋人だという隣国の公爵夫人を連れてきた。
そこで、私は第二王子のセナ殿下と出会う。
その日から、私の生活は一変して――
※過去作の改稿版になります。
※ラブコメパートとシリアスパートが混在します。
※独特の異世界の世界観で、ご都合主義です。
※誤字脱字など見直して気を付けているつもりですが、やはりございます。申し訳ございません。
この子、貴方の子供です。私とは寝てない? いいえ、貴方と妹の子です。
サイコちゃん
恋愛
貧乏暮らしをしていたエルティアナは赤ん坊を連れて、オーガスト伯爵の屋敷を訪ねた。その赤ん坊をオーガストの子供だと言い張るが、彼は身に覚えがない。するとエルティアナはこの赤ん坊は妹メルティアナとオーガストの子供だと告げる。当時、妹は第一王子の婚約者であり、現在はこの国の王妃である。ようやく事態を理解したオーガストは動揺し、彼女を追い返そうとするが――
【完結】婚約者取り替えっこしてあげる。子爵令息より王太子の方がいいでしょ?
との
恋愛
「取り替えっこしようね」
またいつもの妹の我儘がはじまりました。
自分勝手な妹にも家族の横暴にも、もう我慢の限界!
逃げ出した先で素敵な出会いを経験しました。
幸せ掴みます。
筋肉ムキムキのオネエ様から一言・・。
「可愛いは正義なの!」
ーーーーーー
ゆるふわの中世ヨーロッパ、幻の国の設定です。
完結迄予約投稿済み
R15は念の為・・
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる