【完結】愛しくない、あなた

野村にれ

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【テイラー】手紙(デリア侯爵)3

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「はい、ですがテイラー嬢の要望もありますので、その点を踏まえて考えたいと思っております」
「そう、ですね」

 当然、重罰に処して欲しいが、テイラーの意に反することはしたくない。もどかしい気持ちでいっぱいであった。

「テイラー嬢は番であることも、アイルーンの記憶のことも、必要なら明かしていいと書いている」
「本当、ですか」

 ライシードはテイラーの素性を明かさずに、イオリクをどう追い込むか考えていた。だが、本人が明かしていいというのであれば、命は助かることになっても、終わりである。

「はい。彼女はこの手紙は自分が何らかの理由で、姿を消した場合と思って書いたのではないかと思います」
「そうでしたか……」

 姿を消さなくてならない状況になり、何か問題になった際に、公にしたらいいと判断して、手紙を残していたのだと理解した。

 番だと追い込まれる可能性、王命を出される可能性、テイラーが逃げるつもりだったことは容易に想像は付く。

 そうはならなかったが、イオリクに害される予定でもなかった。

「竜帝国も、きちんと責任を取ります」
「テイラー嬢は、関係のない方に責任を取らせることは望まないでしょう」
「ですが」
「そう言っていたのを、ライシード様も聞いたでしょう」

 テイラーはアイルーンに関しては絶対に許さないという気持ちと、関与していない者には上手く線引きするように話していた。

「それはそうですが」
「自分がされたように、理不尽に悲しみを生むことを望まない。そういうことではありませんか」
「はい、そうですね。申し訳ございません」
「いえ、私も自分の手で、最も惨い形で、殺してやりたいと思っている」

 それはルーベンスが一番強い気持ちだったが、ベルサートもナナリーも同じ気持ちだった。

「ですが、被害者が望まないことを行うわけにはいきません。何のためにテイラー嬢が手紙を残したか分かりません」
「そうですね、こちらもそのように対応します」

 危惧して手紙を残したのに、反故にしては意味がない。

 もう二度と、テイラーの希望は聞けない。

 そこへ使用人が慌てた様子で、やって来た。

「侯爵様!王妃陛下から、ご葬儀について知らせて欲しいという使者がいらしております」
「これから教会に行くから決まり次第、知らせると伝えてもらえるか」
「はい、あと……国王陛下は参列させないと伝えて欲しいとおっしゃられています」
「承知したと伝えてくれ」
「はい!」

 ギリシスがやって来ても、追い返す気でいたために、さすがシュアリア王妃陛下だと思った。

 ルーベンスは教会に行って来ると出掛けて行き、ライシードもいまだに手紙を開けないでいるディオエルを連れて、王宮に戻ることにした。

「失礼した」

 ディオエルは力ない声で挨拶をし、名残惜しそうにテイラーの顔を見つめて、去って行った。

「本当に番なのですね」

 ベルサートとナナリーの長男が、口にした。

「私も実感したわ」
「アイルーンの時は、あんな風ではなく、淡々とされているように見えたのだがな」

 ベルサートもディオエルと会ったのはアイルーンの時に数回と、あのテイラーと出会った夜会の時が久し振りという形であった。

 番なのに、どこか冷静な姿しか見ていなかった。

 アイルーンの死にどんな態度を取ったのかは分からないが、お見舞いの時点で明らかに顔色も悪く、憔悴しているようであった。

「皇帝ですもの、見える部分なんて虚勢を張られているでしょう」
「それは、そうだな。アイルーンへのことは許せないが、父上によると、テイラー嬢への態度は極めて、丁寧で横柄な態度は一度もなかったそうだ」
「それは見れば分かるわ、きっと後悔されているのでしょう。こんなことになったのも、原因ではあるけど、あんな姿を見たら……辛いことは同じだものね」
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