184 / 344
【テイラー】手紙(デリア侯爵)2
しおりを挟む
「どうして……」
ルーベンスは、様々な思いを受け取ったが、上手く言葉にならなかった。
ベットで眠るテイラーに目をやったが、いくら穏やかな顔で、辛い痛みから解放されたと思っても、やはり悲しくなるだけだった。
テイラーの人生は生き辛いものだっただろう。それでも、アイルーンのために、亡くした子どもために、生きることは悪いものではなかったと思えた。
おかげでアイルーンが病死したとされたことは、覆された。
感謝はもちろんだが、テイラーのことも、いや、テイラーのことは必ず守ろうと、思っていた。だが、結果は一番、起きてはならないことになった。
アイルーンにも、申し訳が立たない。
それこそ病気で死期を感じて、書いた物ならば受け止めることもできただろう。でもこれは、生きていくために書かれたものである。
「すまない……」
黙って手紙を読むルーベンスを見ていた、ベルサートは声を掛けることにした。
「父上……」
「ああ、アイルーンの字だよ……」
「えっ、ああ……」
ベルサートも一瞬、意味が分からなかったが、テイラーの字と同じだったのだと気付いた。
「お前も、皆も、さい、最後の言葉だ。読むといい」
「はい……葬儀はどうしますか?」
「ああ、教会に行って来る。皆はそばにいてやってくれ」
「はい、エイク子爵家はどうしますか」
「そうだな……知らせて、たまたま世話になったとでも話すか。エイク子爵家とは縁が切れているから、葬儀はこちらで取り仕切ると話そう」
「そうですね」
エイク子爵家ならば、こちらから話せば、文句を言うことはないだろう。ある意味、力のない家で良かった。
「国王陛下に、エイク子爵夫妻と妹が会いに来ておりました」
会話の聞こえたライシードが、それどころではなかったために慌てて伝えた。
「え?」
「妹があまりの態度だったために、国王陛下はエイク子爵と話をされましたが、父親はテイラー嬢の意見を尊重するような方だと思いました。国王陛下はテイラー嬢を説得するように申されておりましたが」
「ふざけたことを……」
ルーベンスを筆頭に、部屋には怒りが充満としていた。
「妹はどういう態度だったのですか?」
ナナリーが、ライシードに問い掛けた。
「テイラー嬢が皇帝陛下の番であるはずがないと、それを聞きたくてついて来たようでした。礼儀もなっておらず、エイク子爵も考えなくてはならないと考えているようです」
「そうでしたか、子爵も覚悟しているようですね」
「子爵はテイラー嬢は、一度決めたら変えることはない。番も亡くなっているのではないか、テイラー嬢の記憶のことは知りませんから、不安に思って断ったのではないかと考えておいででした」
その言葉に時期侯爵夫人は、ホッとした。
「話はちゃんとできそうですね」
「ええ、そう思います。妻も同じ考えだとおっしゃってましたから、夫妻とはちゃんと話ができるのではないでしょうか」
可もなく不可もない夫妻であったために、おかしな情報は入っていなかったが、それでもどう考えているかまでは分からなかった。
だが、国王陛下相手に、そのように話すのであれば大丈夫だろう。
もしも、話にならないような相手だとしたら、テイラーの親だとしても如何なる方法でも取るつもりであった。
「竜帝国からも、責任を追及する上の要望書を既に渡しております」
「そうでしたか」
その言葉に相槌を打ったのは、ベルサートであった。
「はい。イオリクは既に竜帝国で自白剤を使用して、尋問を行うようにしております。次期に全てが分かるはずです」
「公になるのですよね」
デリア侯爵家は、当然殺したいほどイオリクに怒りはあったが、テイラーに寄り添い、治療することが先決で、同じように悲しみ怒りを持つディオエルに、イオリクを任せることに不満はなかった。
ルーベンスは、様々な思いを受け取ったが、上手く言葉にならなかった。
ベットで眠るテイラーに目をやったが、いくら穏やかな顔で、辛い痛みから解放されたと思っても、やはり悲しくなるだけだった。
テイラーの人生は生き辛いものだっただろう。それでも、アイルーンのために、亡くした子どもために、生きることは悪いものではなかったと思えた。
おかげでアイルーンが病死したとされたことは、覆された。
感謝はもちろんだが、テイラーのことも、いや、テイラーのことは必ず守ろうと、思っていた。だが、結果は一番、起きてはならないことになった。
アイルーンにも、申し訳が立たない。
それこそ病気で死期を感じて、書いた物ならば受け止めることもできただろう。でもこれは、生きていくために書かれたものである。
「すまない……」
黙って手紙を読むルーベンスを見ていた、ベルサートは声を掛けることにした。
「父上……」
「ああ、アイルーンの字だよ……」
「えっ、ああ……」
ベルサートも一瞬、意味が分からなかったが、テイラーの字と同じだったのだと気付いた。
「お前も、皆も、さい、最後の言葉だ。読むといい」
「はい……葬儀はどうしますか?」
「ああ、教会に行って来る。皆はそばにいてやってくれ」
「はい、エイク子爵家はどうしますか」
「そうだな……知らせて、たまたま世話になったとでも話すか。エイク子爵家とは縁が切れているから、葬儀はこちらで取り仕切ると話そう」
「そうですね」
エイク子爵家ならば、こちらから話せば、文句を言うことはないだろう。ある意味、力のない家で良かった。
「国王陛下に、エイク子爵夫妻と妹が会いに来ておりました」
会話の聞こえたライシードが、それどころではなかったために慌てて伝えた。
「え?」
「妹があまりの態度だったために、国王陛下はエイク子爵と話をされましたが、父親はテイラー嬢の意見を尊重するような方だと思いました。国王陛下はテイラー嬢を説得するように申されておりましたが」
「ふざけたことを……」
ルーベンスを筆頭に、部屋には怒りが充満としていた。
「妹はどういう態度だったのですか?」
ナナリーが、ライシードに問い掛けた。
「テイラー嬢が皇帝陛下の番であるはずがないと、それを聞きたくてついて来たようでした。礼儀もなっておらず、エイク子爵も考えなくてはならないと考えているようです」
「そうでしたか、子爵も覚悟しているようですね」
「子爵はテイラー嬢は、一度決めたら変えることはない。番も亡くなっているのではないか、テイラー嬢の記憶のことは知りませんから、不安に思って断ったのではないかと考えておいででした」
その言葉に時期侯爵夫人は、ホッとした。
「話はちゃんとできそうですね」
「ええ、そう思います。妻も同じ考えだとおっしゃってましたから、夫妻とはちゃんと話ができるのではないでしょうか」
可もなく不可もない夫妻であったために、おかしな情報は入っていなかったが、それでもどう考えているかまでは分からなかった。
だが、国王陛下相手に、そのように話すのであれば大丈夫だろう。
もしも、話にならないような相手だとしたら、テイラーの親だとしても如何なる方法でも取るつもりであった。
「竜帝国からも、責任を追及する上の要望書を既に渡しております」
「そうでしたか」
その言葉に相槌を打ったのは、ベルサートであった。
「はい。イオリクは既に竜帝国で自白剤を使用して、尋問を行うようにしております。次期に全てが分かるはずです」
「公になるのですよね」
デリア侯爵家は、当然殺したいほどイオリクに怒りはあったが、テイラーに寄り添い、治療することが先決で、同じように悲しみ怒りを持つディオエルに、イオリクを任せることに不満はなかった。
4,635
あなたにおすすめの小説
遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。
沼野 花
恋愛
夫と子供たちに、選ばれなかったイネス。
すべてを愛人に奪われ、彼女は限界を迎え、屋敷を去る。
だが、その先に待っていたのは、救いではなかった。
イネスを襲った、取り返しのつかない出来事。
変わり果てた現実を前に、
夫はようやく、自分が何を失ったのかを思い知る。
深い後悔と悲しみに苛まれながら、
失ったイネスの心を取り戻そうとする夫。
しかし、彼女の心はすでに、外の世界へと向かっていた。
贖罪を背負いながらもイネスを求め続ける夫。
そして、母の心を知っていく子供たち。
イネスが求める愛とは、
そして、幸せとは――。
妹なんだから助けて? お断りします
たくわん
恋愛
美しく聡明な令嬢エリーゼ。だが、母の死後に迎えられた継母マルグリットによって、彼女の人生は一変する。実母が残した財産は継母に奪われ、華やかなドレスは義姉たちに着られ、エリーゼ自身は使用人同然の扱いを受ける。そんなある日――。
【完結】これをもちまして、終了とさせていただきます
楽歩
恋愛
異世界から王宮に現れたという“女神の使徒”サラ。公爵令嬢のルシアーナの婚約者である王太子は、簡単に心奪われた。
伝承に語られる“女神の使徒”は時代ごとに現れ、国に奇跡をもたらす存在と言われている。婚約解消を告げる王、口々にルシアーナの処遇を言い合う重臣。
そんな混乱の中、ルシアーナは冷静に状況を見据えていた。
「王妃教育には、国の内部機密が含まれている。君がそれを知ったまま他家に嫁ぐことは……困難だ。女神アウレリア様を祀る神殿にて、王家の監視のもと、一生を女神に仕えて過ごすことになる」
神殿に閉じ込められて一生を過ごす? 冗談じゃないわ。
「お話はもうよろしいかしら?」
王族や重臣たち、誰もが自分の思惑通りに動くと考えている中で、ルシアーナは静かに、己の存在感を突きつける。
※39話、約9万字で完結予定です。最後までお付き合いいただけると嬉しいですm(__)m
【完結】番である私の旦那様
桜もふ
恋愛
異世界であるミーストの世界最強なのが黒竜族!
黒竜族の第一皇子、オパール・ブラック・オニキス(愛称:オール)の番をミースト神が異世界転移させた、それが『私』だ。
バールナ公爵の元へ養女として出向く事になるのだが、1人娘であった義妹が最後まで『自分』が黒竜族の番だと思い込み、魅了の力を使って男性を味方に付け、なにかと嫌味や嫌がらせをして来る。
オールは政務が忙しい身ではあるが、溺愛している私の送り迎えだけは必須事項みたい。
気が抜けるほど甘々なのに、義妹に邪魔されっぱなし。
でも神様からは特別なチートを貰い、世界最強の黒竜族の番に相応しい子になろうと頑張るのだが、なぜかディロ-ルの侯爵子息に学園主催の舞踏会で「お前との婚約を破棄する!」なんて訳の分からない事を言われるし、義妹は最後の最後まで頭お花畑状態で、オールを手に入れようと男の元を転々としながら、絡んで来ます!(鬱陶しいくらい来ます!)
大好きな乙女ゲームや異世界の漫画に出てくる「私がヒロインよ!」な頭の変な……じゃなかった、変わった義妹もいるし、何と言っても、この世界の料理はマズイ、不味すぎるのです!
神様から貰った、特別なスキルを使って異世界の皆と地球へ行き来したり、地球での家族と異世界へ行き来しながら、日本で得た知識や得意な家事(食事)などを、この世界でオールと一緒に自由にのんびりと生きて行こうと思います。
前半は転移する前の私生活から始まります。
二年間の花嫁
柴田はつみ
恋愛
名門公爵家との政略結婚――それは、彼にとっても、私にとっても期間限定の約束だった。
公爵アランにはすでに将来を誓い合った女性がいる。私はただ、その日までの“仮の妻”でしかない。
二年後、契約が終われば彼の元を去らなければならないと分かっていた。
それでも構わなかった。
たとえ短い時間でも、ずっと想い続けてきた彼のそばにいられるなら――。
けれど、私の知らないところで、アランは密かに策略を巡らせていた。
この結婚は、ただの義務でも慈悲でもない。
彼にとっても、私を手放すつもりなど初めからなかったのだ。
やがて二人の距離は少しずつ近づき、契約という鎖が、甘く熱い絆へと変わっていく。
期限が迫る中、真実の愛がすべてを覆す。
――これは、嘘から始まった恋が、永遠へと変わる物語。
白い結婚の行方
宵森みなと
恋愛
「この結婚は、形式だけ。三年経ったら、離縁して養子縁組みをして欲しい。」
そう告げられたのは、まだ十二歳だった。
名門マイラス侯爵家の跡取りと、書面上だけの「夫婦」になるという取り決め。
愛もなく、未来も誓わず、ただ家と家の都合で交わされた契約だが、彼女にも目的はあった。
この白い結婚の意味を誰より彼女は、知っていた。自らの運命をどう選択するのか、彼女自身に委ねられていた。
冷静で、理知的で、どこか人を寄せつけない彼女。
誰もが「大人びている」と評した少女の胸の奥には、小さな祈りが宿っていた。
結婚に興味などなかったはずの青年も、少女との出会いと別れ、後悔を経て、再び運命を掴もうと足掻く。
これは、名ばかりの「夫婦」から始まった二人の物語。
偽りの契りが、やがて確かな絆へと変わるまで。
交差する記憶、巻き戻る時間、二度目の選択――。
真実の愛とは何かを、問いかける静かなる運命の物語。
──三年後、彼女の選択は、彼らは本当に“夫婦”になれるのだろうか?
さようなら、わたくしの騎士様
夜桜
恋愛
騎士様からの突然の『さようなら』(婚約破棄)に辺境伯令嬢クリスは微笑んだ。
その時を待っていたのだ。
クリスは知っていた。
騎士ローウェルは裏切ると。
だから逆に『さようなら』を言い渡した。倍返しで。
冷遇された聖女の結末
菜花
恋愛
異世界を救う聖女だと冷遇された毛利ラナ。けれど魔力慣らしの旅に出た途端に豹変する同行者達。彼らは同行者の一人のセレスティアを称えラナを貶める。知り合いもいない世界で心がすり減っていくラナ。彼女の迎える結末は――。
本編にプラスしていくつかのifルートがある長編。
カクヨムにも同じ作品を投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる