191 / 344
【テイラー】葬儀1
「本当に妹だったんですね……」
「ああ、だが、テイラーでもあった」
「そうですね」
二人は目覚めることのないテイラーを見て、また涙をこらえた。
そして、翌日、テイラーの葬儀の時刻になった。
ナナリーの手筈で、赤いカーネーションも飾られ、アイルーンの言ったように温かい気持ちになった。
小規模ではあったが、ディオエル皇帝陛下、シュアリア王妃陛下、エレサーレ王太子殿下を筆頭に、デリア侯爵家の親族という錚々たる出席者であった。
皆、言葉もなく悲しんでおり、どうしてこんなことがと、後悔しかなかった。
それでも、次の人生は何の憂いもなく、幸せでありますようにと願うくらいしかできなかった。
エイク子爵夫妻や、子爵家側の参列者は、あまりの参列者に驚いた。
親戚たちはどういうことなのかと事情を聞きたかったが、葬儀中に聞くわけにもいかず、デリア侯爵がテイラーに世話になり、葬儀を手配してくれることになったと聞かされていたために、その関係なのだろうと考えることにした。
だが、大人しく参列している親戚とは違って、ラオナは錚々たる面々に目を輝かせていた。
昨夜、テイラーが亡くなったと伝えた時は、さすがに驚きはした。
『え?嘘でしょう?』
『嘘じゃないんだ』
『へぇ、そうなんだ。ふーん。でも、もう他人でしょう?』
『他人?』
『もうエイク子爵家の人間じゃないんだから、葬儀もなしで、墓も共同?』
涙を流すどころか、混乱することも、悲しむもなく、にやにやしていた。
ソラードとフアナはその姿に、もう連れて行くのはやめようかとすら思ったが、それでも二人だけの姉妹なのだから、最期くらいはと思うことにした。
ただし、デリア侯爵がテイラーに世話になったから、葬儀を取り仕切ることになったから、大人しくしているように強く言った。
すると、納得がいかないような顔を見せた。
『え?何で?デリア侯爵って、もう平民なのよ?どうして、侯爵が出てくるのよ!おかしいいじゃない』
『テイラーはホテルで働いていたんだ、それで世話になったそうだ』
『ホテルで働いていたの?興味もないから知らなかったわ。でもそんな葬儀なんて出さなくていいから、私に援助?した方がいいわ、そうでしょう?』
『ふざけるな!なぜ、お前に援助をしなくてはいけない!』
今に始まったことではないが、こんな時に意味不明なことを言い出すラオナに、ソラードは殺意すら芽生えた。
『その方が有意義じゃない!それもお父様がケチなのがいけないのよ!』
ラオナは後継者教育をしないのなら、自由に使えるお金はなしだと言われて、教育をちゃんと受けると言いはしたが、結局しなかった。
ゆえに今、ラオナに自由に使えるお金はない。
婚約者のジイシーにも忙しいとなかなか会えなくなっており、それでもお金が使えず、困っているのと頼ったが、会ってもちゃんと毎回、後継者教育を受けるように口うるさく言われていることもあって、自業自得ではないかと言われることになった。
『葬儀では絶対に大人しくしていろ、もし騒ぐようなら、連れ出すからな。いいな?』
『葬式で騒いだりしないわよ、子どもじゃないんだから』
そう言っていたのだが、ラオナは葬儀の厳かな空気の中、はしゃぎ始めていた。
「ねえ!王太子殿下がいるわ」
「黙れ!大人しくできないのなら、帰れ」
「何よ!お姉様が死んで、可哀想だと思って、次期子爵様が来てあげたのに。でも王太子殿下に会えるなんて!この前、王宮で会えるかと思ったら会えなかったのよ!お姉様、役に立つじゃない!」
「黙れと言っているだろう!」
「うるさいわね、全然怖くないんだから」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
本日もお読みいただきありがとうございます。
本日は1日2話、投稿させていただきます。
いつもの17時に、もう1話投稿します。
どうぞよろしくお願いいたします。
「ああ、だが、テイラーでもあった」
「そうですね」
二人は目覚めることのないテイラーを見て、また涙をこらえた。
そして、翌日、テイラーの葬儀の時刻になった。
ナナリーの手筈で、赤いカーネーションも飾られ、アイルーンの言ったように温かい気持ちになった。
小規模ではあったが、ディオエル皇帝陛下、シュアリア王妃陛下、エレサーレ王太子殿下を筆頭に、デリア侯爵家の親族という錚々たる出席者であった。
皆、言葉もなく悲しんでおり、どうしてこんなことがと、後悔しかなかった。
それでも、次の人生は何の憂いもなく、幸せでありますようにと願うくらいしかできなかった。
エイク子爵夫妻や、子爵家側の参列者は、あまりの参列者に驚いた。
親戚たちはどういうことなのかと事情を聞きたかったが、葬儀中に聞くわけにもいかず、デリア侯爵がテイラーに世話になり、葬儀を手配してくれることになったと聞かされていたために、その関係なのだろうと考えることにした。
だが、大人しく参列している親戚とは違って、ラオナは錚々たる面々に目を輝かせていた。
昨夜、テイラーが亡くなったと伝えた時は、さすがに驚きはした。
『え?嘘でしょう?』
『嘘じゃないんだ』
『へぇ、そうなんだ。ふーん。でも、もう他人でしょう?』
『他人?』
『もうエイク子爵家の人間じゃないんだから、葬儀もなしで、墓も共同?』
涙を流すどころか、混乱することも、悲しむもなく、にやにやしていた。
ソラードとフアナはその姿に、もう連れて行くのはやめようかとすら思ったが、それでも二人だけの姉妹なのだから、最期くらいはと思うことにした。
ただし、デリア侯爵がテイラーに世話になったから、葬儀を取り仕切ることになったから、大人しくしているように強く言った。
すると、納得がいかないような顔を見せた。
『え?何で?デリア侯爵って、もう平民なのよ?どうして、侯爵が出てくるのよ!おかしいいじゃない』
『テイラーはホテルで働いていたんだ、それで世話になったそうだ』
『ホテルで働いていたの?興味もないから知らなかったわ。でもそんな葬儀なんて出さなくていいから、私に援助?した方がいいわ、そうでしょう?』
『ふざけるな!なぜ、お前に援助をしなくてはいけない!』
今に始まったことではないが、こんな時に意味不明なことを言い出すラオナに、ソラードは殺意すら芽生えた。
『その方が有意義じゃない!それもお父様がケチなのがいけないのよ!』
ラオナは後継者教育をしないのなら、自由に使えるお金はなしだと言われて、教育をちゃんと受けると言いはしたが、結局しなかった。
ゆえに今、ラオナに自由に使えるお金はない。
婚約者のジイシーにも忙しいとなかなか会えなくなっており、それでもお金が使えず、困っているのと頼ったが、会ってもちゃんと毎回、後継者教育を受けるように口うるさく言われていることもあって、自業自得ではないかと言われることになった。
『葬儀では絶対に大人しくしていろ、もし騒ぐようなら、連れ出すからな。いいな?』
『葬式で騒いだりしないわよ、子どもじゃないんだから』
そう言っていたのだが、ラオナは葬儀の厳かな空気の中、はしゃぎ始めていた。
「ねえ!王太子殿下がいるわ」
「黙れ!大人しくできないのなら、帰れ」
「何よ!お姉様が死んで、可哀想だと思って、次期子爵様が来てあげたのに。でも王太子殿下に会えるなんて!この前、王宮で会えるかと思ったら会えなかったのよ!お姉様、役に立つじゃない!」
「黙れと言っているだろう!」
「うるさいわね、全然怖くないんだから」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
本日もお読みいただきありがとうございます。
本日は1日2話、投稿させていただきます。
いつもの17時に、もう1話投稿します。
どうぞよろしくお願いいたします。
あなたにおすすめの小説
【今さら遅い】毒で声を失い公爵に捨てられた私。妹では精霊が応えず国は滅びへ。ですが隣国皇帝に溺愛される私に、今さら縋ってきても遅いです
唯崎りいち
恋愛
国一番の歌姫だった私は、妹に毒を盛られ声を失い、婚約者に捨てられた。
すべてを奪われた私を救ったのは、隣国の皇帝。
「お前の歌がなければ国は滅びる」と言われた私の歌は、精霊に届く“本物”の力を持っていて――
一方、私を追放した国は偽物の歌では加護を失い衰退。
今さら元婚約者が縋ってきても、もう遅い。
世継ぎは他の妃が産めばいい——子を産めない私ですが、帝の寵愛を独占して皇后になりました
由香
恋愛
後宮に入る女の価値は、ただ一つ。
——皇子を産めるかどうか。
けれど私は、産めない。
ならば——
「世継ぎは他の妃に任せます。私は、陛下に愛される女になります」
そう言い放ったその日から、すべてが狂い始めた。
毒を盛られても、捨てられず。
皇子が生まれても、選ばれたのは私だった。
「お前は、ここにいろ」
これは、子を産めない女が
ただ一つの武器“寵愛”だけで頂点に立つ物語。
そして——
その寵愛は、やがて狂気に変わる。
「離縁状の印が乾く前に、王太子殿下から花束が届きました」〜五年間「置物」と呼ばれた侯爵夫人、夫が青ざめるのは王家との縁が切れてからでした〜
まさき
恋愛
侯爵夫人として過ごした五年間、夫に名前を呼ばれたことが一度もなかった。
愛人を夜会に連れてきた翌朝、私は離縁状を置いて屋敷を出た。
夫は「すぐ戻る」と思っていたらしい。
でも届いたのは、王太子殿下からの白薔薇だった。
「五年、待ちすぎました。今度こそ私の隣に」
幼馴染の殿下は、いつも私を「アメリア」と呼んでくれた。
ただそれだけで、五年分の何かが、ほどけていった。
夫が全てを失うのはこれからの話。
私が本当の笑顔を取り戻すのも、これからの話。
逃した番は他国に嫁ぐ
基本二度寝
恋愛
「番が現れたら、婚約を解消してほしい」
婚約者との茶会。
和やかな会話が落ち着いた所で、改まって座を正した王太子ヴェロージオは婚約者の公爵令嬢グリシアにそう願った。
獣人の血が交じるこの国で、番というものの存在の大きさは誰しも理解している。
だから、グリシアも頷いた。
「はい。わかりました。お互いどちらかが番と出会えたら円満に婚約解消をしましょう!」
グリシアに答えに満足したはずなのだが、ヴェロージオの心に沸き上がる感情。
こちらの希望を受け入れられたはずのに…、何故か、もやっとした気持ちになった。
大人しい令嬢は怒りません。ただ二年間、準備していただけです。――婚約解消の申請が受理されましたので、失礼いたします
柴田はつみ
恋愛
婚約者に、誕生日を忘れられた。
正確には、忘れられたわけではない。
エドワード・ヴァルト公爵はちゃんと覚えていた。
記念のディナーも、予約していた。
薔薇だって、一輪、用意していた。
ただ――幼馴染のクロエ・アンセル伯爵令嬢から使いが来た瞬間、全部置いて行ってしまっただけだ。
「すぐ戻る」
彼が戻ったのは、三時間後だった。
蝋燭は溶け切り、料理は冷え、ワインは乾いていた。
それでもリーゼロッテ・フォン・アルテンベルクは、笑顔で座って待っていた。
「ええ、大丈夫でございます。お気遣いなく」
完璧な微笑みで、完璧にそう言った。
旦那様。私が悪女ならば、愛人の女は何になるのかしら?
白雲八鈴
恋愛
我が公爵家主催の夜会の最中。夫が愛人を連れてやってきたのです。そして、私を悪女という理由で離縁を突きつけてきました。
離縁して欲しいというのであれば、今まで支援してきた金額を全額返済していただけません?
あら?愛人の貴女が支払ってくれると?お優しいわね。
私が悪女というのであれば、妻のいる夫の愛人に収まっている貴女は何なのかしら?
忌むべき番
藍田ひびき
恋愛
「メルヴィ・ハハリ。お前との婚姻は無効とし、国外追放に処す。その忌まわしい姿を、二度と俺に見せるな」
メルヴィはザブァヒワ皇国の皇太子ヴァルラムの番だと告げられ、強引に彼の後宮へ入れられた。しかしヴァルラムは他の妃のもとへ通うばかり。さらに、真の番が見つかったからとメルヴィへ追放を言い渡す。
彼は知らなかった。それこそがメルヴィの望みだということを――。
※ 8/4 誤字修正しました。
※ なろうにも投稿しています。
私の手からこぼれ落ちるもの
アズやっこ
恋愛
5歳の時、お父様が亡くなった。
優しくて私やお母様を愛してくれたお父様。私達は仲の良い家族だった。
でもそれは偽りだった。
お父様の書斎にあった手記を見た時、お父様の優しさも愛も、それはただの罪滅ぼしだった。
お父様が亡くなり侯爵家は叔父様に奪われた。侯爵家を追い出されたお母様は心を病んだ。
心を病んだお母様を助けたのは私ではなかった。
私の手からこぼれていくもの、そして最後は私もこぼれていく。
こぼれた私を救ってくれる人はいるのかしら…
❈ 作者独自の世界観です。
❈ 作者独自の設定です。
❈ ざまぁはありません。