【完結】愛しくない、あなた

野村にれ

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【テイラー】マイソー子爵家3

 姉も亡くなったのだから、私が代わりになってもいいと口にしていた。どこかでずっと燻っていたのだと思う。

 まさか、そこをジイシーに見られているとは思っていなかった。ラオナの中では、ジイシーと皇帝陛下を天秤に乗せるような気分だった。

 ラオナは短気で、頭に血が上ると、考えも思ったことを口にして、周りも見えなくなる質であった。

 番についても、関わることがなかったので、正しいのか、正しくないのかも分からない、聞きかじったような知識しかなかった。

「君は貴族のままでいたくて、後継者になりたかったのだろう?お姉さんの友人の令嬢を使って、婚約を壊して、追い出したのだろう?」
「っえ、お父様!ジイシーにまで話したの!信じられない!」

 ラオナは、ソラードをキッと睨み付けた。

 ジイシーは証拠があったわけではないために、カマを掛けたのだが、事実だったのかと思った。両親の方を見ると、驚いた顔をしていた。

「君の父親から聞いたわけではない。私は君がお姉さんが出て行ったと馬鹿にしながら、嬉しそうに話し、後継者になった頃から疑っていたよ」
「っえ、いえ、違うのよ」

 ラオナはそこでようやく認めたような形になってしまったと、焦った。

 誰にもバレていないはずだったが、張本人からも、両親にも知られていたのに、ジイシーにまで疑われていたとは思ってもいなかった。

「違わないだろう!情けないことだが……事実です。ただ、テイラーも知っていました。むしろ、私たちはテイラーから教えてもらっていたのです」

 ソラードはテイラーも関係していたので、わざわざ言わなかった。だが、もう隠す理由もない。

「お姉さんがですか?」
「はい、この子の浅墓な考えをテイラーが気付かないはずがありません」
「でも、お姉様は自分で出て行ったんじゃない!」
「昨日も言っただろう!だからと言って、お前が婚約を壊すように唆していい理由にはならない」
「その通りですね」

 マイソー子爵は、唸るように同意し、冷たい目でラオナを見た。

 ラオナは義父になるはずだった、マイソー子爵にそのような目で見られたこともなく、ショックを受けた。

「あの頃から父に婚約を解消するかもしれない、その時は交渉して欲しいと話してあったんだよ」
「そんな!私はあなたのために爵位を継いだ方がいいと思っただけで」
「私はそのようなことを頼んでいない!君が自分の考えでしたことを私に押し付けないでくれ!あの時から、こうなることが決まっていたんだろうな」

 折角、結ばれた縁だったから、ここまで待ったとも言える。ジイシーはラオナに対して思うところはいくつもあったが、自分にはない自信と明るさはあった。

「そんなはずないわ!私たちは上手く言っていたじゃない!」
「ならばどうして、お姉さんを陥れてまで手にした癖に、後継者教育を真面目に取り組まなかったんだ?」
「していたの!本当なの!」

 ラオナは何度も何度も、ジイシーに言っていた言葉をまた使った。

「もう同じことの繰り返しだな、私はもう付き合えないよ。これからは解消になったのだから、二度と話し掛けないでくれ」
「そんな……」
「当然だろう。ラオナ、ジイシーくんに付き纏ったりするな、分かるな?もし、話し掛けたりすれば、お前の借金として、ジイシーに慰謝料を払うようにする。いいな?」

 ソラードは今日会わせても、またジイシーに縋りつくだろうと分かっていた。

「え?そこまで……」

 今日は駄目でも、親の前ではなく、二人でちゃんと話せばと思っていたラオナは、ジイシーは優しいから大丈夫だと、まだ何とかなると思っていた。

「お前のやりそうなことだからだよ、いいな?」
「では、慰謝料はなしにしましょう」

 子爵はそう言って、夫人も頷いている。

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