【完結】愛しくない、あなた

野村にれ

文字の大きさ
203 / 344

【テイラー】エイク子爵家1

 ラオナはどうすればいいのかと騒ぎ、後継者を外されても、私の家なんだから出て行かないと言い張ったが、それならば学園には行かずに、このまま退学して出て行くかと言われると、渋々寮に向かった。

 ある意味、退学という弱みがあって良かった。

 ラオナの学園生活は今まで通りに行くはずがないことを、分かっていないのだろうと両親は思っていた。

 今まで自慢だったジイシーとの婚約の白紙に、子爵家の後継者のこともいずれ分かるだろう。葬儀のことも噂になるかもしれない。

 だが、既に子爵家に入れないように指示している。

 それでも、卒業までに自分の身の振り方を考えるいい機会だろうと思った。もしも、嫁に欲しいという者がいれば、嫁げばいい。

 それ以前に、竜帝国から罰が下されれば、それも叶わなくなるだろう。

 ラオナは狭い寮に入れられて不満を洩らしたが、食事も出してもらい、洗濯もしてもらえ、頼めば掃除までしてもらえる恵まれた環境である。

 自由に買い物などはできなくなったが、元より自由に使えるお金もなかったラオナには、急に取り上げられたわけではない。

 ラオナは、翌日から学園に行くことにした。

 テイラーのことは公になっておらず、亡くなって葬儀があったことも、限られた者しか知らない。

 ゆえに、後継者を外された事も含めて、周りは知らない状態であったが、入寮したことは同じ寮の女子から、知られることになった。

「寮に入ったの?」
「そうなの」
「なんで?」
「真面目にしないからって」

 後継者を外されたとはまだ言いたくないために、怒られたという体にした。

「そうなの?ちゃんとしないからじゃない」
「反省しているわよ」

 始めはそれで誤魔化されていたが、徐々に親から聞いたのか、テイラーのことは誰も口にはしないが、貴族社会は噂はすぐに回り始める。

 そして、当然のようにジイシーにも話し掛けようとした。

「ジイシー!」
「はあ……接触して来たら、慰謝料を払うことになってもいいのだな?借金になるんだろう?払えるのか?」
「そんなこと言わないでよ」
「今回だけは見逃す、次は報告をさせてもらう」
「本気なの?」
「本気に決まっているだろう。こんなことをしていないで、自分のことを考えた方がいいんじゃないか」
「馬鹿にしないでよ!」

 ラオナは苛立ったが、ジイシーは一度は見逃そうと思っていた。

 ジイシーはラオナと同い年で、卒業までは一年半はあるが、その後は会うこともなくなるだろうと思っていた。

 それでも、二度目からはエイク子爵家に報告するつもりであった。

 だが、その後、ラオナは話し掛けて来ることはなかった。

 その理由は、友人から知ることになった。

「ジイシー、もしかして婚約解消したのか?」
「ああ」

 わざわざジイシーから白紙になったと触れ回る気はなかったが、聞かれたら事実を話すつもりだった。

 ジイシーはそろそろ、話が出始めたのだろうと冷静だった。

「正確には白紙になったから、婚約自体がなくなっている」
「そうだったのか」
「誰から聞いたんだ?」
「エイク子爵家の後継者が変わると、話が流れて来たんだ。その人も他の人に聞いたそうだ。だから、誰が言い出したのかまでは分からない」
「なるほどな」
「彼女は、後継者から外されたということか?」
「ああ」

 ジイシーも認めたことで、二人の婚約が白紙になったことが公になった。

 ラオナも後継者のこと、婚約のことを聞かれるようになり、寮に入れられたこともあって、皆は外されたのだろうと思われていたが、変わることになった、だから婚約も白紙になったのだと話した。

 だが、知っている者は後継者が姉から変わったことを知っており、後継者になる前から婚約をしていたのだから、おかしいのではないかと疑われていた。

あなたにおすすめの小説

【今さら遅い】毒で声を失い公爵に捨てられた私。妹では精霊が応えず国は滅びへ。ですが隣国皇帝に溺愛される私に、今さら縋ってきても遅いです

唯崎りいち
恋愛
国一番の歌姫だった私は、妹に毒を盛られ声を失い、婚約者に捨てられた。 すべてを奪われた私を救ったのは、隣国の皇帝。 「お前の歌がなければ国は滅びる」と言われた私の歌は、精霊に届く“本物”の力を持っていて―― 一方、私を追放した国は偽物の歌では加護を失い衰退。 今さら元婚約者が縋ってきても、もう遅い。

世継ぎは他の妃が産めばいい——子を産めない私ですが、帝の寵愛を独占して皇后になりました

由香
恋愛
後宮に入る女の価値は、ただ一つ。 ——皇子を産めるかどうか。 けれど私は、産めない。 ならば—— 「世継ぎは他の妃に任せます。私は、陛下に愛される女になります」 そう言い放ったその日から、すべてが狂い始めた。 毒を盛られても、捨てられず。 皇子が生まれても、選ばれたのは私だった。 「お前は、ここにいろ」 これは、子を産めない女が ただ一つの武器“寵愛”だけで頂点に立つ物語。 そして—— その寵愛は、やがて狂気に変わる。

「離縁状の印が乾く前に、王太子殿下から花束が届きました」〜五年間「置物」と呼ばれた侯爵夫人、夫が青ざめるのは王家との縁が切れてからでした〜

まさき
恋愛
侯爵夫人として過ごした五年間、夫に名前を呼ばれたことが一度もなかった。 愛人を夜会に連れてきた翌朝、私は離縁状を置いて屋敷を出た。 夫は「すぐ戻る」と思っていたらしい。 でも届いたのは、王太子殿下からの白薔薇だった。 「五年、待ちすぎました。今度こそ私の隣に」 幼馴染の殿下は、いつも私を「アメリア」と呼んでくれた。 ただそれだけで、五年分の何かが、ほどけていった。 夫が全てを失うのはこれからの話。 私が本当の笑顔を取り戻すのも、これからの話。

逃した番は他国に嫁ぐ

基本二度寝
恋愛
「番が現れたら、婚約を解消してほしい」 婚約者との茶会。 和やかな会話が落ち着いた所で、改まって座を正した王太子ヴェロージオは婚約者の公爵令嬢グリシアにそう願った。 獣人の血が交じるこの国で、番というものの存在の大きさは誰しも理解している。 だから、グリシアも頷いた。 「はい。わかりました。お互いどちらかが番と出会えたら円満に婚約解消をしましょう!」 グリシアに答えに満足したはずなのだが、ヴェロージオの心に沸き上がる感情。 こちらの希望を受け入れられたはずのに…、何故か、もやっとした気持ちになった。

大人しい令嬢は怒りません。ただ二年間、準備していただけです。――婚約解消の申請が受理されましたので、失礼いたします

柴田はつみ
恋愛
婚約者に、誕生日を忘れられた。 正確には、忘れられたわけではない。 エドワード・ヴァルト公爵はちゃんと覚えていた。 記念のディナーも、予約していた。 薔薇だって、一輪、用意していた。 ただ――幼馴染のクロエ・アンセル伯爵令嬢から使いが来た瞬間、全部置いて行ってしまっただけだ。 「すぐ戻る」 彼が戻ったのは、三時間後だった。 蝋燭は溶け切り、料理は冷え、ワインは乾いていた。 それでもリーゼロッテ・フォン・アルテンベルクは、笑顔で座って待っていた。 「ええ、大丈夫でございます。お気遣いなく」 完璧な微笑みで、完璧にそう言った。

旦那様。私が悪女ならば、愛人の女は何になるのかしら?

白雲八鈴
恋愛
 我が公爵家主催の夜会の最中。夫が愛人を連れてやってきたのです。そして、私を悪女という理由で離縁を突きつけてきました。  離縁して欲しいというのであれば、今まで支援してきた金額を全額返済していただけません?  あら?愛人の貴女が支払ってくれると?お優しいわね。  私が悪女というのであれば、妻のいる夫の愛人に収まっている貴女は何なのかしら?

忌むべき番

藍田ひびき
恋愛
「メルヴィ・ハハリ。お前との婚姻は無効とし、国外追放に処す。その忌まわしい姿を、二度と俺に見せるな」 メルヴィはザブァヒワ皇国の皇太子ヴァルラムの番だと告げられ、強引に彼の後宮へ入れられた。しかしヴァルラムは他の妃のもとへ通うばかり。さらに、真の番が見つかったからとメルヴィへ追放を言い渡す。 彼は知らなかった。それこそがメルヴィの望みだということを――。 ※ 8/4 誤字修正しました。 ※ なろうにも投稿しています。

私の手からこぼれ落ちるもの

アズやっこ
恋愛
5歳の時、お父様が亡くなった。 優しくて私やお母様を愛してくれたお父様。私達は仲の良い家族だった。 でもそれは偽りだった。 お父様の書斎にあった手記を見た時、お父様の優しさも愛も、それはただの罪滅ぼしだった。 お父様が亡くなり侯爵家は叔父様に奪われた。侯爵家を追い出されたお母様は心を病んだ。 心を病んだお母様を助けたのは私ではなかった。 私の手からこぼれていくもの、そして最後は私もこぼれていく。 こぼれた私を救ってくれる人はいるのかしら… ❈ 作者独自の世界観です。 ❈ 作者独自の設定です。 ❈ ざまぁはありません。