【完結】愛しくない、あなた

野村にれ

文字の大きさ
219 / 344

【テイラー】腹の中1

しおりを挟む
 アイルーンとテイラー、二人をどう思っていたのか。

 どうして、アイルーンとテイラーに酷い態度を取ったのか。

 疑似番には関与していないのか。

 ローズミーのことをどう思っていたのか。

 担当をしたのは、前回も担当をしたマイクス・ドーラド伯爵。現在の騎士団員の中で、冷静で、一番の人格者と言われている。

 イオリクよりも年上で、普段は落ち着きのある、孫もいる身である。

 いつもは丁寧な言葉使いで取り調べをするが、イオリクに関しては前回の最初は丁寧だったが、さすがに無理であった。今回は最初から行う気はなかった。

 マイクスのみが問い掛ける形になるが、それでも肩で息をしている場面も多く、ディオエルが行わなくて良かったと、改めて思った。

 そして、再び報告書として聞き取ったことがまとめられた。

 事実を書くことが求められていることではあったが、これをディオエルは読むと思うだけで、何度も書く手が止まり、溜息をつくほどであった。

 本当に最低な取り調べだった―――。

 イオリクが不死身であったなら、何度も切り殺していただろう―――。

 元より、イオエイクは番には否定的であることは分かっていたが、ディオエルの番にはさらに強さであった。

 〈番など吐き気がする。アイルーンも不愉快な存在だったが、テイラーはもっと不愉快であった〉

 〈だが、ディオエル様のために、テイラーを妃にさせて、子どもを産ませなくてはならない。
 テイラーは、皇帝陛下の番なのだから、この身を捧げますと言うべき、子どもを産みたいですと言うべきだ。それなのに、受け入れないなどあり得ない〉

 〈尊き存在があんな女から生まれて来ることは、心の底から不本意ではあるが、仕方ない。
 生まれてしまえば、引き離して、母親に合わせないようにして、関わらない方がいいと吹き込めばいい。
 アイルーンの時も、そうするつもりだった〉

 吐き気がした。

 アイルーンが生きていたら、そんなことをしようとしていたのか。

 亡くなって良かったなど思ったこともなかったが、そんなことにならなくて良かったと思った。

 だが、この男の考えはもっと酷かった。

 〈アイルーンの子どもを、ローズミーの子どもとして扱えばいいと思っていた。だからこそ、アイルーンに立場を分からせて、コントロールしていた。
 何人か産ませて、ディオエル様にに影響がないか確認のために、引き離して様子を見て、邪魔になるようならば処分すればいいと考えていた。
 だが、子どもを産む前に殺されてしまったら、意味がない〉

 再び吐き気がした。

 テイラーを殺しただけでなく、アイルーンを殺そうとまで考えていたのか。

 ディオエルが疑い続けていたのも、ある意味当たっていた。

 イオリクはアイルーンに、テイラーに殺意を持っていた。

「アイルーン様を殺す気だったのか?」

 自白剤の際の記憶はないとされているが、時系列は違うが、アイルーン様までと言いそうになった。

「子どもを、うませ、れば、つがいなど、いらない、だろう」
「っな!そんなわけがないだろう?子どもが生まれていれば、正妃になる方だったのだぞ?その方を殺す?子どもから引き離す?ふざけているのか?」

 理不尽に殺されたアイルーンに肩入れしていることは分かっているが、ディオエルならともかく、子どもをイオリクの権限で引き離すなどあり得ない。

「お前は自分が皇帝にでもなったつもりなのか?」
「ち、ちが、う。そんな、ことは、あり得ない」

 実際に殺されたアイルーンに、殺すことなどできないとは言えず、ローズミーたちでも殺せたのだから、イオリクにも可能だっただろうことが悔しい。

 疑似番で殺されなくても、イオリクが殺す未来があったというのか。

 自白剤を使用しているために、これがこの男の本物の考えなのである。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜

放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!? 「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」 不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。

王宮侍女は穴に落ちる

斑猫
恋愛
婚約破棄されたうえ養家を追い出された アニエスは王宮で運良く職を得る。 呪われた王女と呼ばれるエリザベ―ト付き の侍女として。 忙しく働く毎日にやりがいを感じていた。 ところが、ある日ちょっとした諍いから 突き飛ばされて怪しい穴に落ちてしまう。 ちょっと、とぼけた主人公が足フェチな 俺様系騎士団長にいじめ……いや、溺愛され るお話です。

間違えられた番様は、消えました。

夕立悠理
恋愛
※小説家になろう様でも投稿を始めました!お好きなサイトでお読みください※ 竜王の治める国ソフームには、運命の番という存在がある。 運命の番――前世で深く愛しあい、来世も恋人になろうと誓い合った相手のことをさす。特に竜王にとっての「運命の番」は特別で、国に繁栄を与える存在でもある。 「ロイゼ、君は私の運命の番じゃない。だから、選べない」 ずっと慕っていた竜王にそう告げられた、ロイゼ・イーデン。しかし、ロイゼは、知っていた。 ロイゼこそが、竜王の『運命の番』だと。 「エルマ、私の愛しい番」 けれどそれを知らない竜王は、今日もロイゼの親友に愛を囁く。 いつの間にか、ロイゼの呼び名は、ロイゼから番の親友、そして最後は嘘つきに変わっていた。 名前を失くしたロイゼは、消えることにした。

妹がいなくなった

アズやっこ
恋愛
妹が突然家から居なくなった。 メイドが慌ててバタバタと騒いでいる。 お父様とお母様の泣き声が聞こえる。 「うるさくて寝ていられないわ」 妹は我が家の宝。 お父様とお母様は妹しか見えない。ドレスも宝石も妹にだけ買い与える。 妹を探しに出掛けたけど…。見つかるかしら?

【完結】赤ちゃんが生まれたら殺されるようです

白崎りか
恋愛
もうすぐ赤ちゃんが生まれる。 ドレスの上から、ふくらんだお腹をなでる。 「はやく出ておいで。私の赤ちゃん」 ある日、アリシアは見てしまう。 夫が、ベッドの上で、メイドと口づけをしているのを! 「どうして、メイドのお腹にも、赤ちゃんがいるの?!」 「赤ちゃんが生まれたら、私は殺されるの?」 夫とメイドは、アリシアの殺害を計画していた。 自分たちの子供を跡継ぎにして、辺境伯家を乗っ取ろうとしているのだ。 ドラゴンの力で、前世の記憶を取り戻したアリシアは、自由を手に入れるために裁判で戦う。 ※1話と2話は短編版と内容は同じですが、設定を少し変えています。

公爵令嬢の辿る道

ヤマナ
恋愛
公爵令嬢エリーナ・ラナ・ユースクリフは、迎えた5度目の生に絶望した。 家族にも、付き合いのあるお友達にも、慕っていた使用人にも、思い人にも、誰からも愛されなかったエリーナは罪を犯して投獄されて凍死した。 それから生を繰り返して、その度に自業自得で凄惨な末路を迎え続けたエリーナは、やがて自分を取り巻いていたもの全てからの愛を諦めた。 これは、愛されず、しかし愛を求めて果てた少女の、その先の話。 ※暇な時にちょこちょこ書いている程度なので、内容はともかく出来についてはご了承ください。 追記  六十五話以降、タイトルの頭に『※』が付いているお話は、流血表現やグロ表現がございますので、閲覧の際はお気を付けください。

【完結】番である私の旦那様

桜もふ
恋愛
異世界であるミーストの世界最強なのが黒竜族! 黒竜族の第一皇子、オパール・ブラック・オニキス(愛称:オール)の番をミースト神が異世界転移させた、それが『私』だ。 バールナ公爵の元へ養女として出向く事になるのだが、1人娘であった義妹が最後まで『自分』が黒竜族の番だと思い込み、魅了の力を使って男性を味方に付け、なにかと嫌味や嫌がらせをして来る。 オールは政務が忙しい身ではあるが、溺愛している私の送り迎えだけは必須事項みたい。 気が抜けるほど甘々なのに、義妹に邪魔されっぱなし。 でも神様からは特別なチートを貰い、世界最強の黒竜族の番に相応しい子になろうと頑張るのだが、なぜかディロ-ルの侯爵子息に学園主催の舞踏会で「お前との婚約を破棄する!」なんて訳の分からない事を言われるし、義妹は最後の最後まで頭お花畑状態で、オールを手に入れようと男の元を転々としながら、絡んで来ます!(鬱陶しいくらい来ます!) 大好きな乙女ゲームや異世界の漫画に出てくる「私がヒロインよ!」な頭の変な……じゃなかった、変わった義妹もいるし、何と言っても、この世界の料理はマズイ、不味すぎるのです! 神様から貰った、特別なスキルを使って異世界の皆と地球へ行き来したり、地球での家族と異世界へ行き来しながら、日本で得た知識や得意な家事(食事)などを、この世界でオールと一緒に自由にのんびりと生きて行こうと思います。 前半は転移する前の私生活から始まります。

夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。 神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。 もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。 生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。 過去世と同じ轍を踏みたくない……

処理中です...