【完結】あわよくば好きになって欲しい(短編集)

野村にれ

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私の恋、あなたの愛

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 ルノーの番はシエルだった。それはもうルノーが一番感じていた。

 なぜ今まで分からなかったのか…いや、抑制剤をきちんと服用していた証拠だろう。今日は服用していなかったのだろうか?高熱で服用し忘れたのか?

 もし、頼まれなかったら気付くことはなかった。シエルを番探しのパーティーで見掛けたこともなかった。

 好ましくは思っていたが、今となっては独り占めしたい感情に埋め尽くされていた。このまま連れ帰って、看病したい。番など現れても関係ないと思っていたのに、実感してみないと分からないことがあると、よく分かった。

 だが、シエルはどうだろうか。

 科が変わってから、男性と一緒にいるところを何度か見掛けたこともあった、もしかしたら今も恋人がいるのかもしれない。

 私は特定の相手は作らないし、番も要らない、そう決めていたはずだ。

 シエルも誠実な相手を探してはいたが、番を求めている様子はなかった。番なら誠実だろうと思ったが、相手が僕ではハズレもいいところだろう。

 親に言われて、番探しのパーティーには参加していたが、もし見付かったらどうしようかなんて考えてもいなかった。

 どうするべきか…伝えない方がお互いのためだろう。もし、シエルが番を求めているのならば、私だから他の相手を探した方がいいと伝えるべきだろうが、私は彼女の幸せを今までのように願えるだろうか。

「うぅん」

 シエルが目を覚ましたようだ。その声だけで興奮し、心が揺さぶられたが、深呼吸をして、息を整えた。

 本来なら汗を拭いたりしてあげるべきだっただろうが、それどころではなかった。

「え?ウィローさん?」
「ああ、マイニー・ヴィオス嬢に頼まれたんだ」
「付き添ってくれていたの?」
「ああ、うん」

 横で苦悩していて、本当に付き添っていただけである。

「ごめんなさい、急に熱が上がったみたいで。もう大丈夫だから、帰って貰って大丈夫よ。この時期よくあるの」
「いや、寮まで送るよ」
「いいわよ、歩けるわ」
「でも頼まれたから」
「じゃあ、お願いします」

 触れたいという思いと、触れてはならないという思いがせめぎ合ってはいたが、肩を貸そうかと聞いたが、シエルは大丈夫だと、二人で歩いて寮まで向かった。

「予定はなかったの?」
「なかったよ、ヴィオス令嬢は今日はどうしても外せないからと」
「そうなの、良かったわ。私のせいで行けなくなっていたら、ゾッとするわ」
「役に立てて良かったよ」
「ありがとうございました」

 寮はそう遠くないため、あっという間に着いてしまい、名残惜しい気持ちになったが、これ以上一緒にいるのも危険だとも感じた。

 シエルは再度お礼を言って、寮に入っていった。

 ルノーはその姿をずっと見ていた。ルノーではなく、ウィローさんと呼ぶようになっていたことにも、距離を感じたが、その方がいい。

 これまで感じたことがなかった以上、シエルが抑制剤を服用せずに会うことはないだろう。それでも近付くのは最後にしようと思った。

 だが、番という者は厄介で、シエルを探してしまうようになっていた。

 卒業まで後1ヶ月となり、シエルは研修に行っており、ほとんど学園には来なくなってしまった。これで良かったんだという思いと、本当に逃していいのかという思いが、交互に襲って来る。

 関係を持っていた女性とは会わなくなっていった、相手も僕以外にも相手がおり、特に困ることはない。

「予定があるんだ」
「そっか、残念」

 そんな言葉で終わる関係だ、いずれ彼女たちも結婚するのだろう。

 特定の相手を作りたくない、気持ちいいことはしたいという男性の方が勿論多いが、女性も一定数はいる。派手であっても、大人しそうでも、関係ないのだ。

 だが、私はそんな欲もなくなってしまうのではないかという恐怖もあった。だから、また誘いに乗り、誘うようになっていた。変わらないと思いたかった。
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