【完結】あわよくば好きになって欲しい(短編集)

野村にれ

文字の大きさ
40 / 103
私の恋、あなたの愛

17

「自分たちのことは横に置いて、外聞が悪いと言われて、番探しのパーティーだけは出席することを義務付けられてね。自分たちのことを正当化するために、番を探すように言うんだ。マリオスも随分、葛藤があったはずだ」
「そうだったの…」

 マリオス様は番が見付かって嬉しいと言わんばかりだったが、ルノーの同じ環境にいたのなら、複雑だったのかもしれない。

「だからマリオスも自棄になって、あの突っかかって来たラビンス・グルテなんかと交際していたんだ」
「ああ…そういうことだったの」

 マリオス様がわざわざラビンス嬢と脅されたにしても交際していたことは不思議に思っていた。趣味が悪いという話ではなく、関わりたくない類の質だった。

「マリオスはマイニー嬢に出会えて良かったと思っているよ」
「私に言い訳なんてしなくて良かったのに」
「え?いや、俺を知って欲しくて」

 同情をして貰いたいわけではなかったが、少しでも理解して貰いたくて、話すべきだと思ったが、シエルは腑に落ちない顔をしている。

「興味本位で聞いてしまったけど、私に言っていい話だったの?」
「だから結婚を」
「それはいいわ、あなたの自由を奪う気はないもの。楽しく過ごせたらそれでいいでしょう?出来なくなってもいいの?」
「だけど、子どもは」

 確かにそう言った、今も本質は変わっていないのかもしれない。でもシエルが番ではなくても、私は結婚したいと思っていることに気付いた。

 結婚など考えたこともなかったが、シエルと結婚することに全く抵抗がない。

「それは大きくなったら考えればいいわ。預かってくれるところもあるみたいだし」
「子どもは両親がいた方がいい」
「あなたはそうかもしれないけど、いなくても愛してくれる人がいればいいんじゃないかしら?私たちはたまたま子どもが出来てしまっただけの関係でしょう?あなたなら割り切ってくれると思ったのに」

 そういうことか、女性を割り切るように、子どもも好きにしたらいいと言うと思っていたのか。

「私は結婚したいと思っている」
「どうして?ああ、結婚して、自由にしたいってこと?」
「ちが、違う!そんなこと考えていない」
「あなたにも都合がいいはずよ?理解が出来ないのだけど…?」

 もし関係を持った相手に子どもが出来ていたら、そう言われたら、どうしていただろうか。分かったと金だけ渡していたのだろうか。

「結婚してから、子どもが生まれてから、夫婦になって行けばいいと思わないか?」
「私とあなたが?今さら?」
「今さらだとは思うけど、シエルと一緒にいたいと思っていたのは事実なんだ。でも恋人となると…あの頃はそうは思えなかったというか」
「私はあなたと結婚したいと思えないの。だから今度はあなたが割り切ってくれない?」
「それは出来ない」

 シエルが結婚を望んでいないことが胸を締め付ける。俺だってまさかこんなことになるとは思っていなかった。でも悪いのは完全に俺なのに、だが過去は変えられないじゃないか。

「言うんじゃなかったな…」
「っな、どうして…確かに俺は誠実さもないけど、どうにもならないことだろう」
「開き直るのね、番はいいの?もし見付かったらどうするの?」
「それは…」
「会ってみないと分からないわよね…そこも踏まえて、やっぱり結婚は出来ないわ」

「君が番なんだ…」

「は?何言ってるの?」
「君がつ、つがいなんだ…」
「私が?嘘でしょう?私、パーティーに行ってないわよ」
「前に高熱を出した時に…」
「えっ、あっ…」

 シエルのアンバーの瞳が酷く揺れて、驚きの表情に変わり、立ち上がった。

「お断りします!絶対、結婚はお断りです。子どもも結婚をしろと言うなら、堕胎するわ」
「え?はっ、待って」

 ドタドタとシエルは邸を出て行ってしまい、慌てて追い掛けたが、待たせていた馬車に乗って帰ってしまった。

 どうしたって言うんだ…。

あなたにおすすめの小説

〈完結〉遅効性の毒

ごろごろみかん。
ファンタジー
「結婚されても、私は傍にいます。彼が、望むなら」 悲恋に酔う彼女に私は笑った。 そんなに私の立場が欲しいなら譲ってあげる。

あなたの運命になりたかった

夕立悠理
恋愛
──あなたの、『運命』になりたかった。  コーデリアには、竜族の恋人ジャレッドがいる。竜族には、それぞれ、番という存在があり、それは運命で定められた結ばれるべき相手だ。けれど、コーデリアは、ジャレッドの番ではなかった。それでも、二人は愛し合い、ジャレッドは、コーデリアにプロポーズする。幸せの絶頂にいたコーデリア。しかし、その翌日、ジャレッドの番だという女性が現れて──。 ※一話あたりの文字数がとても少ないです。 ※小説家になろう様にも投稿しています

私の手からこぼれ落ちるもの

アズやっこ
恋愛
5歳の時、お父様が亡くなった。 優しくて私やお母様を愛してくれたお父様。私達は仲の良い家族だった。 でもそれは偽りだった。 お父様の書斎にあった手記を見た時、お父様の優しさも愛も、それはただの罪滅ぼしだった。 お父様が亡くなり侯爵家は叔父様に奪われた。侯爵家を追い出されたお母様は心を病んだ。 心を病んだお母様を助けたのは私ではなかった。 私の手からこぼれていくもの、そして最後は私もこぼれていく。 こぼれた私を救ってくれる人はいるのかしら… ❈ 作者独自の世界観です。 ❈ 作者独自の設定です。 ❈ ざまぁはありません。

いつも隣にいる

はなおくら
恋愛
心の感情を出すのが苦手なリチアには、婚約者がいた。婚約者には幼馴染がおり常にリチアの婚約者の後を追う幼馴染の姿を見ても羨ましいとは思えなかった。しかし次第に婚約者の気持ちを聞くうちに変わる自分がいたのだった。

最愛の番に殺された獣王妃

望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。 彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。 手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。 聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。 哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて―― 突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……? 「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」 謎の人物の言葉に、私が選択したのは――

魔法のせいだから許して?

ましろ
恋愛
リーゼロッテの婚約者であるジークハルト王子の突然の心変わり。嫌悪を顕にした眼差し、口を開けば暴言、身に覚えの無い出来事までリーゼのせいにされる。リーゼは学園で孤立し、ジークハルトは美しい女性の手を取り愛おしそうに見つめながら愛を囁く。 どうしてこんなことに?それでもきっと今だけ……そう、自分に言い聞かせて耐えた。でも、そろそろ一年。もう終わらせたい、そう思っていたある日、リーゼは殿下に罵倒され頬を張られ怪我をした。 ──もう無理。王妃様に頼み、なんとか婚約解消することができた。 しかしその後、彼の心変わりは魅了魔法のせいだと分かり…… 魔法のせいなら許せる? 基本ご都合主義。ゆるゆる設定です。

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

愛があれば、何をしてもいいとでも?

篠月珪霞
恋愛
「おいで」と優しく差し伸べられた手をとってしまったのが、そもそもの間違いだった。 何故、あのときの私は、それに縋ってしまったのか。 生まれ変わった今、再びあの男と対峙し、後悔と共に苦い思い出が蘇った。 「我が番よ、どうかこの手を取ってほしい」 過去とまったく同じ台詞、まったく同じ、焦がれるような表情。 まるであのときまで遡ったようだと錯覚させられるほどに。