【完結】あわよくば好きになって欲しい(短編集)

野村にれ

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もう二度と

「一時はどうなることかと思ったが」
「それでも一進一退だよ」
「薬の量が増えていると聞いているが、大丈夫なのか?」

 番が側にいるのに、触れ合えないことで、シュアンの抑制剤の量が増えている。

 グルズは本人は大丈夫だと言っているが、副団長から気に掛けてやって欲しいと頼まれてもおり、そうでなくても友人だ、どうにか良い方向に進まないか、番が見付かってから、ずっと気を揉んでいる。

「大丈夫だ、何とか耐えなければならないんだ」
「でもお前は公爵なんだ。今でもあれこれ言われているのだろう?」

 ロークロア家の治癒術の血を期待して、番が見付かったのだから、早く結婚して子どもを作るように言って来る者はいる。だが、そんなことをミファラが聞いたら、またどうなるか分からない。だから徹底して、耳に入れないように気を配っている。

「養子を取るつもりだよ」
「それで納得させられるのか?」
「させなければならないんだ、治癒術が使える者がいるといいのだが…」

 治癒術を使える者が沢山いるわけでもなければ、養子に入って入れるとも限らない。だが、公爵家ということで、見付かる可能性はある。

「そうか、そうだよな…それでシュアンはいいのか?せめて結婚はしたらどうだ?」

 既に離縁しており、番で、一緒に住んでいる状況だ。養子を取るにしても、結婚しているのと変わらないのなら、籍だけ入れることは出来るのではないか。

「私はいいんだ」

 グルズはその子どもの頃から幾度の鳴く聞いた言葉に、どうして運命はこうも上手くいかないのだと、憤りを感じた。

 だが、まだ会ってはいないが、番も人生をシュアンに捻じ曲げられたと思うのも無理はないとも思う。ノラは番に怒っているようだったが、特にまだ赤子だった子どもと、引き離されるなんて耐えられないだろう。

 私は番への気持ちも薄いため、番ではない令嬢と結婚し、子どもが二人いる。父親ですら子どもと急に引き離されたら耐え難いのに、母親は既に産まれる前から子どもを宿していたのだ。気持ちはもっと強いだろう。

 妻も何か出来ることがあればいいのだけどとは言っていたが、私も同じ立場だったら、同じようになったかもしれないと、番の方に気持ちを置いていた。

 いくら貴族だからと、そんな状況で、別の相手に嫁げ、子どもを作れなんて言えない。そんなこと言えば、会ってもいない私にだってわかる。

 番はまた死を選ぶかもしれない…言えるはずがない。

「もし何か言って来るなら、私も力になるからな」
「怖いんだ…何か言って、それが引き金になったらと思うと…」
「そうだな」

 何が駄目だと分かるわけではない、もしかしたら今日は良くても、明日は駄目かもしれない、気持ちというのは分からない。

「まさに一進一退、今日を乗り越えることが最優先だもんな」
「そうなんだ、生きていることを確認してしまう」

 ミファラの部屋に入る瞬間に、シュアンはあの時のことがフラッシュバックして、ドアを開ける時に鼓動は急速に早くなる。

「…本当は施設に入りたいと言っているんだ」
「施設に?」

 本来は望んではいるようなところではないが、それが一番いいという自覚が本人にもあるのだろう。

「精神疾患で、入る資格は十分ある。それをどうにかもう少しだけと言って、限界と思ったら手続きをするとも言ってある」
「実家に戻っても、周りの目は厳しいだろうからな…ご両親には会ったんだよな?」

 グルズにも男爵家であれば、世間の目は冷たいだろうと想像が出来る。

「ああ、だが今の状態ではおそらく持て余すだろうな」
「息子さんが引き取れれば、大きく変わるんだろうがな。これほどまでに耐えているシュアンが虐待などしないと言っても、権利はあちらにあるもんな」

 きっと息子がいれば、間違いなく、死のうなんて考えない。

「再婚が決まりそうらしい…」

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