【完結】永遠の愛にはイロドリを

社交界

　キラードとリーリアンは、チェルシーのことは諦めて、シルヴァルに新しい妻を探すことにした。

　シルヴァルもそんな様子に気付きながらも、キャローズと別れたことで、了承するしかないと覚悟もしていた。

　だが、チェルシーの結婚はなかったことになっているが、キャローズと一緒にいるところを見られていること、年齢的にも何か問題があると思われる部分もある。

　しかも、同じくらいの令嬢は結婚しており、チェルシーのような未亡人は少ない。

　社交界にも積極的に出席するように言われて、シルヴァルもこれまで強く否定することのなかった両親のためにも、参加することにした。

　一方、チェルシーは社交界に復帰する気も、必要性もないが、貴族の義務として、王家主催の夜会には参加することにした。

　フォスト侯爵家にいた時は、ルイから免除にして貰っていたのである。

　久し振りに姿を現したチェルシーは、友人たちに囲まれていた。

　結婚してからも、ロインが亡くなった後も、手紙のやり取りはしていたが、皆がロインのことを思い、しばらく静かに暮らしたいというチェルシーの思いを汲んで、押し掛けたりするようなことはしなかった。

「今日のドレスは、妹君の新作かしら？」
「ええ、あの子は今日は出席が出来ないのだけど、社交界に参加することになったと言ったら、作って着させられて、１０回くらい回らされて、目が回ったわ」
「まあ、相変わらずね」

　メイジーはエカリオ王国の第二王女殿下のために、エカリオ王国に滞在中である。おかげで夜会で見れないのだからと、着て見せて欲しいと、何度もくるくる回らされた姉であった。

「ええ、でも私に似合う物を作ってくれますからね」
「ええ！とってもお似合い！ロインが見たら、抱き着いてしまうわね」
「そうだと良いのだけど」
「絶対にそうよ！」
「間違いないわ！」

　友人たちはチェルシーが二度と結婚するつもりはないことは聞いており、亡くなってしまったが、今でもチェルシーの夫はロインだと接している。

　そこにいるか、いないかの差だと思っている。

「姉様！」

　お酒を選んでいると、後ろから声を掛けて来たのは、ただ一人の実弟であるリサール・トートレイであった。

「今日も美しいね！姉様が一番綺麗だね」
「ありがとう」

　リサールは冗談を言うような顔ではなく、真面目な顔で褒め称える。しかも、契約結婚も無事片付いたことで、上機嫌である。

　この前のきっと姉様の好きなケーキがあるはずだと、ケーキと食べに行き、きっと姉様の好きな本があるはずだと大きな本屋に連れて行って貰ったり、恋人や婚約者にすればいいのにということを、全力でチェルシーに注いでいる。

「メイジーは頭はおかしいけど、才能だけは認めるよ」

　実妹に酷い言い草だが、直感のメイジーと、分析的なリサールは仲は悪くないのだが、いつも喧嘩している。

「酷い言い草ね…」
「何を考えているのか分からないのだから、仕方ないでしょう」
「メイジーもそう思っているわよ…双子なのに、どうしてなのかしら」

　子どもの頃から、二人とも一筋縄ではいかなかったが、喧嘩を止めるのもチェルシーの役割であった。

「メイジーのことは良いんです！」
「仲良くして頂戴…」
「父様も叱って置きましたからね！」
「あら、会えたの？」
「引っ張り出しましたよ！頭のおかしい頂点なのですから」

　メイジーとリサールも、両親のことは頼りにならない。幼い頃は分からなかったが、成長すればチェルシーが親代わりを行っていることも分かっていた。

　両親にも話をしたこともあるが、改善されたことはないので、諦めることになった。だからこそ、チェルシーが代わりをしていることも、強く理解した。

「そこは否定は出来ないけど…」

　リパートはリサールに怒られたくらい、何も感じていないだろうが、言ってくれただけでも有難いと思うべきだろう。