【完結】永遠の愛にはイロドリを

野村にれ

文字の大きさ
56 / 85

絶望

しおりを挟む
「ビアンカ伯母様には、全て話してありますわ」

 チェルシーはトートレイ伯爵家で一人で苦労していることを、ビアンカも知っており、何かあったら言って来なさいと言われている。

 今回の件もルイだけでも十分だったが、念のために全て話してあり、チェルシーの意志は尊重してくれたが、馬鹿な家族だと評価を下されている。

「え…」
「伯母様には気に掛けて貰っておりますから。フォスト侯爵家のことも、縁が切れて良かったと申しております」
「そんな…」
「嘘…」

 間接的ではあるが、ビアンカに言われたことで、二人は酷くショックを受けた。

「頼んでもいなければ、再婚の話もないのに、私を理不尽な再婚から守るためなどと勝手に言い、恋人と一緒にいたいために契約結婚を持ち掛けるなど、再婚を強要されるなら、あらゆる力を駆使して、断れますのに」

 ビアンカのことでチェルシーが似ていることで、嫁に出来たらと考えていたのに、ビアンカに頼めば、他国とはいえ、公爵家の力を使うことは可能だろうことに、ようやく気付いた。

「だけど、了承してもいいと思ったのでしょう?」
「ですから、数年の話だと思っていたのですよ」
「数年…」
「キャローズさんが子どもを産めば、終わりにしようと思っておりましたの」
「でも、産んでいないわ」

 シルヴァルはキャローズとの子どもを望んでいたが、産ませるつもりもなければ、いずれ目が覚めるだろうと考えていた。

 チェルシーやルイはキャローズに、避妊薬を服用させていたのではないかと疑っていたが、当然のように服用させており、シルヴァルも自ら服用していたので、妊娠することはまずない状況だった。

「その前にキャローズさんと別れたことで、契約は終了しましたから」
「シルヴァルのことは、何とも思っていないの?」
「横恋慕する趣味はございませんわ、そうでしょう?」

 いい年をした夫婦が、恋人もいる男性との契約結婚から愛が芽生えるなどと、考えていたのだとしたら、頭の中が幼過ぎると判断するところである。

「でも…」
「私の夫はロインだけでございます」
「子どもを産みたくないの?」
「ええ、フェルニナ伯爵家には義弟夫妻がおり、私が産む必要もありませんし、ロインではないのなら要りませんわ」
「でも、女の幸せは」
「私は好きな方と結婚することが出来て、十分幸せです。人に決めて貰うことではありませんわ」

 お前に決めて貰うことはないと、チェルシーと言っているのである。

「っ」
「もうよろしいですか?」
「本当に無理なんだな?」

 キラードは諦めきれず、最後にもう一度、問うことにした。

「最初から終わりが見えていたことです」
「そうか…帰ろう」
「あなた…」

 ようやく帰って行く姿を見て、チェルシーが危機回避をしていたこともあるが、下品な人たちではなかったが、トートレイ伯爵家とは違う親としては問題があるのだと思っていた。

「もう来ないで欲しいですわね」
「大丈夫でしょう、伯母様のファンだったのかしら?」
「そのような感じでしたね」
「まだしつこくされるようなら、伯母様に頼もうかしら?でも、わざわざ来て貰うのもねって、ルイ様に頼んで置いて、それは失礼しかしら」

 ビアンカは元気ではあるが、隣国であるために、余程のことではない限りは頼むことはしなかった。ルイ様に頼んだのも、結婚のことがあったからである。

「ルイ様は頼って欲しいと言われているのですから、問題ございません」
「そうかしら。はあ…念願の恋人と別れたのだから、ちゃんとした妻を探すことに尽力すればよろしいのに」
「おそらく、そうするのではありませんか」
「そうね」

 チェルシーに言われたことと、ビアンカにも知られたことから、キラードとリーリアンがチェルシーを訪ねて来ることはなかった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

「君は完璧だから、放っておいても大丈夫」と笑った夫。~王宮から私が去ったあと「愛していた」と泣きついても、もう手遅れです~

水上
恋愛
「君は完璧だから、放っておいても大丈夫だ」 夫である王太子はそう笑い、泣き真似が得意な見習い令嬢ばかりを優先した。 王太子妃セシリアは、怒り狂うこともなく、静かに心を閉ざす。 「左様でございますか」 彼女は夫への期待というノイズを遮断し、離縁の準備を始めた。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある

柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった 王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。 リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。 「わかりました。あなたには、がっかりです」 微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。

白い結婚の末、離婚を選んだ公爵夫人は二度と戻らない』

鍛高譚
恋愛
白い結婚の末、「白い結婚」の末、私は冷遇され、夫は愛人を溺愛していた――ならば、もう要らないわ」 公爵令嬢 ジェニファー・ランカスター は、王弟 エドワード・クラレンス公爵 のもとへ政略結婚として嫁ぐ。 だが、その結婚生活は冷たく空虚なものだった。夫は愛人 ローザ・フィッツジェラルド に夢中になり、公爵夫人であるジェニファーは侮辱され、無視され続ける日々。 ――それでも、貴族の娘は耐えなければならないの? 何の愛もなく、ただ飾り物として扱われる結婚に見切りをつけたジェニファーは 「離婚」 を決意する。 しかし、王弟であるエドワードとの離婚は容易ではない。実家のランカスター家は猛反対し、王宮の重臣たちも彼女の決断を 「公爵家の恥」 と揶揄する。 それでも、ジェニファーは負けない。弁護士と協力し、着々と準備を進めていく。 そんな折、彼女は北方の大国 ヴォルフ公国の大公、アレクサンダー・ヴォルフ と出会う。 温かく誠実な彼との交流を通じて、ジェニファーは 「本当に大切にされること」 を知る。 そして、彼女の決断は、王都の社交界に大きな波紋を呼ぶこととなる――。 「公爵夫人を手放したことを、いつか後悔しても遅いわ」 「私はもう、あなたたちの飾り人形じゃない」 離婚を巡る策略、愛人の凋落、元夫の後悔――。 そして、新たな地で手にした 「愛される結婚」。

「君は地味な裏方だ」と愛人を優遇するサイコパス気質の夫。〜私が去った後、商会の技術が全て私の手によるものだと気づいても、もう手遅れです〜

水上
恋愛
「君は地味だから裏方に徹しろ」 効率主義のサイコパス気質な夫は、妻であるクララの磨いた硝子を愛人の手柄にし、クララを工房に幽閉した。 彼女は感情を捨て、機械のように振る舞う。 だが、クララの成果を奪い取り、夫が愛人を壇上に上げた夜、クララの心は完全に凍りついた。 彼に残した書き置きは一通のみ。 クララが去った後、商会の製品はただの石ころに戻り、夫の計算は音を立てて狂い始める。 これは、深い絶望と、遅すぎた後悔の物語。

お望み通り、消えてさしあげますわ

梨丸
恋愛
一国の次期王妃と言われていた子爵令嬢アマリリス。 王太子との結婚前夜、彼女は自ら火を放ち、死んだ。 国民達は彼女の死を特に気にもしなかった。それどころか、彼女の死を喜ぶ者もいた。彼女の有していた聖女の力は大したものではなかったし、優れているのは外見だけの“役立たずの聖女”だと噂されるほどだったから。 彼女の死後、すぐさま後釜として皆に好かれていた聖女が次期王妃に召し上げられた。 この国はより豊かになる、皆はそう確信した。 だが、“役立たずの聖女”アマリリスの死後──着実に崩壊は始まっていた。 ※投稿してから、誤字脱字などの修正やわかりにくい部分の補足をすることがあります。(話の筋は変わらないのでご安心ください。) ※この調子だと短編になりそうです。

彼女の離縁とその波紋

豆狸
恋愛
夫にとって魅力的なのは、今も昔も恋人のあの女性なのでしょう。こうして私が悩んでいる間もふたりは楽しく笑い合っているのかと思うと、胸にぽっかりと穴が開いたような気持ちになりました。 ※子どもに関するセンシティブな内容があります。

いいえ、望んでいません

わらびもち
恋愛
「お前を愛することはない!」 結婚初日、お決まりの台詞を吐かれ、別邸へと押し込まれた新妻ジュリエッタ。 だが彼女はそんな扱いに傷つくこともない。 なぜなら彼女は―――

処理中です...