【完結】永遠の愛にはイロドリを

使命感

　キャローズが視線を感じたのも、やはり似ているということで、見ていた男性がいたからである。

　間違いではないかと言ったクラスメイトは、露出をしているモデルだと聞いていたことから、隠したかったのではないかと思い、口を挟んだのである。

　キャローズはそれ以降は、聞かれることはなかったが、満足であった。

　そして、街歩きの際にこれまで気にして見たこともなかった、建物の中にモデル事務所を発見した。

「モデル事務所…これは運命だわ」

　キャローズは、そのまま事務所を訪ねることにした。扉を開けると、美しい女性が待っていた。

「何か御用ですか？」
「あの、モデルをしたいのですけど」
「モデルを？」
「はい、何度もモデルに間違われているんです」
「へえ、そうなの」

　ベアーラは正直、特出すべき点のない女性だと感じたために、嘘なのか分からないが、驚いた声を出してしまった。

「はい！」
「あなたは平民？」
「準男爵の娘です」
「そう、登録料は掛かるのだけど、モデルの登録をしてみる？」

　こういった子が意外と需要がある場合もあるために、貴族令嬢であれば色々手順を踏むが、平民なら登録を進めてみるのもいいかと思った。

「登録ですか？」
「ええ、写真を撮って、モデルを必要としている方がその写真の中から選ぶの。だから登録しても、お呼びが掛からないとお金にはならないのだけど」

　キャローズはそんな言い訳をしなくても、仕事はすぐ来ることになるだろうと思いながら、登録料を聞くと、キャローズの手持ちで足りたので、登録することにした。

「登録します」
「そう？じゃあ、服を着替えて貰ってもいいかしら？」
「はい」
「メイクは直すだけで良さそうね」

　キャローズはメイクを簡単に直して貰い、シンプルなワンピースを渡されて、着替えた。

「こんなシンプルなワンピースで良いのですか？」

　もっとメイクもドレスも、きちんとしてくれば良かったと後悔していた。

「ええ、モデルを必要とされる方の色に染まるのが仕事ですから、シンプルな方がいいのよ」
「なるほど…」

　キャローズはベアーラの言われた様にポーズを取って、写真を撮って貰い、ここから私のモデル人生が始まるのだと、興奮していた。

「どんな仕事を受ける気があるかしら？」
「どんな？」

　ベアーラはフォトモデル、ショーモデル、デッサンモデル、ヌードモデル、パーツモデルなどと書かれた紙を見せた。

「パーツモデルと言うのは何ですか？」

　他のモデルは分かったが、パーツモデルだけがよく分からなかった。

「手とか、足とか、一部のモデルよ」
「そうなんですね、フォトモデル、ショーモデルが良いです」
「そう…」

　デッサンモデルくらいかなと思っていたベアーラは、こういった子もいるために驚くことなく、了承した。

「他のモデルは難しい？」
「はい…やはり顔を見せたいので」
「分かったわ。でも、フォトモデル、ショーモデルは沢山いるし、人気だから、なかなか仕事はないかもしれないわ。それでもいい？」
「はい！」
「では、依頼があったらパッソ家に連絡をするわね」
「はい、よろしくお願いいたします」

　キャローズは、自信満々に帰って行った。

「ベアーラさん、あの子では無理でしょう」
「そうですよ」
「でも希望は聞かないとね」

　メイクとカメラマンにベアーラも分かっていたことを言われたが、夢を持ってモデルになりたいという子も多く、最初から現実を見せたくはないと考えていた。

　キャローズは、毎日ご機嫌であった。

　二日に一回は実家に手紙を確認しに行くが、連絡はないままだった。ベアーラにも聞きに行ったりもしたが、指名はまだないと言われてしまう。

「どうしてですか！」
「指名がないとモデルは仕事がないと言ったでしょう？」
「…そうですけど」

　絶対なる自信があったのに、このモデル事務所では駄目なのではないかと考えるようになっていた。

　何も知らないシルヴァルの方にも、珍しく訪ねて来たクラスメイトがいた。