【完結】永遠の愛にはイロドリを

野村にれ

文字の大きさ
59 / 85

相違

しおりを挟む
 別れてから、もう少しで一年経つ頃であった。

 外が騒がしい様子にシルヴァルも気付き、執事によるとお通しすることは出来ないと言っても、騒いでいるそうだった。

 両親がいれば、すぐに追い返されていただろうが、二人は領地に行っており、不在であった。

 だが、騒がしい声に本当にキャローズなのかとすら思うほどだった。私が対応すると、門へ向かうと、確かにキャローズではあった。

 見た目はあまり変わっていないように見えたが、よく見れば化粧が少し濃くなっていた。

「シルヴァル!会いたかったわ!」
「何しに来たんだい?」
「会いに来たのよ!」

 ここで騒いでは人目も気になるために、邸に入れようとすると、執事は追い返した方がいいと言ったが、話をするだけだと、入れることにした。

 執事とメイドを立ち会わせて、応接室で話をすることにした。

「それで、どうして会いに来たんだい?」
「私に会いたいのではないかと思って…」
「そんなことはない」
「…え」
「別れたのだから、当然だろう?」

 キャローズはその言葉に、なぜか驚いた顔をした。

「でも、嫌い合って別れたわけではないでしょう?」
「それでも別れたことは、事実だろう?」

 シルヴァルも初めての別れであったが、だからこそ別れというのは縁が切れることだと思っており、理由は関係ないと思っていた。

 だが、キャローズはパッソ家では父や兄は別れて戻って来たのかくらいしか思っておらず、友人も言わずもがなで、頼れる相手はシルヴァルしかいなかった。

「モデルの仕事がないの…」
「そうなのか…」
「そうなの!」

 すぐに仕事が舞い込んで来ると思っていたキャローズだったが、そうではない現実に直面したが、たまたま時期が悪かったのかもしれないと待ち続けていた。

 それでも来るのは、願っているショーモデルやファッションモデルではなく、何名か雇うから使ってもいいというデッサンモデルくらいで、脱いでくれるならという話もあったが、勿論断った。

 ゆえにキャローズは、何もしていない。シルヴァルと恋人関係だった時は、何もしていなくても、何もないと感じなかったが、家にいれば食住は困らないが、その他に父や兄にお金を貰うようなことも出来ない。

 シルヴァルから貰ったお金はあったが、これからモデルとして見られるのだからと、美容やドレスを買ったりもしたために、既にない。

 働くこともなかったキャローズは、そろそろ一年経つことから、父や兄に働けと言われるようになり、パッソ家は居心地の悪い場所となっていた。

 それならば、シルヴァルとよりを戻せばいいのではないかと、やって来たのである。

「事務所が悪いのかと思って、別のところに移ろうと思ったの。そうしたら、ショーモデルもファッションモデルも無理だって言われて…どこに行ってもそう言われるの。おかしいでしょう?」
「私はモデルのことは分からないから」
「でも、モデルに何度も間違われたのよ!モデルをしているとも言われていたの!」

 その言葉にシルヴァルは、絵姿のモデルをしているのかという意味ではないかと、直感的に思った。

 キャローズはおそらく今でも似ていると言われていることは、知らないのだろうと思ったが、作者が分かり、作者にもキャローズではないと言った手前、話さない方がいいだろうと判断した。

「私に言われても困る」
「シルヴァルの力でどうにかならないの?」
「私は分からないと言っているだろう」
「でも…こんなのおかしいの」

 そもそもシルヴァルはモデルを知らないこともあるが、元々華やかさを重視していない貴族であったことから、人に見られに行く派手な世界のような印象で、あまり好意的に思えなかった。

 だからこそ、キャローズがモデルになると言った時に、気持ちが下がってしまったことも確かだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

私のための戦いから戻ってきた騎士様なら、愛人を持ってもいいとでも?

睡蓮
恋愛
全7話完結になります!

もう演じなくて結構です

梨丸
恋愛
侯爵令嬢セリーヌは最愛の婚約者が自分のことを愛していないことに気づく。 愛しの婚約者様、もう婚約者を演じなくて結構です。 11/5HOTランキング入りしました。ありがとうございます。   感想などいただけると、嬉しいです。 11/14 完結いたしました。 11/16 完結小説ランキング総合8位、恋愛部門4位ありがとうございます。

踏み台(王女)にも事情はある

mios
恋愛
戒律の厳しい修道院に王女が送られた。 聖女ビアンカに魔物をけしかけた罪で投獄され、処刑を免れた結果のことだ。 王女が居なくなって平和になった筈、なのだがそれから何故か原因不明の不調が蔓延し始めて……原因究明の為、王女の元婚約者が調査に乗り出した。

【完結】旦那様に学園時代の隠し子!? 娘のためフローレンスは笑う-昔の女は引っ込んでなさい!

恋せよ恋
恋愛
結婚五年目。 誰もが羨む夫婦──フローレンスとジョシュアの平穏は、 三歳の娘がつぶやいた“たった一言”で崩れ落ちた。 「キャ...ス...といっしょ?」 キャス……? その名を知るはずのない我が子が、どうして? 胸騒ぎはやがて確信へと変わる。 夫が隠し続けていた“女の影”が、 じわりと家族の中に染み出していた。 だがそれは、いま目の前の裏切りではない。 学園卒業の夜──婚約前の学園時代の“あの過ち”。 その一夜の結果は、静かに、確実に、 フローレンスの家族を壊しはじめていた。 愛しているのに疑ってしまう。 信じたいのに、信じられない。 夫は嘘をつき続け、女は影のように フローレンスの生活に忍び寄る。 ──私は、この結婚を守れるの? ──それとも、すべてを捨ててしまうべきなの? 秘密、裏切り、嫉妬、そして母としての戦い。 真実が暴かれたとき、愛は修復か、崩壊か──。 🔶登場人物・設定は筆者の創作によるものです。 🔶不快に感じられる表現がありましたらお詫び申し上げます。 🔶誤字脱字・文の調整は、投稿後にも随時行います。 🔶今後もこの世界観で物語を続けてまいります。 🔶 いいね❤️励みになります!ありがとうございます!

【完結】以上をもちまして、終了とさせていただきます

楽歩
恋愛
異世界から王宮に現れたという“女神の使徒”サラ。公爵令嬢のルシアーナの婚約者である王太子は、簡単に心奪われた。 伝承に語られる“女神の使徒”は時代ごとに現れ、国に奇跡をもたらす存在と言われている。婚約解消を告げる王、口々にルシアーナの処遇を言い合う重臣。 そんな混乱の中、ルシアーナは冷静に状況を見据えていた。 「王妃教育には、国の内部機密が含まれている。君がそれを知ったまま他家に嫁ぐことは……困難だ。女神アウレリア様を祀る神殿にて、王家の監視のもと、一生を女神に仕えて過ごすことになる」 神殿に閉じ込められて一生を過ごす? 冗談じゃないわ。 「お話はもうよろしいかしら?」 王族や重臣たち、誰もが自分の思惑通りに動くと考えている中で、ルシアーナは静かに、己の存在感を突きつける。 ※39話、約9万字で完結予定です。最後までお付き合いいただけると嬉しいですm(__)m

『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』

夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」 教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。 ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。 王命による“形式結婚”。 夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。 だから、はい、離婚。勝手に。 白い結婚だったので、勝手に離婚しました。 何か問題あります?

最愛の人に裏切られ死んだ私ですが、人生をやり直します〜今度は【真実の愛】を探し、元婚約者の後悔を笑って見届ける〜

腐ったバナナ
恋愛
愛する婚約者アラン王子に裏切られ、非業の死を遂げた公爵令嬢エステル。 「二度と誰も愛さない」と誓った瞬間、【死に戻り】を果たし、愛の感情を失った冷徹な復讐者として覚醒する。 エステルの標的は、自分を裏切った元婚約者と仲間たち。彼女は未来の知識を武器に、王国の影の支配者ノア宰相と接触。「私の知性を利用し、絶対的な庇護を」と、大胆な契約結婚を持ちかける。

諦めていた自由を手に入れた令嬢

しゃーりん
恋愛
公爵令嬢シャーロットは婚約者であるニコルソン王太子殿下に好きな令嬢がいることを知っている。 これまで二度、婚約解消を申し入れても国王夫妻に許してもらえなかったが、王子と隣国の皇女の婚約話を知り、三度目に婚約解消が許された。 実家からも逃げたいシャーロットは平民になりたいと願い、学園を卒業と同時に一人暮らしをするはずが、実家に知られて連れ戻されないよう、結婚することになってしまう。 自由を手に入れて、幸せな結婚まで手にするシャーロットのお話です。

処理中です...