【完結】永遠の愛にはイロドリを

野村にれ

文字の大きさ
67 / 85

予想外

しおりを挟む
「こんな風に描いて欲しいとか、もっと可愛らしくしたりとか」
「絵を依頼するということですか?」
「そうです!」
「お忙しいので、難しいかと思います。申し訳ございません」

 今や男性にとても人気の高い絵姿は、自分も描いて欲しいということは時折ある。絵姿の内容が内容であるために、妻を描いて欲しいということもあるが、愛人を描いて欲しいという要望も多い。

 だが、チェルシーは絵姿の商売として描いているので、個別に依頼を受けることはなく、丁寧にお断りしている。

 しかも無理に探ろうとすれば、出て来るのはルイである。

 ゆえに相手がキャローズでも、他者と同じように難しいということにした。

「もっと、こうじゃなくて、素敵に書いて貰えたらと思って。助言?したいんです」
「申し訳ございませんが、絵の依頼は受けてらっしゃいません」
「違うんです!実は、私、この絵姿の方に似ていると言われていて、だから」
「…え?似ている?」

 ついにシトリンのことを切り出されたので、あくまで自然に驚いて見せた。

「はい、この子に似ていると、でもいやらしい絵姿もあって、そうじゃなくて、もっと私を活かした絵にして貰ったら売れると思うんです」

 まさか自分の意見を取り入れて貰おうと考えているとは思わず、さすがのグラサも焦ったが、その焦りを利用することにした。

「申し訳ございませんが、絵姿にモデルはおりませんので、似ているとおっしゃられても、お応えいたし兼ねます」
「でも、いやらしい絵姿は…なんか嫌な気持ちになるんです」
「そういった商品でございますし、だからこそ皆様に好評をいただいております。それと…失礼ですが、私には似ているとは思いませんが」
「え?似ています!」

 キャローズはグラサの前で、シトリンの絵姿を自分の顔の横に並べて訴えた。

 だが、グラサにはシトリンの方が美人だなとしか思えず、正直体つきがドレスを着ている状態でも、並べてはいけないと思った。

「そうでしょうか…?気のせいではありませんか?」
「似ています!そっくりじゃないですか!だから、私には権利があると思うのです」
「何の権利でございますか?」
「助言する権利です。人気がないなんて、私が人気がないみたいで…とても嫌な気分になるんですよ!」

 グラサが丁寧な態度を良いことに、キャローズは思っていることを全て言ってしまっていた。

「申し訳ございませんが、こちらではそのようなことを言われても、困るとしか言えません」
「だから、作者の人に会わせて欲しいんです!きっとどこかで私を見て、描いたんだと思うんです。だから、ちゃんとして貰いたくて!」

 キャローズは自分を見掛けて、綺麗だから描いたと思い込んでいた。

「申し訳ございません、そう言ったお話でしたら、こちらも対応をしなければなりません。お客様ではないということでよろしいですか?」

 予想外ではあったが、自分をモデルにしていると言い出したことから、これ以上言うなら、そろそろベイクに交代しようと舵を切ることにした。

「っあ、いえ、私は良かれと思って言っただけで、違います」
「ご意見としてはいただきますが、要望は難しいと思います」
「そんな!そうですか…」

 良かれと思って言ったのに、似ているのだから、喜ばれると思っていた。だが、スチュートに脅されていたことから、尻つぼみになっていった。

「もう一つの売り場もご案内しましょうか?」
「あ、はい…」

 いやらしいと言っていた方になるだろうが、グラサは敢えて連れて行くことにした。その際に、様子を見ていたミズクと目を合わせた。

 奥まった場所に連れて行くと、キャローズは口元を押さえた。

 人気のあるサファイアとパールは、あられもない姿の大きな絵姿も飾ってあるために、男性にもではあるが、女性にはさらに刺激的である。

 勿論、少ないがシトリンの絵姿もある。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜

放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!? 「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」 不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。

なぜ、私に関係あるのかしら?

シエル
ファンタジー
「初めまして、アシュフォード公爵家一女、セシリア・アシュフォードと申します」 彼女は、つい先日までこの国の王太子殿下の婚約者だった。 そして今日、このトレヴァント辺境伯家へと嫁いできた。 「…レオンハルト・トレヴァントだ」 非道にも自らの実妹を長年にわたり虐げ、婚約者以外の男との不適切な関係を理由に、王太子妃に不適格とされ、貴族学院の卒業式で婚約破棄を宣告された。 そして、新たな婚約者として、その妹が王太子本人から指名されたのだった。 「私は君と夫婦になるつもりはないし、辺境伯夫人として扱うこともない」 この判断によって、どうなるかなども考えずに… ※ 中世ヨーロッパ風の世界観です。 ※ ご都合主義ですので、ご了承下さい、 ※ 画像はAIにて作成しております

冷酷伯爵ディートリヒは、去った妻を取り戻せない

くろねこ
恋愛
名門伯爵家に政略結婚で嫁いだ、正妻エレノア・リーヴェルト。夫である伯爵ディートリヒ・フォン・アイゼンヴァルトは、 軍務と義務を最優先し、彼女に関心を向けることはなかった。 言葉も、視線も、愛情も与えられない日々。それでも伯爵夫人として尽くし続けたエレノアは、ある一言をきっかけに、静かに伯爵家を去る決意をする。 ――そして初めて、夫は気づく。 自分がどれほど多くのものを、彼女から与えられていたのかを。 一方、エレノアは新たな地でその才覚と人柄を評価され、 「必要とされる存在」として歩き始めていた。 去った妻を想い、今さら後悔する冷酷伯爵。前を向いて生きる正妻令嬢。 これは、失ってから愛に気づいた男と、 二度と戻らないかもしれない夫婦の物語。 ――今さら、遅いのです。

夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。 神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。 もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。 生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。 過去世と同じ轍を踏みたくない……

婚約破棄はハニートラップと共に

あんど もあ
ファンタジー
卒業パーティーで、平民の血を引いた子爵令嬢を連れた王太子が婚約者の公爵令嬢に婚約破棄を宣言した! さて、この婚約破棄の裏側は……。

彼女の離縁とその波紋

豆狸
恋愛
夫にとって魅力的なのは、今も昔も恋人のあの女性なのでしょう。こうして私が悩んでいる間もふたりは楽しく笑い合っているのかと思うと、胸にぽっかりと穴が開いたような気持ちになりました。 ※子どもに関するセンシティブな内容があります。

初夜に前世を思い出した悪役令嬢は復讐方法を探します。

豆狸
恋愛
「すまない、間違えたんだ」 「はあ?」 初夜の床で新妻の名前を元カノ、しかも新妻の異母妹、しかも新妻と婚約破棄をする原因となった略奪者の名前と間違えた? 脳に蛆でも湧いてんじゃないですかぁ? なろう様でも公開中です。

ただ誰かにとって必要な存在になりたかった

風見ゆうみ
恋愛
19歳になった伯爵令嬢の私、ラノア・ナンルーは同じく伯爵家の当主ビューホ・トライトと結婚した。 その日の夜、ビューホ様はこう言った。 「俺には小さい頃から思い合っている平民のフィナという人がいる。俺とフィナの間に君が入る隙はない。彼女の事は母上も気に入っているんだ。だから君はお飾りの妻だ。特に何もしなくていい。それから、フィナを君の侍女にするから」 家族に疎まれて育った私には、酷い仕打ちを受けるのは当たり前になりすぎていて、どう反応する事が正しいのかわからなかった。 結婚した初日から私は自分が望んでいた様な妻ではなく、お飾りの妻になった。 お飾りの妻でいい。 私を必要としてくれるなら…。 一度はそう思った私だったけれど、とあるきっかけで、公爵令息と知り合う事になり、状況は一変! こんな人に必要とされても意味がないと感じた私は離縁を決意する。 ※「ただ誰かに必要とされたかった」から、タイトルを変更致しました。 ※クズが多いです。 ※史実とは関係なく、設定もゆるい、ご都合主義です。 ※独特の世界観です。 ※中世〜近世ヨーロッパ風で貴族制度はありますが、法律、武器、食べ物など、その他諸々は現代風です。話を進めるにあたり、都合の良い世界観となっています。 ※誤字脱字など見直して気を付けているつもりですが、やはりございます。申し訳ございません。

処理中です...