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「これ…は…」
「刺激的ではございますが、とても美しいと思いませんか?」
キャローズは絵姿を見てはいるが、あまり直視できない様子に、グラサは変わらず丁寧に問い掛けた。
「私が見られているようです!」
グラサはどこがだよと思いながらも、自分を美女だと勘違いしているキャローズとして、扱うことに決めた。
「こちら創作物でございます」
「違います!私はこんな、こんなことしていません!」
キャローズはシトリンの艶めかしい姿を指差して、大きな声を上げた。
「それはそうです、こちらはあなた様ではないと申しております」
「でも、そっくりじゃないですか!」
「私はそうは思いませんが…」
グラサは困ったような顔をして、首を傾けた。ミズクに呼ばれたベイクもいよいよ、キャローズの元へ行くことになった。
「どうかなさいましたか?」
「お客様が、なぜかシトリンがご自身に似ていると言われまして…」
「似ている?」
キャローズは分かるはずもないが、グラサとベイクの茶番の始まりであった。
「店長さんですか?」
「会長です」
「…あ、はい」
世間知らずなキャローズは、店長も会長も同じだろうと、変なこだわりがあるのだろうと思っていた。
「あの、私に似ているんです!だから、作者の方に止めて欲しいというか、助言をして、この絵をどうにかして欲しくて!でも良かれと思って言っているんです」
「…こちらは創作物であり、似ているというだけでは、こちらとしては難癖を付けていると考えますが、いかがでしょうか?」
「この子、私に似ているんです!」
あられもない姿に手に取ることはしなかったが、キャローズは下段に飾られているシトリンを指差した。
「あなたをモデルにした、と言いたいということでしょうか?」
「そうです!私、モデル、モデルをしているんです!もしかしたら、その写真を見たのかもしれません」
ようやくモデルという言葉に、キャローズはモデル事務所のことを思い出した。もしかしたら、画家があの撮った写真を見て、利用したのではないかと行きついた。
「そうですか。ですが、こちらの絵姿は全員、モデルはおりませんし、モデルを頼んだこともありません」
「でも、おかしいじゃないですか!絶対、私の写真を見たんです!それで、こんないやらしい絵を描かれた、私の気持ちにもなってください」
「分かりました」
「分かってくれたんですね!」
少し怖かったが、分かって貰えて良かったと、キャローズはホッとした。
「じゃあ、こんな絵ではなく、私を活かした絵を描いて貰って、そうしたら、きっと売れますよ!絶対上位になります」
売れていると聞いたので、この絵姿に似ているモデルとして、仕事が来るかもしれないと期待した。そのためにはいやらしい姿はイメージが悪くなるから、これからはもっと可愛らしい路線にして貰わないといけない。
「そうではありません。どこのどなたかは分かりませんが、営業妨害ということが、分かったということです」
「え?」
「通報いたしますので、こちらでお待ちください!誰か拘束してくれ」
「通報?え?そんな…」
すぐさま警備員がやって来たが、キャローズはフォスト侯爵家でも通報されそうになったこともあり、またどうしてと思いながらも、慌てていた。
警備員にはすぐに拘束しなくてもいいと、事前に伝えてあったので、構えだけしている。
「詳しいことは騎士団で聴取を受けてください」
「営業妨害なんてしていません!」
「そのような大きな声を出して置いて、違うと言うのですか?」
奥まった場所であるために注目を集めると言うほどではなかったが、客もおり、何を騒いでいるのかと見る者もいる。
分かった上でグラサは誘導し、ベイクも移動したからこそ近付いたのである。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
本日もお読みいただきありがとうございます。
本日は1日2話、投稿いたします。
次は17時です。
どうぞよろしくお願いいたします。
「刺激的ではございますが、とても美しいと思いませんか?」
キャローズは絵姿を見てはいるが、あまり直視できない様子に、グラサは変わらず丁寧に問い掛けた。
「私が見られているようです!」
グラサはどこがだよと思いながらも、自分を美女だと勘違いしているキャローズとして、扱うことに決めた。
「こちら創作物でございます」
「違います!私はこんな、こんなことしていません!」
キャローズはシトリンの艶めかしい姿を指差して、大きな声を上げた。
「それはそうです、こちらはあなた様ではないと申しております」
「でも、そっくりじゃないですか!」
「私はそうは思いませんが…」
グラサは困ったような顔をして、首を傾けた。ミズクに呼ばれたベイクもいよいよ、キャローズの元へ行くことになった。
「どうかなさいましたか?」
「お客様が、なぜかシトリンがご自身に似ていると言われまして…」
「似ている?」
キャローズは分かるはずもないが、グラサとベイクの茶番の始まりであった。
「店長さんですか?」
「会長です」
「…あ、はい」
世間知らずなキャローズは、店長も会長も同じだろうと、変なこだわりがあるのだろうと思っていた。
「あの、私に似ているんです!だから、作者の方に止めて欲しいというか、助言をして、この絵をどうにかして欲しくて!でも良かれと思って言っているんです」
「…こちらは創作物であり、似ているというだけでは、こちらとしては難癖を付けていると考えますが、いかがでしょうか?」
「この子、私に似ているんです!」
あられもない姿に手に取ることはしなかったが、キャローズは下段に飾られているシトリンを指差した。
「あなたをモデルにした、と言いたいということでしょうか?」
「そうです!私、モデル、モデルをしているんです!もしかしたら、その写真を見たのかもしれません」
ようやくモデルという言葉に、キャローズはモデル事務所のことを思い出した。もしかしたら、画家があの撮った写真を見て、利用したのではないかと行きついた。
「そうですか。ですが、こちらの絵姿は全員、モデルはおりませんし、モデルを頼んだこともありません」
「でも、おかしいじゃないですか!絶対、私の写真を見たんです!それで、こんないやらしい絵を描かれた、私の気持ちにもなってください」
「分かりました」
「分かってくれたんですね!」
少し怖かったが、分かって貰えて良かったと、キャローズはホッとした。
「じゃあ、こんな絵ではなく、私を活かした絵を描いて貰って、そうしたら、きっと売れますよ!絶対上位になります」
売れていると聞いたので、この絵姿に似ているモデルとして、仕事が来るかもしれないと期待した。そのためにはいやらしい姿はイメージが悪くなるから、これからはもっと可愛らしい路線にして貰わないといけない。
「そうではありません。どこのどなたかは分かりませんが、営業妨害ということが、分かったということです」
「え?」
「通報いたしますので、こちらでお待ちください!誰か拘束してくれ」
「通報?え?そんな…」
すぐさま警備員がやって来たが、キャローズはフォスト侯爵家でも通報されそうになったこともあり、またどうしてと思いながらも、慌てていた。
警備員にはすぐに拘束しなくてもいいと、事前に伝えてあったので、構えだけしている。
「詳しいことは騎士団で聴取を受けてください」
「営業妨害なんてしていません!」
「そのような大きな声を出して置いて、違うと言うのですか?」
奥まった場所であるために注目を集めると言うほどではなかったが、客もおり、何を騒いでいるのかと見る者もいる。
分かった上でグラサは誘導し、ベイクも移動したからこそ近付いたのである。
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本日もお読みいただきありがとうございます。
本日は1日2話、投稿いたします。
次は17時です。
どうぞよろしくお願いいたします。
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