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初婚
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シルヴァルは、様々な令嬢に会い、二つ年上の伯爵家の令嬢と結婚した。
キャローズのことは、ジラードから聞かされた。
その前にまた手紙が届いていたようだが、地方に追いやられそうになって、送って来たのだろうと思った。
キャローズは結局、王都に戻ろうとしたが、パット家はようやくスチュートが結婚をして、お前に居場所はないと言われ、王都に戻るなら自分で部屋を借りるしかなかったが、そんなお金はなかった。
しかも、シルヴァルが結婚したということも聞くことになった。
もしかして私のために、契約結婚をしてくれたのではないかなどと思うことも、さすがになかった。
結局、叔母の元に戻るしかなかった。
だが、その後、子宮の病を患うことになり、何か言われたことはなかったかと言われて、ようやく妊娠したのではないかという時のことを思い出した。
「あ…」
「あったのかい?」
「検査をするようにと言われて、でもその時は妊娠だと思って、それが違って、ショックで…」
その後は、モデルのことで頭がいっぱいになって、検査のことなんてすっかり忘れていた。だが、今になって生理の出血量が増え、下腹部に痛みと便秘も酷くなり、病院を受診したのである。
「その時だったら、もっと小さかっただろうに」
「死ぬのですか?」
「死にはしない」
「だが、腫が大きくなってしまっている」
「もしかして、妊娠が出来ないのですか?」
キャローズは結婚の予定もなく、30歳を過ぎていた。
「絶対ではないけどね、予定があるのかい?」
「い、いえ…」
「薬は出すけど、これ以上、大きくなるようなら、摘出も考えなくてはならない」
「子宮を?」
「その可能性もある」
「そんな…」
薬が効き、子宮を摘出することはなかったが、結婚も出産もすることはないまま、閉経して、腫は小さくなっていった。
侯爵家の後継者を産む予定だったのに、どうしてこんなことになったのだろうかと思いながら、生涯を終えることになった。
皆とは違うという始めが良くなかったことで、キャローズは浮いたままであった。
ただ、地方ということで、絵姿のことを言われることはなかった。
絵姿をお土産で買って来る者もいたが、シトリンを買わなかったのか、キャローズが王都にいた頃と容姿が変わっていて、似ていなくなったせいなのか。
モデルかと問われることは、二度となかった。
シルヴァルは縁談相手の令嬢と会う度に、今となってはキャローズのどこが好きだったのだろうかと、思うことが増え、ジラードに相談をした。
「お前は恋に恋をして、実際のところは、あまり人に興味がないのではないか?」
「え?」
「契約結婚をするほどだったが、何もかも中途半端だっただろう?本気ならもっと調べて、化かされるようなこともなかったのではないか?」
シルヴァルは世間知らずだが、勉強が出来ないわけではなく、調べたりすることは出来ただろう。そこから導き出したのは、興味が薄いことだった。
「そんなことは」
「お前の家も複雑であることは分かっている、だからあまり考えないように、興味を持たなくなったのではないか?」
「そうなのか?」
「無意識にしていたのかもしれない」
「…チェルシー殿とロイン殿を羨ましいと思っていた」
「そうか、良いなという思いが、自分もとその時は思ったのかもしれないな」
「そう、かもしれない…結婚は難しいのかもしれない。姉上に頼んでみようか…」
交流もないが、ルイに言われたように姉に子どもがいるので、両親が反対が出来ない時になってから、継がせることを考えた。
「姉君に会いに行くのはいいと思う。だが、彼女は自分の幸せを得ている、どうしてもなら頼むべきだが…」
「姉上は私を嫌っているだろうからな」
「シルヴァルというよりは、ご両親だろう?」
シルヴァルは、リジュカ伯爵家に嫁いだ姉・ミシュリナを、初めて訪ねることにした。
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本日もお読みいただきありがとうございます。
明日が最終話です!
最後までどうぞよろしくお願いいたします。
キャローズのことは、ジラードから聞かされた。
その前にまた手紙が届いていたようだが、地方に追いやられそうになって、送って来たのだろうと思った。
キャローズは結局、王都に戻ろうとしたが、パット家はようやくスチュートが結婚をして、お前に居場所はないと言われ、王都に戻るなら自分で部屋を借りるしかなかったが、そんなお金はなかった。
しかも、シルヴァルが結婚したということも聞くことになった。
もしかして私のために、契約結婚をしてくれたのではないかなどと思うことも、さすがになかった。
結局、叔母の元に戻るしかなかった。
だが、その後、子宮の病を患うことになり、何か言われたことはなかったかと言われて、ようやく妊娠したのではないかという時のことを思い出した。
「あ…」
「あったのかい?」
「検査をするようにと言われて、でもその時は妊娠だと思って、それが違って、ショックで…」
その後は、モデルのことで頭がいっぱいになって、検査のことなんてすっかり忘れていた。だが、今になって生理の出血量が増え、下腹部に痛みと便秘も酷くなり、病院を受診したのである。
「その時だったら、もっと小さかっただろうに」
「死ぬのですか?」
「死にはしない」
「だが、腫が大きくなってしまっている」
「もしかして、妊娠が出来ないのですか?」
キャローズは結婚の予定もなく、30歳を過ぎていた。
「絶対ではないけどね、予定があるのかい?」
「い、いえ…」
「薬は出すけど、これ以上、大きくなるようなら、摘出も考えなくてはならない」
「子宮を?」
「その可能性もある」
「そんな…」
薬が効き、子宮を摘出することはなかったが、結婚も出産もすることはないまま、閉経して、腫は小さくなっていった。
侯爵家の後継者を産む予定だったのに、どうしてこんなことになったのだろうかと思いながら、生涯を終えることになった。
皆とは違うという始めが良くなかったことで、キャローズは浮いたままであった。
ただ、地方ということで、絵姿のことを言われることはなかった。
絵姿をお土産で買って来る者もいたが、シトリンを買わなかったのか、キャローズが王都にいた頃と容姿が変わっていて、似ていなくなったせいなのか。
モデルかと問われることは、二度となかった。
シルヴァルは縁談相手の令嬢と会う度に、今となってはキャローズのどこが好きだったのだろうかと、思うことが増え、ジラードに相談をした。
「お前は恋に恋をして、実際のところは、あまり人に興味がないのではないか?」
「え?」
「契約結婚をするほどだったが、何もかも中途半端だっただろう?本気ならもっと調べて、化かされるようなこともなかったのではないか?」
シルヴァルは世間知らずだが、勉強が出来ないわけではなく、調べたりすることは出来ただろう。そこから導き出したのは、興味が薄いことだった。
「そんなことは」
「お前の家も複雑であることは分かっている、だからあまり考えないように、興味を持たなくなったのではないか?」
「そうなのか?」
「無意識にしていたのかもしれない」
「…チェルシー殿とロイン殿を羨ましいと思っていた」
「そうか、良いなという思いが、自分もとその時は思ったのかもしれないな」
「そう、かもしれない…結婚は難しいのかもしれない。姉上に頼んでみようか…」
交流もないが、ルイに言われたように姉に子どもがいるので、両親が反対が出来ない時になってから、継がせることを考えた。
「姉君に会いに行くのはいいと思う。だが、彼女は自分の幸せを得ている、どうしてもなら頼むべきだが…」
「姉上は私を嫌っているだろうからな」
「シルヴァルというよりは、ご両親だろう?」
シルヴァルは、リジュカ伯爵家に嫁いだ姉・ミシュリナを、初めて訪ねることにした。
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本日もお読みいただきありがとうございます。
明日が最終話です!
最後までどうぞよろしくお願いいたします。
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