【完結】ご期待に沿えず、誠に申し訳ございません

野村にれ

文字の大きさ
46 / 131

相談1

しおりを挟む
「私は構いません。それよりも私がオマリー嬢を気遣ったせいだとしたら、申し訳ありません」
「いや、ロックスのせいではない」

 きっかけはサージの気付きではあったが、大袈裟に取ったのはエルドールとカイロスである。

「少しでも円滑にと思ってのことだったのですが…」
「ロックス様も腕を持たれたり、ボディタッチされていたでしょう?」

 ローズマリーはサージにも、オマリーが腕を持ったり、肩を触ったりしていたことを見たことがあった。

「…はい、最近はなくなりましたが、嫌だなと思っておりました。一度、止めて欲しいと言ったのですが」
「言ったのか?」

 エルドールもカイロスも言っていいものかと、言わずにいたが、一番言いそうにないサージが言っていたことに驚いた。

「はい、でも幼い頃からの癖で、ごめんなさいと言われて…振り払うと自意識過剰のようで、困っておりました」
「そうか…今は大丈夫か?」
「はい、最近はされていません」
「それなら良かった。先生に注意して貰うように頼んだんだ」
「そうだったのですか、助かりました」
「今回も先生方に相談して、手伝いをさせようと思っているのだ」
「はい」

 サージには、同じ学年の子爵令嬢の婚約者がいる。婚約者にボディタッチをされて困っているのだと、オマリーのことを話していた。

 気遣っていたのも、婚約者に爵位の高い方たちばかりだから、気にしてあげてと言われたからであった。ボディタッチも、やんわりと注意をしてみたらと言われて、注意をしたのである。

 だが、ちっとも効果はなかった。おかげで、サージの中で円滑に進むように、体調面などの上辺だけは気にする程度になったのである。

「何かあれば、オマリー嬢を戻すか、誰か別の者と言っても、誰か丁度いい人材はいるか?」
「ジャスミンは良くないでしょうし」

 ジャスミンはオマリーと明らかに揉めているので、丁度いいとは言えない。

「私も兄にというわけにはいきませんし」
「あっ、私には妹がおります」
「知っている」

 皆が今更だと思ったが、カイロスはこういったところがある。

「手伝わせましょう、ちょっと、いや、気は強いですが、賢い子ですから」

 気は強いという言葉にサージはビクリとしたことに、エルドールは気付いた。

「ロックス、大丈夫だ。リスカーダ嬢があたりがきついのはカイロスだけにだ。分別のある令嬢だから」

 カイロスもだが、エルドールも気の強い妹を持っているので、リスカーダのことは分かっているつもりである。

「そうですか…」
「え?そうなのですか?」
「いつも怒られているではないか…」

 カイロスは腑に落ちない顔をしており、自覚がなかったのかと初めて知った。付け加えるならば、リスカーダの下にももう一人妹がいる。

「だが、良い人選かもしれぬな、公爵令嬢ならば文句はないだろう」
「はい、兄の手伝いという形にすれば問題ないと思います」

 話は纏まったところで、エルドールとカイロスが、生徒会の顧問であるエイダン・グイーズに話をした。

「分かりました。そういうことでしたら、手伝いを与えましょう」
「何かあるかな?」
「創立記念誌はいかがですか?」

 オマリーのことということで、以前注意をしたケイズとジーディーも同席することになっていた。

「ああ、まだ先だが、始めて置いて問題はない」

 創立記念誌は5年置きに、発行しており、ちょうど来年が5年に当たる。今からまとめて置いてもいい。

「では資料をまとめて貰いましょう」
「まとめるのは得意なようでしたから、良いと思います」
「後はどう伝えるかですね…殿下から伝えれば、殿下に頼んだことを自分が任されたと、取られ兼ねないのではありませんか?」
「そ、そうか…」
「そういった解釈もあるのですね…」

 エルドールとカイロスは、そのような落とし穴があるとは思っていなかった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

筆頭婚約者候補は「一抜け」を叫んでさっさと逃げ出した

基本二度寝
恋愛
王太子には婚約者候補が二十名ほどいた。 その中でも筆頭にいたのは、顔よし頭良し、すべての条件を持っていた公爵家の令嬢。 王太子を立てることも忘れない彼女に、ひとつだけ不満があった。

三年の想いは小瓶の中に

月山 歩
恋愛
結婚三周年の記念日だと、邸の者達がお膳立てしてくれた二人だけのお祝いなのに、その中心で一人夫が帰らない現実を受け入れる。もう彼を諦める潮時かもしれない。だったらこれからは自分の人生を大切にしよう。アレシアは離縁も覚悟し、邸を出る。 ※こちらの作品は契約上、内容の変更は不可であることを、ご理解ください。

手放してみたら、けっこう平気でした。

朝山みどり
恋愛
エリザ・シスレーは伯爵家の後継として、勉強、父の手伝いと努力していた。父の親戚の婚約者との仲も良好で、結婚する日を楽しみしていた。 そんなある日、父が急死してしまう。エリザは学院をやめて、領主の仕事に専念した。 だが、領主として努力するエリザを家族は理解してくれない。彼女は家族のなかで孤立していく。

天然と言えば何でも許されると思っていませんか

今川幸乃
恋愛
ソフィアの婚約者、アルバートはクラスの天然女子セラフィナのことばかり気にしている。 アルバートはいつも転んだセラフィナを助けたり宿題を忘れたら見せてあげたりとセラフィナのために行動していた。 ソフィアがそれとなくやめて欲しいと言っても、「困っているクラスメイトを助けるのは当然だ」と言って聞かず、挙句「そんなことを言うなんてがっかりだ」などと言い出す。 あまり言い過ぎると自分が悪女のようになってしまうと思ったソフィアはずっともやもやを抱えていたが、同じくクラスメイトのマクシミリアンという男子が相談に乗ってくれる。 そんな時、ソフィアはたまたまセラフィナの天然が擬態であることを発見してしまい、マクシミリアンとともにそれを指摘するが……

【完結】私は側妃ですか? だったら婚約破棄します

hikari
恋愛
レガローグ王国の王太子、アンドリューに突如として「側妃にする」と言われたキャサリン。一緒にいたのはアトキンス男爵令嬢のイザベラだった。 キャサリンは婚約破棄を告げ、護衛のエドワードと侍女のエスターと共に実家へと帰る。そして、魔法使いに弟子入りする。 その後、モナール帝国がレガローグに侵攻する話が上がる。実はエドワードはモナール帝国のスパイだった。後に、エドワードはモナール帝国の第一皇子ヴァレンティンを紹介する。 ※ざまあの回には★がついています。

さよなら初恋。私をふったあなたが、後悔するまで

ミカン♬
恋愛
2025.10.11ホットランキング1位になりました。夢のようでとても嬉しいです! 読んでくださって、本当にありがとうございました😊 前世の記憶を持つオーレリアは可愛いものが大好き。 婚約者(内定)のメルキオは子供の頃結婚を約束した相手。彼は可愛い男の子でオーレリアの初恋の人だった。 一方メルキオの初恋の相手はオーレリアの従姉妹であるティオラ。ずっとオーレリアを悩ませる種だったのだが1年前に侯爵家の令息と婚約を果たし、オーレリアは安心していたのだが…… ティオラは婚約を解消されて、再びオーレリア達の仲に割り込んできた。 ★補足:ティオラは王都の学園に通うため、祖父が預かっている孫。養子ではありません。 ★補足:全ての嫡出子が爵位を受け継ぎ、次男でも爵位を名乗れる、緩い世界です。 2万字程度。なろう様にも投稿しています。 オーレリア・マイケント 伯爵令嬢(ヒロイン) レイン・ダーナン 男爵令嬢(親友) ティオラ (ヒロインの従姉妹) メルキオ・サーカズ 伯爵令息(ヒロインの恋人) マーキス・ガルシオ 侯爵令息(ティオラの元婚約者) ジークス・ガルシオ 侯爵令息(マーキスの兄)

【完結】結婚しておりませんけど?

との
恋愛
「アリーシャ⋯⋯愛してる」 「私も愛してるわ、イーサン」 真実の愛復活で盛り上がる2人ですが、イーサン・ボクスと私サラ・モーガンは今日婚約したばかりなんですけどね。 しかもこの2人、結婚式やら愛の巣やらの準備をはじめた上に私にその費用を負担させようとしはじめました。頭大丈夫ですかね〜。 盛大なるざまぁ⋯⋯いえ、バリエーション豊かなざまぁを楽しんでいただきます。 だって、私の友達が張り切っていまして⋯⋯。どうせならみんなで盛り上がろうと、これはもう『ざまぁパーティー』ですかね。 「俺の苺ちゃんがあ〜」 「早い者勝ち」 ーーーーーー ゆるふわの中世ヨーロッパ、幻の国の設定です。 完結しました。HOT2位感謝です\(//∇//)\ R15は念の為・・

良いものは全部ヒトのもの

猫枕
恋愛
会うたびにミリアム容姿のことを貶しまくる婚約者のクロード。 ある日我慢の限界に達したミリアムはクロードを顔面グーパンして婚約破棄となる。 翌日からは学園でブスゴリラと渾名されるようになる。 一人っ子のミリアムは婿養子を探さなければならない。 『またすぐ別の婚約者候補が現れて、私の顔を見た瞬間にがっかりされるんだろうな』 憂鬱な気分のミリアムに両親は無理に結婚しなくても好きに生きていい、と言う。 自分の望む人生のあり方を模索しはじめるミリアムであったが。

処理中です...