【完結】ご期待に沿えず、誠に申し訳ございません

野村にれ

文字の大きさ
100 / 131

古代語の解読披露

しおりを挟む
 ラリオはこれで証明されれば、古代語の研究をしている国から協力を求められることになるだろう。

 何もないと言われていたルスデン王国が、ようやく日の目を見る。

 にやにやしていては外聞が悪いため、表情は変えないようにしていたが、口角が上がるのを抑えられなかった。

 アリナの実力は、ルスデン王国でも認められており、留学でさらに磨きが掛かっているだろうと信じていた。

 ラリオがルスデン王国を知らしめるために、アリナを紹介することになっており、ラリオは注目を集めるのが好きであるため、興奮状態となっていた。

「ルスデン王国、王太子、ラリオ・リューデンと申します。こちらは、ルスデン王国では、才の聖女だと呼ばれております、アリナ・ハッソでございます」
「アリナ・ハッソでございます。よろしくお願いいたします」

 アリナはまるでおとぎ話の聖女のような、ルスデン王国の王家が用意した美しい白いドレスに身を包み、カーテシーを行った。

 グルダイヤ侯爵は、さすがにラリオがいる以上、前に立つわけには行かず、後見人ということで、関係者席に座っていた。

 それでも、こちらも興奮を抑えられない思いであった。

 何度かアリナに会っていたオーバンとメイランは、いつもどこか自信がなさそうにしていた様子だったのに、今日は雰囲気の違う姿に驚いた。

「ラリオ王太子殿下、紹介をありがとう。ではアリナ・ハッソ、今日はこの場で古代語の解読が出来るということを、見せて貰うということで間違いないな?」
「はい、間違いございません」

 アリナはダズベルトの質問にも、今までと違い、落ち着いた様子で堂々と答えた。

「では、早速見せて貰おうか」
「はい」

 中央の机には、アリナが必要だと判断した物は、既に机に置かれている。

「私は古代語に関して、素人であるために、学者をお呼びしている。ラリオ王太子殿下、よろしいかな?」
「はい、勿論でございます」
「では、デュランズ殿、よろしく頼む」

 温厚で柔らかな表情の男性が登場し、観覧席の学者たちは、デュランズの登場に『デュランズ様ではないか』『デュランズ様がいらっしゃるとは』『感激だ』『お目に書かれて光栄だ』と口々に驚きの声を上げた。

 オックス・デュランズは、存命の古代語の学者としては、最高峰の一人である。

 ヨルレアンの祖父、レオドラ・オズラール公爵とも年の離れた友人でもあった。この場に呼んだのは、ご興味ありませんかというヨルレアンの誘いと、ルエルフ王国の伯爵でもあるために、ルアサーラ女王陛下の願いでもある。

「はい、承知いたしました」

 今回、ヨルレアンは同席せず、ホールの上にある、観覧席から様子を伺うことになっていた。一緒にいたのは弟のミオリックと、ルエルフ王国にいるはずの妹であるサリージュであった。

 母に代わりに見届けて来るように言われて、やって来たのである。おかげでコーランド王国で、久し振りにきょうだいが揃うことになった。

 お茶や菓子も用意されており、コーランド王国の王族よりも良い待遇である。

「どうなるか見物ですわね」
「サリ姉様、どうなるか分かっているの?」
「分からないけど、私の姉様に敵うはずはないと分かっているもの」

 メイランも強火にヨルレアンを尊敬しているが、サリージュもヨルレアンに対して、強火に誇らしさを持っている。

「もし解読出来たら?」
「それでも姉様より、知識があるはずないじゃない」
「買い被り過ぎよ」
「そんなことないわ、姉様はどこに出しても誇らしいんだから」
「あっ、お父様」

 父であるダリーツ・オズラール公爵は、険しい顔をして観覧席にいる。

 デュランズはアリナの前に、3つの文の書かれた紙を置いた。

「では、こちらを解読していただけますか」
「はい」

 アリナは文を見る前に、目を瞑って、小さく息を吐いて、落ち着いた様子で、ゆっくりと文を見つめた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

本日もお読みいただきありがとうございます。

本日は1日2話、投稿させていただきます。

本当は2月3日の節分記念にと思っていたのですが、
節分が変動することを、初めて知りました…
昨日だったのですね(お恥ずかしい)。

いつもの17時にも1話、投稿します。

どうぞよろしくお願いいたします。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

筆頭婚約者候補は「一抜け」を叫んでさっさと逃げ出した

基本二度寝
恋愛
王太子には婚約者候補が二十名ほどいた。 その中でも筆頭にいたのは、顔よし頭良し、すべての条件を持っていた公爵家の令嬢。 王太子を立てることも忘れない彼女に、ひとつだけ不満があった。

三年の想いは小瓶の中に

月山 歩
恋愛
結婚三周年の記念日だと、邸の者達がお膳立てしてくれた二人だけのお祝いなのに、その中心で一人夫が帰らない現実を受け入れる。もう彼を諦める潮時かもしれない。だったらこれからは自分の人生を大切にしよう。アレシアは離縁も覚悟し、邸を出る。 ※こちらの作品は契約上、内容の変更は不可であることを、ご理解ください。

手放してみたら、けっこう平気でした。

朝山みどり
恋愛
エリザ・シスレーは伯爵家の後継として、勉強、父の手伝いと努力していた。父の親戚の婚約者との仲も良好で、結婚する日を楽しみしていた。 そんなある日、父が急死してしまう。エリザは学院をやめて、領主の仕事に専念した。 だが、領主として努力するエリザを家族は理解してくれない。彼女は家族のなかで孤立していく。

天然と言えば何でも許されると思っていませんか

今川幸乃
恋愛
ソフィアの婚約者、アルバートはクラスの天然女子セラフィナのことばかり気にしている。 アルバートはいつも転んだセラフィナを助けたり宿題を忘れたら見せてあげたりとセラフィナのために行動していた。 ソフィアがそれとなくやめて欲しいと言っても、「困っているクラスメイトを助けるのは当然だ」と言って聞かず、挙句「そんなことを言うなんてがっかりだ」などと言い出す。 あまり言い過ぎると自分が悪女のようになってしまうと思ったソフィアはずっともやもやを抱えていたが、同じくクラスメイトのマクシミリアンという男子が相談に乗ってくれる。 そんな時、ソフィアはたまたまセラフィナの天然が擬態であることを発見してしまい、マクシミリアンとともにそれを指摘するが……

【完結】私は側妃ですか? だったら婚約破棄します

hikari
恋愛
レガローグ王国の王太子、アンドリューに突如として「側妃にする」と言われたキャサリン。一緒にいたのはアトキンス男爵令嬢のイザベラだった。 キャサリンは婚約破棄を告げ、護衛のエドワードと侍女のエスターと共に実家へと帰る。そして、魔法使いに弟子入りする。 その後、モナール帝国がレガローグに侵攻する話が上がる。実はエドワードはモナール帝国のスパイだった。後に、エドワードはモナール帝国の第一皇子ヴァレンティンを紹介する。 ※ざまあの回には★がついています。

さよなら初恋。私をふったあなたが、後悔するまで

ミカン♬
恋愛
2025.10.11ホットランキング1位になりました。夢のようでとても嬉しいです! 読んでくださって、本当にありがとうございました😊 前世の記憶を持つオーレリアは可愛いものが大好き。 婚約者(内定)のメルキオは子供の頃結婚を約束した相手。彼は可愛い男の子でオーレリアの初恋の人だった。 一方メルキオの初恋の相手はオーレリアの従姉妹であるティオラ。ずっとオーレリアを悩ませる種だったのだが1年前に侯爵家の令息と婚約を果たし、オーレリアは安心していたのだが…… ティオラは婚約を解消されて、再びオーレリア達の仲に割り込んできた。 ★補足:ティオラは王都の学園に通うため、祖父が預かっている孫。養子ではありません。 ★補足:全ての嫡出子が爵位を受け継ぎ、次男でも爵位を名乗れる、緩い世界です。 2万字程度。なろう様にも投稿しています。 オーレリア・マイケント 伯爵令嬢(ヒロイン) レイン・ダーナン 男爵令嬢(親友) ティオラ (ヒロインの従姉妹) メルキオ・サーカズ 伯爵令息(ヒロインの恋人) マーキス・ガルシオ 侯爵令息(ティオラの元婚約者) ジークス・ガルシオ 侯爵令息(マーキスの兄)

【完結】結婚しておりませんけど?

との
恋愛
「アリーシャ⋯⋯愛してる」 「私も愛してるわ、イーサン」 真実の愛復活で盛り上がる2人ですが、イーサン・ボクスと私サラ・モーガンは今日婚約したばかりなんですけどね。 しかもこの2人、結婚式やら愛の巣やらの準備をはじめた上に私にその費用を負担させようとしはじめました。頭大丈夫ですかね〜。 盛大なるざまぁ⋯⋯いえ、バリエーション豊かなざまぁを楽しんでいただきます。 だって、私の友達が張り切っていまして⋯⋯。どうせならみんなで盛り上がろうと、これはもう『ざまぁパーティー』ですかね。 「俺の苺ちゃんがあ〜」 「早い者勝ち」 ーーーーーー ゆるふわの中世ヨーロッパ、幻の国の設定です。 完結しました。HOT2位感謝です\(//∇//)\ R15は念の為・・

良いものは全部ヒトのもの

猫枕
恋愛
会うたびにミリアム容姿のことを貶しまくる婚約者のクロード。 ある日我慢の限界に達したミリアムはクロードを顔面グーパンして婚約破棄となる。 翌日からは学園でブスゴリラと渾名されるようになる。 一人っ子のミリアムは婿養子を探さなければならない。 『またすぐ別の婚約者候補が現れて、私の顔を見た瞬間にがっかりされるんだろうな』 憂鬱な気分のミリアムに両親は無理に結婚しなくても好きに生きていい、と言う。 自分の望む人生のあり方を模索しはじめるミリアムであったが。

処理中です...