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卒業パーティー2
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「ええ?」
「私なんて!皆、尊敬しておりますから」
いつもは毅然としているローズマリーなのに、すっかり掌をブンブン振りながら、低姿勢である。
ビクターはその姿を、いつもと違って面白いなと思って見ていた。
「それなら…もっと、上等なハンカチを持ってくれば良かったわね。これ、私が購入したハンカチだわ。でも素材はとても良いのよ?」
「あっ」
ヨルレアン以外は、ヨルレアンが購入したという言葉に反応したのだと思った。
「何か、別の物でも送りますわ」
「い、いえ、そちらをいただいてもいいでしょうか」
「ええ、いいの?」
「はい、嬉しいです」
「どうぞ」
「ありがとうございます!大事にします」
ローズマリーは涙はドレスの袖で拭い、ハンカチは大事そうに両手で挟んでおり、ヨルレアンも困り顔ではあったが、まあいいかと思った。
黙ってその場にいたローレルに付き添っていたローズマリーの兄・グリズバトンは、邸に額はまだあっただろうかと考えていた。
ローレルはヨルレアンとローズマリーが話していることで、想像が出来た展開に、助け船を出したに過ぎない。
「しっかり楽しみなさい」
ローレルの言葉に、皆は頭を下げた。
次にやって来たのは、神妙な顔をしたカイロス・ディンジャー公爵令息、ジャスミン・シックス侯爵令嬢であった。
「オズラール公爵令嬢、ご無沙汰しております」
「ご無沙汰しております」
「まあ、お久しぶりですわね」
ヨルレアンは、すっかり生徒には会わないように試験を受けるようになっていたので、カイロスとも久し振りであった。
「このような場ですが、ジャスミンから謝罪をさせて貰ってもよろしいでしょうか」
「謝罪?」
「以前、学園の教室で」
「ああ…いえ、あれは私が悪いのですから」
「いえ、実はあの時、私にはオズラール公爵令嬢が味方になってくださらないかという、浅墓な考えがあったのでございます。申し訳ございませんでした」
「まあ…」
ヨルレアンはそういえば、なぜ揉めていたのかは結局知らないままであったことを思い出した。
悲痛な顔を浮かべるジャスミンに、申し訳ない気持ちになったのだが、正直に話すことにした。
「正直に言いますわね」
「はい、勿論でございます」
「内容を全く聞いていないの。あの時は、学園でも解読をしていたものですから」
「…まあ、私はなんてことを、お邪魔なんてとんでもないことを…どうしましょう」
ジャスミンは、今にも発狂しそうな顔をしていた。
「いいえ、落ち着いて頂戴。私が勝手に教室でしていたのだから、ジャスミン嬢は悪くないわ」
「ですが」
「何を話していたの?確か、相手はオマリー・トドックだったわよね?」
「はい」
ジャスミンは、簡潔にオマリーに言ったことを隠すことなく、ありのまま伝えた。
「そうだったのね、ではあの方、兆候があったのね」
「はい…ですが、巻き込もうとしたことをお詫びしたいとずっと思っておりました。申し訳ございませんでした」
「お互い悪かったということで、水に流しましょう」
「ですが」
「いいえ、苛立って怒鳴るなんてしてはならなかったことだわ。ごめんなさいね」
「全ては私の責任です。私からも申し訳ございませんでした」
そこで頭を下げたのは、カイロスであった。
「ディンジャー様は、そうね。殿下を見習って、反省された方がいいわ」
「はい」
ジャスミンはようやく、謝罪することが出来て、ホッとした。
そして、カイロスもエルドールがコーランド王国を離れることになったので、これからはちゃんとしっかりしなければならない。
誰にとって最高の卒業パーティーだったかは、言うまでもないことになったが、微笑ましいまま、無事に卒業パーティーは終わった。
そして、ローズマリーの元へは時折、ルエルフ王国のヨルレアンから贈り物が届き、家宝はどんどん増えていくことになる。その度に、本当に幸せそうなローズマリーに、ビクターは微笑ましく思うのであった。
「私なんて!皆、尊敬しておりますから」
いつもは毅然としているローズマリーなのに、すっかり掌をブンブン振りながら、低姿勢である。
ビクターはその姿を、いつもと違って面白いなと思って見ていた。
「それなら…もっと、上等なハンカチを持ってくれば良かったわね。これ、私が購入したハンカチだわ。でも素材はとても良いのよ?」
「あっ」
ヨルレアン以外は、ヨルレアンが購入したという言葉に反応したのだと思った。
「何か、別の物でも送りますわ」
「い、いえ、そちらをいただいてもいいでしょうか」
「ええ、いいの?」
「はい、嬉しいです」
「どうぞ」
「ありがとうございます!大事にします」
ローズマリーは涙はドレスの袖で拭い、ハンカチは大事そうに両手で挟んでおり、ヨルレアンも困り顔ではあったが、まあいいかと思った。
黙ってその場にいたローレルに付き添っていたローズマリーの兄・グリズバトンは、邸に額はまだあっただろうかと考えていた。
ローレルはヨルレアンとローズマリーが話していることで、想像が出来た展開に、助け船を出したに過ぎない。
「しっかり楽しみなさい」
ローレルの言葉に、皆は頭を下げた。
次にやって来たのは、神妙な顔をしたカイロス・ディンジャー公爵令息、ジャスミン・シックス侯爵令嬢であった。
「オズラール公爵令嬢、ご無沙汰しております」
「ご無沙汰しております」
「まあ、お久しぶりですわね」
ヨルレアンは、すっかり生徒には会わないように試験を受けるようになっていたので、カイロスとも久し振りであった。
「このような場ですが、ジャスミンから謝罪をさせて貰ってもよろしいでしょうか」
「謝罪?」
「以前、学園の教室で」
「ああ…いえ、あれは私が悪いのですから」
「いえ、実はあの時、私にはオズラール公爵令嬢が味方になってくださらないかという、浅墓な考えがあったのでございます。申し訳ございませんでした」
「まあ…」
ヨルレアンはそういえば、なぜ揉めていたのかは結局知らないままであったことを思い出した。
悲痛な顔を浮かべるジャスミンに、申し訳ない気持ちになったのだが、正直に話すことにした。
「正直に言いますわね」
「はい、勿論でございます」
「内容を全く聞いていないの。あの時は、学園でも解読をしていたものですから」
「…まあ、私はなんてことを、お邪魔なんてとんでもないことを…どうしましょう」
ジャスミンは、今にも発狂しそうな顔をしていた。
「いいえ、落ち着いて頂戴。私が勝手に教室でしていたのだから、ジャスミン嬢は悪くないわ」
「ですが」
「何を話していたの?確か、相手はオマリー・トドックだったわよね?」
「はい」
ジャスミンは、簡潔にオマリーに言ったことを隠すことなく、ありのまま伝えた。
「そうだったのね、ではあの方、兆候があったのね」
「はい…ですが、巻き込もうとしたことをお詫びしたいとずっと思っておりました。申し訳ございませんでした」
「お互い悪かったということで、水に流しましょう」
「ですが」
「いいえ、苛立って怒鳴るなんてしてはならなかったことだわ。ごめんなさいね」
「全ては私の責任です。私からも申し訳ございませんでした」
そこで頭を下げたのは、カイロスであった。
「ディンジャー様は、そうね。殿下を見習って、反省された方がいいわ」
「はい」
ジャスミンはようやく、謝罪することが出来て、ホッとした。
そして、カイロスもエルドールがコーランド王国を離れることになったので、これからはちゃんとしっかりしなければならない。
誰にとって最高の卒業パーティーだったかは、言うまでもないことになったが、微笑ましいまま、無事に卒業パーティーは終わった。
そして、ローズマリーの元へは時折、ルエルフ王国のヨルレアンから贈り物が届き、家宝はどんどん増えていくことになる。その度に、本当に幸せそうなローズマリーに、ビクターは微笑ましく思うのであった。
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