【完結】言いたくてしかたない

野村にれ

文字の大きさ
4 / 11

あるある

しおりを挟む
 まさに早く言え!が、具現化したとも言える状況なのです。

 本当にムズムズします。許されるなら、この場で歌ったこともないが、でたらめなステップを踏みながら、歌いたいほどです。

 ああ、本当にレオナルドに早く言って欲しい。面白いことでもないから、待っているのも楽しさもない。一言で済む話じゃないか。あるあるじゃない!破棄破棄だろう?解消解消か?

 でも、ある意味、乙女ゲームあるあるでも、あるのかしら?

「すまなかった、それで」

 折角レオナルドが席に戻ったが、三度目のドアを叩く音がしている。

「失礼します」

 従者が3人もいるのかよ!いい加減にしろよ、こんなに邪魔する従者いるのかよ、わざとか、わざとなのか?

「度々すまない」

 腹を下した時のトイレか?それなら、落ち着くまで篭ってていいと言える。いや、令嬢はお大事にと帰るべきでしょうか。

 日に日に、叫べない苦しみから、ツッコミも激しくなっている自覚がある。

 私は最近、あの現象と同じだと思っているのです。

 おじさま方が年齢を重ねると、思い付いた時点で、無意識にポロッと口から出るようになり、言いたくてたまらないという親父ギャグ。

 同じだと思いません?とても気持ちが分かりますもの。

 でも言いたい~言いたくてしかたない~ああ!替え歌にして、〇ひろみまで歌唱し始めてしまったではありませんか!どうしてくれるんでしょうか、レオナルド!

 ああ、私はなんて、ピッタリな曲を思いついてしまったのかしら。

「すまなかった、それで実は」

 はあ、さすがに3人も来たのだから、ようやく話してくれるでしょう。とにかく、とにかく、さっさと話してください。履いてますからね!

 しかし、無情にも四度目のドアが叩かれた。

「度々失礼します、王宮から急ぎの文が」

 おい!いえ…それは読むべきでしょうね。

「私は、今日は失礼しますわね」

 表情を変えずに踏ん張るのも、限度というものがある。

「こちらが呼んだのに、すまない」
「いえ、次はきちんと落ち着いてから、ご連絡くださいませ」

 次はこのようなことがないようにという意味を込めて、しっかりと伝えて帰ることにした。

 馬車に揺られながら、ああ…帰りに手頃な山に登りたい。御者に『帰りにいつもの山に寄って頂戴』と言いたい。そこで大きな声で叫びたい。

 〇ゥース!とか、

 〇イ〇イスーーー!とか、

 〇っぱぴー!とか思い切り叫びたい。

 ああ、生き辛い。世知辛い。

 だが、叫ぶ場所もないまま、鬱憤の溜まったまま、またレオナルドから連絡があって、邸に行かなくてはならなくなった。今日こそは〇る〇るを出したら許しませんよと思いながら、向き合っている。

「この前、話すつもりだった話なのだが」
「はい」

 しかし、今日もドアは叩かれる。

「失礼します」

 おい、このヤロウ!落ち着いてからって言っておいただろう?この邸ではあれか、全てこいつに聞かないと何も出来ないとでも言うのか?メイドがトイレに行きたがってます、嫡男の許可をいただきませんと、みたいな?セクハラでパワハラじゃん。

 私もそろそろキレていいのではないでしょうか。いくら格下の侯爵令嬢とはいえ、たおやかに微笑むレベルは、既に超えておりますでしょう?

「また…すまなかった、だが今日はもう邪魔されることはない」
「早くお話しになって」
「どこから話せばいいのか」
「長くなりますの?一言で終わる話ではありませんか?」

 婚約解消で終わりではないか、最近会うたびに〇イザーラモン〇Gを、奏で続けていた人間の気持ちが分かるか?絶対に分からないだろう。

 もし、説明することになったとしても、面白さが伝わらず、苦笑いをされるのも見えている。とにかく、とにかく、損をするのは私だけなのですよ。

 今日もバッチリ履いてますよ!
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

全てから捨てられた伯爵令嬢は。

毒島醜女
恋愛
姉ルヴィが「あんたの婚約者、寝取ったから!」と職場に押し込んできたユークレース・エーデルシュタイン。 更に職場のお局には強引にクビを言い渡されてしまう。 結婚する気がなかったとは言え、これからどうすればいいのかと途方に暮れる彼女の前に帝国人の迷子の子供が現れる。 彼を助けたことで、薄幸なユークレースの人生は大きく変わり始める。 通常の王国語は「」 帝国語=外国語は『』

能ある妃は身分を隠す

赤羽夕夜
恋愛
セラス・フィーは異国で勉学に励む為に、学園に通っていた。――がその卒業パーティーの日のことだった。 言われもない罪でコンペーニュ王国第三王子、アレッシオから婚約破棄を大体的に告げられる。 全てにおいて「身に覚えのない」セラスは、反論をするが、大衆を前に恥を掻かせ、利益を得ようとしか思っていないアレッシオにどうするべきかと、考えているとセラスの前に現れたのは――。

愛のゆくえ【完結】

春の小径
恋愛
私、あなたが好きでした ですが、告白した私にあなたは言いました 「妹にしか思えない」 私は幼馴染みと婚約しました それなのに、あなたはなぜ今になって私にプロポーズするのですか? ☆12時30分より1時間更新 (6月1日0時30分 完結) こう言う話はサクッと完結してから読みたいですよね? ……違う? とりあえず13日後ではなく13時間で完結させてみました。 他社でも公開

アリーチェ・オランジュ夫人の幸せな政略結婚

里見しおん
恋愛
「私のジーナにした仕打ち、許し難い! 婚約破棄だ!」  なーんて抜かしやがった婚約者様と、本日結婚しました。  アリーチェ・オランジュ夫人の結婚生活のお話。

皇后マルティナの復讐が幕を開ける時[完]

風龍佳乃
恋愛
マルティナには初恋の人がいたが 王命により皇太子の元に嫁ぎ 無能と言われた夫を支えていた ある日突然 皇帝になった夫が自分の元婚約者令嬢を 第2夫人迎えたのだった マルティナは初恋の人である 第2皇子であった彼を新皇帝にするべく 動き出したのだった マルティナは時間をかけながら じっくりと王家を牛耳り 自分を蔑ろにした夫に三行半を突き付け 理想の人生を作り上げていく

(完結)私が貴方から卒業する時

青空一夏
恋愛
私はペシオ公爵家のソレンヌ。ランディ・ヴァレリアン第2王子は私の婚約者だ。彼に幼い頃慰めてもらった思い出がある私はずっと恋をしていたわ。 だから、ランディ様に相応しくなれるよう努力してきたの。でもね、彼は・・・・・・ ※なんちゃって西洋風異世界。現代的な表現や機器、お料理などでてくる可能性あり。史実には全く基づいておりません。

もう我慢したくないので自由に生きます~一夫多妻の救済策~

岡暁舟
恋愛
第一王子ヘンデルの妻の一人である、かつての侯爵令嬢マリアは、自分がもはや好かれていないことを悟った。 「これからは自由に生きます」 そう言い張るマリアに対して、ヘンデルは、 「勝手にしろ」 と突き放した。

私、お母様の言うとおりにお見合いをしただけですわ。

いさき遊雨
恋愛
お母様にお見合いの定石?を教わり、初めてのお見合いに臨んだ私にその方は言いました。 「僕には想い合う相手いる!」 初めてのお見合いのお相手には、真実に愛する人がいるそうです。 小説家になろうさまにも登録しています。

処理中です...