運命だとは認めない

野村にれ

文字の大きさ
33 / 39

忌避感

「そうか……ハオース伯爵令息は再婚したのか?」
「ああ、一年後には再婚している。子どもも産まれている」
「だったら、彼女も再婚すればいいじゃないか」

 ポーリンクは最近、離縁したわけではないためにもっと年齢が若い頃に再婚するほうが有利だっただろう。

「それがなんだよ。まあ、二年子どもができなかったことは事実ではないわけではないというか……」
「子どもを求める相手は難しいということか?」
「問題があるというわけではないのかもしれないが……夫のほうが子どもが生まれているだろう?子どもが産めないのではないかと思うと、後継者が必要な家はな……」

 離縁の際に子どもができなかったことが原因で、その原因はポーリンクにあると言ったわけではない。二年できなくても、三年目でできる場合も珍しいことではない。

 だが、夫は再婚して子どもが生まれると、問題はポーリンクにあったと思われることは想像に容易い。

「だが愛人がいた、不貞があったという可能性もあるのではないか?」
「妻の友人はそこまで親しい者がいなくてな、結婚生活までは知らないわけだよ」
「それはそうだよな」

 離縁の際に何か決め事がある場合もあるために、事実は分からない場合もある。

「それで、メイファスなら子どもがいるから再婚してもらえるかもしれないと思ったのではないか?」
「子どもがいる未婚の者は他にもいるだろう?」
「それはそうだが、上手くいかなかったのではないか?ホールエ伯爵家も特別な何かがあるわけでもないからな」

 どのような話で離縁したのかは知らないが、元夫は再婚して子どもが生まれていることから、自分も再婚をと考えることはあるだろう。

 特にポーリンクは結婚を望んでいたことをメイファスは知っており、結婚願望がないというわけではない。ということは、再婚相手がいないだけではないか。

「確かに気味が悪くなっていたからな……」
「気味が?」
「ああ、しなを作っていた」
「うわ……焦って、失敗しているのかもしれないな。気を付けたほうがいいな、だが会うこともないのか。それなら大丈夫か」
「関わるのは面倒だな……伯爵に再度苦情を入れておくよ」
「それがいいな」

 メイファスは時間があれば、アリルールとルーファスに使いたいと思っているために、ポーリンクに煩わされることが不快で堪らなかった。

 モンカール公爵邸に戻り、ホールエ伯爵に再度、ポーリンクが認めているわけではないが含みのある言い方をしているという証言を得ている、二度としないようにと当主であるマクシューから苦情を出してもらうように頼んだ。

 マクシューとフーランも当然ポーリンクのことは知っており、きちんとした令嬢だと思っていたのに、どうして今さらという思いもあり、不思議でならなかった。

 メイファスが自室に戻ると、ルーファスが訪ねて来た。

「どうした?」
「お父様、再婚するのですか?」
「は?しない」

 まさかルーファスにまで再婚のことを聞かれるとは思わず、咄嗟に答えた。

「私は別にしても構いません」
「どうした?誰かに言われたのか?」
「そういったこともあるのではないかとは言われました」
「誰に?」
「友人たちです……」

 ルーファスはまだ学校には通っていないが、剣術を学びに行っており、そこで友人ができていた。離縁が発表されたことで、悪意なく話したのかもしれない。もしかしたらポーリンクのことを親から聞いた者もいたのかもしれない。

「そうか、お父様は再婚することは絶対にない」

 アリルールは分からないが、メイファスは彼女以外と夫婦と名乗ることも、一緒にいることすら、耐えられないだろうと分かっていた。

 番だからと言えばそうだが、アリルールの人生を滅茶苦茶にした責任を一生を掛けて取るつもりであった。

あなたにおすすめの小説

私は不要とされた~一番近くにいたのは、誰だったのか~

ゆめ@マンドラゴラ
恋愛
彼の幼馴染は、いつも当然のように隣にいた。 「私が一番、彼のことを分かっている」 そう言い切る彼女の隣で、婚約者は何も言わない。 その沈黙が、すべての答えのように思えた。 だから私は、身を引いた。 ――はずだった。 一番近くにいたのは、本当に彼女だったのか。 「不要とされた」シリーズ第三弾。

あなたに何されたって驚かない

こもろう
恋愛
相手の方が爵位が下で、幼馴染で、気心が知れている。 そりゃあ、愛のない結婚相手には申し分ないわよね。 そんな訳で、私ことサラ・リーンシー男爵令嬢はブレンダン・カモローノ伯爵子息の婚約者になった。

「あなたの隣で笑い続けた私が、今日から私のために笑います」

まさき
恋愛
伯爵令嬢エリーゼの親友として、5年間笑い続けた。 エリーゼは悪い子じゃない。ただ——私が演じていたことに、一度も気づかなかった。 婚約が決まった日、私は手紙を書いた。引き止めを少しだけ期待しながら。 来なかった。 幼なじみの青年ルカだけが言った。「やっと終わったな」 誰かの隣ではなく、自分の真ん中で生きる。5年間笑い続けた女の、静かな再生の物語。

今世、悪女が消えた世界で

shinonome
恋愛
公爵家の令嬢である私 未来の皇帝の妃となる存在だったけれど 妹であるルナティアが「奇跡の力」に覚醒したことにより 妹に妃の立場と皇帝の愛を奪われ 自分は妹に仕える者に成り下がってしまった。 終いには、ルナティアを殺そうとしたと冤罪をかけられてしまい全ての者から見捨てられ 私が選ぶことができたのは自ら命を絶つことだけ。 けれど偶然か必然か分からない。 未来の皇帝と婚約する1年前、8歳の頃に戻っていた。 どうして時が巻き戻ったのか分からない。 けれど今世も傷ついたりするのはたくさんだ。 今世は私の人生を取り戻す。 そのためには婚約者や、妹はもう ____いらない。 奪われ見捨てられた令嬢が 今世は、自分の人生を取り戻しながらも ある真実を知るお話。

婚約破棄寸前だった令嬢が殺されかけて眠り姫となり意識を取り戻したら世界が変わっていた話

ひよこ麺
恋愛
シルビア・ベアトリス侯爵令嬢は何もかも完璧なご令嬢だった。婚約者であるリベリオンとの関係を除いては。 リベリオンは公爵家の嫡男で完璧だけれどとても冷たい人だった。それでも彼の幼馴染みで病弱な男爵令嬢のリリアにはとても優しくしていた。 婚約者のシルビアには笑顔ひとつ向けてくれないのに。 どんなに尽くしても努力しても完璧な立ち振る舞いをしても振り返らないリベリオンに疲れてしまったシルビア。その日も舞踏会でエスコートだけしてリリアと居なくなってしまったリベリオンを見ているのが悲しくなりテラスでひとり夜風に当たっていたところ、いきなり何者かに後ろから押されて転落してしまう。 死は免れたが、テラスから転落した際に頭を強く打ったシルビアはそのまま意識を失い、昏睡状態となってしまう。それから3年の月日が流れ、目覚めたシルビアを取り巻く世界は変っていて…… ※正常な人があまりいない話です。

殿下が私を愛していないことは知っていますから。

木山楽斗
恋愛
エリーフェ→エリーファ・アーカンス公爵令嬢は、王国の第一王子であるナーゼル・フォルヴァインに妻として迎え入れられた。 しかし、結婚してからというもの彼女は王城の一室に軟禁されていた。 夫であるナーゼル殿下は、私のことを愛していない。 危険な存在である竜を宿した私のことを彼は軟禁しており、会いに来ることもなかった。 「……いつも会いに来られなくてすまないな」 そのためそんな彼が初めて部屋を訪ねてきた時の発言に耳を疑うことになった。 彼はまるで私に会いに来るつもりがあったようなことを言ってきたからだ。 「いいえ、殿下が私を愛していないことは知っていますから」 そんなナーゼル様に対して私は思わず嫌味のような言葉を返してしまった。 すると彼は、何故か悲しそうな表情をしてくる。 その反応によって、私は益々訳がわからなくなっていた。彼は確かに私を軟禁して会いに来なかった。それなのにどうしてそんな反応をするのだろうか。

【完結済】自由に生きたいあなたの愛を期待するのはもうやめました

鳴宮野々花
恋愛
 伯爵令嬢クラウディア・マクラウドは長年の婚約者であるダミアン・ウィルコックス伯爵令息のことを大切に想っていた。結婚したら彼と二人で愛のある家庭を築きたいと夢見ていた。  ところが新婚初夜、ダミアンは言った。 「俺たちはまるっきり愛のない政略結婚をしたわけだ。まぁ仕方ない。あとは割り切って互いに自由に生きようじゃないか。」  そう言って愛人らとともに自由に過ごしはじめたダミアン。激しくショックを受けるクラウディアだったが、それでもひたむきにダミアンに尽くし、少しずつでも自分に振り向いて欲しいと願っていた。  しかしそんなクラウディアの思いをことごとく裏切り、鼻で笑うダミアン。  心が折れそうなクラウディアはそんな時、王国騎士団の騎士となった友人アーネスト・グレアム侯爵令息と再会する。  初恋の相手であるクラウディアの不幸せそうな様子を見て、どうにかダミアンから奪ってでも自分の手で幸せにしたいと考えるアーネスト。  そんなアーネストと次第に親密になり自分から心が離れていくクラウディアの様子を見て、急に焦り始めたダミアンは───── (※※夫が酷い男なので序盤の数話は暗い話ですが、アーネストが出てきてからはわりとラブコメ風です。)(※※この物語の世界は作者独自の設定です。)

ジェリー・ベケットは愛を信じられない

砂臥 環
恋愛
ベケット子爵家の娘ジェリーは、父が再婚してから離れに追いやられた。 母をとても愛し大切にしていた父の裏切りを知り、ジェリーは愛を信じられなくなっていた。 それを察し、まだ子供ながらに『君を守る』と誓い、『信じてほしい』と様々な努力してくれた婚約者モーガンも、学園に入ると段々とジェリーを避けらるようになっていく。 しかも、義妹マドリンが入学すると彼女と仲良くするようになってしまった。 だが、一番辛い時に支え、努力してくれる彼を信じようと決めたジェリーは、なにも言えず、なにも聞けずにいた。 学園でジェリーは優秀だったが『氷の姫君』というふたつ名を付けられる程、他人と一線を引いており、誰にも悩みは吐露できなかった。 そんな時、仕事上のパートナーを探す男子生徒、ウォーレンと親しくなる。 ※世界観はゆるゆる ※ざまぁはちょっぴり ※他サイトにも掲載