運命だとは認めない

野村にれ

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手間

「お母様もいないのですから、お父様の好きにしたらいいと私は思います」

 ルーファスも少なからず、追い出してしまったことを申し訳なく思っていた。

「いや、ルーファスは母親が欲しいのか?」
「いえ、そうではありませんけど」

 アリルールの産んだ可愛い息子の願いは叶えたいが、欲しいと言われたらどうしようかと思っていたメイファスはホッとした。

「少しでも期待してくれたのだったら申し訳ないが、私は結婚には向いていないから二度とする気はないんだよ」
「そうですか」
「すまないな」
「はい……」

 ルーファスにとってアリルールが母親という思いはなく、メイファスが再婚するのなら良い方なら反対する気はなかった。

 だが、本当は新しい妻に皆が夢中になったら、面白くないかもしれないと思う部分もあったために、実はルーファスもホッとしていた。

 ホールエ伯爵からは再び謝罪があり、二度とそのようなことはさせませんという返事をもらい、再婚するという話も次第に聞かなくなっていった。

 メイファスはポーリンクのことはどうでもいい上に、煩わされることがないのなら何でも良かった。

 後継者として、メイファスはパーティーにもなるべく顔を出し、再婚目当ての令嬢たちに色目を使われることはあったが、やんわり断っていった。

 それでも申し込みもあったが、両親もメイファスが再婚する気はないことは理解しているために、メイファスに確認はしていたがすべて断っていた。

 メイファスにとってはアリルール以上の女性はいないこともあるが、王女殿下と結婚していた男性に、まだ離縁して半年しか経っていないのに、よくも婚約を申し込もうと思うとすら思っていた。

 令嬢側も誰が申し込んでも断られることから、再婚する気はないのだと思う者もいたが、まだ早かったのではないかと思う者もおり、それでも早くしないと決まってしまうのではないかという焦りであった。

 公爵家の嫡男で、離縁したことで令嬢たち側からすると、初婚は難しいかもしれないが、再婚ならと難易度が下がったという感覚であった。

 それはアリルールと一緒にいることもなく、上手くいっていなかったのではないかと思われていたことが原因でもあった。

 確かに上手くいってはいなかったが、原因はアリルール。だが、王女ということで、メイファスは遠慮しているのではないかと都合よく解釈してもいた。

 その日、メイファスがルーファスを迎えに行き、荷物を取りに行った息子を待っていると、生徒の母親から声を掛けられることになった。

「あの、モンカール様」
「はい、何か?」
「大変失礼だとは思うのですけど、再婚をお考えでしたら紹介させていただきたい方がいるのですが、いかがでしょうか」

 ここでもかと思ったが、保護者であること、自身のことではないために穏便に済ませたかった。

「再婚は考えていませんので、紹介は遠慮いたします」
「ですが、明るくて本当に気立てのいい方なのです。きっとルーファス様とも上手くいくと思うのです」

 まるでアリルールが暗く気立てが悪いと言われているようで苛立ちはしたが、ルーファスのことを考えると、苦情を入れるのも得策ではない。

「申し訳ございません、私が再婚をする気がないのです」
「……あ、そうなのですね。申し訳ございません」
「ええ、申し訳ないですが、ここは息子の学ぶ場所ですので、そのような話は二度としないでいただけますと有難いです」
「はい、申し訳ございませんでした」

 丁寧に対応したが、愚かでなければ伝わっただろうと思い、会釈してから去った。

 それでも保護者にまで言われることにはうんざりした。あの母親も誰かに頼まれたのかもしれないが、引き受けたことが間違いだったと気付くだろう。

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