【完結】メイド・マイ・デイ

野村にれ

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兆し

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 憂鬱ではあったが、美里にも一応、通話で報告を行った。

「休むなんて」
「ママはどれだけ辛いか分かっていないでしょう!」
「でも、涼希だって子どもが欲しいから不妊治療をしていたのでしょう?だったら、早い方がいいんだから」

 涼希は誰も意見など求めていないのに、相変わらずの思考に苛立った。

「代理母は?それでもあなたの子どもなんだから、お金もあるんだから」
「そこまでして要らないわ」

 英仁からも涼希の身体の危険も考えて、代理母という話があったが、涼希はそんなことをするなら子どもは要らないと考えていた。

「何を言っているの」
「また言わせたい?」
「えっ?」
「代理母にママがなるの?」
「えっ、ああいったのは、お金のない人に頼むんでしょう?」

 テレビでチラッと見たことがある程度ではあったが、代理母というのはお金のない海外の人がやることだという認識であった。

 問題がないのであれば、代理母に子ども産んでもらえばいい。

「母親が娘夫婦の子どもを出産したということがあったみたいよ?」
「そんなこと……あるわけないじゃない」
「ママは自分が身を削るようなことはしないものね、口を出すだけでしょう?それで良いことは自分が言った、良くないことは知らない顔、そうでしょう?」
「そんな、こと……」
「だったらなってくれるの?」
「ママは、無理よ……」

 涼希も美里に代理母になって欲しいなどと思っていないが、美里がそんなことをするはずがないことも分かっている。

「私もそこまでする気はないわ、ママも口だけ出すのはやめて」
「でも、私はあなたに後悔して欲しくないの」

 今、諦めてしまったら、もう生まれることがないような気になっていた。

「ママが何を言っても変わらないわ、英仁さんと話し合って決めたの」
「でも、あなたは選ばれた存在なのよ。お金がない人ができないこともあなたならできるのよ?」
「相談ではないの、報告をしただけだから」

 そのまま通話は切られてしまい、美里は代理母について、インターネットで調べたが、日本では行われていないために、海外で頼むことになり、そんなことはどうやっていいかすら分からなかった。

 則人にも話したが、夫婦が決めたのことなのだから、口だけ出すなと言われただろうと言われて、力にはなってくれなかった。

 美里はそれでも、もう一度考え直した方がいいと涼希にメッセージを送り続けたが、返事はなかった。

 だが、涼希の生理が遅れ、期待してはいけないと思いながらも、やめたののが良かったのかもしれないと、どうしても期待してしまう日々を過ごしていた。

 一日、三日、一週間、十日と、期待は高まっていた頃であった。

 朝、先に目が覚めた涼希はリビングで、コーヒーはよくないかもしれないと、ジュースを飲んでいた。

 今日は目覚めも良かったから、そろそろ検査をしてみようかと思っていたが、足音がして、英仁が起きたのかなと思い、話をしようかと待ち構えていた。

 だが、いつもなら涼希に向かって、おはようと言いながら、愛しい表情を向ける英仁が、険しい表情を浮かべていた。

「おはよう、どうしたの?そんな顔をして、嫌な夢でも見た?」

 涼希は驚きはしたが、何かあったのかと、いつも通り問い掛けた。

 だが、英仁は何も答えず、いつもなら涼希に近付いて来るはずが、立ち尽くしたまま、近寄ってこようともしない。

「えっ、どうしたの?」

 さすがにおかしな様子に近付こうとしたが、そのまま英仁は何も言わずに洗面所に行ってしまった。

 やっぱり寝惚けていたのかなと思い、座って待つことにした。

 だが、次にリビングにやって来た英仁はスーツに着替えており、もう一度、涼希の全身を上から下まで見た後で、マンションから出て行ってしまった。

「どうしたのかしら……」
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