【完結】メイド・マイ・デイ

野村にれ

文字の大きさ
65 / 70

請求8

しおりを挟む
「働きたくないから、働かずに離婚して財産分与と思っているのかもしれないな。だが、涼希の五千万もあるからな、自己破産ができないのなら、私が半分出そう……だが、半分が限界だ。花穂、いいか?」

 もし何かあった時に、財産を残すことはできないことになり、花穂にも影響する。

「私はいいよ。でも、ママは?」
「あいつにも責任があるのだから、話をして納得させる」
「パパ……」

 まさかこんな大金を出してくれるとは思わず、涼希も驚いた。

「それでも、半分はあるんだ。涼希はちゃんと働いて返しなさい」
「うん」
「自己破産はできないと思って、働くんだ。仕事を紹介してくれると言うのなら、何の話をするのか聞いてみるといい」
「うん……」

 良い仕事ではないだろうが、割のいい仕事ではない限り、半分でも二千五百万を支払えない。覚悟をするしかないと思った。

「そういえば、友達に会ったの。あの請求された」
「え?」
「不当請求だとお金を返せと言われたけど、ショックだったと伝えたら、怒ってどこかに行ったの」
「請求?」
「涼希の友人たちもママと同じことしていたんだって」
「そうなのか?」

 まさか妖相手に、美里の他にも同じようなことをしていた者がいたとは思わず、酷く驚いた。

「それで請求をされたみたいよ。返せということは払ったということね」
「妖様を相手に払わなかったらと思ったんじゃない?」
「じゃあ、私も……だよね」
「そうね、働かなければいけないのは確かね」
「ママには話しておくから、サインして来なさい」

 ギリギリまで待っても、涼希が騙していたことは変わらず、現状が何かが変わるわけではないために、早い方がいい。

 則人は三島家を訪ねて、美里に話をすることにした。

「涼希が天宮さんに五千万円、請求されている」
「え?は?五千万?」

 則人は美里も請求をされて、想定していたはずが、大きな目を見開いたまま止まっていた。自分が少なかったと思ったくらいだろう。

「そうだ、自己破産もさせないと言われている。相手は妖様で、支払わなくてはならないと判断した。半分は我が家から出す。美里の責任でもあるのだから、いいな?離婚しても、財産分与はほとんどなくなる」
「離婚なんて」
「そのつもりだったんじゃないのか?」
「違うわ」

 則人は働くくらいなら、てっきり離婚でいいと思っているのだろ判断していた。

「働く気がないのだから、そのつもりだと思っていた。まあ、どちらにせよ借金の分くらいは残る」
「でも、私は詠の叔母でもあるのよ?」
「まだそんなことを言っているのか」

 美里にとって今縋れるのは、もういない詠の存在で、どうにかならないかと訴えていた。則人が実家に帰した原因の一つでもあった。

「だってそうじゃない、優遇されてもいいはずじゃない」
「記憶が戻っているのだろう?どうなったか、何をしたか覚えているのだろう?」
「っう」

 美里は首を落とされたあの時のことは考えないようしており、あれは夢だったと思うようにしていた。

「いいな?君の自慢の娘だったのだから」
「今は」
「今は違うか?」
「だって、運命の相手に選ばれたと思って、調子に乗って何が悪いのよ!」
「その結果がこれだろう?なかった世界で、あのまま続いていたら、君は同じことをしていたのではないか?妖の運命の相手の母親だとね」
「涼希が運命の相手だったら良かったのよ、詠は嫌がっていたんでしょう?だったらいいじゃない!どうしてこんな目に遭わなければならないのよ!」

 則人はまた美里が言い出したとしか思えず、げんなりした。

「則人さん、ごめんなさい。話が聞こえたけど本当なの?」
「ええ、事実です」

 声を掛けたのは加奈代で、丁度、お茶を持って来ようとしていた。だが、中から聞こえてくる話に、なかなか入れずにいた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

遺産は一円も渡さない 〜強欲な夫と義実家に捨てられた私、真の相続人と手を組み全てを奪い返す~ (全10話)

スカッと文庫
恋愛
「お前の価値なんて、その遺産くらいしかないんだよ」 唯一の肉親だった祖父を亡くした夜、夫の健一と義母から放たれたのは、あまりにも無慈悲な言葉だった。 四十九日も待たず、祖父が遺した1億2000万円の遺産をアテに贅沢三昧を目論む夫。だが、彼には隠し通している「裏切り」があった――。 絶望の淵に立たされた由美の前に現れたのは、亡き祖父が差し向けた若き凄腕弁護士・蓮。 「おじい様は、すべてお見通しでしたよ」 明かされる衝撃の遺言内容。そして、強欲な夫たちを地獄へ叩き落とすための「相続条件」とは? 虐げられてきた妻による、一発逆転の遺産争奪&復讐劇がいま幕を開ける!

嘘が愛を試す時 〜君を信じたい夜に〜

月山 歩
恋愛
サラとマリウス・ハンプトン侯爵夫婦のもとに、衝撃的な告白を携えた男が訪れる。「隠れてサラと愛し合っている。」と。 身に覚えのない不貞の証拠に、いくらサラが誤解だと訴えてもマリウスは次第に疑念を深めてゆく。 男の目的はただ一つ、サラを奪うこと。 *こちらはアルファポリス版です。

恋は、母をやめてから始まる――正体を隠したまま、仮の婚約者になりました

あい
恋愛
両親を失ったあの日、 赤子の弟を抱いて家を出た少女がいた。 それが、アリア。 世間からは「若い母」と呼ばれながらも、 彼女は否定しなかった。 十六年間、弟を守るためだけに生きてきたから。 恋も未来も、すべて後回し。 けれど弟は成長し、ついに巣立つ。 「今度は、自分の人生を生きて」 その一言が、 止まっていた時間を動かした。 役目を終えた夜。 アリアは初めて、自分のために扉を開く。 向かった先は、婚姻仲介所。 愛を求めたわけではない。 ただ、このまま立ち止まりたくなかった。 ――けれどその名前は、 結婚を急かされていた若き当主のもとへと届く。 これは、 十六年“母”だった女性が、 もう一度“ひとりの女”として歩き出す物語。

さようなら、わたくしの騎士様

夜桜
恋愛
騎士様からの突然の『さようなら』(婚約破棄)に辺境伯令嬢クリスは微笑んだ。 その時を待っていたのだ。 クリスは知っていた。 騎士ローウェルは裏切ると。 だから逆に『さようなら』を言い渡した。倍返しで。

初耳なのですが…、本当ですか?

あおくん
恋愛
侯爵令嬢の次女として、父親の仕事を手伝ったり、邸の管理をしたりと忙しくしているアニーに公爵家から婚約の申し込みが来た! でも実際に公爵家に訪れると、異世界から来たという少女が婚約者の隣に立っていて…。

教養が足りない、ですって

たくわん
恋愛
侯爵令嬢エリーゼは、公爵家の長男アレクシスとの婚約披露宴で突然婚約破棄される。理由は「教養が足りず、公爵夫人として恥ずかしい」。社交界の人々の嘲笑の中、エリーゼは静かに会場を去る。

夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。 神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。 もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。 生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。 過去世と同じ轍を踏みたくない……

王様の恥かきっ娘

青の雀
恋愛
恥かきっ子とは、親が年老いてから子供ができること。 本当は、元気でおめでたいことだけど、照れ隠しで、その年齢まで夫婦の営みがあったことを物語り世間様に向けての恥をいう。 孫と同い年の王女殿下が生まれたことで巻き起こる騒動を書きます 物語は、卒業記念パーティで婚約者から婚約破棄されたところから始まります これもショートショートで書く予定です。

処理中です...