【完結】メイド・マイ・デイ

野村にれ

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「聞いていなくたって、今まで何も言って来なかったじゃない!」
「勝手にタダで利用したんでしょう?私だってショックだったよ?」

 妖様の運命の相手だから、親しくしていたと思ってはいたが、それでも勝手に利用されていないことはショックだった。

「っ、それはそうだけど、そのくらいいいじゃない」
「そんなこと普通はしないよ」
「お金があるんだからいいじゃない!あなただって、いつも奢っていたでしょう?その延長でしょう?だから払った分、返してよ」
「そんなの無理よ、私ではなく会社でしょう?不当請求じゃないじゃない」
「何よ!もう連絡してやらないんだから」

 こいという名前の彼女は美人で派手で、どこか涼希を馬鹿にして見下していたように感じていたが、運命の相手に選ばれたことで、表面上は羨ましいと大袈裟に言っていたが、きっと嫉妬しているのだろうと思っていた。連絡して来なくても問題ない、むしろ誰にも会いたくない気持ちだった。

 静かに家に帰ろうと思っていたのに、恋に会ったことで、これから誰かに会う度に、どう答えたらいいのだろうかという気持ちであった。

「ただいま」

 誰からも返事はなかったが、そのまま静かに部屋に戻った。

 夕方になると、誰かが帰って来た音がしたが、美里だったら嫌だと思い、確認をすることはしなかった。

「涼希、帰っているのか?」
「パパ?帰っているよ」
「ご飯は?」
「さっき、買って来たパンを食べたから」

 帰りに近所ではないコンビニに寄って、パンと飲み物だけ買って来た。

「そうか、花穂が帰って来て、子どもたちが寝たら、話をしよう」
「うん……」

 則人も今日、弁護士事務所に行くことを聞いており、気になっていた。

 しばらくすると、花穂が帰ってきたようで、子どもたちの声で騒がしくなった。涼希は横たわったまま、どうすればいいのか。分割にしても、払える金額ではない。

 詠のように、死んだ方がいいのか。いや、詠ではなく、私が死ねばよかったのか。誰か殺してくれないかと考えるようになっていた。

「涼希、下りて来なさい」
「うん……」

 ぼんやりしながら、リビングに行くと、花穂が待っていた。

「どうだった?」

 弁護士に言われたことを伝えると、則人は息をのみ、花穂も仰け反っていた。

「そうか……本気なんだな」
「英仁さんは許しても、妖は許さないとも言われたの。弁護士さんも妖だったの」
「そうだったの……それは、余計に不利でしょうね。でも、ということは、英仁さんの意思ではないということ?」
「そうかもしれないな」

 詠の葬儀で見たのが最後だったが、憔悴しきっており、詠がいない以上、なかなかこれまで通りの生活はできていないのだろうと推測できる。

「払うしかないけど、どれだけ働けば返せるの?仕事を紹介してくれるって言っていたけど、まともな仕事ではないよね?でもそのくらいしないと返せないのかな……」

 涼希の自業自得でだという思いはあったが、頬のやつれた姿を見ていると、則人も花穂も可哀想な気持ちもあった。

「そういえば、ママは?いるの?」
「実家に帰っている」
「え?自分の意志で?」
「いや、あまりにうるさいから帰ってもらった。孫の世話なんて言いながらも、何もしない」
「仕事も見付からないって」

 結局、美里は一度も仕事をしないままで、日雇いもあるだろうと言ったが、そんなことはしたくないと、顔を合わせれば言い合いになるために、孫もいることから実家に帰らせることにした。

「請求されたお金?」
「そうだ、払わなければ離婚すると言ってある」
「え……」

 喧嘩をすることもないが、仲の良い夫婦という印象はなかったが、それでも一緒にいるのが当たり前だったために、離婚などと思ったこともなかった。
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