【完結】試される愛の果て

野村にれ

文字の大きさ
58 / 154

手紙2

しおりを挟む
「久し振りに泣いて疲れてしまったのね…」

 心を壊して、始めは泣いていたこともあった。マリエルが亡くなった後は、特に酷かったと記憶している。

「でも話しただけでも良かったわ。マリエル様のことはずっと引っ掛かっていたのね、きっと。ちゃんと聞くべきだったわ」

 半狂乱になったオリラを落ち着かせることばかりで、必死で訴えていたのに聞かなかった。

 その後は、オリラも母親に訴えたところで、子爵家では何も出来ないとも感じていたのだろう。何も言わなくなってしまっていた。

「調べて目を付けられでもしていたら、叔母様の言うことが事実だったら、危険だったかもしれません」
「ええ、いくらオリラが話しても、心を壊したオリラの言葉は、信じて貰えなかったかもしれないしね…」
「叔母様もそう思ったのかもしれませんね、だから言えなかった」

 高位貴族に異常者の妄言だと言われたら、いくら怪しくとも、調べようとしなかったかもしれない。

 そうなると、おそらくマリエルはトイズに話していなかったのだろう。

 辛い境遇を抱えた込んだ者同士だった。マリエルは先にオリラに話したが、オリラはマリエルには言えなくなってしまったのではないか。

 マリエルも離縁したことで、ようやくオリラのことを知った。だが、オリラが良くなる前に、マリエルは亡くなってしまった。

 オリラはそのことで、心を壊したというより、閉ざされてしまったのではないか。

「ランドマーク侯爵家と、ローザ公爵家、どちらがいいでしょうか?」
「どちらもはどう?今のあなたなら、助けを求められるんじゃない?」
「そうですね。時間も経っていますし、沢山の考えがあったほうがいいかもしれませんね、話してみます」
「お願いね」

 オリラは目を覚まさないまま、スノーはリーター子爵家を後にすることになった。

 そして、リアンス、祖父に手紙を書くことにした。スノーの次の休みにローザ公爵家で、会うことになった。

 リアンスの母で、ヒューナ夫人はリリーを苦手としており、今まで話していなかったが、マリエルのことは知っていたので、この間に公爵から、全ての話を聞かされることになり、同席することになった。

「本当に驚きましたわ!でも今日は、マリエルが嫌がらせを受けていたということなのね」
「はい…私の叔母から手紙を差し出されました。読むに堪えないものですが、目を通していただきたいと思い、お持ちしました」

 缶のまま、持ってきた手紙を、皆がそれぞれに手に取って読み始めたが、全員が苦痛の表情を浮かべた。

「何よ、これ…」
「酷いな…」

 ローザ公爵夫妻が一番に声を上げた。オブレオは疎遠にはなってしまっているが、娘が預かっていた手紙となり、黙ったまま眉間にしわを寄せている。

「こちらに言ってくれていたら…」

 アンリは悲痛な気持ちであった、オリラの時も随分、動いてくれたと聞いている。

「叔母様はリリー・ユーフレットの名前を出したら、『マリーを殺したのは、あの女よ』そう言いました」
「オリラが?」

 オブレオもオリラは、まともに会話ができない状態だということを聞いている。

「はい…何もかも証拠がないと、自分ではどうにも出来なかったと泣いていました」

 悲痛な沈黙が流れた。

「筆跡が、違うのね…」
「はい」
「あの事故をもしも、リリーが仕組んだものだったとしたら…本当に許せないわ」
「きちんと調べられたのですよね?」

 嫌がらせを受けていたとしても、オスレ伯爵家の夫人だったのだ。きちんと調べられているだろうと思っていた。

「再度、報告書を読んだのだが、可能性はないとは言えない」
「どういうことだ?」
「馬が急に暴れたということだっただろう?それで転倒して、マリエル夫人は体を強く打った。それが原因で亡くなられた」
「馬に何かしたとしたら…ということか」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

私の手からこぼれ落ちるもの

アズやっこ
恋愛
5歳の時、お父様が亡くなった。 優しくて私やお母様を愛してくれたお父様。私達は仲の良い家族だった。 でもそれは偽りだった。 お父様の書斎にあった手記を見た時、お父様の優しさも愛も、それはただの罪滅ぼしだった。 お父様が亡くなり侯爵家は叔父様に奪われた。侯爵家を追い出されたお母様は心を病んだ。 心を病んだお母様を助けたのは私ではなかった。 私の手からこぼれていくもの、そして最後は私もこぼれていく。 こぼれた私を救ってくれる人はいるのかしら… ❈ 作者独自の世界観です。 ❈ 作者独自の設定です。 ❈ ざまぁはありません。

愛すべきマリア

志波 連
恋愛
幼い頃に婚約し、定期的な交流は続けていたものの、互いにこの結婚の意味をよく理解していたため、つかず離れずの穏やかな関係を築いていた。 学園を卒業し、第一王子妃教育も終えたマリアが留学から戻った兄と一緒に参加した夜会で、令嬢たちに囲まれた。 家柄も美貌も優秀さも全て揃っているマリアに嫉妬したレイラに指示された女たちは、彼女に嫌味の礫を投げつける。 早めに帰ろうという兄が呼んでいると知らせを受けたマリアが発見されたのは、王族の居住区に近い階段の下だった。 頭から血を流し、意識を失っている状態のマリアはすぐさま医務室に運ばれるが、意識が戻ることは無かった。 その日から十日、やっと目を覚ましたマリアは精神年齢が大幅に退行し、言葉遣いも仕草も全て三歳児と同レベルになっていたのだ。 体は16歳で心は3歳となってしまったマリアのためにと、兄が婚約の辞退を申し出た。 しかし、初めから結婚に重きを置いていなかった皇太子が「面倒だからこのまま結婚する」と言いだし、予定通りマリアは婚姻式に臨むことになった。 他サイトでも掲載しています。 表紙は写真ACより転載しました。

戻る場所がなくなったようなので別人として生きます

しゃーりん
恋愛
医療院で目が覚めて、新聞を見ると自分が死んだ記事が載っていた。 子爵令嬢だったリアンヌは公爵令息ジョーダンから猛アプローチを受け、結婚していた。 しかし、結婚生活は幸せではなかった。嫌がらせを受ける日々。子供に会えない日々。 そしてとうとう攫われ、襲われ、森に捨てられたらしい。 見つかったという遺体が自分に似ていて死んだと思われたのか、別人とわかっていて死んだことにされたのか。 でももう夫の元に戻る必要はない。そのことにホッとした。 リアンヌは別人として新しい人生を生きることにするというお話です。

王命により、婚約破棄されました。

緋田鞠
恋愛
魔王誕生に対抗するため、異界から聖女が召喚された。アストリッドは結婚を翌月に控えていたが、婚約者のオリヴェルが、聖女の指名により独身男性のみが所属する魔王討伐隊の一員に選ばれてしまった。その結果、王命によって二人の婚約が破棄される。運命として受け入れ、世界の安寧を祈るため、修道院に身を寄せて二年。久しぶりに再会したオリヴェルは、以前と変わらず、アストリッドに微笑みかけた。「私は、長年の約束を違えるつもりはないよ」。

妹がいなくなった

アズやっこ
恋愛
妹が突然家から居なくなった。 メイドが慌ててバタバタと騒いでいる。 お父様とお母様の泣き声が聞こえる。 「うるさくて寝ていられないわ」 妹は我が家の宝。 お父様とお母様は妹しか見えない。ドレスも宝石も妹にだけ買い与える。 妹を探しに出掛けたけど…。見つかるかしら?

病めるときも健やかなるときも、お前だけは絶対許さないからなマジで

あだち
恋愛
ペルラ伯爵家の跡取り娘・フェリータの婚約者が、王女様に横取りされた。どうやら、伯爵家の天敵たるカヴァリエリ家の当主にして王女の側近・ロレンツィオが、裏で糸を引いたという。 怒り狂うフェリータは、大事な婚約者を取り返したい一心で、祝祭の日に捨て身の行動に出た。 ……それが結果的に、にっくきロレンツィオ本人と結婚することに結びつくとも知らず。 *** 『……いやホントに許せん。今更言えるか、実は前から好きだったなんて』  

踏み台(王女)にも事情はある

mios
恋愛
戒律の厳しい修道院に王女が送られた。 聖女ビアンカに魔物をけしかけた罪で投獄され、処刑を免れた結果のことだ。 王女が居なくなって平和になった筈、なのだがそれから何故か原因不明の不調が蔓延し始めて……原因究明の為、王女の元婚約者が調査に乗り出した。

〈完結〉遅効性の毒

ごろごろみかん。
ファンタジー
「結婚されても、私は傍にいます。彼が、望むなら」 悲恋に酔う彼女に私は笑った。 そんなに私の立場が欲しいなら譲ってあげる。

処理中です...