95 / 154
漂着2
しおりを挟む
「弟さんはなぜ亡くなられたのですか?」
「事故、です」
「あなたはジーリスを恨んでいませんか?」
「いいえ、関わりがないのに恨みようがありません」
成り替わっていたことは認める気がないようで、証拠もスノーの証言しかない。
だが、レリリス伯爵から急に邸に訪れることがあったこと、女性関係がなければ、付き合える方ではあったが、お酒を飲んで話をするような間柄ではあったので、いつも女性関係の自慢のようなことを聞かされていたが、深入りしたくないことから、詳しく尋ねることはしなかったと聞いた。
御者のことは覚えているか聞くと、顔や名前まではもう覚えていないが、外でずっと待っており、同じ男性だったと話した。
その証言を聞いていたローザ公爵は、窓から覗いていたあなたの娘は、しっかり覚えていたぞと心の中で思っていた。
他の友人にも話を聞いたが、概ね同じような証言であった。
ただそれは、伯爵家までの話であった。それ以下は、ジーリス・ユーフレットと聞くだけで、顔を顰める者もいれば、名前も聞きたくないという者も多かった。
未遂ならばいい方で、実際に襲われていた者もいたようで、訴えようにも写真を取られたり、家を潰すと脅されていたようで、出来なかったそうだ。
亡くなった時は、スノーが言っていたように安堵したという。
だが、被害に遭った女性の傷が癒えるわけでもなく、心を壊したり、自殺したものもいたという。どなたですかと聞いたが、犯人は亡くなっているのに、今更名前を出したくはないと言われてしまった。
調査員たちは、亡くなってはいますが、訴えることは出来ますということしか出来ずに帰ったという。
「ジーリスにあなたが、それとも弟さんが何かされたのですか?」
「リリー様の話ですよね?どうして、ジーリス様のことを聞くのですか」
「ジーリスが関わっているからですよ」
そう言うと、再び瞳孔が大きく開いて、黙り込んだ。
「ジーリスを恨んでいたのではありませんか?」
「…」
「ジーリスに弟さんは殺された?」
「…」
「あなたがジーリスを殺したのか?」
オーロラは意思を持った目で、ローザ公爵をじっと見つめた。
「リリー様とジーリス様に、どのような関係があるのですか」
「あなたもご存知なんですね?」
「何をですか?」
「強姦されたことをです」
オーロラは、ゴクンと唾を飲み込んだ。
「リリーを手助けしていたのはあなたですね?」
「…あ」
「リリーにはまだ話していません。何があったか教えては貰えませんか」
視線が定まらないオーロラに、ローザ公爵は再び優しく問い掛けたが、オーロラは口を開こうとはしなかった。
「筆跡鑑定もさせていただきます」
マリエルへの嫌がらせの手紙を手伝った一人だろうと、直感的に思った。
一部の手紙にはマリエルの名前は書いていなかったので、誰とは言わずにリリーは書かせたのだろうと思っていた。
「筆跡…?」
そう言いながら、オーロラは戸惑った顔をした。
「手紙に心当たりがありませんか」
「…手紙」
「リリーに頼まれたのではありませんか」
オーロラは心当たりのあるような顔をしていたが、どう答えればいいのかという雰囲気で、さすがにローザ公爵はしびれを切らした。
「メリーアンは、ジーリスの子どもの可能性が高いのですよ!」
「そんな!」
「事実です!」
「そんな、あああああ!嫌!嘘…嘘よ!そんなことあってはならないわああああ」
オーロラは絶叫しながら、机に突っ伏した。
きっと、リリーもオーロラも消した過去であり、誰もが口にもしたくもなかったことだったのだろう。
落ち着くのを待って、ローザ公爵は問い掛けた。
「何があったのか、話してくれますね?」
「…はい」
「事故、です」
「あなたはジーリスを恨んでいませんか?」
「いいえ、関わりがないのに恨みようがありません」
成り替わっていたことは認める気がないようで、証拠もスノーの証言しかない。
だが、レリリス伯爵から急に邸に訪れることがあったこと、女性関係がなければ、付き合える方ではあったが、お酒を飲んで話をするような間柄ではあったので、いつも女性関係の自慢のようなことを聞かされていたが、深入りしたくないことから、詳しく尋ねることはしなかったと聞いた。
御者のことは覚えているか聞くと、顔や名前まではもう覚えていないが、外でずっと待っており、同じ男性だったと話した。
その証言を聞いていたローザ公爵は、窓から覗いていたあなたの娘は、しっかり覚えていたぞと心の中で思っていた。
他の友人にも話を聞いたが、概ね同じような証言であった。
ただそれは、伯爵家までの話であった。それ以下は、ジーリス・ユーフレットと聞くだけで、顔を顰める者もいれば、名前も聞きたくないという者も多かった。
未遂ならばいい方で、実際に襲われていた者もいたようで、訴えようにも写真を取られたり、家を潰すと脅されていたようで、出来なかったそうだ。
亡くなった時は、スノーが言っていたように安堵したという。
だが、被害に遭った女性の傷が癒えるわけでもなく、心を壊したり、自殺したものもいたという。どなたですかと聞いたが、犯人は亡くなっているのに、今更名前を出したくはないと言われてしまった。
調査員たちは、亡くなってはいますが、訴えることは出来ますということしか出来ずに帰ったという。
「ジーリスにあなたが、それとも弟さんが何かされたのですか?」
「リリー様の話ですよね?どうして、ジーリス様のことを聞くのですか」
「ジーリスが関わっているからですよ」
そう言うと、再び瞳孔が大きく開いて、黙り込んだ。
「ジーリスを恨んでいたのではありませんか?」
「…」
「ジーリスに弟さんは殺された?」
「…」
「あなたがジーリスを殺したのか?」
オーロラは意思を持った目で、ローザ公爵をじっと見つめた。
「リリー様とジーリス様に、どのような関係があるのですか」
「あなたもご存知なんですね?」
「何をですか?」
「強姦されたことをです」
オーロラは、ゴクンと唾を飲み込んだ。
「リリーを手助けしていたのはあなたですね?」
「…あ」
「リリーにはまだ話していません。何があったか教えては貰えませんか」
視線が定まらないオーロラに、ローザ公爵は再び優しく問い掛けたが、オーロラは口を開こうとはしなかった。
「筆跡鑑定もさせていただきます」
マリエルへの嫌がらせの手紙を手伝った一人だろうと、直感的に思った。
一部の手紙にはマリエルの名前は書いていなかったので、誰とは言わずにリリーは書かせたのだろうと思っていた。
「筆跡…?」
そう言いながら、オーロラは戸惑った顔をした。
「手紙に心当たりがありませんか」
「…手紙」
「リリーに頼まれたのではありませんか」
オーロラは心当たりのあるような顔をしていたが、どう答えればいいのかという雰囲気で、さすがにローザ公爵はしびれを切らした。
「メリーアンは、ジーリスの子どもの可能性が高いのですよ!」
「そんな!」
「事実です!」
「そんな、あああああ!嫌!嘘…嘘よ!そんなことあってはならないわああああ」
オーロラは絶叫しながら、机に突っ伏した。
きっと、リリーもオーロラも消した過去であり、誰もが口にもしたくもなかったことだったのだろう。
落ち着くのを待って、ローザ公爵は問い掛けた。
「何があったのか、話してくれますね?」
「…はい」
1,982
あなたにおすすめの小説
婚約破棄の代償
nanahi
恋愛
「あの子を放って置けないんだ。ごめん。婚約はなかったことにしてほしい」
ある日突然、侯爵令嬢エバンジェリンは婚約者アダムスに一方的に婚約破棄される。破局に追い込んだのは婚約者の幼馴染メアリという平民の儚げな娘だった。
エバンジェリンを差し置いてアダムスとメアリはひと時の幸せに酔うが、婚約破棄の代償は想像以上に大きかった。
戻る場所がなくなったようなので別人として生きます
しゃーりん
恋愛
医療院で目が覚めて、新聞を見ると自分が死んだ記事が載っていた。
子爵令嬢だったリアンヌは公爵令息ジョーダンから猛アプローチを受け、結婚していた。
しかし、結婚生活は幸せではなかった。嫌がらせを受ける日々。子供に会えない日々。
そしてとうとう攫われ、襲われ、森に捨てられたらしい。
見つかったという遺体が自分に似ていて死んだと思われたのか、別人とわかっていて死んだことにされたのか。
でももう夫の元に戻る必要はない。そのことにホッとした。
リアンヌは別人として新しい人生を生きることにするというお話です。
『彼を解放して!』とおっしゃいましたが、何から解放されたいのですか?
シエル
恋愛
「彼を解放してください!」
友人たちと教室に戻ろうとしていると、突如、知らない令嬢に呼び止められました。
「どなたかしら?」
なぜ、先ほどから私が問いかける度に驚いているのでしょう?
まるで「え!?私のこと知らないの!?」と言わんばかりですけれど、知りませんよ?
どうやら、『彼』とは私の婚約者のことのようです。
「解放して」とおっしゃっいましたが、私の目には何かに囚われているようには見えないのですが?
※ 中世ヨーロッパモデルの架空の世界
※ ご都合主義です。
※ 誤字、脱字、文章がおかしい箇所は気付いた際に修正しております。
公爵令嬢は結婚式当日に死んだ
白雲八鈴
恋愛
今日はとある公爵令嬢の結婚式だ。幸せいっぱいの公爵令嬢の前に婚約者のレイモンドが現れる。
「今日の結婚式は俺と番であるナタリーの結婚式に変更だ!そのドレスをナタリーに渡せ!」
突然のことに公爵令嬢は何を言われたのか理解できなかった。いや、したくなかった。
婚約者のレイモンドは番という運命に出逢ってしまったという。
そして、真っ白な花嫁衣装を脱がされ、そのドレスは番だという女性に着させられる。周りの者達はめでたいと大喜びだ。
その場所に居ることが出来ず公爵令嬢は外に飛び出し……
生まれ変わった令嬢は復讐を誓ったのだった。
婚約者とその番という女性に
『一発ぐらい思いっきり殴ってもいいですわね?』
そして、つがいという者に囚われた者の存在が現れる。
*タグ注意
*不快であれば閉じてください。
婚約破棄で悪役令嬢を辞めたので、今日から素で生きます。
黒猫かの
恋愛
「エリー・オルブライト! 貴様との婚約を破棄する!」
豪華絢爛な夜会で、ウィルフレッド王子から突きつけられた非情な宣告。
しかし、公爵令嬢エリーの心境は……「よっしゃあ! やっと喋れるわ!!」だった。
【完結】離縁ですか…では、私が出掛けている間に出ていって下さいね♪
山葵
恋愛
突然、カイルから離縁して欲しいと言われ、戸惑いながらも理由を聞いた。
「俺は真実の愛に目覚めたのだ。マリアこそ俺の運命の相手!」
そうですか…。
私は離婚届にサインをする。
私は、直ぐに役所に届ける様に使用人に渡した。
使用人が出掛けるのを確認してから
「私とアスベスが旅行に行っている間に荷物を纏めて出ていって下さいね♪」
結婚後、訳もわからないまま閉じ込められていました。
しゃーりん
恋愛
結婚して二年、別邸に閉じ込められていたハリエット。
友人の助けにより外に出ることができ、久しぶりに見た夫アルバートは騎士に連行されるところだった。
『お前のせいだ!』と言われても訳がわからなかった。
取り調べにより判明したのは、ハリエットには恋人がいるのだとアルバートが信じていたこと。
彼にその嘘を吹き込んだのは、二人いたというお話です。
まだ20歳の未亡人なので、この後は好きに生きてもいいですか?
せいめ
恋愛
政略結婚で愛することもなかった旦那様が魔物討伐中の事故で亡くなったのが1年前。
喪が明け、子供がいない私はこの家を出て行くことに決めました。
そんな時でした。高額報酬の良い仕事があると声を掛けて頂いたのです。
その仕事内容とは高貴な身分の方の閨指導のようでした。非常に悩みましたが、家を出るのにお金が必要な私は、その仕事を受けることに決めたのです。
閨指導って、そんなに何度も会う必要ないですよね?しかも、指導が必要には見えませんでしたが…。
でも、高額な報酬なので文句は言いませんわ。
家を出る資金を得た私は、今度こそ自由に好きなことをして生きていきたいと考えて旅立つことに決めました。
その後、新しい生活を楽しんでいる私の所に現れたのは……。
まずは亡くなったはずの旦那様との話から。
ご都合主義です。
設定は緩いです。
誤字脱字申し訳ありません。
主人公の名前を途中から間違えていました。
アメリアです。すみません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる