病める時も、健やかではない時も

野村にれ

文字の大きさ
178 / 330

婚約者2

「媚びを売ったところで、逆に嫌われるとは思わないのかしら?」

 エリーはアピールをするだけでは押しの強さにうんざりされて、敬遠されると思わないのだろうかと考えていた。

「アピールしておかないと、視界にすら入れないと思ってのことだろう?」
「まあ、ではオルトお兄様はアピールされたら受け入れますの?」
「それは素敵な女性なら、受け入れるのもいいだろう。それが縁談というものじゃないか」

 オルトはこれまではレルスの次、スペアだと思われていたために、穿った見方としていたが、これからは違うのだからと誇らしげに答えた。

「でも、お兄様は候補者の中にはいらっしゃらなかったのでしょう?」
「それはそうだが?」
「おかしいではありませんか」

 エリーはオルトが他国の王女を望んでいることまでは知らないために、どうして選ばなかったのかとしか思えなかった。

「何がおかしい?」
「お兄様にアピールする令嬢もいたでしょう?でも選ばなかった」
「私にアピールする者などいなかった」
「そんなことありませんわ」
「そんなことある。皆、兄上目当てだっただろう?」

 その場にいたエリーはレルスではなく、オルトに好意を寄せている令嬢もいたが、気付かなかったのかと、鈍感さに気付いて、苛立った。

「まあ、お兄様は好意も分からないのね」
「っな」
「まあまあ、もう白紙になったのだから」

 オルトとエリーが言い合いになりそうなところを、レルスが止めに入った。

「そうだよ」
「そうだけど、オルトお兄様って鈍感なのねって思ったの」
「そんなことはない!」

 オルトは二番手の気持ちなどエリーには分からないと、鈍感など言われることに苛立ったが、王女との縁談について聞きたかった。

「それで、イルメザ王国の縁談はどうなったのですか?こちらに来られるのですか?どなたが来られるんですか?」

 オルトは年齢的にさすがに六歳年上のシャルロット王女は難しいかもしれないが、一つ年上の16歳のジュリエッタ王女か、三歳年上のクリスティーン王女だろうかと考えていた。

 二人とも美しい方だったと記憶しており、折角なら二人で来てくれてもいいと考えていた。

「既に断っているわ」
「え、でも、会ってみるくらいしてもいいではありませんか」
「お兄様はイルメザ王国の王女と婚約したいの?」
「折角なら、会ってみてもいいではないか」

 ケリーは王太子が白紙になったことで、オルトは明らかに積極的に発言するようになり、良いか悪いかはまだ分からないが、今までは抑えていたのだと感じていた。

 だが、エリーは美人だと聞くから、会ってみたいのではないかと、オルトをじっとりとした目で見つめた。

「理由が何か分からないのに、巻き込まれるわけにはいかないわ。しかも、あちらはまだ感染症も流行っているのよ?縁談などと言っている場合ではないはずよ」
「感染症……」
「そうよ、あなたは責任が取れるの?」

 ケリーは今は国のことを考える方が先だろうという意味で言ったのだが、オルトは感染症をプレメルラ王国に持ち込ませたくないという意味に受け取っていた。

「いいえ、そういった意味で言ったのではありません」
「私ではなく、陛下がお決めになられたことですわ」

 さすがにオルトは国王陛下と言われて、下を向いて黙ったたために、ケリーはやれやれと思うばかりであった。

 モリーの元へはレオーラから、王太子の白紙のことへの驚きと、追加でイルメザ王国についての情報が届けられた。

 まずは王太子に白紙になったことはモリーに関係があるのかと、問われていた。

 だが、モリーもあれから誰からも連絡はなく、ブレフォスから何か言われることもない。関わっていないとは自信はないが、関わっているのなら連絡があるだろうと考えていた。

 そして、追加の情報が書かれていた。

あなたにおすすめの小説

愛すべきマリア

志波 連
恋愛
幼い頃に婚約し、定期的な交流は続けていたものの、互いにこの結婚の意味をよく理解していたため、つかず離れずの穏やかな関係を築いていた。 学園を卒業し、第一王子妃教育も終えたマリアが留学から戻った兄と一緒に参加した夜会で、令嬢たちに囲まれた。 家柄も美貌も優秀さも全て揃っているマリアに嫉妬したレイラに指示された女たちは、彼女に嫌味の礫を投げつける。 早めに帰ろうという兄が呼んでいると知らせを受けたマリアが発見されたのは、王族の居住区に近い階段の下だった。 頭から血を流し、意識を失っている状態のマリアはすぐさま医務室に運ばれるが、意識が戻ることは無かった。 その日から十日、やっと目を覚ましたマリアは精神年齢が大幅に退行し、言葉遣いも仕草も全て三歳児と同レベルになっていたのだ。 体は16歳で心は3歳となってしまったマリアのためにと、兄が婚約の辞退を申し出た。 しかし、初めから結婚に重きを置いていなかった皇太子が「面倒だからこのまま結婚する」と言いだし、予定通りマリアは婚姻式に臨むことになった。 他サイトでも掲載しています。 表紙は写真ACより転載しました。

はじめまして、旦那様。離婚はいつになさいます?

あゆみノワ@書籍『完全別居の契約婚〜』
恋愛
「はじめてお目にかかります。……旦那様」 「……あぁ、君がアグリア、か」 「それで……、離縁はいつになさいます?」  領地の未来を守るため、同じく子爵家の次男で軍人のシオンと期間限定の契約婚をした貧乏貴族令嬢アグリア。  両家の顔合わせなし、婚礼なし、一切の付き合いもなし。それどころかシオン本人とすら一度も顔を合わせることなく結婚したアグリアだったが、長らく戦地へと行っていたシオンと初対面することになった。  帰ってきたその日、アグリアは約束通り離縁を申し出たのだが――。  形だけの結婚をしたはずのふたりは、愛で結ばれた本物の夫婦になれるのか。 ★HOTランキング最高2位をいただきました! ありがとうございます! ※書き上げ済みなので完結保証。他サイトでも掲載中です。

公爵令嬢の辿る道

ヤマナ
恋愛
公爵令嬢エリーナ・ラナ・ユースクリフは、迎えた5度目の生に絶望した。 家族にも、付き合いのあるお友達にも、慕っていた使用人にも、思い人にも、誰からも愛されなかったエリーナは罪を犯して投獄されて凍死した。 それから生を繰り返して、その度に自業自得で凄惨な末路を迎え続けたエリーナは、やがて自分を取り巻いていたもの全てからの愛を諦めた。 これは、愛されず、しかし愛を求めて果てた少女の、その先の話。 ※暇な時にちょこちょこ書いている程度なので、内容はともかく出来についてはご了承ください。 追記  六十五話以降、タイトルの頭に『※』が付いているお話は、流血表現やグロ表現がございますので、閲覧の際はお気を付けください。

十六歳の妹の誕生日、私はこの世を去る。

あいみ
恋愛
碌に手入れもされていない赤毛の伯爵令嬢、スカーレット。 宝石のように澄んだ青い髪をした伯爵令嬢、ルビア。 対極のような二人は姉妹。母親の違う。 お世辞にも美しいと言えない前妻の子供であるスカーレットは誰からも愛されない。 そばかすだらけで、笑顔が苦手な醜い姉。 天使のように愛らしく、誰からも好かれる可愛い妹。 生まれつき体の弱いルビアは長くは生きられないと宣告されていた。 両親の必死に看病や、“婚約者の献身的なサポート”のおかげで、日常生活が送れるようになるまで回復した。 だが……。運命とは残酷である。 ルビアの元に死神から知らせが届く。 十六歳の誕生日、ルビアの魂は天に還る、と。 美しい愛しているルビア。 失いたくない。殺されてなるものか。 それぞれのルビアを大切に思う想いが、一つの選択をさせた。 生まれてくる価値のなかった、醜いスカーレットを代わりに殺そう、と。 これは彼女が死ぬ前と死んだ後の、少しの物語。

麗しの王子殿下は今日も私を睨みつける。

スズキアカネ
恋愛
「王子殿下の運命の相手を占いで決めるそうだから、レオーネ、あなたが選ばれるかもしれないわよ」 伯母の一声で連れて行かれた王宮広場にはたくさんの若い女の子たちで溢れかえっていた。 そしてバルコニーに立つのは麗しい王子様。 ──あの、王子様……何故睨むんですか? 人違いに決まってるからそんなに怒らないでよぉ! ◇◆◇ 無断転載・転用禁止。 Do not repost.

【完結】わたしの婚約者には愛する人がいる

春野オカリナ
恋愛
 母は私を「なんて彼ににているのかしら、髪と瞳の色が同じならまるで生き写しだわ」そう言って赤い長い爪で私の顔をなぞる仕種をしている。  父は私に「お前さえいなければ、私は自由でいられるのだ」そう言って詰る。  私は両親に愛されていない。生まれてきてはいけない存在なのだから。  だから、屋敷でも息をひそめる様に生きるしかなかった。  父は私が生まれると直ぐに家を出て、愛人と暮らしている。いや、彼の言い分だと愛人が本当の妻なのだと言っている。  母は父に恋人がいるのを知っていて、結婚したのだから…  父の愛人は平民だった。そして二人の間には私の一つ下の異母妹がいる。父は彼女を溺愛していた。  異母妹は平民の母親そっくりな顔立ちをしている。明るく天使の様な彼女に惹かれる男性は多い。私の婚約者もその一人だった。  母が死んで3か月後に彼らは、公爵家にやって来た。はっきり言って煩わしい事この上ない。  家族に愛されずに育った主人公が愛し愛される事に臆病で、地味な風貌に変装して、学園生活を送りながら成長していく物語です。  ※旧「先生、私を悪い女にしてください」の改訂版です。

君といるのは疲れると言われたので、婚約者を追いかけるのはやめてみました

水谷繭
恋愛
メイベル・ホワイトは目立たない平凡な少女で、美人な姉といつも比べられてきた。 求婚者の殺到する姉とは反対に、全く縁談のなかったメイベル。 そんなある日、ブラッドという美少年が婚約を持ちかけてくる。姉より自分を選んでくれたブラッドに感謝したメイベルは、彼のために何でもしようとひたすら努力する。 しかしそんな態度を重いと告げられ、君といると疲れると言われてしまう。 ショックを受けたメイベルは、ブラッドばかりの生活を改め、好きだった魔法に打ち込むために魔術院に入ることを決意するが…… ◆なろうにも掲載しています

【完結】虐げられて自己肯定感を失った令嬢は、周囲からの愛を受け取れない

春風由実
恋愛
事情があって伯爵家で長く虐げられてきたオリヴィアは、公爵家に嫁ぐも、同じく虐げられる日々が続くものだと信じていた。 願わくば、公爵家では邪魔にならず、ひっそりと生かして貰えたら。 そんなオリヴィアの小さな願いを、夫となった公爵レオンは容赦なく打ち砕く。 ※完結まで毎日1話更新します。最終話は2/15の投稿です。 ※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています。