病める時も、健やかではない時も

野村にれ

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最終学年5

 エリーには仮ではあるが、モリーと婚約していると告げると、明らかに表情を明るくして、くるくると回るほど喜んだ。

 そして、絶対に仮を取って、私のお義姉様にしてくださいと、それはそれは激しく望まれることになった。

 手紙のやり取りをし、遊学の際はお土産も渡していると話すと、助言までもらうことになったが、いつもペンやハンカチであったために、有難かった。

 確かにモリーのことを考えれば、そういった物を喜ぶだろう。

「モリー様には、いくらあっても困らないのだからと言われてな」
「はい、確かにそうですね」
「テディベアもとても喜んでおり、両親にも私にも自慢していた。今日も改めてお礼を伝えてくれとも頼まれたくらいだ。部屋に大事に飾っている」

 テディベアは王宮に行って誤解を招かないように、ブレフォスに届けてもらったために、熱烈なお礼状はもらったが、エリーには直接は会っていない。

「そうですか、それは良かったです」
「いや、私も素晴らしいと思った」

 まだバレる前だったが、レルスもドレスのことを知っているために、見せてくれたのだろうが、エリーは頬ずりするほど喜んでいた。

 有事の際はこれを持って逃げるからとまで言っていた。

 実際のアレンジはしてもらったが、それでもいずれ着れなくなってしまうと落ち込んでいたために、その気持ちも薄れる良い贈り物だったと思う。

「ペイリー嬢も貰ったのだろう?」
「はい、いただきまして、エントランスに飾ってございます」
「エントランス……?」

 どういうことだと思ったが、モリーは目を逸らしている。

「私も邸で、目いっぱい自慢しまして、そうしましたら……皆が見れるようにするべきだと意見が出まして、エントランスに置くことになりました」

 丁寧な言葉で話しているが、部屋に飾ったらいつでも見れないじゃない、ペイリーだけずるいと非難囂々であった。

「それは、そうか。モリーも見たのか?」
「ええ、家宝のように扱われておりまして……いたたまれない気持ちですわ」

 フシュナ伯爵家でお茶をすることになり、その際にエントランスに神々しく飾られたテディベアを見ることになったのである。

 使用人も生暖かい目をしているように見えて、いたたまれなかった。

「いえ!家宝でございます」
「そんなことないわよ……」

 いたたまれなさで目を逸らしていたのかと、レルスは微笑ましく思った。

「エリーも今は誰から貰ったかは黙っているけど、仮ではなくなったら、大声で言えるから頑張れと言われている」
「そうですか」
「責める気もプレッシャーも与える気はないが、試験の結果も聞いた」
「っあ、そう、ですか……」

 レルスの手紙には一切、そのようなことは書いていなかったために、知らされていないのだろうと思っていた。

「頑張ったんだな」
「本気を出していなかったと思われているようなんですけど、レルス殿下はどう思いましたの?」

 モリーはこの婚約が嫌ではなかったが、王子の婚約者としては失格になるのではないかと思っていた。

「目立ちたくなかったのではないかと考えていた」
「わざとであったと思っているということですよね?」
「わざとというか、勉強しなかっただけではないか?」
「怒らないのですか?」

 わざと点数を操作するほどの能力はなかったが、一度、60位台になって、分かっても点数が上がり過ぎないようにしていた。

「責める気はないんだ。明かしていたら、君は間違いなく婚約者候補の筆頭になっていただろう。それなれば、足の引っ張り合いになったと思う」
「皆、優しいんですね」

 ペイリーもブレフォスも、レルスもやらなかったことを怒らない姿に、モリーはどこか不思議であった。

 おそらく、これは家の複雑な事情に巻き込まれたせいなのだろう。初めて、コアナとマキュレアリリージュに感謝した。

 何もしないと決めたとは言えないが、目立ちたくなかったのも事実である。

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