病める時も、健やかではない時も

野村にれ

文字の大きさ
240 / 331

招待状3

「モリーもそう思ったんじゃないか?」
「プレゼントにドレスをなんて言われたら、嫌でしょうしね」
「ああ!それ、当たっているんじゃないか?」
「ええっ!」

 コーレイドは察しが悪いと自分でも自覚があったために、驚いて声を上げた。

「あり得るだろう?一度、異母妹にドレスを着てと話しているのだから」
「そうでしょうか?」
「お近づきになって、私もドレスをなんて言い出すつもりだったかもしれない」
「公爵令嬢にですか?」

 自分で言ったことではあったが、コーレイドとしては伯爵令嬢が頼むはずがない。頼めるはずがないという思いであった。

「もしかしたら、ペイリー宛ということを知っているのかもしれない」
「同じ伯爵令嬢だからと言うのですか?」
「一応、言ってみるんじゃないか?」
「でも、公爵令嬢にお願いすることではないですよ!」
「それこそ、作ってもらえなかった、伯爵令嬢だからかしらなんて言えばいい」
「うわ……」

 結局、二人は答えの出ない話をしていたが、結局はブレフォスがナイリーアからの招待状をまだ学園に復帰したばかりで、何かあっては迷惑が掛かるとお断りした。

 クルージ伯爵家もブレフォスからとなれば、異議を唱えることはできず、むしろブレフォスからの返事が来たことに夫人は喜んでいたくらいであった。

 そう、モリーとペイリーはクルージ伯爵夫人が、ブレフォスに好意を持っていたことを、すっかり忘れていたのである。

 そのことにモリーは、学園で授業中に急に思い出した。

 最終試験も終わっているために、教室は今後のために試験を受けたり、訓練に参加したり、空席も目立っていたが、立ち上がりそうになってしまったくらいだった。

 ペイリーが迎えには来たが、馬車は危機感を持っているために、無事に邸に戻ってから、コーレイドを交えて話をすることにした。

「忘れていたことがあるの!クルージ伯爵夫人はお父様に好意を抱いていたのよ」
「ああ!忘れておりました」

 ペイリーもロレインから聞いたはずなのに、すっかり忘れていた。

「まことですか?」
「そうなの、お母様が言っていたのだから事実でしょう。ロレインから聞いていたのよ。今日、授業中に思い出したのよ。頭から排除されていたわ」
「最終試験もありましたからね」
「当て逃げもありましたから」
「気持ち悪いと思って、消し去っていたのかもしれないわ」

 両親の色恋事など、もうお腹いっぱいで、しかもロレインにも近付いていることも気味が悪かった。

「では、お近づきになりたいと思った可能性もありますね」
「そうよ、ロレインにも言われていたのに」
「私も忘れておりました」
「夫人がオブレオサジュール公爵様を……確かに公爵様は大変女性にモテていたとは聞いたことがあります」

 コーレイドから見てもブレフォスは今でも端正な顔立ちをされていると思い、よく似たモリーもロレインも同様である。

「妹のレイラーナ・クルージがロレインをディナーやパーティーに誘って来るそうなのよ。お父様も一緒にと言われたこともあるそうよ」
「年に一度の誕生日で、モリー様は卒業を控えてらっしゃるから、思い切って誘った可能性ですね」
「なるほど、これは報告してもいいのでしょうか?」
「ええ、いいわよ。もしかしたら、知っている人もいるのではないかしら」
「そうですね」

 親世代ならば、もしかしたら有名な話なのかもしれない。

 レイラーナはロレインを狙っており、ナイリーアは王子殿下の婚約者を狙っている。そして、モリーにもお近づきになりたいと考えたのかもしれない。

「私はモリー様にドレスを作って欲しいと、強請るつもりなのではないかと考えておりました」
「まあ」
「それもあり得ますね」

 ペイリーは不愉快という表情をしていたが、図々しいとまでは同じ伯爵令嬢として口にはしなかった。コーレイドは王宮に戻って、すぐさま騎士団長に報告をした。

あなたにおすすめの小説

元カレの今カノは聖女様

abang
恋愛
「イブリア……私と別れて欲しい」 公爵令嬢 イブリア・バロウズは聖女と王太子の愛を妨げる悪女で社交界の嫌われ者。 婚約者である王太子 ルシアン・ランベールの関心は、品行方正、心優しく美人で慈悲深い聖女、セリエ・ジェスランに奪われ王太子ルシアンはついにイブリアに別れを切り出す。 極め付けには、王妃から嫉妬に狂うただの公爵令嬢よりも、聖女が婚約者に適任だと「ルシアンと別れて頂戴」と多額の手切れ金。 社交会では嫉妬に狂った憐れな令嬢に"仕立てあげられ"周りの人間はどんどんと距離を取っていくばかり。 けれども当の本人は… 「悲しいけれど、過ぎればもう過去のことよ」 と、噂とは違いあっさりとした様子のイブリア。 それどころか自由を謳歌する彼女はとても楽しげな様子。 そんなイブリアの態度がルシアンは何故か気に入らない様子で… 更には婚約破棄されたイブリアの婚約者の座を狙う王太子の側近達。 「私をあんなにも嫌っていた、聖女様の取り巻き達が一体私に何の用事があって絡むの!?嫌がらせかしら……!」

「退屈な女だ」と婚約破棄されたので去りましたが、翌日から国政が止まったそうです。え、私はもう存じませんけど?

にたまご
恋愛
公爵令嬢クラーラは、ユリウス王太子殿下に婚約を破棄された。 「退屈な女だ」「何の取り柄もない」と。 否定はしない。 けれど殿下が知らないだけで、通商条約も予算案も外交書簡も、この国の政務の大半を六年間匿名で回していたのは──この「退屈な女」だ。 婚約破棄の翌朝、宰相補佐官のレオンが焼き菓子と四十二件の緊急報告を携えて公爵邸を訪れる。 「貴女がいなくなった王宮は、控えめに申し上げて、地獄です」 ──存じません。私はもう、ただの無職ですので。

花嫁は忘れたい

基本二度寝
恋愛
術師のもとに訪れたレイアは愛する人を忘れたいと願った。 結婚を控えた身。 だから、結婚式までに愛した相手を忘れたいのだ。 政略結婚なので夫となる人に愛情はない。 結婚後に愛人を家に入れるといった男に愛情が湧こうはずがない。 絶望しか見えない結婚生活だ。 愛した男を思えば逃げ出したくなる。 だから、家のために嫁ぐレイアに希望はいらない。 愛した彼を忘れさせてほしい。 レイアはそう願った。 完結済。 番外アップ済。

刺繍妻

拓海のり
恋愛
男爵令嬢メアリーは魔力も無くて、十五歳で寄り親の侯爵家に侍女見習いとして奉公に上がった。二十歳まで務めた後、同じ寄り子の子爵家に嫁に行ったが。九千字ぐらいのお話です。

なんで私だけ我慢しなくちゃならないわけ?

ワールド
恋愛
私、フォン・クラインハートは、由緒正しき家柄に生まれ、常に家族の期待に応えるべく振る舞ってまいりましたわ。恋愛、趣味、さらには私の将来に至るまで、すべては家名と伝統のため。しかし、これ以上、我慢するのは終わりにしようと決意いたしましたわ。 だってなんで私だけ我慢しなくちゃいけないと思ったんですもの。 これからは好き勝手やらせてもらいますわ。

全てがどうでもよくなった私は理想郷へ旅立つ

霜月満月
恋愛
「ああ、やっぱりあなたはまたそうして私を責めるのね‥‥」 ジュリア・タリアヴィーニは公爵令嬢。そして、婚約者は自国の王太子。 でも私が殿下と結婚することはない。だってあなたは他の人を選んだのだもの。『前』と変わらず━━ これはとある能力を持つ一族に産まれた令嬢と自身に掛けられた封印に縛られる王太子の遠回りな物語。 ※なろう様で投稿済みの作品です。 ※画像はジュリアの婚約披露の時のイメージです。

噂(うわさ)―誰よりも近くにいるのは私だと思ってたのに―

日室千種・ちぐ
恋愛
身に覚えのない噂で、知らぬ間に婚約者を失いそうになった男が挽回するお話。男主人公です。

お姉さまは最愛の人と結ばれない。

りつ
恋愛
 ――なぜならわたしが奪うから。  正妻を追い出して伯爵家の後妻になったのがクロエの母である。愛人の娘という立場で生まれてきた自分。伯爵家の他の兄弟たちに疎まれ、毎日泣いていたクロエに手を差し伸べたのが姉のエリーヌである。彼女だけは他の人間と違ってクロエに優しくしてくれる。だからクロエは姉のために必死にいい子になろうと努力した。姉に婚約者ができた時も、心から上手くいくよう願った。けれど彼はクロエのことが好きだと言い出して――