病める時も、健やかではない時も

野村にれ

文字の大きさ
49 / 330

父娘

「不愉快ではあったけど、発言は彼女の暴走のようだから、注意で済ませるわ」

 ケリーは不愉快ではあったが、モリーの作ったエリーのドレスにケチを付けたくないために、大事にする気はなかった。

 だが、準男爵家に王妃陛下からの注意は震え上がる事態になるだろう。

「寛大なご対応、ありがとうございます」
「ドレスは素晴らしいもので、エリーも気に入っているの」

 ブレフォスはその言葉に、静かに小さく頭を下げた。

「モリー嬢、今日はこんなことになってしまったから、またエリーと一緒にゆっくりお茶をしましょう」

 その言葉に、目を輝かせたのはエリーだった。

 レルスもその表情から、妙なケチが付いてしまったことも、エリーには次の約束ができる良いチャンスとなったなと思わず笑いそうになった。

「承知いたしました、お騒がせして申し訳ございませんでした」
「いいえ、あなたのせいではないわ」
「ありがとうございます」
「また、改めて謝罪に伺います。申し訳ございませんでした」

 立ち上がって謝罪するモリーの横で、ブレフォスも追加で謝罪を行った。どういう処分になったか、説明をしなくてはならない。

「分かったわ」
「恐れ入ります」

 そこへエリーが、立ち上がって、モリーの両手を取った。

「モリー様、本当にありがとう。おかしなことになりましたが、ドレスは心から気に入りました。またお茶会しましょうね」
「ありがとうございます、楽しみにしております」

 モリーは頭を下げ、心からエリーに感謝した。

 帰りの馬車にはモリーとブレフォスが一緒に乗ることになり、お互い初めての空間でいたたまれない空気であった。

「あの、モリー、エルソンがすまなかった」
「いいえ、解雇するのですか?」

 一度目も二度目も、ブレフォスのそばにはエルソンがいた。だが、ここで解雇となれば、これからが変わっていくのではないか。

「当然だ、だが私の責任だからモリーはゆっくり休むといい。だが、もしかしたら聞くこともあるかもしれないが」

 だが、王家に迷惑を掛けるものを送り込んだ責任は取らないといけない。

「はい、分かりました」
「仮縫いの際にも連れて行くように言ったと聞いたが、事実だろうか?」
「はい」
「侍女からモリーが連れて行けないと判断したと聞いた」
「そうです。自分が馬車に乗るために、王家の方に触れる物を下に置けばいいと申したので、連れて行けないと判断しただけです」
「それは当然だな」

 そのような者をどう考えても、王宮に連れてはいけないと思うだろう。貴族として当然の判断である。

「馬に乗れないという時点で怪しむべきでしたが、公爵家の執事が弁えない護衛など送り込むことはないと思ったのでございます」
「ああ」

 その通りだが、エルソンが言えば、私が許可したものだと勘違いしてもおかしくはない。

「お針子だったから良かったものの、刺客だったら、私たちは邸には帰れなかったでしょうね」
「あっ、ああ……」

 ブレフォスはそう話すモリーが、酷く大人びていることと同時に、この子は勉強は振るわなくとも、愚かではないと改めて、実感していた。

「モリーが作ったドレスは王女殿下が着ていた物だろうか?」
「ええ、そうです」
「その、素晴らしかった」

 モリーは記憶にある限り、ブレフォスに褒められたのは初めてで、目を逸らしながらではあるが、驚くばかりであった。

「……ありがとうございます」
「いや、私は詳しくがないが、綺麗だと思った」

 ブレフォスは王女殿下に渡すのだから、今回は見せてはもらえないと思っていたが、喜ばしい場ではなかったが、思いがけず見ることができた。

「王女殿下に似合うドレスをと考えて、作りました」
「そうか、王女殿下も喜んでおられたな」
「はい」
「お世辞などではないと思う、本当に喜んでおられた」
「……はい」

あなたにおすすめの小説

麗しの王子殿下は今日も私を睨みつける。

スズキアカネ
恋愛
「王子殿下の運命の相手を占いで決めるそうだから、レオーネ、あなたが選ばれるかもしれないわよ」 伯母の一声で連れて行かれた王宮広場にはたくさんの若い女の子たちで溢れかえっていた。 そしてバルコニーに立つのは麗しい王子様。 ──あの、王子様……何故睨むんですか? 人違いに決まってるからそんなに怒らないでよぉ! ◇◆◇ 無断転載・転用禁止。 Do not repost.

さようなら、私の愛したあなた。

希猫 ゆうみ
恋愛
オースルンド伯爵家の令嬢カタリーナは、幼馴染であるロヴネル伯爵家の令息ステファンを心から愛していた。いつか結婚するものと信じて生きてきた。 ところが、ステファンは爵位継承と同時にカールシュテイン侯爵家の令嬢ロヴィーサとの婚約を発表。 「君の恋心には気づいていた。だが、私は違うんだ。さようなら、カタリーナ」 ステファンとの未来を失い茫然自失のカタリーナに接近してきたのは、社交界で知り合ったドグラス。 ドグラスは王族に連なるノルディーン公爵の末子でありマルムフォーシュ伯爵でもある超上流貴族だったが、不埒な噂の絶えない人物だった。 「あなたと遊ぶほど落ちぶれてはいません」 凛とした態度を崩さないカタリーナに、ドグラスがある秘密を打ち明ける。 なんとドグラスは王家の密偵であり、偽装として遊び人のように振舞っているのだという。 「俺に協力してくれたら、ロヴィーサ嬢の真実を教えてあげよう」 こうして密偵助手となったカタリーナは、幾つかの真実に触れながら本当の愛に辿り着く。

禁断の関係かもしれないが、それが?

しゃーりん
恋愛
王太子カインロットにはラフィティという婚約者がいる。 公爵令嬢であるラフィティは可愛くて人気もあるのだが少し頭が悪く、カインロットはこのままラフィティと結婚していいものか、悩んでいた。 そんな時、ラフィティが自分の代わりに王太子妃の仕事をしてくれる人として連れて来たのが伯爵令嬢マリージュ。 カインロットはマリージュが自分の異母妹かもしれない令嬢だということを思い出す。 しかも初恋の女の子でもあり、マリージュを手に入れたいと思ったカインロットは自分の欲望のためにラフィティの頼みを受け入れる。 兄妹かもしれないが子供を生ませなければ問題ないだろう?というお話です。

姉の婚約者であるはずの第一王子に「お前はとても優秀だそうだから、婚約者にしてやってもいい」と言われました。

ふまさ
恋愛
「お前はとても優秀だそうだから、婚約者にしてやってもいい」  ある日の休日。家族に疎まれ、蔑まれながら育ったマイラに、第一王子であり、姉の婚約者であるはずのヘイデンがそう告げた。その隣で、姉のパメラが偉そうにふんぞりかえる。 「ぞんぶんに感謝してよ、マイラ。あたしがヘイデン殿下に口添えしたんだから!」  一方的に条件を押し付けられ、望まぬまま、第一王子の婚約者となったマイラは、それでもつかの間の安らぎを手に入れ、歓喜する。  だって。  ──これ以上の幸せがあるなんて、知らなかったから。

王女殿下のモラトリアム

あとさん♪
恋愛
「君は彼の気持ちを弄んで、どういうつもりなんだ?!この悪女が!」 突然、怒鳴られたの。 見知らぬ男子生徒から。 それが余りにも突然で反応できなかったの。 この方、まさかと思うけど、わたくしに言ってるの? わたくし、アンネローゼ・フォン・ローリンゲン。花も恥じらう16歳。この国の王女よ。 先日、学園内で突然無礼者に絡まれたの。 お義姉様が仰るに、学園には色んな人が来るから、何が起こるか分からないんですって! 婚約者も居ない、この先どうなるのか未定の王女などつまらないと思っていたけれど、それ以来、俄然楽しみが増したわ♪ お義姉様が仰るにはピンクブロンドのライバルが現れるそうなのだけど。 え? 違うの? ライバルって縦ロールなの? 世間というものは、なかなか複雑で一筋縄ではいかない物なのですね。 わたくしの婚約者も学園で捕まえる事が出来るかしら? この話は、自分は平凡な人間だと思っている王女が、自分のしたい事や好きな人を見つける迄のお話。 ※設定はゆるんゆるん ※ざまぁは無いけど、水戸○門的なモノはある。 ※明るいラブコメが書きたくて。 ※シャティエル王国シリーズ3作目! ※過去拙作『相互理解は難しい(略)』の12年後、 『王宮勤めにも色々ありまして』の10年後の話になります。 上記未読でも話は分かるとは思いますが、お読みいただくともっと面白いかも。 ※ちょいちょい修正が入ると思います。誤字撲滅! ※小説家になろうにも投稿しました。

見捨てられた逆行令嬢は幸せを掴みたい

水空 葵
恋愛
 一生大切にすると、次期伯爵のオズワルド様に誓われたはずだった。  それなのに、私が懐妊してからの彼は愛人のリリア様だけを守っている。  リリア様にプレゼントをする余裕はあっても、私は食事さえ満足に食べられない。  そんな状況で弱っていた私は、出産に耐えられなくて死んだ……みたい。  でも、次に目を覚ました時。  どういうわけか結婚する前に巻き戻っていた。    二度目の人生。  今度は苦しんで死にたくないから、オズワルド様との婚約は解消することに決めた。それと、彼には私の苦しみをプレゼントすることにしました。  一度婚約破棄したら良縁なんて望めないから、一人で生きていくことに決めているから、醜聞なんて気にしない。  そう決めて行動したせいで良くない噂が流れたのに、どうして次期侯爵様からの縁談が届いたのでしょうか? ※カクヨム様と小説家になろう様でも連載中・連載予定です。  7/23 女性向けHOTランキング1位になりました。ありがとうございますm(__)m

【完結】見えてますよ!

ユユ
恋愛
【 お知らせ 】 先日、近況ボードにも お知らせしました通り 2026年4月に 完結済みのお話の多数を 一旦closeいたします。 誤字脱字などを修正して 再掲載をするつもりですが 再掲載しない作品もあります。 再掲載の時期は決まっておりません。 表現の変更などもあり得ます。 他の作品も同様です。 ご了承いただけますようお願いいたします。 ユユ 【 お話の内容紹介 】 “何故” 私の婚約者が彼だと分かると、第一声はソレだった。 美少女でもなければ醜くもなく。 優秀でもなければ出来損ないでもなく。 高貴でも無ければ下位貴族でもない。 富豪でなければ貧乏でもない。 中の中。 自己主張も存在感もない私は貴族達の中では透明人間のようだった。 唯一認識されるのは婚約者と社交に出る時。 そしてあの言葉が聞こえてくる。 見目麗しく優秀な彼の横に並ぶ私を蔑む令嬢達。 私はずっと願っていた。彼に婚約を解消して欲しいと。 ある日いき過ぎた嫌がらせがきっかけで、見えるようになる。 ★注意★ ・閑話にはR18要素を含みます。  読まなくても大丈夫です。 ・作り話です。 ・合わない方はご退出願います。 ・完結しています。

〖完結〗旦那様が愛していたのは、私ではありませんでした……

藍川みいな
恋愛
「アナベル、俺と結婚して欲しい。」 大好きだったエルビン様に結婚を申し込まれ、私達は結婚しました。優しくて大好きなエルビン様と、幸せな日々を過ごしていたのですが…… ある日、お姉様とエルビン様が密会しているのを見てしまいました。 「アナベルと結婚したら、こうして君に会うことが出来ると思ったんだ。俺達は家族だから、怪しまれる心配なくこの邸に出入り出来るだろ?」 エルビン様はお姉様にそう言った後、愛してると囁いた。私は1度も、エルビン様に愛してると言われたことがありませんでした。 エルビン様は私ではなくお姉様を愛していたと知っても、私はエルビン様のことを愛していたのですが、ある事件がきっかけで、私の心はエルビン様から離れていく。 設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。 かなり気分が悪い展開のお話が2話あるのですが、読まなくても本編の内容に影響ありません。(36話37話) 全44話で完結になります。