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再謝罪3
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「なぜ?誰かに言われたの?」
「いえ、当然のように、そう思っておりました。誰かに言われた……?オーリン、そんなことがあったか?」
「いいえ、私は聞いたことはございませんが」
ケリーは『オブレオサジュール公爵家は無理でしょうね』などと、誰かに言われたのではないかと思ったが、ブレフォスの言動は嘘のように思えなかった。
「不思議ね」
「はい……失礼しました。ですが、モリーの成績はご存じでしょうか?」
ここで成績のことを言いたくはなかったが、王太子殿下や王子殿下の婚約者とは相応しくないと思われるだろう点であった。
「失礼だとは思ったけど、知っているわ」
ケリーもモリーを知る手立てとして、学園の成績を確認した。
公爵令嬢として振るわない成績で驚いたが、学園側にも内密に聞くと、当人はあまり気にしないようで、苦手なのだと微笑んでいると聞き、いくら公爵令嬢でも苦手なこともあるだろうと思った。
礼儀のなっていない我儘娘を、想像しなかったわけではない。
だが、真逆というべきか、敬うことは忘れず、不愉快な気持ちにさせず、かと言って媚びることもない。エリーはもっと親しくなりたかったようだが、しっかりとドレスを作ることに集中していた。
ブレフォスも王宮に呼ぶくらいだったのだから、絶対に調べているだろうと考えていた。
「勉強ができないとしても、マナーや心遣いなど、人としてちゃんとしているわ」
「ありがとうございます、ですが」
「分かっているわ、誤解は良くないから、何か良い形で会えるように考えるわ」
ケリーも同じように考えていたために、ブレフォスの言うことも理解するつもりだったが、何か別の疑問が浮かぶばかりであった。
「よろしくお願いいたします」
「レイルが気に入れば、候補になる可能性はありますけどね」
「っ、さようでございますか」
ケリーはもう一度、わざと言ってブレフォスを見たが、本人は腑に落ちないような表情を浮かべている。
そんな終わりで、謝罪は決着が付いた。
ブレフォスもどうしてなのかと、再度考えてはみたが、答えが出なかった。
そして、エリーと楽しいお喋りをしていたモリーを迎えに行くと、そこにはレルス王太子殿下も同席しており、驚いた。
「王太子殿下にご挨拶に申し上げます」
「ああ、私も少し同席させてもらっていたんだ」
「そうですか」
「そうなんです、また邪魔をしに来たんですよ」
エリーはレルスに向かって、可愛らしく怒っている。
「モリー嬢、またね」
「もう!お兄様、私の台詞です!」
「ははははは」
モリーは楽しそうなエリーとレルスに、思わず笑みをこぼし、帰ることになった。
「お父様、大丈夫でしたか?」
「っあ、ああ、大丈夫だ。これであの件は終わりになった」
オーリンとは馬車が違うために、またもブレフォスとモリーは二人で馬車に乗ることになった。
「そうですか、それなら良かったです」
「ああ、モリーは心配しなくていいから、今まで通り過ごしなさい」
「はい、ありがとうございます」
王妃陛下のことは驚いてしまうだろうから、話さない方がいいだろうと思い、黙っておくことにした。
王家ではファリスとケリーが、話をしていた。
「公爵に似すぎているが、美しいお嬢さんだったな」
「ええ」
「公爵は本当に婚約者に関して、関係ないと思っていたようだな。君も疑っていたのだろう?」
「ええ、わざとなのかと思いましてね」
「儂もそう思ったが、あの顔は事実である顔だったと思うぞ」
ブレフォスは表情の読めない、考えの読めない男だが、今日は僅かであるが、意表を突かれたという顔をしていたように感じた。
「あなたがそう言うのなら、間違いないでしょうね。誰かに外されているだろうと、言われたのではないかと思ったのですけど」
「儂もそう思ったが、思い出せなかっただけかもしれぬな」
「そうですね」
「いえ、当然のように、そう思っておりました。誰かに言われた……?オーリン、そんなことがあったか?」
「いいえ、私は聞いたことはございませんが」
ケリーは『オブレオサジュール公爵家は無理でしょうね』などと、誰かに言われたのではないかと思ったが、ブレフォスの言動は嘘のように思えなかった。
「不思議ね」
「はい……失礼しました。ですが、モリーの成績はご存じでしょうか?」
ここで成績のことを言いたくはなかったが、王太子殿下や王子殿下の婚約者とは相応しくないと思われるだろう点であった。
「失礼だとは思ったけど、知っているわ」
ケリーもモリーを知る手立てとして、学園の成績を確認した。
公爵令嬢として振るわない成績で驚いたが、学園側にも内密に聞くと、当人はあまり気にしないようで、苦手なのだと微笑んでいると聞き、いくら公爵令嬢でも苦手なこともあるだろうと思った。
礼儀のなっていない我儘娘を、想像しなかったわけではない。
だが、真逆というべきか、敬うことは忘れず、不愉快な気持ちにさせず、かと言って媚びることもない。エリーはもっと親しくなりたかったようだが、しっかりとドレスを作ることに集中していた。
ブレフォスも王宮に呼ぶくらいだったのだから、絶対に調べているだろうと考えていた。
「勉強ができないとしても、マナーや心遣いなど、人としてちゃんとしているわ」
「ありがとうございます、ですが」
「分かっているわ、誤解は良くないから、何か良い形で会えるように考えるわ」
ケリーも同じように考えていたために、ブレフォスの言うことも理解するつもりだったが、何か別の疑問が浮かぶばかりであった。
「よろしくお願いいたします」
「レイルが気に入れば、候補になる可能性はありますけどね」
「っ、さようでございますか」
ケリーはもう一度、わざと言ってブレフォスを見たが、本人は腑に落ちないような表情を浮かべている。
そんな終わりで、謝罪は決着が付いた。
ブレフォスもどうしてなのかと、再度考えてはみたが、答えが出なかった。
そして、エリーと楽しいお喋りをしていたモリーを迎えに行くと、そこにはレルス王太子殿下も同席しており、驚いた。
「王太子殿下にご挨拶に申し上げます」
「ああ、私も少し同席させてもらっていたんだ」
「そうですか」
「そうなんです、また邪魔をしに来たんですよ」
エリーはレルスに向かって、可愛らしく怒っている。
「モリー嬢、またね」
「もう!お兄様、私の台詞です!」
「ははははは」
モリーは楽しそうなエリーとレルスに、思わず笑みをこぼし、帰ることになった。
「お父様、大丈夫でしたか?」
「っあ、ああ、大丈夫だ。これであの件は終わりになった」
オーリンとは馬車が違うために、またもブレフォスとモリーは二人で馬車に乗ることになった。
「そうですか、それなら良かったです」
「ああ、モリーは心配しなくていいから、今まで通り過ごしなさい」
「はい、ありがとうございます」
王妃陛下のことは驚いてしまうだろうから、話さない方がいいだろうと思い、黙っておくことにした。
王家ではファリスとケリーが、話をしていた。
「公爵に似すぎているが、美しいお嬢さんだったな」
「ええ」
「公爵は本当に婚約者に関して、関係ないと思っていたようだな。君も疑っていたのだろう?」
「ええ、わざとなのかと思いましてね」
「儂もそう思ったが、あの顔は事実である顔だったと思うぞ」
ブレフォスは表情の読めない、考えの読めない男だが、今日は僅かであるが、意表を突かれたという顔をしていたように感じた。
「あなたがそう言うのなら、間違いないでしょうね。誰かに外されているだろうと、言われたのではないかと思ったのですけど」
「儂もそう思ったが、思い出せなかっただけかもしれぬな」
「そうですね」
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