病める時も、健やかではない時も

野村にれ

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思惑

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「うーん、そうね。いえ、認めても同じかもしれないわね」
「私が自慢したのが、良くなかったの?」
「いえ、そんなことはないわ」

 エリーは褒められて喜んで、私に似合うドレスをとお願いして、作って貰ったと言っただけである。それだけでモリーに繋がるはずはない。

「年齢も違うから、モリー様と知り合いってことはないでしょう?」

 マレアは高等部、モリーは中等部であり、オブレオサジュール公爵家は特殊であるために、交流があるとは思えない。

「ええ、ないと思うわ!知り合いなら、そんな聞き方しないでしょう」
「そうよね、良かったわ!」

 エリーは認めてはいない。ゆえに、マレアもエリーから聞いたとは言えない。

 それでも、もしも話が出れば、マレアが言い出したとは言えないが、疑惑は残ることになるだろう。

「マレア様の知らない一面を見た気がしたわ。こっそり聞くわりに、どこか力強いというか、知りたいとか、察せます、秘密にできますからと言っているように見えて」
「どういうつもりで聞いたのかによるわね」
「例えば?」
「私も頼みたいという気持ちなら、まあモリー嬢は困るかもしれないけど、素直な気持ちでしょう?」
「ええ、そうね」
「でも、エリーに取り入って、婚約者候補に入っているのではないか?水面下で動いてているのではないかという探りだったとしたら……」

 ケリーも、マレアは好印象の令嬢であった。レルスもたまに話すと言っており、リークレアよりかは遥かに選ばれる立場にあった。

 候補者とは言っても、王子たちの婚約者だけでなく、他国の令嬢になることもまだ否定できず、侍女や友人ということも含めてである。

 令嬢たちも分かった上で参加しており、婚約者になりたいわけでない子もいる。だからこそ、内々に打診して断る選択肢も与える。

 だからこそ、ケリーは様々な令嬢を呼んで、その姿を見ているだけである。たまにレルスやオルトを呼ぶこともあるが、必ずいるわけではない。

「候補者だと思って参加しているのだから、探りたい気持ちもわかるけど。でもモリー嬢に迷惑を掛けるのは困るわね」
「そうなの!それなの!だから、何て答えたらよかったのかと思って。だって、お兄様が王宮でモリー様を見た、ドレスを見ただけで、繋がるかしら?」

 実際、それも事実かも分からない。

「エリーの言う通りね。エリーが言わない時点で、モリー嬢のところに行ったりしたら……公爵とモリー嬢に手紙を送っておくわ」
「認めなくていいって伝えて」
「分かったわ」

 ケリーはブレフォスとモリーに、お茶会の事情を書き綴った。

 ドレスのことでマレア・ゼアンラーク侯爵令嬢から、何か接触があるかもしれないが、そういった噂があるようですが、私がお話しできることはありませんと伝えたらいいと指示をした。

 ブレフォスは手紙を読むと、モリーの部屋に向かった。

「手紙は読んだか?」
「はい、お話しできることはありませんと伝えればいいのですよね?」
「大丈夫か?」
「ゼアンラーク侯爵令嬢にはお会いしたことはないですが、お顔は分かりますので」

 モリーは今回はまだマレアに会ってはいなかったが、前はあったことがあるので、顔は分かる。

「そうか」

 モリーはドレスがこんなことになるとは想像していなかったが、折角ならばケリーの手紙に従おうと思った。

「ゼアンラーク侯爵令嬢は、色んな理由を付けて、王宮に来るそうですよ」
「そうなの?」
「はい、王太子殿下はどこにいるか聞いて来たりするそうです」

 その言葉に、モリーはいつものペイリーの情報網なのだろうと思った。

「王太子殿下の婚約者を狙っているということなのか?」

 ペイリーはいつものように話し始め、モリーもいつものことだったが、ブレフォスが食いついて来るとは思っていなかった。
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