24 / 38
真相4
しおりを挟む
「リラ・ブライン。この手紙はあなたね?」
アウラージュは机に手紙を置いた。そこには『ジルバードと別れなさい、ジルバードは相手を間違えている、愛する相手はお前じゃない、美しきヘーゼルの瞳を持つ者が真の相手である』と書かれた筆跡の同じ手紙が10通以上あった。
「これは…」
「ララ・クバレトーヌへ宛てられた手紙です」
ブライン伯爵夫妻が体調不良だということを聞き、復活するまでに、ジルバードとララにも聞き取りを行っていた。
これまで嫌がらせなどなかったかとララに問うと、嫉妬や陰口はあったが、まだ学園にも入っていないため、周りは親しい友人ばかりで、被害はなかったという。
そして、気持ちが悪いのはこれだと手紙を持参していた。
「いつから?」
「婚約してからなので、5年前くらいからです。ずっと送られて来るだけで、これ以上の被害はないのです」
「瞳を気にしていましたから、この前の女性が差出人ではないかと思いまして」
「正直、美しきヘーゼルの瞳と言われましても、私にはアウラージュ殿下のことしか浮かばなかったのです」
「私もララ以外のヘーゼルの瞳は殿下しか知りません」
「始めはまさかアウラージュ殿下と、などと思いました。ですが、ジルバード様は殿下に弟君のことで、いつも謝っておりますし、お2人が想い合っているのなら、殿下はいつも謝っている人が好ましいということになり、ジルバード様も好きな方にいつも謝っていることになりますし」
ジルバードは元々、ルカスのことでアウラージュにお伺いをしては、不甲斐ない弟のために頭を下げ、解消されてからは、さらに頭を下げることになっているのだ。
「ララ、それはないな」
「はい、そうなるとこの手紙は誰が送っているのだろうと、もしかしたらアウラージュ殿下とジルバード様をお似合いだと思っている方ではないかと」
「確かにそうとも取れる内容ね」
当人ではなく、勝手に第三者がジルバードと、ヘーゼルの瞳の相手と結び付けようとしているようにも読める。ララは見た目はふわっとして、大人しそうに見えるが、物事を俯瞰で考えられる賢い子である。
「はい、ですので周りを観察してみたのですが、これといっておりませんでした。強いて言えば、弟君のルカス様でしょうか」
「申し訳ございません」
「確かにジルバードはいつも謝っていますね。ジルバードが私の王配になれば、自分が公爵家を継ぐことが出来るというわけか」
「はい、ですが」
「解消されたから、ルカスではない」
「はい、私の知る中にはいないのではないかと結論を出しました」
「おそらく、リラ・ブラインが差出人でしょう」
そして、アウラージュはララから手紙を預かっていた。ブライン伯爵は手紙を凝視すると、肩を落とした。
「これはリラの字です。申し訳ございません」
「やはりそうでしたか…」
「何てことを…」
「これ以上の被害はなかったそうなので、犯人が分かれば、納得するでしょう」
「本当に、申し訳ございません」
不定期で送られていたようなので、おそらくジルバードとのことを知らない新しい使用人に、友人への手紙だとでも言って、出すように頼んでいたのだろう。
「これで最後の質問よ。自由の思考はどうしてばら撒こうとしたの?」
「…」
「お友達を増やして、風紀を乱しておいて、入学して来るララを排除するため?不貞行為でもでっち上げるつもりだった?それとも、それ以上かしら?」
「…」
両親はアウラージュの言葉に目を見開き、絶句している。
アウラージュは机に手紙を置いた。そこには『ジルバードと別れなさい、ジルバードは相手を間違えている、愛する相手はお前じゃない、美しきヘーゼルの瞳を持つ者が真の相手である』と書かれた筆跡の同じ手紙が10通以上あった。
「これは…」
「ララ・クバレトーヌへ宛てられた手紙です」
ブライン伯爵夫妻が体調不良だということを聞き、復活するまでに、ジルバードとララにも聞き取りを行っていた。
これまで嫌がらせなどなかったかとララに問うと、嫉妬や陰口はあったが、まだ学園にも入っていないため、周りは親しい友人ばかりで、被害はなかったという。
そして、気持ちが悪いのはこれだと手紙を持参していた。
「いつから?」
「婚約してからなので、5年前くらいからです。ずっと送られて来るだけで、これ以上の被害はないのです」
「瞳を気にしていましたから、この前の女性が差出人ではないかと思いまして」
「正直、美しきヘーゼルの瞳と言われましても、私にはアウラージュ殿下のことしか浮かばなかったのです」
「私もララ以外のヘーゼルの瞳は殿下しか知りません」
「始めはまさかアウラージュ殿下と、などと思いました。ですが、ジルバード様は殿下に弟君のことで、いつも謝っておりますし、お2人が想い合っているのなら、殿下はいつも謝っている人が好ましいということになり、ジルバード様も好きな方にいつも謝っていることになりますし」
ジルバードは元々、ルカスのことでアウラージュにお伺いをしては、不甲斐ない弟のために頭を下げ、解消されてからは、さらに頭を下げることになっているのだ。
「ララ、それはないな」
「はい、そうなるとこの手紙は誰が送っているのだろうと、もしかしたらアウラージュ殿下とジルバード様をお似合いだと思っている方ではないかと」
「確かにそうとも取れる内容ね」
当人ではなく、勝手に第三者がジルバードと、ヘーゼルの瞳の相手と結び付けようとしているようにも読める。ララは見た目はふわっとして、大人しそうに見えるが、物事を俯瞰で考えられる賢い子である。
「はい、ですので周りを観察してみたのですが、これといっておりませんでした。強いて言えば、弟君のルカス様でしょうか」
「申し訳ございません」
「確かにジルバードはいつも謝っていますね。ジルバードが私の王配になれば、自分が公爵家を継ぐことが出来るというわけか」
「はい、ですが」
「解消されたから、ルカスではない」
「はい、私の知る中にはいないのではないかと結論を出しました」
「おそらく、リラ・ブラインが差出人でしょう」
そして、アウラージュはララから手紙を預かっていた。ブライン伯爵は手紙を凝視すると、肩を落とした。
「これはリラの字です。申し訳ございません」
「やはりそうでしたか…」
「何てことを…」
「これ以上の被害はなかったそうなので、犯人が分かれば、納得するでしょう」
「本当に、申し訳ございません」
不定期で送られていたようなので、おそらくジルバードとのことを知らない新しい使用人に、友人への手紙だとでも言って、出すように頼んでいたのだろう。
「これで最後の質問よ。自由の思考はどうしてばら撒こうとしたの?」
「…」
「お友達を増やして、風紀を乱しておいて、入学して来るララを排除するため?不貞行為でもでっち上げるつもりだった?それとも、それ以上かしら?」
「…」
両親はアウラージュの言葉に目を見開き、絶句している。
1,065
あなたにおすすめの小説
覚悟はありますか?
翔王(とわ)
恋愛
私は王太子の婚約者として10年以上すぎ、王太子妃教育も終わり、学園卒業後に結婚し王妃教育が始まる間近に1人の令嬢が発した言葉で王族貴族社会が荒れた……。
「あたし、王太子妃になりたいんですぅ。」
ご都合主義な創作作品です。
異世界版ギャル風な感じの話し方も混じりますのでご了承ください。
恋愛カテゴリーにしてますが、恋愛要素は薄めです。
婚約破棄の代償
nanahi
恋愛
「あの子を放って置けないんだ。ごめん。婚約はなかったことにしてほしい」
ある日突然、侯爵令嬢エバンジェリンは婚約者アダムスに一方的に婚約破棄される。破局に追い込んだのは婚約者の幼馴染メアリという平民の儚げな娘だった。
エバンジェリンを差し置いてアダムスとメアリはひと時の幸せに酔うが、婚約破棄の代償は想像以上に大きかった。
婚約破棄された令嬢のささやかな幸福
香木陽灯
恋愛
田舎の伯爵令嬢アリシア・ローデンには婚約者がいた。
しかし婚約者とアリシアの妹が不貞を働き、子を身ごもったのだという。
「結婚は家同士の繋がり。二人が結ばれるなら私は身を引きましょう。どうぞお幸せに」
婚約破棄されたアリシアは潔く身を引くことにした。
婚約破棄という烙印が押された以上、もう結婚は出来ない。
ならば一人で生きていくだけ。
アリシアは王都の外れにある小さな家を買い、そこで暮らし始める。
「あぁ、最高……ここなら一人で自由に暮らせるわ!」
初めての一人暮らしを満喫するアリシア。
趣味だった刺繍で生計が立てられるようになった頃……。
「アリシア、頼むから戻って来てくれ! 俺と結婚してくれ……!」
何故か元婚約者がやってきて頭を下げたのだ。
しかし丁重にお断りした翌日、
「お姉様、お願いだから戻ってきてください! あいつの相手はお姉様じゃなきゃ無理です……!」
妹までもがやってくる始末。
しかしアリシアは微笑んで首を横に振るばかり。
「私はもう結婚する気も家に戻る気もありませんの。どうぞお幸せに」
家族や婚約者は知らないことだったが、実はアリシアは幸せな生活を送っていたのだった。
婚約者様への逆襲です。
有栖川灯里
恋愛
王太子との婚約を、一方的な断罪と共に破棄された令嬢・アンネリーゼ=フォン=アイゼナッハ。
理由は“聖女を妬んだ悪役”という、ありふれた台本。
だが彼女は涙ひとつ見せずに微笑み、ただ静かに言い残した。
――「さようなら、婚約者様。二度と戻りませんわ」
すべてを捨て、王宮を去った“悪役令嬢”が辿り着いたのは、沈黙と再生の修道院。
そこで出会ったのは、聖女の奇跡に疑問を抱く神官、情報を操る傭兵、そしてかつて見逃された“真実”。
これは、少女が嘘を暴き、誇りを取り戻し、自らの手で未来を選び取る物語。
断罪は終わりではなく、始まりだった。
“信仰”に支配された王国を、静かに揺るがす――悪役令嬢の逆襲。
次代の希望 愛されなかった王太子妃の愛
Rj
恋愛
王子様と出会い結婚したグレイス侯爵令嬢はおとぎ話のように「幸せにくらしましたとさ」という結末を迎えられなかった。愛し合っていると思っていたアーサー王太子から結婚式の二日前に愛していないといわれ、表向きは仲睦まじい王太子夫妻だったがアーサーにはグレイス以外に愛する人がいた。次代の希望とよばれた王太子妃の物語。
全十二話。(全十一話で投稿したものに一話加えました。2/6変更)
【完結】婚約破棄はしたいけれど傍にいてほしいなんて言われましても、私は貴方の母親ではありません
すだもみぢ
恋愛
「彼女は私のことを好きなんだって。だから君とは婚約解消しようと思う」
他の女性に言い寄られて舞い上がり、10年続いた婚約を一方的に解消してきた王太子。
今まで婚約者だと思うからこそ、彼のフォローもアドバイスもしていたけれど、まだそれを当たり前のように求めてくる彼に驚けば。
「君とは結婚しないけれど、ずっと私の側にいて助けてくれるんだろう?」
貴方は私を母親だとでも思っているのでしょうか。正直気持ち悪いんですけれど。
王妃様も「あの子のためを思って我慢して」としか言わないし。
あんな男となんてもう結婚したくないから我慢するのも嫌だし、非難されるのもイヤ。なんとかうまいこと立ち回って幸せになるんだから!
【完結】私の望み通り婚約を解消しようと言うけど、そもそも半年間も嫌だと言い続けたのは貴方でしょう?〜初恋は終わりました。
るんた
恋愛
「君の望み通り、君との婚約解消を受け入れるよ」
色とりどりの春の花が咲き誇る我が伯爵家の庭園で、沈痛な面持ちで目の前に座る男の言葉を、私は内心冷ややかに受け止める。
……ほんとに屑だわ。
結果はうまくいかないけど、初恋と学園生活をそれなりに真面目にがんばる主人公のお話です。
彼はイケメンだけど、あれ?何か残念だな……。という感じを目指してます。そう思っていただけたら嬉しいです。
彼女視点(side A)と彼視点(side J)を交互にあげていきます。
【完結】完璧令嬢の『誰にでも優しい婚約者様』
恋せよ恋
恋愛
名門で富豪のレーヴェン伯爵家の跡取り
リリアーナ・レーヴェン(17)
容姿端麗、頭脳明晰、誰もが憧れる
完璧な令嬢と評される“白薔薇の令嬢”
エルンスト侯爵家三男で騎士課三年生
ユリウス・エルンスト(17)
誰にでも優しいが故に令嬢たちに囲まれる”白薔薇の婚約者“
祖父たちが、親しい学友であった縁から
エルンスト侯爵家への経済支援をきっかけに
5歳の頃、家族に祝福され結ばれた婚約。
果たして、この婚約は”政略“なのか?
幼かった二人は悩み、すれ違っていくーー
今日もリリアーナの胸はざわつく…
🔶登場人物・設定は作者の創作によるものです。
🔶不快に感じられる表現がありましたらお詫び申し上げます。
🔶誤字脱字・文の調整は、投稿後にも随時行います。
🔶今後もこの世界観で物語を続けてまいります。
🔶 いいね❤️励みになります!ありがとうございます✨
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる