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別れ
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カインドールとラズリーは暗い闇の中にいた。何を言っても覆せない過去に、謝り続けることしか出来なかった。
息子の前だけはなるべく変わらず過ごし、時間だけが過ぎていたが、サリスには合わせる顔がなく、避けるようになっていた。どう説明すればいいか、いくら考えても答えが出なかった。
証拠がミルシュアしかいなくとも、私には払った事実を持っている。
ミルシュア嬢がサリスを受け入れなくても、ここから去るのが一番だろうと、ラズリーもそうしたいと言い、どこか遠くで暮らそうと決めた矢先のことだった。
ミルシュアは魔獣討伐に参加し、年若い傭兵を庇って、亡くなった。
サリスはミルシュアを送り出し、護衛を付けていたが、墓参りをして、リズファンが亡くなったという医院にしばらく留まって、知り合いに会ったりしていたが、気付いた時には姿がなく、そのことを耳にしたカインドールは慌てて真相を話した。
カペルル王国ではちょうど魔獣盗伐が行われており、傭兵も駆り出されていると聞き、再会したミルシュアは魔獣の爪痕が残るほどの傷を負い、手の施しようのない状態だった。死にたいと言いながら、これまで生き続け、年若い女傭兵は怪我は負っていたが無事なようで、ミルシュアにごめんなさいと縋って、泣き続けていた。
サリスが着いて、見ててねと言わんばかりに、ミルシュアは再び目を開くこともなく、息を引き取った。狂ってしまうと思ったが、その死に顔は清々しいほど穏やかであった。ただただ茫然としていた。
「あいつはいつ死んでもいいと言っていたが、しっかり生きたかったんだと思う。お前が無事で喜んでいるよ、きっと、そういう奴だ」
「ミルシュアさん、あああ」
傭兵の長のような男は、ミルシュアをよく知っているようだった。
ミルシュアはその年若い傭兵を前から随分気に掛け、気を抜くな、しっかり前を向けと常々言っていたが、急に現れた魔獣に咄嗟の判断が遅れた。ミルシュアと魔獣は相討ちだったそうだ。
「やっと妹のところに行けただろう、会えたかな?」
「えっ」
「彼女はあの世で待っている妹のために傭兵になったんですよ。色んなところに行って、こんな魔獣と戦った、森にもよく入って、こんな実がなっていたとか、こんな動物を見たとか、妹の知らないことを話してやるんだってね。でも妹はもう生まれ変わっているかもしれないぞって言ったんですよ。そうしたら、それならそれでいい。でももし待っていたら、生き残った私は沢山話を聞かせてやらなきゃいけない、お姉ちゃんだからなってね」
「そうでしたか」
「ええ、死にたいと言いながら、生きる意味を持っていた。だから強いんだ」
魔獣の体液を浴びたために、ミルシュアは火葬されることとなり、カインドールが再会した時には既に骨となっていた。
息子の前だけはなるべく変わらず過ごし、時間だけが過ぎていたが、サリスには合わせる顔がなく、避けるようになっていた。どう説明すればいいか、いくら考えても答えが出なかった。
証拠がミルシュアしかいなくとも、私には払った事実を持っている。
ミルシュア嬢がサリスを受け入れなくても、ここから去るのが一番だろうと、ラズリーもそうしたいと言い、どこか遠くで暮らそうと決めた矢先のことだった。
ミルシュアは魔獣討伐に参加し、年若い傭兵を庇って、亡くなった。
サリスはミルシュアを送り出し、護衛を付けていたが、墓参りをして、リズファンが亡くなったという医院にしばらく留まって、知り合いに会ったりしていたが、気付いた時には姿がなく、そのことを耳にしたカインドールは慌てて真相を話した。
カペルル王国ではちょうど魔獣盗伐が行われており、傭兵も駆り出されていると聞き、再会したミルシュアは魔獣の爪痕が残るほどの傷を負い、手の施しようのない状態だった。死にたいと言いながら、これまで生き続け、年若い女傭兵は怪我は負っていたが無事なようで、ミルシュアにごめんなさいと縋って、泣き続けていた。
サリスが着いて、見ててねと言わんばかりに、ミルシュアは再び目を開くこともなく、息を引き取った。狂ってしまうと思ったが、その死に顔は清々しいほど穏やかであった。ただただ茫然としていた。
「あいつはいつ死んでもいいと言っていたが、しっかり生きたかったんだと思う。お前が無事で喜んでいるよ、きっと、そういう奴だ」
「ミルシュアさん、あああ」
傭兵の長のような男は、ミルシュアをよく知っているようだった。
ミルシュアはその年若い傭兵を前から随分気に掛け、気を抜くな、しっかり前を向けと常々言っていたが、急に現れた魔獣に咄嗟の判断が遅れた。ミルシュアと魔獣は相討ちだったそうだ。
「やっと妹のところに行けただろう、会えたかな?」
「えっ」
「彼女はあの世で待っている妹のために傭兵になったんですよ。色んなところに行って、こんな魔獣と戦った、森にもよく入って、こんな実がなっていたとか、こんな動物を見たとか、妹の知らないことを話してやるんだってね。でも妹はもう生まれ変わっているかもしれないぞって言ったんですよ。そうしたら、それならそれでいい。でももし待っていたら、生き残った私は沢山話を聞かせてやらなきゃいけない、お姉ちゃんだからなってね」
「そうでしたか」
「ええ、死にたいと言いながら、生きる意味を持っていた。だから強いんだ」
魔獣の体液を浴びたために、ミルシュアは火葬されることとなり、カインドールが再会した時には既に骨となっていた。
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