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忘れられない
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「私は教えてあげていたのよ?」
バトワスから怪訝な目を向けられて、オリビアは少し怯んだが、自分が間違っているとは認められなかった。
「ジェフから、フォンターナ家は仲のいい家族ではなかったと聞いたわ!だから、おかしいのよ」
オリビアもエルムの父親が騎士団長であることは知っていたが、親に伝わったとしても、なぜか何も起こらないだろうと思っていた。
「出て行ったのは事実だろう?君はどうして出て行ったと言うのだ?」
「それは…あの子が泣き付いて、あることないことでも言ったのでしょう」
もしそうだったとしても、虐げていたのは事実である。
「仲が良くないのに、彼女には爵位を返上するほどの力があると言うのか?」
「だから、泣き付いたのよ。何てことをしてくれたのかしら」
娘なのだから、親に泣き付いて何が悪いというのか、だがオリビアにとってはエルムが泣き付くのは悪いことになっている。
「親なのだから、普通だろうな」
「でも、家族で出ていくなんて、普通じゃないわ」
「はあ…もう諦めろ」
普通だろうが、普通ではなかろうが、フォンターナ家が出て行ったのは事実であり、見付かっていないのも事実である。
ただ、騎士団長がいることから、無事に生きているとは思える。
「王太子妃がと言えばいいことじゃない!向こうは平民なのよ?」
「もう過去のことは忘れなさい…」
「だって…忘れられないのよ、あの頃の生活が…」
オリビアの気持ちは分かる、バトワスもあの頃に戻れるのなら戻りたい。王女と結婚が出来ていたら、違ったのではないかと思うことすらある。
「自分のことより、子どもたちのことを考えてやれ」
「考えているわ」
「そうか…それならいい。私はまだやることがある、部屋に戻りなさい」
「え…あの…」
「何だ?まだ用事があるのか?」
「そろそろ、休まれてはどうかと思ってぇるのだけど」
オリビアは書類を持っていたバトワスの手の甲を触りながら、体をくねらせた。とは言っても、胸は以前よりも大きくなったが、同時にくびれはなくなった。
「書類を読まなくてはならないんだが?君はもう終わったのか?」
オリビアもバトワスほどの公務はないのにも関わらず、同様に読まなくてはいけない書類が溜まっているのを知っている。
「い、いえ」
「休んでいる暇などないだろう」
「で、でも」
「余裕があるのなら、手伝ってくれるのか?」
「いえ、戻ります…」
これ以上、子どもが出来たら困ると伝えたのにも関わらず、オリビアはまだ閨に誘おうとしていることは分かっているが、あからさまには断らないようにしている。
正確には五人辺りで伝えていたのだが、オリビアがもう愛していないのか、側妃や愛人を迎えるのかと、泣き喚くので、四人も増えてしまったのである。
立て続けに妊娠したことが原因であることも分かっているので、一度も口にはしていないが、だったらせめて痩せる努力をして欲しい。
正直に言えば、ブヨブヨのオリビアを抱きたいとは思えない。
閨を断っている以上、愛人を作りたいとも思ってもいないが、もしも別の女性を抱けばオリビアと比べてしまうことも分かっている。
そもそも、時間があるのならば、国のために子どもの結婚相手を探すために時間を使うべきだろう。他国の王女が嫁いできてもらえないのならば、王子の婚約者も自国で考えなくてはならない。
そのことを期待して待っている令嬢もいるが、他国の方が裕福だからと現実的な令嬢も多く、特別人気があるわけではない。
それなのにオリビアは子どもよりも自分のこと優先で、バトワスは日に日に、オリビアと結婚したことを後悔していた。
そして、王女にも後悔する日が、迫っていた。
バトワスから怪訝な目を向けられて、オリビアは少し怯んだが、自分が間違っているとは認められなかった。
「ジェフから、フォンターナ家は仲のいい家族ではなかったと聞いたわ!だから、おかしいのよ」
オリビアもエルムの父親が騎士団長であることは知っていたが、親に伝わったとしても、なぜか何も起こらないだろうと思っていた。
「出て行ったのは事実だろう?君はどうして出て行ったと言うのだ?」
「それは…あの子が泣き付いて、あることないことでも言ったのでしょう」
もしそうだったとしても、虐げていたのは事実である。
「仲が良くないのに、彼女には爵位を返上するほどの力があると言うのか?」
「だから、泣き付いたのよ。何てことをしてくれたのかしら」
娘なのだから、親に泣き付いて何が悪いというのか、だがオリビアにとってはエルムが泣き付くのは悪いことになっている。
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「でも、家族で出ていくなんて、普通じゃないわ」
「はあ…もう諦めろ」
普通だろうが、普通ではなかろうが、フォンターナ家が出て行ったのは事実であり、見付かっていないのも事実である。
ただ、騎士団長がいることから、無事に生きているとは思える。
「王太子妃がと言えばいいことじゃない!向こうは平民なのよ?」
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「だって…忘れられないのよ、あの頃の生活が…」
オリビアの気持ちは分かる、バトワスもあの頃に戻れるのなら戻りたい。王女と結婚が出来ていたら、違ったのではないかと思うことすらある。
「自分のことより、子どもたちのことを考えてやれ」
「考えているわ」
「そうか…それならいい。私はまだやることがある、部屋に戻りなさい」
「え…あの…」
「何だ?まだ用事があるのか?」
「そろそろ、休まれてはどうかと思ってぇるのだけど」
オリビアは書類を持っていたバトワスの手の甲を触りながら、体をくねらせた。とは言っても、胸は以前よりも大きくなったが、同時にくびれはなくなった。
「書類を読まなくてはならないんだが?君はもう終わったのか?」
オリビアもバトワスほどの公務はないのにも関わらず、同様に読まなくてはいけない書類が溜まっているのを知っている。
「い、いえ」
「休んでいる暇などないだろう」
「で、でも」
「余裕があるのなら、手伝ってくれるのか?」
「いえ、戻ります…」
これ以上、子どもが出来たら困ると伝えたのにも関わらず、オリビアはまだ閨に誘おうとしていることは分かっているが、あからさまには断らないようにしている。
正確には五人辺りで伝えていたのだが、オリビアがもう愛していないのか、側妃や愛人を迎えるのかと、泣き喚くので、四人も増えてしまったのである。
立て続けに妊娠したことが原因であることも分かっているので、一度も口にはしていないが、だったらせめて痩せる努力をして欲しい。
正直に言えば、ブヨブヨのオリビアを抱きたいとは思えない。
閨を断っている以上、愛人を作りたいとも思ってもいないが、もしも別の女性を抱けばオリビアと比べてしまうことも分かっている。
そもそも、時間があるのならば、国のために子どもの結婚相手を探すために時間を使うべきだろう。他国の王女が嫁いできてもらえないのならば、王子の婚約者も自国で考えなくてはならない。
そのことを期待して待っている令嬢もいるが、他国の方が裕福だからと現実的な令嬢も多く、特別人気があるわけではない。
それなのにオリビアは子どもよりも自分のこと優先で、バトワスは日に日に、オリビアと結婚したことを後悔していた。
そして、王女にも後悔する日が、迫っていた。
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