【完結】悪意か、善意か、破滅か

野村にれ

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味方

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「ミミリー…」
「お母様、みんなが私を責めるの…」

 きょうだいたちに責められ、最後には呆れられたミミリーはシャーリンに、泣き付くことにした。

「そうみたいね…こんなことで仲違いして欲しくないから、ミミリーにも理由があったのよと言ったのだけど、怒らせてしまったみたいなの」

 その言葉にミミリーは、ぱあっと顔を明るくした。

「お母様は、私の味方でいてくれる?」
「勿論よ、素敵な令息がいただけなんでしょう?」

 シャーリンは略奪愛を行った過去もあることから、婚約者がいる令息に話し掛けることに、悪いことだと思えないままである。

「そうなの、少し話しただけなのに、問題にされてしまって、きっと嫉妬した令嬢たちが訴えたのよ」
「そうね、あなたに奪われたくないと思われたのではない?」
「ええ、きっとそうだと思うわ」
「結婚相手を奪われたくないと思われたのよ…」

 令息側から訴えがあったのにも関わらず、都合のいいように母娘は受け取っていた。ミミリーは両親に、よく似てしまったのだろう。

「もっと時間があれば、絶対に親しくなれたはずなの。お母様、どうにかならない?」
「オズレ王国に行きたいってこと?」
「ええ、もう留学は無理でも、育む時間が欲しいの」
「恋人になったの?」
「まだ恋人とは言えないけど…あのまま居れば、そうなっていたと思うの」

 シャーリンはそんな状態だったのに、過剰に判断されてしまったのかもしれない。どうにかしてあげたいと思うが、シャーリンに権限はない。

「そうなの…でもお母様にお金はどうにもならないわ」

 シャーリンはジェフが言っていたように、邸のことはほとんど何もしていないため、自由に使えるお金は与えられていない。

「…お父様には持参金が要らない相手しか、無理だと言われてしまったの」
「それは…皆の分もあるから…お母様には分からないわ」
「高位貴族となれば、持参金は必要でしょう?」

 ミミリーが気に入った令息は恐れ多くも、公爵令息であった。

 ずっと断られていたが、高位貴族ともなればあからさまに断ることはないので、嫌われてはいないと思っている。

「そうだとは思うけど、お母様の時とは違っているかもしれないし」
「お母様は持参金を用意して貰ったのでしょう?」
「…ええ」

 ガルッツ子爵家は貧しかった上に、急遽結婚となったので、持参金は出していない。支払ったと言えば、多少の結婚式の費用くらいである。

 シャーリンは関与していなかったので、出したかどうかすら聞いていない。

「持参金はきっと大丈夫よ、お父様はきっと出してくれるわ」
「本当?」
「娘に恥を掻かせるわけないじゃない」

 よく分からないが、通常は出すものならば、伯爵家ならば、出してくれるだろうという考えであった。

「でも会えないと、どうにもならないわ…」
「お手紙を出してみたらどう?こちらに来てもらえばいいじゃない、それなら文句は言われないでしょう?」
「でも…」

 うまく手紙が書けるか自信のなかったミミリーは、お金を用意して欲しかったが、お父様に出して貰わなければいけないことも分かっていた。

「お手紙で育めばいいじゃない。私もお父様とよくお手紙のやり取りをしたのよ?」
「うーん、そうね。それしかないものね…」

 ミミリーは公爵令息に手紙を出すと言って、部屋に戻って行った。

 そして、ようやく、ジェフが帰って来た。

「ようやく帰って来たのね、どこに行っていたのよ!ずっと待っていたんだから」
「来ていたのか…」

 シャーリンがいたことで、ジェフはさらに疲れてた気持ちになった。

「戻って来たの!離縁なんて、ふざけたことを言うから」
「じゃあ、反省したんだな?」
「どうして私が反省しなくちゃいけないのよ、悪いのはジェフじゃない」
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