22 / 196
帰国
しおりを挟む
「ただいま戻りました」
「無事に戻って良かった」
本来なら怪我や病気もなくといった意味だろうが、バトワスの心の中は問題なく戻って来て、良かったという意味であった。
「お姉様が問題を起こしたというのは、本当ですの?」
「ああ」
バトワスはアマリリスがオズレ王国で令息に言い寄り、ミミリー・マクローズと共に禁止事項に触れて戻されたこと、今後はオズレ王国への留学は難しいと話すと、カメリアは大袈裟に信じられないという表情をした。
「困ったものですわね」
「カメリアは無事に帰ってくれて良かったよ」
「当たり前のことではありませんか」
カメリアはバトワスとの話を終えて、アマリリスを皆のように怒りではなく、姉を馬鹿に出来ると蔑みに向かった。
「お姉様、何てことをしてくれたの。恥ずかしいったらないわ!」
「戻ったの?」
「そうよ、きちんと留学を終えて戻ったわ。それなのに、お姉様ったら、なんて恥ずかしい。王女としての自覚がありませんの?」
「あるわよ!」
アマリリスはきょうだいたちにも、嫌味を言われて、カメリアにも言われることは覚悟はしていたが、腹立たしかった。
「だったら、どうして禁止事項を破ったのですか?」
「うるさいわね!」
「必死になったのに、残念でしたわね!どうやって言い寄ったのですか?」
「っな!あなたも言い寄ったりしたんじゃないの!」
「そんな下品なことするはずないではありませんか、サインしたでしょう?」
アマリリスは正直、カメリアも同じように戻されるのではないかと思っていた。私でも結婚相手に焦っていたのに、自分よりも恋愛脳のカメリアは、絶対に令息に言い寄ると思っていたからである。
だが、戻される様子はなく、愚か者の烙印を押されたのは自分だけだった。
国としては良かったのだが、傷を舐め合う相手はミミリーがいたが、ミミリーはさらに手紙を出したようで、自分よりも酷い状況になっていたが、アマリリスの状況が変わるわけではない。
そもそも、王女と伯爵令嬢では並べられるものではないと思っている。
「お姉様、これからどうされるのですか?持参金も減って、どこにも嫁ぎ先などではないのでは?」
「っ」
アマリリスは言い返そうとしたが、図星であったために、何も言えなかった。実際に嫁ぎ先が見付かるとは思えない。誰か素敵な殿方が突然、求婚してくれないかとすら思っている状況であった。
だが、戻った学園でも婚約については、揉めているようで、潔い令息や令嬢は働きに出るために、動いている者もいる状態だった。
親のように貴族家に結婚することが正しいと思う者は、家を継ぐ者、他国の貴族にどうにか縁を繋ごうとする者も多いが、なかなか相手が見付からないらしい。
既成事実があれば結婚して貰えるだろうと、関係を持っている者もいると聞いて、さすがに王女にそのようなことをする者はただでは済まないので、不埒者は現れていないが、恐ろしく感じていた。
「精々、頑張ってくださいませ~」
アマリリスはご機嫌に明るい声で出て行ったカメリアを、睨み付けることしか出来なかった。
短期留学から戻ったカメリアはなぜかバトワスに、頻繁に婚約の申し込みは来ていないか聞くようになった。最初は無事、留学から帰って来たことで、縁談を期待しているのかと思っていた。
「私に婚約の申し込みはありませんか?」
「いや、ないが?」
「そうですか」
「何があるのか?」
「いっ、いえ」
懇意になっている令息でもいるのだろうかと思ったが、カメリアは15歳なので学園はまだ通っておらず、令息との出会いもないのではないかと思っていた。
だが、待っても待ってもカメリアの待つ婚約の申し込みが来ることはなかった。
「無事に戻って良かった」
本来なら怪我や病気もなくといった意味だろうが、バトワスの心の中は問題なく戻って来て、良かったという意味であった。
「お姉様が問題を起こしたというのは、本当ですの?」
「ああ」
バトワスはアマリリスがオズレ王国で令息に言い寄り、ミミリー・マクローズと共に禁止事項に触れて戻されたこと、今後はオズレ王国への留学は難しいと話すと、カメリアは大袈裟に信じられないという表情をした。
「困ったものですわね」
「カメリアは無事に帰ってくれて良かったよ」
「当たり前のことではありませんか」
カメリアはバトワスとの話を終えて、アマリリスを皆のように怒りではなく、姉を馬鹿に出来ると蔑みに向かった。
「お姉様、何てことをしてくれたの。恥ずかしいったらないわ!」
「戻ったの?」
「そうよ、きちんと留学を終えて戻ったわ。それなのに、お姉様ったら、なんて恥ずかしい。王女としての自覚がありませんの?」
「あるわよ!」
アマリリスはきょうだいたちにも、嫌味を言われて、カメリアにも言われることは覚悟はしていたが、腹立たしかった。
「だったら、どうして禁止事項を破ったのですか?」
「うるさいわね!」
「必死になったのに、残念でしたわね!どうやって言い寄ったのですか?」
「っな!あなたも言い寄ったりしたんじゃないの!」
「そんな下品なことするはずないではありませんか、サインしたでしょう?」
アマリリスは正直、カメリアも同じように戻されるのではないかと思っていた。私でも結婚相手に焦っていたのに、自分よりも恋愛脳のカメリアは、絶対に令息に言い寄ると思っていたからである。
だが、戻される様子はなく、愚か者の烙印を押されたのは自分だけだった。
国としては良かったのだが、傷を舐め合う相手はミミリーがいたが、ミミリーはさらに手紙を出したようで、自分よりも酷い状況になっていたが、アマリリスの状況が変わるわけではない。
そもそも、王女と伯爵令嬢では並べられるものではないと思っている。
「お姉様、これからどうされるのですか?持参金も減って、どこにも嫁ぎ先などではないのでは?」
「っ」
アマリリスは言い返そうとしたが、図星であったために、何も言えなかった。実際に嫁ぎ先が見付かるとは思えない。誰か素敵な殿方が突然、求婚してくれないかとすら思っている状況であった。
だが、戻った学園でも婚約については、揉めているようで、潔い令息や令嬢は働きに出るために、動いている者もいる状態だった。
親のように貴族家に結婚することが正しいと思う者は、家を継ぐ者、他国の貴族にどうにか縁を繋ごうとする者も多いが、なかなか相手が見付からないらしい。
既成事実があれば結婚して貰えるだろうと、関係を持っている者もいると聞いて、さすがに王女にそのようなことをする者はただでは済まないので、不埒者は現れていないが、恐ろしく感じていた。
「精々、頑張ってくださいませ~」
アマリリスはご機嫌に明るい声で出て行ったカメリアを、睨み付けることしか出来なかった。
短期留学から戻ったカメリアはなぜかバトワスに、頻繁に婚約の申し込みは来ていないか聞くようになった。最初は無事、留学から帰って来たことで、縁談を期待しているのかと思っていた。
「私に婚約の申し込みはありませんか?」
「いや、ないが?」
「そうですか」
「何があるのか?」
「いっ、いえ」
懇意になっている令息でもいるのだろうかと思ったが、カメリアは15歳なので学園はまだ通っておらず、令息との出会いもないのではないかと思っていた。
だが、待っても待ってもカメリアの待つ婚約の申し込みが来ることはなかった。
4,113
あなたにおすすめの小説
婚約破棄の代償
nanahi
恋愛
「あの子を放って置けないんだ。ごめん。婚約はなかったことにしてほしい」
ある日突然、侯爵令嬢エバンジェリンは婚約者アダムスに一方的に婚約破棄される。破局に追い込んだのは婚約者の幼馴染メアリという平民の儚げな娘だった。
エバンジェリンを差し置いてアダムスとメアリはひと時の幸せに酔うが、婚約破棄の代償は想像以上に大きかった。
復讐のための五つの方法
炭田おと
恋愛
皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。
それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。
グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。
72話で完結です。
一級魔法使いになれなかったので特級厨師になりました
しおしお
恋愛
魔法学院次席卒業のシャーリー・ドットは、
「一級魔法使いになれなかった」という理由だけで婚約破棄された。
――だが本当の理由は、ただの“うっかり”。
試験会場を間違え、隣の建物で行われていた
特級厨師試験に合格してしまったのだ。
気づけばシャーリーは、王宮からスカウトされるほどの
“超一流料理人”となり、国王の胃袋をがっちり掴む存在に。
一方、学院首席で一級魔法使いとなった
ナターシャ・キンスキーは、大活躍しているはずなのに――
「なんで料理で一番になってるのよ!?
あの女、魔法より料理の方が強くない!?」
すれ違い、逃げ回り、勘違いし続けるナターシャと、
天然すぎて誤解が絶えないシャーリー。
そんな二人が、魔王軍の襲撃、国家危機、王宮騒動を通じて、
少しずつ距離を縮めていく。
魔法で国を守る最強魔術師。
料理で国を救う特級厨師。
――これは、“敵でもライバルでもない二人”が、
ようやく互いを認め、本当の友情を築いていく物語。
すれ違いコメディ×料理魔法×ダブルヒロイン友情譚!
笑って、癒されて、最後は心が温かくなる王宮ラノベ、開幕です。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
【完結】婚約者の義妹と恋に落ちたので婚約破棄した処、「妃教育の修了」を条件に結婚が許されたが結果が芳しくない。何故だ?同じ高位貴族だろう?
つくも茄子
恋愛
国王唯一の王子エドワード。
彼は婚約者の公爵令嬢であるキャサリンを公の場所で婚約破棄を宣言した。
次の婚約者は恋人であるアリス。
アリスはキャサリンの義妹。
愛するアリスと結婚するには「妃教育を修了させること」だった。
同じ高位貴族。
少し頑張ればアリスは直ぐに妃教育を終了させると踏んでいたが散々な結果で終わる。
八番目の教育係も辞めていく。
王妃腹でないエドワードは立太子が遠のく事に困ってしまう。
だが、エドワードは知らなかった事がある。
彼が事実を知るのは何時になるのか……それは誰も知らない。
他サイトにも公開中。
『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』
夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」
教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。
ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。
王命による“形式結婚”。
夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。
だから、はい、離婚。勝手に。
白い結婚だったので、勝手に離婚しました。
何か問題あります?
フッてくれてありがとう
nanahi
恋愛
「子どもができたんだ」
ある冬の25日、突然、彼が私に告げた。
「誰の」
私の短い問いにあなたは、しばらく無言だった。
でも私は知っている。
大学生時代の元カノだ。
「じゃあ。元気で」
彼からは謝罪の一言さえなかった。
下を向き、私はひたすら涙を流した。
それから二年後、私は偶然、元彼と再会する。
過去とは全く変わった私と出会って、元彼はふたたび──
婚約破棄されないまま正妃になってしまった令嬢
alunam
恋愛
婚約破棄はされなかった……そんな必要は無かったから。
既に愛情の無くなった結婚をしても相手は王太子。困る事は無かったから……
愛されない正妃なぞ珍しくもない、愛される側妃がいるから……
そして寵愛を受けた側妃が世継ぎを産み、正妃の座に成り代わろうとするのも珍しい事ではない……それが今、この時に訪れただけ……
これは婚約破棄される事のなかった愛されない正妃。元・辺境伯爵シェリオン家令嬢『フィアル・シェリオン』の知らない所で、周りの奴等が勝手に王家の連中に「ざまぁ!」する話。
※あらすじですらシリアスが保たない程度の内容、プロット消失からの練り直し試作品、荒唐無稽でもハッピーエンドならいいんじゃい!的なガバガバ設定
それでもよろしければご一読お願い致します。更によろしければ感想・アドバイスなんかも是非是非。全十三話+オマケ一話、一日二回更新でっす!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる