【完結】悪意か、善意か、破滅か

野村にれ

文字の大きさ
30 / 196

不安

しおりを挟む
 カメリアは離宮で療養となり、第一王女、第二王女を他国に嫁がせるのは絶望的になり、結婚が出来るかも分からない。

 両親である両陛下は忙しく、なかなか時間が取れないために、孫たちの縁談はバトワスとオリビアが責任を持って決めるように言われていた。

 それでもアマリリスとカメリアのことは、その都度、報告は上げていた。

 アマリリスのことも叱られたが、カメリアの報告をすると、急にバトワスの執務室にやって来て、アマリリスの時よりも怒鳴り散らされた。

「どうなっているのだ!王族としての自覚すらないのか!王家の恥だ」
「申し訳ございません」
「表に出すな!」
「承知いたしました」

 バトワスはアマリリストカメリアのこと、今後のことを考えて、溜息を付くのが日課になっていた。

 そろそろ、第一王子が留学に向かうことになっている。

 第一王子・アッシュは隣国のアーキュ王国へ、期間は王女たちと違って短期ではないので、一年間となる。

「くれぐれもおかしな真似をするな、何かあったら、自分で判断せずに、すぐに連絡をすること。分かったな?」
「はい」

 前の二人のせいで、不安には思っているが、二人のことを見ていて、おかしな真似はしないだろうが、伝えて置かなければならない。

「アマリリスのように帰されることがないように気を付け、カメリアのようなことはしません」
「ああ、くれぐれも気を付ける様に」
「はい」

 アッシュが戻り次第、今度は第二王子・オークリーが、ヒューズリン王国へ留学することになっている。第三王子・パベルは戻ってくる気はないようで、時折、文が届き、熱心に勉強していると書かれている。

 そして、アッシュはアーキュ王国へ旅立った。後は何も問題を起こさずに、留学から戻って来ることが願うばかりである。

 従者にもおかしいと思ったら、アッシュには従わなくていい、すぐに連絡をしてくれと伝えてある。

 そんな折、現在のアジェル王国へ似たような天候のハビット王国から、お話を聞きたいので、訪問したいという申し出があった。

 断る理由もないために、王太子殿下と妹である王女殿下がやって来ることになり、バトワスが対応を任されることになった。

「訪問をお許しいただき、ありがとうございます」
「ありがとうございます」
「いえ、ようこそお越しくださいました」

 同じ黒髪の小麦色の肌をした、23歳のルークア王太子殿下、18歳のメーリン王女殿下は妖艶で美しく、とても礼儀正しい二人であった。

 ハビット王国は歴史の長い国ではあるが、アジェル王国と同じで、雨が少なく、水不足に悩まされている小国である。バトワスも関わりなかったこともあり、以前は他人事で大変だなと、どこか見下していた。

 バトワスは早速、二人と話をすることになった。

「アジェル王国は、雨は少ないままですか?」
「はい…ハビット王国はいかがですか?」
「我が国もです。私も妹も生まれた時からですので、慣れていると言ってはあれですが、バトワス王太子殿下は違いますでしょう?」

 メーリンも、横で頷いている。

「はい…未だに昔に戻りたいと思ってしまうことがあります」
「ええ、そうでしょうね」
「いずれは戻ると信じて、慣れていくしかないとは思っているのですが」
「そのことなのですが…」

 ルークア王太子殿下は話を始めようとしたが、言葉に詰まったような表情をして、止まった。

「お怒りにならず、歴史から考えたと思い、聞いていただきたいのですが」
「はい…」
「我が国と同じならば、戻ることはないと考えているのです」
「ど、どういうことでしょうか」

 バトワスは慌てた、明日戻るなんて安易には考えていないが、明日戻るかもしれないと思うことは、持ち続けていたかった。

「我が国も昔は他国よりも、過ごし易い気候で、保養地として人気のあったのです。それが、200年以上前のことですが、徐々に今のような気候になりました。とてもよく似ていると思ったのです」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

親切なミザリー

みるみる
恋愛
第一王子アポロの婚約者ミザリーは、「親切なミザリー」としてまわりから慕われていました。 ところが、子爵家令嬢のアリスと偶然出会ってしまったアポロはアリスを好きになってしまい、ミザリーを蔑ろにするようになりました。アポロだけでなく、アポロのまわりの友人達もアリスを慕うようになりました。 ミザリーはアリスに嫉妬し、様々な嫌がらせをアリスにする様になりました。 こうしてミザリーは、いつしか親切なミザリーから悪女ミザリーへと変貌したのでした。 ‥ですが、ミザリーの突然の死後、何故か再びミザリーの評価は上がり、「親切なミザリー」として人々に慕われるようになり、ミザリーが死後海に投げ落とされたという崖の上には沢山の花が、毎日絶やされる事なく人々により捧げられ続けるのでした。 ※不定期更新です。

《完結》愛する人と結婚するだけが愛じゃない

ぜらちん黒糖
恋愛
オリビアはジェームズとこのまま結婚するだろうと思っていた。 ある日、可愛がっていた後輩のマリアから「先輩と別れて下さい」とオリビアは言われた。 ジェームズに確かめようと部屋に行くと、そこにはジェームズとマリアがベッドで抱き合っていた。 ショックのあまり部屋を飛び出したオリビアだったが、気がつくと走る馬車の前を歩いていた。

家族に裏切られて辺境で幸せを掴む?

しゃーりん
恋愛
婚約者を妹に取られる。 そんな小説みたいなことが本当に起こった。 婚約者が姉から妹に代わるだけ?しかし私はそれを許さず、慰謝料を請求した。 婚約破棄と共に跡継ぎでもなくなったから。 仕事だけをさせようと思っていた父に失望し、伯父のいる辺境に行くことにする。 これからは辺境で仕事に生きよう。そう決めて王都を旅立った。 辺境で新たな出会いがあり、付き合い始めたけど?というお話です。

婚約破棄の代償

nanahi
恋愛
「あの子を放って置けないんだ。ごめん。婚約はなかったことにしてほしい」 ある日突然、侯爵令嬢エバンジェリンは婚約者アダムスに一方的に婚約破棄される。破局に追い込んだのは婚約者の幼馴染メアリという平民の儚げな娘だった。 エバンジェリンを差し置いてアダムスとメアリはひと時の幸せに酔うが、婚約破棄の代償は想像以上に大きかった。

なんでも思い通りにしないと気が済まない妹から逃げ出したい

木崎優
恋愛
「君には大変申し訳なく思っている」 私の婚約者はそう言って、心苦しそうに顔を歪めた。「私が悪いの」と言いながら瞳を潤ませている、私の妹アニエスの肩を抱きながら。 アニエスはいつだって私の前に立ちはだかった。 これまで何ひとつとして、私の思い通りになったことはない。すべてアニエスが決めて、両親はアニエスが言うことならと頷いた。 だからきっと、この婚約者の入れ替えも両親は快諾するのだろう。アニエスが決めたのなら間違いないからと。 もういい加減、妹から離れたい。 そう思った私は、魔術師の弟子ノエルに結婚を前提としたお付き合いを申し込んだ。互いに利のある契約として。 だけど弟子だと思ってたその人は実は魔術師で、しかも私を好きだったらしい。

さようなら、私の愛したあなた。

希猫 ゆうみ
恋愛
オースルンド伯爵家の令嬢カタリーナは、幼馴染であるロヴネル伯爵家の令息ステファンを心から愛していた。いつか結婚するものと信じて生きてきた。 ところが、ステファンは爵位継承と同時にカールシュテイン侯爵家の令嬢ロヴィーサとの婚約を発表。 「君の恋心には気づいていた。だが、私は違うんだ。さようなら、カタリーナ」 ステファンとの未来を失い茫然自失のカタリーナに接近してきたのは、社交界で知り合ったドグラス。 ドグラスは王族に連なるノルディーン公爵の末子でありマルムフォーシュ伯爵でもある超上流貴族だったが、不埒な噂の絶えない人物だった。 「あなたと遊ぶほど落ちぶれてはいません」 凛とした態度を崩さないカタリーナに、ドグラスがある秘密を打ち明ける。 なんとドグラスは王家の密偵であり、偽装として遊び人のように振舞っているのだという。 「俺に協力してくれたら、ロヴィーサ嬢の真実を教えてあげよう」 こうして密偵助手となったカタリーナは、幾つかの真実に触れながら本当の愛に辿り着く。

言いたいことはそれだけですか。では始めましょう

井藤 美樹
恋愛
常々、社交を苦手としていましたが、今回ばかりは仕方なく出席しておりましたの。婚約者と一緒にね。 その席で、突然始まった婚約破棄という名の茶番劇。 頭がお花畑の方々の発言が続きます。 すると、なぜが、私の名前が…… もちろん、火の粉はその場で消しましたよ。 ついでに、独立宣言もしちゃいました。 主人公、めちゃくちゃ口悪いです。 成り立てホヤホヤのミネリア王女殿下の溺愛&奮闘記。ちょっとだけ、冒険譚もあります。

【完結】愛で結ばれたはずの夫に捨てられました

ユユ
恋愛
「出て行け」 愛を囁き合い、祝福されずとも全てを捨て 結ばれたはずだった。 「金輪際姿を表すな」 義父から嫁だと認めてもらえなくても 義母からの仕打ちにもメイド達の嫌がらせにも 耐えてきた。 「もうおまえを愛していない」 結婚4年、やっと待望の第一子を産んだ。 義務でもあった男児を産んだ。 なのに 「不義の子と去るがいい」 「あなたの子よ!」 「私の子はエリザベスだけだ」 夫は私を裏切っていた。 * 作り話です * 3万文字前後です * 完結保証付きです * 暇つぶしにどうぞ

処理中です...