81 / 196
流行り病
しおりを挟む
「薬が効かないのか?」
「はい、呼吸困難になっている者や、意識がなくなっている者が増えております」
国王であるオイスラッドは、頭を抱えていた。
「ハビット王国、カイニー王国、トリンス王国、アーキュ王国、ドリーツ王国、ヒューズリン王国、オルタナ王国でも同じような症状が出ているとのことです」
オイスラッドはハビット王国にまさか?とは思ったが、王家には感染した者はおらず、一番関わった調査員たちの中にも感染者はいない。
だが、貴族や平民に関わらず、徐々に広がっている。
平民は家族内で感染が広がっていることから、貴族のように邸が広くないことが原因かと、感染者は病院や施設に移す手段も取ったが、大丈夫だからと行かない者もおり、重症化する者も増えていった。
「そうか…薬はどうなんだ?」
「はい、どうやら開発が進められているという話と、既に出来ているという話も出ていますが…どちらの国なのか分かっておりません」
まだアジェル王国では混乱が始まったばかりで、情報が錯綜していた。
「うちはどうなんだ?」
「まだ全く進んでいません」
「輸入するしかないが、情報を集めてくれ」
「承知いたしました」
これまでも新たな流行り病などは、他国では起こっていた。だが、アジェル王国では流行ることはなかった。
ある意味、天候が変わって保養地とは呼べなくなったアジェル王国には、他国からやって来る者がほとんどいない影響もあった。
だが、王子や王女たちが留学したように、他国に働きに行ったりする者が増えたことで、流行り病がアジェル王国にも広がり始めた。
軽症者は薬は効かないものの、回復していたが、貧血の後遺症が出ていた。
バトワスが留学している息子たちにも手紙を出すと、オークリーの留学先であるヒューズリン王国、パベルの留学先であるアーカス王国でも、流行っているという。
「薬はどうなっているのだ?」
「はい、完成しているという話ですが、他の国も欲していますから、まだどこの国が開発に成功したのかが分かっておりません」
「情報操作か」
「ええ、おそらくそうだと思います」
外交担当が色んな国に問い合わせをしたが、あの国じゃないか、分からないと、この国だという確信は得られなかった。
困っているのはお互い様の上に、アジェル王国は現在、軽んじられていることも分かっている。
「いや、それでも私からも他国に伺ってみよう。それしかない」
「よろしくお願いいたします」
オイスラッドも、他国に薬のことを問い合わせることにしたが、まだ開発中であるという返事であった。
だが、その情報は意外なところから、もたらされることになった。
陛下宛てに手紙を書いて来たのは、パベル第三王子であった、薬の開発に成功しているのはカイニー王国とオルタナ王国で、どちらも効果があるとのことだった。
すぐさま、どちらの国にも薬を譲って欲しいと手紙を送り、使者も送ったが、入国に時間が掛かるのは仕方なかったが、まだ開発中という返事であった。
確かに焦って、パベルの話の裏取りはしていなかったが、パベルは内密に聞いたことであるから、間違いないと書いていた。
使者もどこの国も困っている、成功すれば独り占めしたりしないと言われれば、国に戻るしかなかった。
「分かっているが、死者も出ているのだろう」
「はい…」
重症化して、命を落とす者も増えていた。
「困っているのは他国も同じなのも分かっている、我が国だけがないがしろにされているわけではないんだな?」
「おそらくですが…」
「ああ…」
「強い商会でもあれば、また違ったのかもしれませんが」
本来、薬は紹介から手に入れている。
ゆえに商会から繋がりで、手に入れるという方法もあったが、アジェル王国に強い商会はなくなってしまったままである。
「はい、呼吸困難になっている者や、意識がなくなっている者が増えております」
国王であるオイスラッドは、頭を抱えていた。
「ハビット王国、カイニー王国、トリンス王国、アーキュ王国、ドリーツ王国、ヒューズリン王国、オルタナ王国でも同じような症状が出ているとのことです」
オイスラッドはハビット王国にまさか?とは思ったが、王家には感染した者はおらず、一番関わった調査員たちの中にも感染者はいない。
だが、貴族や平民に関わらず、徐々に広がっている。
平民は家族内で感染が広がっていることから、貴族のように邸が広くないことが原因かと、感染者は病院や施設に移す手段も取ったが、大丈夫だからと行かない者もおり、重症化する者も増えていった。
「そうか…薬はどうなんだ?」
「はい、どうやら開発が進められているという話と、既に出来ているという話も出ていますが…どちらの国なのか分かっておりません」
まだアジェル王国では混乱が始まったばかりで、情報が錯綜していた。
「うちはどうなんだ?」
「まだ全く進んでいません」
「輸入するしかないが、情報を集めてくれ」
「承知いたしました」
これまでも新たな流行り病などは、他国では起こっていた。だが、アジェル王国では流行ることはなかった。
ある意味、天候が変わって保養地とは呼べなくなったアジェル王国には、他国からやって来る者がほとんどいない影響もあった。
だが、王子や王女たちが留学したように、他国に働きに行ったりする者が増えたことで、流行り病がアジェル王国にも広がり始めた。
軽症者は薬は効かないものの、回復していたが、貧血の後遺症が出ていた。
バトワスが留学している息子たちにも手紙を出すと、オークリーの留学先であるヒューズリン王国、パベルの留学先であるアーカス王国でも、流行っているという。
「薬はどうなっているのだ?」
「はい、完成しているという話ですが、他の国も欲していますから、まだどこの国が開発に成功したのかが分かっておりません」
「情報操作か」
「ええ、おそらくそうだと思います」
外交担当が色んな国に問い合わせをしたが、あの国じゃないか、分からないと、この国だという確信は得られなかった。
困っているのはお互い様の上に、アジェル王国は現在、軽んじられていることも分かっている。
「いや、それでも私からも他国に伺ってみよう。それしかない」
「よろしくお願いいたします」
オイスラッドも、他国に薬のことを問い合わせることにしたが、まだ開発中であるという返事であった。
だが、その情報は意外なところから、もたらされることになった。
陛下宛てに手紙を書いて来たのは、パベル第三王子であった、薬の開発に成功しているのはカイニー王国とオルタナ王国で、どちらも効果があるとのことだった。
すぐさま、どちらの国にも薬を譲って欲しいと手紙を送り、使者も送ったが、入国に時間が掛かるのは仕方なかったが、まだ開発中という返事であった。
確かに焦って、パベルの話の裏取りはしていなかったが、パベルは内密に聞いたことであるから、間違いないと書いていた。
使者もどこの国も困っている、成功すれば独り占めしたりしないと言われれば、国に戻るしかなかった。
「分かっているが、死者も出ているのだろう」
「はい…」
重症化して、命を落とす者も増えていた。
「困っているのは他国も同じなのも分かっている、我が国だけがないがしろにされているわけではないんだな?」
「おそらくですが…」
「ああ…」
「強い商会でもあれば、また違ったのかもしれませんが」
本来、薬は紹介から手に入れている。
ゆえに商会から繋がりで、手に入れるという方法もあったが、アジェル王国に強い商会はなくなってしまったままである。
3,489
あなたにおすすめの小説
親切なミザリー
みるみる
恋愛
第一王子アポロの婚約者ミザリーは、「親切なミザリー」としてまわりから慕われていました。
ところが、子爵家令嬢のアリスと偶然出会ってしまったアポロはアリスを好きになってしまい、ミザリーを蔑ろにするようになりました。アポロだけでなく、アポロのまわりの友人達もアリスを慕うようになりました。
ミザリーはアリスに嫉妬し、様々な嫌がらせをアリスにする様になりました。
こうしてミザリーは、いつしか親切なミザリーから悪女ミザリーへと変貌したのでした。
‥ですが、ミザリーの突然の死後、何故か再びミザリーの評価は上がり、「親切なミザリー」として人々に慕われるようになり、ミザリーが死後海に投げ落とされたという崖の上には沢山の花が、毎日絶やされる事なく人々により捧げられ続けるのでした。
※不定期更新です。
復讐のための五つの方法
炭田おと
恋愛
皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。
それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。
グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。
72話で完結です。
なんで私だけ我慢しなくちゃならないわけ?
ワールド
恋愛
私、フォン・クラインハートは、由緒正しき家柄に生まれ、常に家族の期待に応えるべく振る舞ってまいりましたわ。恋愛、趣味、さらには私の将来に至るまで、すべては家名と伝統のため。しかし、これ以上、我慢するのは終わりにしようと決意いたしましたわ。
だってなんで私だけ我慢しなくちゃいけないと思ったんですもの。
これからは好き勝手やらせてもらいますわ。
幼馴染以上、婚約者未満の王子と侯爵令嬢の関係
紫月 由良
恋愛
第二王子エインの婚約者は、貴族には珍しい赤茶色の髪を持つ侯爵令嬢のディアドラ。だが彼女の冷たい瞳と無口な性格が気に入らず、エインは婚約者の義兄フィオンとともに彼女を疎んじていた。そんな中、ディアドラが学院内で留学してきた男子学生たちと親しくしているという噂が広まる。注意しに行ったエインは彼女の見知らぬ一面に心を乱された。しかし婚約者の異母兄妹たちの思惑が問題を引き起こして……。
顔と頭が良く性格が悪い男の失恋ストーリー。
※流血シーンがあります。(各話の前書きに注意書き+次話前書きにあらすじがあるので、飛ばし読み可能です)
冷遇王妃はときめかない
あんど もあ
ファンタジー
幼いころから婚約していた彼と結婚して王妃になった私。
だが、陛下は側妃だけを溺愛し、私は白い結婚のまま離宮へ追いやられる…って何てラッキー! 国の事は陛下と側妃様に任せて、私はこのまま離宮で何の責任も無い楽な生活を!…と思っていたのに…。
【完結】不貞された私を責めるこの国はおかしい
春風由実
恋愛
婚約者が不貞をしたあげく、婚約破棄だと言ってきた。
そんな私がどうして議会に呼び出され糾弾される側なのでしょうか?
婚約者が不貞をしたのは私のせいで、
婚約破棄を命じられたのも私のせいですって?
うふふ。面白いことを仰いますわね。
※最終話まで毎日一話更新予定です。→3/27完結しました。
※カクヨムにも投稿しています。
さようなら、わたくしの騎士様
夜桜
恋愛
騎士様からの突然の『さようなら』(婚約破棄)に辺境伯令嬢クリスは微笑んだ。
その時を待っていたのだ。
クリスは知っていた。
騎士ローウェルは裏切ると。
だから逆に『さようなら』を言い渡した。倍返しで。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる