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交渉
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「ようこそお越しくださいました」
十分に休養を取ったオイスラッドと、シンバリア、バトワス、宰相、外交担当大臣が出迎えた。
「いえ、出迎え感謝します」
神々しいほどに美しく、長身の大公と子息であったが、話の通りに表情は一切、綻んだりしない。子息の方も同じであった。
応接室に案内し、メイリクス・レオラッド、エノン・レオラッドと、オイスラッドとシンバリアとバトワスは向き合って座った。
「話を始めましょうか」
「はい、その前に王妃から、この度のカイニー王国への非礼について、話させていただいてもよろしいでしょうか」
メイリクスとエノンは顔を見合わせ、頷いた。
「ええ、構いません」
オイスラッドは先に、カイニー王国への非礼を詫び、反省してから話をしたいと考えていた。そのために大公閣下に願い出るから、シンバリアにきちんと説明をするように伝えていた。
「ありがとうございます。王妃、きちんとお話しなさい」
「はい、この度はお越しいただきありがとうございます。カイニー王国の方に来ていただいたのにも、関わらず母親を優先するようなことをして、今となってはとても恥じております。今後は二度とこのような真似はしないと誓いますので、どうか民のために輸入させていただけませんでしょうか」
シンバリアは座ったままではあるが、深く頭を下げ、オイスラッドも概ね満足のいく反省であったと思った。
「そうですか、お母上は何とおっしゃっているのですか?」
「あ、はい…母も悲しんでおります」
リネットはまだシンバリアのしたことは知らず、話してもいないが、そのようなことを言うわけにはいかない。
「悲しんで?ですか」
「はい、私が優先するように伝えたことを情けなく思っています」
「そうですか、ではなぜ断らなかったのでしょうか?」
「その際は、母は何も知りませんでした」
「知らなかった…そうですか」
オイスラッドは大公閣下の表情が変わらないことで、相手の声色で様子を伺っていたが、それでもどう思っているのかが分からなかった。
「助からなければ良かったとおっしゃっているのですか?」
「い、いえ…ですが、私のせいで責任を感じております」
シンバリアはここまで詳しく訊ねられるとは思っておらず、リアットが知ったらと想像しながら話すしかなかった。
「私の母も、流行り病に罹りました」
オルタナ王国も、他国ほどではなかったが、流行はした。不運にも、他国に行っていた前王妃である母が罹ってしまったのである。
王族として、他の者に感染させるわけにはいかないと、私は死んでもいい。部屋に入るななと騒ぎになったのである。
そこで母を説得をしたのが、我が妻であった。
「そ、そうでしたか…それはご心配でしたでしょう」
シンバリアは表情が変わらないために確証はなかったが、その話が良い方に転ぶのではないかと思った。
「まだ薬が出来たばかりでしたが、治験に協力をしたいと申し出てくれました」
「私とは違い、立派なことでございます」
「義兄の開発した薬ですから、不安はありませんでしたがね」
「お義兄様が…そうですか、素晴らしいことですね」
「はい、立派な義兄でございます」
「はい、立派な伯父上でございます」
エノンも続いて答えたが、そう言いながらも、大公閣下も子息も一切、表情は変わらない。
「は、い…」
若干不思議に思いながらも、タイミングを見計らっていたオイスラッドは、輸入の話を切り出すことにした。
「それで、輸入はしていただくことは可能でしょうか?」
「それなのですよね、どういったおつもりなのかと思って、私が訪ねさせてもらったのです」
「ど、どういう意味でしょうか?」
オイスラッドは、急に大公陛下のさらに冷えたような瞳に、酷く悪い方向へ進んでいる気がし始めていた。
十分に休養を取ったオイスラッドと、シンバリア、バトワス、宰相、外交担当大臣が出迎えた。
「いえ、出迎え感謝します」
神々しいほどに美しく、長身の大公と子息であったが、話の通りに表情は一切、綻んだりしない。子息の方も同じであった。
応接室に案内し、メイリクス・レオラッド、エノン・レオラッドと、オイスラッドとシンバリアとバトワスは向き合って座った。
「話を始めましょうか」
「はい、その前に王妃から、この度のカイニー王国への非礼について、話させていただいてもよろしいでしょうか」
メイリクスとエノンは顔を見合わせ、頷いた。
「ええ、構いません」
オイスラッドは先に、カイニー王国への非礼を詫び、反省してから話をしたいと考えていた。そのために大公閣下に願い出るから、シンバリアにきちんと説明をするように伝えていた。
「ありがとうございます。王妃、きちんとお話しなさい」
「はい、この度はお越しいただきありがとうございます。カイニー王国の方に来ていただいたのにも、関わらず母親を優先するようなことをして、今となってはとても恥じております。今後は二度とこのような真似はしないと誓いますので、どうか民のために輸入させていただけませんでしょうか」
シンバリアは座ったままではあるが、深く頭を下げ、オイスラッドも概ね満足のいく反省であったと思った。
「そうですか、お母上は何とおっしゃっているのですか?」
「あ、はい…母も悲しんでおります」
リネットはまだシンバリアのしたことは知らず、話してもいないが、そのようなことを言うわけにはいかない。
「悲しんで?ですか」
「はい、私が優先するように伝えたことを情けなく思っています」
「そうですか、ではなぜ断らなかったのでしょうか?」
「その際は、母は何も知りませんでした」
「知らなかった…そうですか」
オイスラッドは大公閣下の表情が変わらないことで、相手の声色で様子を伺っていたが、それでもどう思っているのかが分からなかった。
「助からなければ良かったとおっしゃっているのですか?」
「い、いえ…ですが、私のせいで責任を感じております」
シンバリアはここまで詳しく訊ねられるとは思っておらず、リアットが知ったらと想像しながら話すしかなかった。
「私の母も、流行り病に罹りました」
オルタナ王国も、他国ほどではなかったが、流行はした。不運にも、他国に行っていた前王妃である母が罹ってしまったのである。
王族として、他の者に感染させるわけにはいかないと、私は死んでもいい。部屋に入るななと騒ぎになったのである。
そこで母を説得をしたのが、我が妻であった。
「そ、そうでしたか…それはご心配でしたでしょう」
シンバリアは表情が変わらないために確証はなかったが、その話が良い方に転ぶのではないかと思った。
「まだ薬が出来たばかりでしたが、治験に協力をしたいと申し出てくれました」
「私とは違い、立派なことでございます」
「義兄の開発した薬ですから、不安はありませんでしたがね」
「お義兄様が…そうですか、素晴らしいことですね」
「はい、立派な義兄でございます」
「はい、立派な伯父上でございます」
エノンも続いて答えたが、そう言いながらも、大公閣下も子息も一切、表情は変わらない。
「は、い…」
若干不思議に思いながらも、タイミングを見計らっていたオイスラッドは、輸入の話を切り出すことにした。
「それで、輸入はしていただくことは可能でしょうか?」
「それなのですよね、どういったおつもりなのかと思って、私が訪ねさせてもらったのです」
「ど、どういう意味でしょうか?」
オイスラッドは、急に大公陛下のさらに冷えたような瞳に、酷く悪い方向へ進んでいる気がし始めていた。
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