92 / 196
交渉
「ようこそお越しくださいました」
十分に休養を取ったオイスラッドと、シンバリア、バトワス、宰相、外交担当大臣が出迎えた。
「いえ、出迎え感謝します」
神々しいほどに美しく、長身の大公と子息であったが、話の通りに表情は一切、綻んだりしない。子息の方も同じであった。
応接室に案内し、メイリクス・レオラッド、エノン・レオラッドと、オイスラッドとシンバリアとバトワスは向き合って座った。
「話を始めましょうか」
「はい、その前に王妃から、この度のカイニー王国への非礼について、話させていただいてもよろしいでしょうか」
メイリクスとエノンは顔を見合わせ、頷いた。
「ええ、構いません」
オイスラッドは先に、カイニー王国への非礼を詫び、反省してから話をしたいと考えていた。そのために大公閣下に願い出るから、シンバリアにきちんと説明をするように伝えていた。
「ありがとうございます。王妃、きちんとお話しなさい」
「はい、この度はお越しいただきありがとうございます。カイニー王国の方に来ていただいたのにも、関わらず母親を優先するようなことをして、今となってはとても恥じております。今後は二度とこのような真似はしないと誓いますので、どうか民のために輸入させていただけませんでしょうか」
シンバリアは座ったままではあるが、深く頭を下げ、オイスラッドも概ね満足のいく反省であったと思った。
「そうですか、お母上は何とおっしゃっているのですか?」
「あ、はい…母も悲しんでおります」
リネットはまだシンバリアのしたことは知らず、話してもいないが、そのようなことを言うわけにはいかない。
「悲しんで?ですか」
「はい、私が優先するように伝えたことを情けなく思っています」
「そうですか、ではなぜ断らなかったのでしょうか?」
「その際は、母は何も知りませんでした」
「知らなかった…そうですか」
オイスラッドは大公閣下の表情が変わらないことで、相手の声色で様子を伺っていたが、それでもどう思っているのかが分からなかった。
「助からなければ良かったとおっしゃっているのですか?」
「い、いえ…ですが、私のせいで責任を感じております」
シンバリアはここまで詳しく訊ねられるとは思っておらず、リアットが知ったらと想像しながら話すしかなかった。
「私の母も、流行り病に罹りました」
オルタナ王国も、他国ほどではなかったが、流行はした。不運にも、他国に行っていた前王妃である母が罹ってしまったのである。
王族として、他の者に感染させるわけにはいかないと、私は死んでもいい。部屋に入るななと騒ぎになったのである。
そこで母を説得をしたのが、我が妻であった。
「そ、そうでしたか…それはご心配でしたでしょう」
シンバリアは表情が変わらないために確証はなかったが、その話が良い方に転ぶのではないかと思った。
「まだ薬が出来たばかりでしたが、治験に協力をしたいと申し出てくれました」
「私とは違い、立派なことでございます」
「義兄の開発した薬ですから、不安はありませんでしたがね」
「お義兄様が…そうですか、素晴らしいことですね」
「はい、立派な義兄でございます」
「はい、立派な伯父上でございます」
エノンも続いて答えたが、そう言いながらも、大公閣下も子息も一切、表情は変わらない。
「は、い…」
若干不思議に思いながらも、タイミングを見計らっていたオイスラッドは、輸入の話を切り出すことにした。
「それで、輸入はしていただくことは可能でしょうか?」
「それなのですよね、どういったおつもりなのかと思って、私が訪ねさせてもらったのです」
「ど、どういう意味でしょうか?」
オイスラッドは、急に大公陛下のさらに冷えたような瞳に、酷く悪い方向へ進んでいる気がし始めていた。
十分に休養を取ったオイスラッドと、シンバリア、バトワス、宰相、外交担当大臣が出迎えた。
「いえ、出迎え感謝します」
神々しいほどに美しく、長身の大公と子息であったが、話の通りに表情は一切、綻んだりしない。子息の方も同じであった。
応接室に案内し、メイリクス・レオラッド、エノン・レオラッドと、オイスラッドとシンバリアとバトワスは向き合って座った。
「話を始めましょうか」
「はい、その前に王妃から、この度のカイニー王国への非礼について、話させていただいてもよろしいでしょうか」
メイリクスとエノンは顔を見合わせ、頷いた。
「ええ、構いません」
オイスラッドは先に、カイニー王国への非礼を詫び、反省してから話をしたいと考えていた。そのために大公閣下に願い出るから、シンバリアにきちんと説明をするように伝えていた。
「ありがとうございます。王妃、きちんとお話しなさい」
「はい、この度はお越しいただきありがとうございます。カイニー王国の方に来ていただいたのにも、関わらず母親を優先するようなことをして、今となってはとても恥じております。今後は二度とこのような真似はしないと誓いますので、どうか民のために輸入させていただけませんでしょうか」
シンバリアは座ったままではあるが、深く頭を下げ、オイスラッドも概ね満足のいく反省であったと思った。
「そうですか、お母上は何とおっしゃっているのですか?」
「あ、はい…母も悲しんでおります」
リネットはまだシンバリアのしたことは知らず、話してもいないが、そのようなことを言うわけにはいかない。
「悲しんで?ですか」
「はい、私が優先するように伝えたことを情けなく思っています」
「そうですか、ではなぜ断らなかったのでしょうか?」
「その際は、母は何も知りませんでした」
「知らなかった…そうですか」
オイスラッドは大公閣下の表情が変わらないことで、相手の声色で様子を伺っていたが、それでもどう思っているのかが分からなかった。
「助からなければ良かったとおっしゃっているのですか?」
「い、いえ…ですが、私のせいで責任を感じております」
シンバリアはここまで詳しく訊ねられるとは思っておらず、リアットが知ったらと想像しながら話すしかなかった。
「私の母も、流行り病に罹りました」
オルタナ王国も、他国ほどではなかったが、流行はした。不運にも、他国に行っていた前王妃である母が罹ってしまったのである。
王族として、他の者に感染させるわけにはいかないと、私は死んでもいい。部屋に入るななと騒ぎになったのである。
そこで母を説得をしたのが、我が妻であった。
「そ、そうでしたか…それはご心配でしたでしょう」
シンバリアは表情が変わらないために確証はなかったが、その話が良い方に転ぶのではないかと思った。
「まだ薬が出来たばかりでしたが、治験に協力をしたいと申し出てくれました」
「私とは違い、立派なことでございます」
「義兄の開発した薬ですから、不安はありませんでしたがね」
「お義兄様が…そうですか、素晴らしいことですね」
「はい、立派な義兄でございます」
「はい、立派な伯父上でございます」
エノンも続いて答えたが、そう言いながらも、大公閣下も子息も一切、表情は変わらない。
「は、い…」
若干不思議に思いながらも、タイミングを見計らっていたオイスラッドは、輸入の話を切り出すことにした。
「それで、輸入はしていただくことは可能でしょうか?」
「それなのですよね、どういったおつもりなのかと思って、私が訪ねさせてもらったのです」
「ど、どういう意味でしょうか?」
オイスラッドは、急に大公陛下のさらに冷えたような瞳に、酷く悪い方向へ進んでいる気がし始めていた。
あなたにおすすめの小説
【完結】遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。
沼野 花
恋愛
【残り数話を持ちまして3月29日完結!!】
夫にも子どもにも、私は選ばれなかった。
長年の裏切りを抱え、離縁状を置いて家を出た――。
待っていたのは、凍てつく絶望。
けれど同時に、それは残酷な運命の扉が開く瞬間でもあった。
「夫は愛人と生きればいい。
今さら縋られても、裏切ったあなたを許す力など残っていない」
それでも私は誓う――
「子どもたちの心だけは、必ず取り戻す」
歪で、完全な幸福――それとも、破滅。
“石”に翻弄された者たちの、狂おしい物語。
幼馴染しか見えない婚約者と白い結婚したので、夜明け前にさよならしました
ゆぷしろん
恋愛
公爵令嬢レティシアは、家同士の都合で伯爵アルフレッドに嫁ぐ。
けれど夫は結婚後もずっと幼馴染のシルヴィばかりを優先し、婚礼の夜から夫婦として触れ合おうともしなかった。名ばかりの妻として伯爵家を支え、領地経営まで立て直しても、彼にとってレティシアは“都合のいい伯爵夫人”でしかない。
やがて結婚一周年の夜、アルフレッドが自分を手放す気はない一方で、幼馴染を屋敷に迎え入れようとしている会話を聞いてしまったレティシアは、ついに決意する。
――もう、この結婚には見切りをつけよう。
夜明け前、彼女は離縁の準備を整え、伯爵邸を出奔。
身を寄せた北の港町で薬舗を手伝いながら、自分の力で生きる穏やかな日々を手に入れていく。そこで出会ったのは、身分ではなく一人の女性として彼女を尊重してくれる青年医師ノアだった。
一方、都合よく尽くしてくれる妻を失ったアルフレッドは、ようやく自分が何を失ったのかを思い知ることになる。
幼馴染ばかりを優先する婚約者との白い結婚に終止符を打ち、傷ついた公爵令嬢が新天地で本当の幸せを掴む、離縁から始まる逆転ラブストーリー。
「君は完璧だから、放っておいても大丈夫」と笑った夫。~王宮から私が去ったあと「愛していた」と泣きついても、もう手遅れです~
水上
恋愛
「君は完璧だから、放っておいても大丈夫だ」
夫である王太子はそう笑い、泣き真似が得意な見習い令嬢ばかりを優先した。
王太子妃セシリアは、怒り狂うこともなく、静かに心を閉ざす。
「左様でございますか」
彼女は夫への期待というノイズを遮断し、離縁の準備を始めた。
「離縁状の印が乾く前に、王太子殿下から花束が届きました」〜五年間「置物」と呼ばれた侯爵夫人、夫が青ざめるのは王家との縁が切れてからでした〜
まさき
恋愛
侯爵夫人として過ごした五年間、夫に名前を呼ばれたことが一度もなかった。
愛人を夜会に連れてきた翌朝、私は離縁状を置いて屋敷を出た。
夫は「すぐ戻る」と思っていたらしい。
でも届いたのは、王太子殿下からの白薔薇だった。
「五年、待ちすぎました。今度こそ私の隣に」
幼馴染の殿下は、いつも私を「アメリア」と呼んでくれた。
ただそれだけで、五年分の何かが、ほどけていった。
夫が全てを失うのはこれからの話。
私が本当の笑顔を取り戻すのも、これからの話。
大人しい令嬢は怒りません。ただ二年間、準備していただけです。――婚約解消の申請が受理されましたので、失礼いたします
柴田はつみ
恋愛
婚約者に、誕生日を忘れられた。
正確には、忘れられたわけではない。
エドワード・ヴァルト公爵はちゃんと覚えていた。
記念のディナーも、予約していた。
薔薇だって、一輪、用意していた。
ただ――幼馴染のクロエ・アンセル伯爵令嬢から使いが来た瞬間、全部置いて行ってしまっただけだ。
「すぐ戻る」
彼が戻ったのは、三時間後だった。
蝋燭は溶け切り、料理は冷え、ワインは乾いていた。
それでもリーゼロッテ・フォン・アルテンベルクは、笑顔で座って待っていた。
「ええ、大丈夫でございます。お気遣いなく」
完璧な微笑みで、完璧にそう言った。
文句を言わない婚約者は、俺の愛する幼馴染みを許していなかった【完結保証】
星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
幼馴染を優先しても、婚約者アウローラは何も言わない。だから、これからも幼馴染みとイチャイチャできる──
侯爵令息トリスタンは、そんな甘い幻想を信じていた。
だが婿入りした瞬間、彼の“軽んじた態度”はすべて清算される。
アウローラは冷徹に、トリスタンの傲慢と欲望を1つずつ暴き、労働と屈辱を与える。
そして最後に残ったのは、誰にも必要とされない現実だけ。
「どうして……俺は、こんなにも愚かだったんだ」
これは愛を勘違いし、身分を過信し、自分の価値を見誤った男の終焉を描くダークドラマ。
⚠️ 本作は AI の生成した文章を一部に使っています。
4/1「エステルに対する殺意」の内容を一部変更しました。
【完結】婚約破棄、その後の話を誰も知らない
あめとおと
恋愛
奇跡によって病を癒す存在――聖女。
王国は長年、その力にすべてを委ねてきた。
だがある日、
誰の目にも明らかな「失敗」が起きる。
奇跡は、止まった。
城は動揺し、事実を隠し、
責任を聖女ひとりに押しつけようとする。
民は疑い、祈りは静かに現実へと向かっていった。
一方、かつて「悪役」として追放された令嬢は、
奇跡が失われる“その日”に備え、
治癒に頼らない世界を着々と整えていた。
聖女は象徴となり、城は主導権を失う。
奇跡に縋った者たちは、
何も奪われず、ただ立場を失った。
選ばれなかった者が、世界を救っただけの話。
――これは、
聖女でも、英雄でもない
「悪役令嬢」が勝ち残る物語。
【完結】婚約破棄される前に私は毒を呷って死にます!当然でしょう?私は王太子妃になるはずだったんですから。どの道、只ではすみません。
つくも茄子
恋愛
フリッツ王太子の婚約者が毒を呷った。
彼女は筆頭公爵家のアレクサンドラ・ウジェーヌ・ヘッセン。
なぜ、彼女は毒を自ら飲み干したのか?
それは婚約者のフリッツ王太子からの婚約破棄が原因であった。
恋人の男爵令嬢を正妃にするためにアレクサンドラを罠に嵌めようとしたのだ。
その中の一人は、アレクサンドラの実弟もいた。
更に宰相の息子と近衛騎士団長の嫡男も、王太子と男爵令嬢の味方であった。
婚約者として王家の全てを知るアレクサンドラは、このまま婚約破棄が成立されればどうなるのかを知っていた。そして自分がどういう立場なのかも痛いほど理解していたのだ。
生死の境から生還したアレクサンドラが目を覚ました時には、全てが様変わりしていた。国の将来のため、必要な処置であった。
婚約破棄を宣言した王太子達のその後は、彼らが思い描いていたバラ色の人生ではなかった。
後悔、悲しみ、憎悪、果てしない負の連鎖の果てに、彼らが手にしたものとは。
「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルバ」にも投稿しています。