【完結】悪意か、善意か、破滅か

野村にれ

文字の大きさ
96 / 196

王女たち

しおりを挟む
「そのつもりだ。私も罰を受ける」
「父上も?」
「ああ、お前を把握出来ていなかったのは、私の罪だ。オズワルド・フォンターナにも言われたのだよ」
「伯爵に?」
「ああ、どうして息子のことを把握していないのかと。自分は娘をちゃんと見ている、だからこそ決断したのだと言わんばかりであった」
「申し訳ございません」

 自分の勝手な思いで、思い込みで行っていただけで、しかもその後も反省すらしていなかった。

「薬は輸入出来たんだ、後は皆でしっかり罪を償うしかない」
「はい…」

 オイスラッドはシンバリアの行いにより、カイニー王国との条件を破ったこと公表すると同時に、オルタナ王国から輸入が出来ることになったこと。

 そして、公表はしないが、エルム・フォンターナの件の罰を考えることになった。

 バトワスは罰を待つことになったが、その前にアマリリス、ライラック、マグノリアから、どうして紹介してくれなかったのかと問われることになった。

「薬の件でいらしたと伝えただろう」
「紹介して、見送りくらいいいでしょう!」
「そうよ、大公閣下のご子息なんてピッタリじゃない」
「凄く格好良かったわ」

 3人はうっとりしていた様子だが、表情が変わらないのを知らないのか?それ以前に絶対に叶うことはない。

「お前たちのせいで、薬が輸入出来なくなっていたらどうする!」
「でも出来たんでしょう!」
「急いで帰らなくても、お話してからでも良かったじゃない」

 そうじゃない、1秒でも長くいたくなかっただろう。

「お前たちには関係ないし、関わることもないからだ」
「そんなの分からないじゃない!」
「分かるんだよ…私はご子息のお母上を傷付けたんだ。その娘など、絶対に受け入れないだろう」
「何よそれ」
「ええ!格好良かったのに」
「お父様のせいじゃない!」

 バトワスは自分のせいではあるとは思っているが、王女たちが選ばれたかは別の話だと思っていた。エノン殿は一切、王女たちを見ることすらしていなかった。

 それなのに、格好良かったなどと言っていることから、王女たちはどこかで見ていたのだろう。

「ああ、そうだな。私とオリビアのせいで、絶対に関わることはない」
「そんな…」
「しかも、お母様も?」
「信じられない」

 アマリリス、ライラック、マグノリアはまるで自分たちにはチャンスがあったと言わんばかりに騒ぎ始めた。

「謝ってよ!そうしたら婚約が出来るかもしれないじゃない」
「望んでいないから、謝る機会もない」
「行って謝ってくればいいでしょう!」
「我が国と縁を持っても、あちらには利益が一切ない!」

 言いたくはなかったが、オルタナ王国がアジェル王国の縁談など受けるはずがない。何の利益もないどころか、関わりたくもないだろう。

「そんなの分からないじゃない!」
「では、何の利益がある?」
「だから、そういうのではないの!王女を妻にすることだってあるでしょう!」
「そうよ」
「そうよ」

 あったとしても、別の国の王女を娶るだろう。

 さすがに自分たちに価値がないことに気付いているだろうと思っていたが、まだ価値があると思っているのかと、バトワスは情けなく思った。

「アジェル王国とオルタナ王国の貴族ですら、縁談が結ばれた、結婚したという話を聞いたことがあるか?」
「それは…」

 王女たちも、今日初めて見ただけで、オルタナ王国と関わることすらなかった。

 オルタナ王国に嫁いだ、オルタナ王国から嫁いできたという話を聞いたこともなかった。

「求められていないんだよ?援助してくれと言われることが目に見えているからな」
「援助を求めないって言えば」
「絶対に、申し込むようなことはない」
「お父様のせいじゃない!」
「そう思いたいなら、そう思えばいい」

 何よと言いながら、王女たちは去ったが、大丈夫なのかと不安になったが、そろそろ本気で貴族たちとの縁組を考えなくてはならない。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

婚約破棄の代償

nanahi
恋愛
「あの子を放って置けないんだ。ごめん。婚約はなかったことにしてほしい」 ある日突然、侯爵令嬢エバンジェリンは婚約者アダムスに一方的に婚約破棄される。破局に追い込んだのは婚約者の幼馴染メアリという平民の儚げな娘だった。 エバンジェリンを差し置いてアダムスとメアリはひと時の幸せに酔うが、婚約破棄の代償は想像以上に大きかった。

フッてくれてありがとう

nanahi
恋愛
「子どもができたんだ」 ある冬の25日、突然、彼が私に告げた。 「誰の」 私の短い問いにあなたは、しばらく無言だった。 でも私は知っている。 大学生時代の元カノだ。 「じゃあ。元気で」 彼からは謝罪の一言さえなかった。 下を向き、私はひたすら涙を流した。 それから二年後、私は偶然、元彼と再会する。 過去とは全く変わった私と出会って、元彼はふたたび──

一級魔法使いになれなかったので特級厨師になりました

しおしお
恋愛
魔法学院次席卒業のシャーリー・ドットは、 「一級魔法使いになれなかった」という理由だけで婚約破棄された。 ――だが本当の理由は、ただの“うっかり”。 試験会場を間違え、隣の建物で行われていた 特級厨師試験に合格してしまったのだ。 気づけばシャーリーは、王宮からスカウトされるほどの “超一流料理人”となり、国王の胃袋をがっちり掴む存在に。 一方、学院首席で一級魔法使いとなった ナターシャ・キンスキーは、大活躍しているはずなのに―― 「なんで料理で一番になってるのよ!?  あの女、魔法より料理の方が強くない!?」 すれ違い、逃げ回り、勘違いし続けるナターシャと、 天然すぎて誤解が絶えないシャーリー。 そんな二人が、魔王軍の襲撃、国家危機、王宮騒動を通じて、 少しずつ距離を縮めていく。 魔法で国を守る最強魔術師。 料理で国を救う特級厨師。 ――これは、“敵でもライバルでもない二人”が、 ようやく互いを認め、本当の友情を築いていく物語。 すれ違いコメディ×料理魔法×ダブルヒロイン友情譚! 笑って、癒されて、最後は心が温かくなる王宮ラノベ、開幕です。

復讐のための五つの方法

炭田おと
恋愛
 皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。  それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。  グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。  72話で完結です。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

【完結】婚約者の義妹と恋に落ちたので婚約破棄した処、「妃教育の修了」を条件に結婚が許されたが結果が芳しくない。何故だ?同じ高位貴族だろう?

つくも茄子
恋愛
国王唯一の王子エドワード。 彼は婚約者の公爵令嬢であるキャサリンを公の場所で婚約破棄を宣言した。 次の婚約者は恋人であるアリス。 アリスはキャサリンの義妹。 愛するアリスと結婚するには「妃教育を修了させること」だった。 同じ高位貴族。 少し頑張ればアリスは直ぐに妃教育を終了させると踏んでいたが散々な結果で終わる。 八番目の教育係も辞めていく。 王妃腹でないエドワードは立太子が遠のく事に困ってしまう。 だが、エドワードは知らなかった事がある。 彼が事実を知るのは何時になるのか……それは誰も知らない。 他サイトにも公開中。

元婚約者が愛おしい

碧井 汐桜香
恋愛
いつも笑顔で支えてくれた婚約者アマリルがいるのに、相談もなく海外留学を決めたフラン王子。 留学先の隣国で、平民リーシャに惹かれていく。 フラン王子の親友であり、大国の王子であるステファン王子が止めるも、アマリルを捨て、リーシャと婚約する。 リーシャの本性や様々な者の策略を知ったフラン王子。アマリルのことを思い出して後悔するが、もう遅かったのだった。 フラン王子目線の物語です。

婚約破棄されないまま正妃になってしまった令嬢

alunam
恋愛
 婚約破棄はされなかった……そんな必要は無かったから。 既に愛情の無くなった結婚をしても相手は王太子。困る事は無かったから……  愛されない正妃なぞ珍しくもない、愛される側妃がいるから……  そして寵愛を受けた側妃が世継ぎを産み、正妃の座に成り代わろうとするのも珍しい事ではない……それが今、この時に訪れただけ……    これは婚約破棄される事のなかった愛されない正妃。元・辺境伯爵シェリオン家令嬢『フィアル・シェリオン』の知らない所で、周りの奴等が勝手に王家の連中に「ざまぁ!」する話。 ※あらすじですらシリアスが保たない程度の内容、プロット消失からの練り直し試作品、荒唐無稽でもハッピーエンドならいいんじゃい!的なガバガバ設定 それでもよろしければご一読お願い致します。更によろしければ感想・アドバイスなんかも是非是非。全十三話+オマケ一話、一日二回更新でっす!

処理中です...