【完結】悪意か、善意か、破滅か

野村にれ

文字の大きさ
115 / 196

ハビット王国へ

しおりを挟む
 正直、あまり喜んでいる様子はなかった。

 特に王女たちは今でも他国に嫁ごうと考えていた。だが留学先は制限され、他国から留学を希望することもないために、出会いもない。

 群がろうとしたエノン公子のことも、まだバトワスに、どうにかならないと言っていたほどである。

 貴族の中には他国に伝手があったのか、嫁いだ者もいるが、ごく僅かである。

 王家は国外は娶ることも、嫁がせることも難しいので、国内で見付けるしかない。それも断られる可能性もあることも伝えてある。

「いずれガーデンパーティーを行う予定となっています」

 夜会では年齢も制限され、風紀のことも考え、昼間のガーデンパーティーとすることにした。どちらにしてもバトワスが戻ってから、纏めることになるだろう。

「そうか、子どもたちのことは目を光らせて置く」
「よろしくお願いいたします」

 離縁や流行り病などもあったので、先延ばしにしていたが、そろそろ決めなくてはならない。王家が決まれば、他の貴族も婚約をきちんと決めるだろう。

 子どもも多いために、後継者と結婚することすら難しい。

 恋愛結婚とは言われているが、アジェル王国が認めたわけではなく、破綻している者も多いため、現実を見ている子どもは賢い選択をするだろう。

 だが、両親から聞いたのか、恋愛結婚が素晴らしいと思い、運命の相手を探すなどと、夢見がちなことを言っている者もいた。

 しかも、それを過ごし易い他国に求めようとしたようだが、断られている。

 他国も恋愛結婚がないわけではない、ただアジェル王国は恋愛結婚と言われているが、それは婚約者がいるのに不貞を働き、その不貞相手と結婚したという意味であることも、バトワスは理解していた。

 早々に婚約していた後継者はちやほやされることで、不貞や不貞未遂で、子どもは沢山いるので、後継者を外れた者も多い。

 これ以上、恋愛結婚の時代を続けるわけにはいかないために、そういった部分を調べた上で、資料を渡したのである。

 幸せになって欲しいという気持ちはあるが、私のようにではなく、これから国のためを考えてくれる相手と結婚して貰いたい。

 ハビット王国に行くことになったと伝えると、子どもたちは出会いを求めているのか、同行したいと言い出したが、同行させる気はなく、婚約のことをきちんと考えるように話して、ハビット王国へ旅立った。

 ハビット王国に入国すると、バトワスは初めてやって来たが、確かに空気がどこかアジェル王国と同じようだと感じた。

 王宮に着くと、ルークア王太子殿下とパーメリア王太子妃殿下、メーリン王女殿下が待っており、パーメリアとは初対面であったために挨拶を交わした。

「わざわざ申し訳ありません」
「いえ、出迎えありがとうございます。お力になれるといいのですが」
「昼食後に早速、見て貰ってもよろしいでしょうか」
「はい、よろしくお願いいたします」

 昼食を取り、バトワスはその理由という書物のある場所に、ルークア王太子殿下に案内された。

「掃除はしたのですが、まだ埃が酷く申し訳ないのですが、こちらです」

 書庫のようで、確かに誇りっぽかったが、あまり日を当てないようにし、無暗に動かすことが出来ないために、あまり掃除が出来ないのだろうと感じた。

 新しく運び入れたのだろう机の上には、何冊かのボロボロの本のようなものが開かれた状態で、置いてあった。

「ここです」

 ルークアが指さした場所には、擦れてしまっていたが、ターナ家、去ると書かれていた。

「ターナ家?」
「はい、あとこちらです」

 そして、こちらも擦れてしまっていたが、天候、不良、不明、フォターナ家、呪いかと、書かれていた。

「フォターナ家…」

 先程はターナ家であったが、次はフォターナ家と何とか読める物であった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

婚約破棄の代償

nanahi
恋愛
「あの子を放って置けないんだ。ごめん。婚約はなかったことにしてほしい」 ある日突然、侯爵令嬢エバンジェリンは婚約者アダムスに一方的に婚約破棄される。破局に追い込んだのは婚約者の幼馴染メアリという平民の儚げな娘だった。 エバンジェリンを差し置いてアダムスとメアリはひと時の幸せに酔うが、婚約破棄の代償は想像以上に大きかった。

一級魔法使いになれなかったので特級厨師になりました

しおしお
恋愛
魔法学院次席卒業のシャーリー・ドットは、 「一級魔法使いになれなかった」という理由だけで婚約破棄された。 ――だが本当の理由は、ただの“うっかり”。 試験会場を間違え、隣の建物で行われていた 特級厨師試験に合格してしまったのだ。 気づけばシャーリーは、王宮からスカウトされるほどの “超一流料理人”となり、国王の胃袋をがっちり掴む存在に。 一方、学院首席で一級魔法使いとなった ナターシャ・キンスキーは、大活躍しているはずなのに―― 「なんで料理で一番になってるのよ!?  あの女、魔法より料理の方が強くない!?」 すれ違い、逃げ回り、勘違いし続けるナターシャと、 天然すぎて誤解が絶えないシャーリー。 そんな二人が、魔王軍の襲撃、国家危機、王宮騒動を通じて、 少しずつ距離を縮めていく。 魔法で国を守る最強魔術師。 料理で国を救う特級厨師。 ――これは、“敵でもライバルでもない二人”が、 ようやく互いを認め、本当の友情を築いていく物語。 すれ違いコメディ×料理魔法×ダブルヒロイン友情譚! 笑って、癒されて、最後は心が温かくなる王宮ラノベ、開幕です。

復讐のための五つの方法

炭田おと
恋愛
 皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。  それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。  グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。  72話で完結です。

冤罪で退学になったけど、そっちの方が幸せだった

シリアス
恋愛
冤罪で退学になったけど、そっちの方が幸せだった

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

【完結】家族にサヨナラ。皆様ゴキゲンヨウ。

くま
恋愛
「すまない、アデライトを愛してしまった」 「ソフィア、私の事許してくれるわよね?」 いきなり婚約破棄をする婚約者と、それが当たり前だと言い張る姉。そしてその事を家族は姉達を責めない。 「病弱なアデライトに譲ってあげなさい」と…… 私は昔から家族からは二番目扱いをされていた。いや、二番目どころでもなかった。私だって、兄や姉、妹達のように愛されたかった……だけど、いつも優先されるのは他のキョウダイばかり……我慢ばかりの毎日。 「マカロン家の長男であり次期当主のジェイコブをきちんと、敬い立てなさい」 「はい、お父様、お母様」 「長女のアデライトは体が弱いのですよ。ソフィア、貴女がきちんと長女の代わりに動くのですよ」 「……はい」 「妹のアメリーはまだ幼い。お前は我慢しなさい。下の子を面倒見るのは当然なのだから」 「はい、わかりました」 パーティー、私の誕生日、どれも私だけのなんてなかった。親はいつも私以外のキョウダイばかり、 兄も姉や妹ばかり構ってばかり。姉は病弱だからと言い私に八つ当たりするばかり。妹は我儘放題。 誰も私の言葉を聞いてくれない。 誰も私を見てくれない。 そして婚約者だったオスカー様もその一人だ。病弱な姉を守ってあげたいと婚約破棄してすぐに姉と婚約をした。家族は姉を祝福していた。私に一言も…慰めもせず。 ある日、熱にうなされ誰もお見舞いにきてくれなかった時、前世を思い出す。前世の私は家族と仲良くもしており、色々と明るい性格の持ち主さん。 「……なんか、馬鹿みたいだわ!」 もう、我慢もやめよう!家族の前で良い子になるのはもうやめる! ふるゆわ設定です。 ※家族という呪縛から解き放たれ自分自身を見つめ、好きな事を見つけだすソフィアを応援して下さい! ※ざまあ話とか読むのは好きだけど書くとなると難しいので…読者様が望むような結末に納得いかないかもしれません。🙇‍♀️でも頑張るます。それでもよければ、どうぞ! 追加文 番外編も現在進行中です。こちらはまた別な主人公です。

【完結】婚約者の義妹と恋に落ちたので婚約破棄した処、「妃教育の修了」を条件に結婚が許されたが結果が芳しくない。何故だ?同じ高位貴族だろう?

つくも茄子
恋愛
国王唯一の王子エドワード。 彼は婚約者の公爵令嬢であるキャサリンを公の場所で婚約破棄を宣言した。 次の婚約者は恋人であるアリス。 アリスはキャサリンの義妹。 愛するアリスと結婚するには「妃教育を修了させること」だった。 同じ高位貴族。 少し頑張ればアリスは直ぐに妃教育を終了させると踏んでいたが散々な結果で終わる。 八番目の教育係も辞めていく。 王妃腹でないエドワードは立太子が遠のく事に困ってしまう。 だが、エドワードは知らなかった事がある。 彼が事実を知るのは何時になるのか……それは誰も知らない。 他サイトにも公開中。

『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』

夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」 教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。 ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。 王命による“形式結婚”。 夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。 だから、はい、離婚。勝手に。 白い結婚だったので、勝手に離婚しました。 何か問題あります?

処理中です...